全自動怪人製造マシーンin異世界   作:あなたちゃん

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12:来ない②

 

 

 

「それで、私に何か話したいことがあるという事でしたが、どういった用件ですか? 皆様にご不便を強いているのは重々承知しているのですが……。」

 

 

基地に帰還し、支部の一室。

 

先日ハゼちゃんから現地を取った部屋と全く同じ部屋に集まるのは、3つの存在。

 

 

椅子に腰かけ、浮かべるのは“正義”の顔。申し訳なさそうにしながらも、全てを包み込むような笑みを張り付けた私。

 

自然と唯一の出入り口であるドアに背を預ける人間としての姿を保つ怪人ホルンハーゼ。

 

そして居心地の悪そうな。そして強い怯えを顔に浮かべた、ただの人間。

 

 

(全てでないだろうけど、私がハゼちゃんに“何かした”のは理解しているんだろうね。)

 

 

気味の悪い笑みを浮かべながら、軽く思考を回す。

 

先程の私の言葉には、一切の虚偽はない。不便を強いているのは確かだし、それに申し訳ないと思っているのも事実だ。

 

自身は彼女たちをゴブリンの巣から助け出した人間なれど、その権利全てを私のモノにすることはできない。この世界の法はどうか知らないが、少なくとも地球では人間である限り一定の権利が保障されていた。ピレスジェットという何処で現れるか解らない敵を相手取る以上、そういった“配慮”はすべきなのだろう。

 

つまり基地内の病室に閉じ込め、意図的に娯楽や食事などを制限するのは“悪”。すぐに奴を呼び寄せてもおかしくないし、首筋辺りに若干の悪寒を感じる当たり、あまり推奨されない行為だ。

 

故にその対策として。この基地の周辺には、既に百を超えたゴブリンがたむろしている。

 

 

(彼らは洗脳済みで従順だけど、それは我ら“デスカンパニー”を相手にした時だけ。私はハゼちゃんに“反応”することはないが、何でもない彼女たちが外に出ればすぐ“元通り”になってしまう。)

 

 

当然私は監督不行き届きということで彼女たちに謝罪するだろうし、やらかしたゴブリンを処することになるだろうが……。

 

此方から何か対処することはしない。何せ『外に出るな』とお願いして危険性を示したというのに、逃げたのであれば彼女たちの責任だからだ。流石にそこまで責任はとる必要はないだろう。全てこちらで用意した状況といえども、だ。

 

 

(酷く面倒な手順だけど、この“悪寒”を無視すれば絶対に奴がやって来て死ぬ。ならば遠回りでもやることはやらないと、ね?)

 

 

閉じ込める理由を生み出し、生活を制限し意図的にストレスを溜めさせる。

 

発散させる方法は全て摘み取り、何もさせない。衣食住の保証はするが、最低限だけ。けれどその扱いが改善し、更に自由を手に入れる方法として、“同意する”ことを匂わせておく。

 

 

(ハゼちゃんというその一人目が出たがゆえに、すぐに動きがあると思いましたが……。)

 

 

まさか、そっちに転がるとは。

 

人というモノは、面白いものですよねぇ?

 

 

「え、えへへ。じ、実はアオさん。いやアオ様にちょっとお願いしたいことが、ありまして。へへ。」

 

「そんな話し方をしなくても大丈夫ですよ?」

 

 

不思議そうな顔を維持しながらも、内心少し興味が湧く。

 

眼前の彼女が抱える感情は、強い恐怖。無論それは此方に向いている。

 

最初に顔を合わし会話した時は、受け答えは出来るが反応が薄め。そこまで頭の回らない人間故に怪人にしてもそこまで強くならないのではと勝手に思っていたが……。ハゼちゃんの変化。怪人化による性格の変化をいち早く理解し、“生き残る”手段を模索したのが見て取れる。自身の命に危険が及び始めれば、急にスイッチが入るタイプなのだろう。

 

なにせその恐怖を無理矢理抑え込みながら、此方に対し最大限の媚びを売ろうとしているのだ。必要があれば即座に靴でもなんでも嘗めるだろう。部屋に案内した時、私が座るように指示したせいかそこまではしていないが……。もし口にしなければ、その場で頭を垂れていてもおかしくはない。

 

 

(相手が一定の知性がある場合に限り、生存の可能性が上がる。そんな感じですかね?)

 

 

彼女が捕まっていたゴブリンは本能的すぎるがゆえにどうにもならなかったのだろうが、“手慣れている”ように見えることから、彼女がコレで生き残って来たのが見て取れる。まぁ自身はこのような行いを好まないし、見るのもあまり好きではないが……。組織に一定数好む者がいたことは理解している。

 

もしここにいるのが“私でなければ”、大いに刺さったことだろう。

 

 

「あ、あの。言うことなんでも聞くので、どうか命だけは。えへ、えへへ。」

 

「あら、“そう思われて”いるのですか?」

 

「い、いえ! そんな! そんな思ってないですから。も、もしかしたらの話。私のか、勘違いみたいなものですから。ど、どうかお慈悲を……!」

 

 

少し強く見つめてみれば、背を曲げ自身をより小さく見せながらも、そう紡ぐ彼女。

 

彼女の中では既にある程度定まっているのだろう。

 

