それでは第1話、どうぞ
「うちはどうしてこうなったんだろう」
そんなことをつぶやきながら窓の外を見る白い新品の軍服に身を包んだ少年─湯元 彰(ゆもと あきら)は事の顛末を思い出していた
高校に入学してから数ヶ月が立った頃、南鳥島沖に突如現れた深海棲艦による侵攻が始まった。未知の敵ながらも自衛隊はよく防いでいたが防ぎきれるものではなく、小笠原諸島には退避勧告が発令され、そのまま占領された。そして次は本土か…となり、政府が関東地方全域からの退避が発令しようとした時突如現れた女性たち─艦娘によって一次的にその難は過ぎ去った。またこれにより自衛隊としての基地は解体され鎮守府となった
その翌年、艦娘を運営する鎮守府には適性のある者が「提督」として就く必要があり、自衛隊内だけでは足りなかった結果市民にまで検査が行われることになった。そんなことで適性検査を受け、無事に合格してしまった私は、2ヶ月ほど海軍の兵学校?というところに入れられ、そのまま教育を受けることになった。昨日終わったと思えばもう次には着任らしい……ナニコレ
「着きましたよ。天才提督さん」
運転士がドアを開ける
「辞めてくださいよ…その言い方…」
「そんなことを言われましても。高校生で提督になったってどこでも話題ですよ?」
そう。そこが一番の問題。高校生で提督になるのは初らしくテレビや新聞に取り上げられてしまった。おかげで外に出歩きにくくなってしまっている。しかも着任先は──
「横須賀鎮守府…か、何の縁だろうなぁ…まさか家の近くの基地が鎮守府になってそこに配属されるとは。ま、運転士さんありがとうね。これからもお世話になるかもしれないけれどよろしく」
「ええ。承りました」
そう言うと運転士さんは戻って車を走らせる。それを見送り、再度門へと振り替える。さて行くとしますか……ん?よく見ると敬礼している人が…
「あ、あの?」
恐る恐る声をかけてみる。すると
「お待ちしておりました。湯元提督。私、秘書艦を務めます、軽巡洋艦大淀です。艦隊指揮、運営はどうぞお任せください」
「はじめまして湯元提督。特型駆逐艦1番艦、吹雪です。よろしくお願い致します!」
そう言って敬礼をする大淀と吹雪と名乗った2人の艦娘は自分のこれからの動きをみているようだった。慌てて自分も答礼をして名乗る
「お出迎えありがとうございます。本日より横須賀鎮守府提督となりました日本国海上自衛隊少佐の湯元彰です。以後よろしくお願いいたします」
「では提督、早速提督私室へご案内致しますがよろしいですか?」
自己紹介が終わるとともに大淀さんが質問してくる
「ええ。荷解きもしたいので。お願いします」
「わかりました。ではこちらへ」
そう言って先導する大淀さんに付いて行き門をくぐる。これだけでも不思議な感覚だった
「なんかすごく現代建築から離れました?なんか横須賀基地もっと違った気がするんですが…」
「さっすが司令官!鎮守府に改装される折になんかこっちのほうがよかったらしくて旧海軍の鎮守府風になったんですよ」
ふと気になった疑問をこぼすと吹雪が答える
「ええ、着眼点が鋭いですね。あ、こちらです」
そう言って大淀さんが鍵を取り出し扉を開ける。そして部屋の中に入り、持ってきた段ボールを少しずつ床に下ろす
「あれ?ベットと棚もあるんだ」
そう聞くと吹雪さんが
「ベットと棚、執務机は着任に合わせて新しいのに変えました」
「なるほど…ありがとうね」
そう言うと段ボール箱を開け、衣服を棚にしまったり軽く家具を置いたりしていく。大淀さんや吹雪さんも手伝ってくれるが、人手が足りない
「仕方ないなぁ…」
「提督?どうなさったのですか?」
自分の声に反応して大淀さんが質問する
「まぁ見ればわかることよ」
そう言ってずっと持ってたショルダーバックを開ける
「おーい、えっとたしか…妖精さん…だっけ?とりあえずお前ら起きて手伝ってくれん?金平糖あげるからさ」
呼ぶとふわっと羅針盤を持ちながら飛んできてちょこんと頭に乗るものもいれば、オ号観測機で飛んできて手に乗るもの、零戦に乗るものなどなど…いろんな小人(?)が出てくる。そして大淀さんや吹雪さんはこの光景に驚いていた
「し、司令官…?それは?」
「あ、えっと…なんか高校進学の時に見えるようになってついてきたんだよね…なんだっけ…妖精さん?」
そう言うとピクッと反応し近くの机に整列して敬礼する
「凄いですね…ここまで沢山の妖精に…しかも提督になる前から……」
大淀さんが眼鏡を戻しながら言う。どうやらこれは相当意外なことらしい
「ま、いいや。とりあえず妖精さん達この部屋作るの手伝って。ものしまったりとかで。お返しはいつもの金平糖でいいね?」
そう言うと並んだ妖精さん達は揃って親指を立て、作業に入る
「オ号観測機はそう使うものやないやろ…」
オ号観測機の下にものを吊り下げて運ぶ姿につい突っ込んでしまう
「あ、そう言えば前任の方は?」
ふと思い出して聞いてみる。すると2人は唐突に暗い顔へと変わる
「………捕まりました」
「へ?」
大淀さんの返答に思わず間抜けな声が出る
「大本営からやってもない罪を被せられちゃったんです。あの人はとてもいい人だったのに」
吹雪さんも目に涙を浮かべて言う。そしてそこで過去に聞いた話を思い出した
「…あらかた理解した。前任提督は艦娘に人権があると考える艦娘人間派、でも大本営は中立派5割、艦娘兵器派が4割、艦娘人間派が1割。そして強かった前任は睨まれ、罪を着せられ、捕まった…そう言う訳だな」
艦娘兵器派─艦娘は兵器なのだから最低限の物資さえ渡せばいいと考える人々の総称だ。確かに効率を求めるならいいが艦娘にも士気がある。そんな最低限しかないところでは気も乗らないはずだ………
「まぁ安心してほしい。うちは
その言葉で大淀さんと吹雪さんの顔がみるみる明るくなる
「「提督(司令官)、お願いします!」」
「こちらこそ!」
何はともあれ2人に明るさが戻ってよかった…
「それじゃ荷解きを…ツンツン…ん?」
突かれて振り返るとそこには整列して敬礼した妖精さん達の姿が
「この短時間で終わらせるとは…」
『ちゃんと位置も君の─いや提督の使い方に合いそうな位置にしておいたよ!』
そう言って右手を差し出して親指を上げるヘルメットを被りベストをつけた妖精さん。あんたらどこまでやってくれるんだよ…
「ありがとな。後で金平糖だな」
そう言うと輪になってで『バンザーイ!』と言って喜ぶ。カワイイ…
「後で他のみんなとも顔合わせないと…」
そういって机の上に書類をまとめておく
「あ、そうだ司令官」
「どうした?吹雪さん?」
「えっと…基本艦娘にさん付けで呼ばないでもらいたいのと…」
「しばらくの間、秘書艦は私と吹雪さんで行いますのでお願いします」
吹雪さんと大淀さん─いや吹雪と大淀がそういう
「あ、あぁわかった。それじゃあ何度目か分からないけど改めてこれからよろしく。吹雪、大淀」
「「はいっ!」」
2人が敬礼するので答礼で返す。あとなんか確認したいこと…あ、あれがあったな
「2人に見てもらいたいものがあるんだけど…いい?」
「なんですか?司令官」
「提督、見せてもらえますか?」
聞いて承諾をもらえたので遊んでいる妖精達の中から3匹(?)をつまみあげる。最初は驚いたようにワタワタとするが、顔を見て察してくれたのかすぐさま動き出す。すると光が見え、あっという間に3つの機体を出した
「この2つ…わかる?」
と聞いたが
「こ、これは…!」
「ええ……!」
と眼中にない様子
「司令官!これも見えるようになって仲良くなってたんですか!?」
「あ、うん」
吹雪がこれまでに無い勢いで来るので若干後退りながら答える
「後で伊勢さんや日向さん、最上さん、あと空母の皆さんも呼ばないと…」
「ん?ドユコト…?」
全くもって理解できない
「この機体達、烈風、瑞雲、強風って言うのですが…」
「烈風は赤城先輩達空母の方々が積む艦上戦闘機、略して艦戦ですね、になります。しかもこれ今まで出てきた事例がないんですよ…大鳳さんが初期艦載機として持ってくるぐらいで…本当にレアなんです」
「あとら瑞雲と強風ですね。こちらは瑞雲が水上偵察機でありながら爆撃ができるもの、強風が水上戦闘機…といった具合に空母ではない艦…特に航空戦艦や航空巡洋艦に使えるものです。伊勢型と最上さんは改装済みなので増えるの喜んでもらえると思います。まだ艦載機がろくにそろってない状態ですから…」
とりあえず聞くになんかすごい機体っていうのは分かった。確か鎮守府内には図書館もあるから今度行って軍用機の本を借りよう………
「説明ありがとう。それじゃあこっから鎮守府案内してくれるか?さすがに内部がわからないから…」
「承知致しました。では吹雪さん言ってもらえますか?私は通信が来ないかどうかを聞いておきますので」
「了解です!では行きましょう!司令官!」
そういって部屋を出た吹雪についていく。鎮守府どうなってるんだろうなぁ
初めての一人称での物語展開。慣れるよう頑張ります
さーてこれからどうなるのでしょうか。そしてこれはどのぐらいの頻度になるのでしょうか
そんなこんなでお楽しみください
今回も読んでくださりありがとうございました
読者の方に最大級の感謝を
次回、第2話、鎮守府案内の巻(仮)