私がハゼちゃんに何かしたことで性格が変化し、明らかに人とは別の存在へと変化した。既に怪人であるこちらからすれば何でもないことだが、その怯え方からしてよほど恐ろしいのだろう。人格の変化は、行ってしまえばそれまでの連続性を途絶えさせる行為。早い話。私がハゼちゃんの前の心を殺し、バケモノに作り替えた。

 

そう考えていても、おかしくはない。

 

科学的に言えば心はそのままで、作り替えたことは事実なのだが……。未開人である彼女からすればそう見えても仕方のないなのだろう。確かにハゼちゃんも怪人の基本性能として“元の人間の姿”を取ることは可能だが、今のハゼちゃんは昔の弱い自身を忌み嫌っている。演技することは可能だろうが、細かな振る舞いは完全に一致しない。

 

そんな小さな変化と、過去を嫌う唐突な心変わり。後は残り候補たちへ急にハゼちゃんが怪人化を勧め始めた、勧誘し始めたがゆえに……。

 

“私に命乞いをしに来た”と言う事なのでしょうね?

 

 

「……いいでしょう。貴女の命を取る様な事は致しません。ですが私は人手不足でしてね? “彼女”にもそのために手伝ってもらっているわけです。」

 

「そ、そうですよね! わ、わかりますわかります!」

 

「貴女がそれを手伝ってくれる、という認識でよろしいですか?」

 

「も、勿論です! な、何でも! 何でもします!」

 

 

問いかければ、すぐに帰って来る言葉。

 

何をされるか解らないがゆえに、懐に飛び込み安全を確保しようとする行動。……この子から見れば、よほど私は恐ろしく、同時に規格外の存在なのでしょう。よどほ激しく首を縦に振っています。

 

……このまま“同意”を得てもいいのですが、彼女の性質を考えれば確実に暴れ喚き散らすでしょう。今のこの子は、ハゼちゃんのように“変わる”ことを恐れています。同意を得たとしても直前で撤回し、『我々が無理矢理怪人にしようとしてる』という状況を作りかねない。

 

 

(それでピレスジェットが来ちゃうと困るからねぇ? ちょ~っと語るに落ちて貰いましょうか。)

 

 

かの怨敵は正義の存在。確かに悪を挫く存在なのだろうが……。

 

悪を助ける存在ではない。

 

 

「あぁでも。貴女が居なくなると“代わり”が必要になりますね?」

 

「っ!」

 

「貴女も知るように、あの部屋以外にも自身が保護している方々はいらっしゃいます。ですが少々説得が面倒でしてね? 自分から“望んでくれれば”、それでいいのですが。」

 

 

さて、どうでるか。

 

暗に仲間。いや彼女からすれば仲間ではなく単に同室かもしれないが……。それでも同じような酷い境遇、ゴブリンの忌み者になるという酷い目にあった存在。多少なりとも情や共感がある相手だろう。それを“売れ”という発言。

 

自然と彼女の後ろで壁に身を預けるハゼちゃんも少し体を動かしその返答を聞こうとするが……。

 

こちらの想定よりも早く、大きく開かれるその口。

 

 

「あ、アイツらにだっても、もっと良く言ってみせます! だ、騙したって、何だってやります!」

 

 

卑屈な笑みを浮かべながら、即座にそう言い放つ彼女。

 

言葉にはしていないが、自分だけ生き延びられれば、助かればそれでいい。必要ならばなんだって犠牲にするし、騙すなんてなんてことはない。表情がそう語ってる。

 

どうやら彼女の背後にいるハゼちゃん、ホルンハーゼは気に入らなかったようで顔を顰めているが……。自身としては、求めていた100点満点の回答だ。

 

確かに我らも組織。即座に身内を売る人間は歓迎できぬもの。けれどこちらには“書き換える”手段があり、何をしても心が痛まない“悪”は非常に大歓迎です。まぁそもそも痛む心など欠片も持っていませんが……

 

とても、仲良くなれそうですね?

 

 

「あ、で、でも……」

 

「えぇ勿論。貴女には“痛い事”も“苦しい事”もしませんよ?」

 

 

そう“真実”を伝え、求めてただろう言葉を更に紡ぐ。

 

私の返答がよほど気に入ったのでしょう。少し緩んだ表情へ差し込むように、続けていく。

 

 

「あぁそうですねぇ。折角自分から手伝ってくれるのです。何か欲しいモノはありますか? 文字通り“何でも”用意して差し上げましょう。金、地位、土地、何でも好きなものを差し上げましょう。」

 

「な、何でも……! あ、い、いいえ! そ、そんな! そんな恐れ多い! わ、私なんか、命だけで。え、えへへ。」

 

「ふむ、では“今後”聞くことにしましょう。そちらの方が良いでしょうし。では改めて。……私の配下になるということで、いいですね?」

 

「も、勿論です!」

 

 

自分の意思で、確実な“同意”。

 

そして何より、何も知らぬ仲間をすぐに売れるという選択が取れる人間。

 

我々を救うためにピレスジェットが動かないように……。

 

彼女を救いに現れるということも、また無いでしょう。

 

とても、素晴らしい。

 

 

「よろしい。……ホルンハーゼ」

 

「はっ!」

 

「……ぇ」

 

 

口調を変え、我が部下の名を呼ぶ。

 

さすれば即座にその肉体を怪人のモノへと変化させ、新たな候補者の身体を担ぎ上げるホルンハーゼ。咄嗟のこと、更に知人の見た目が一瞬にしてバケモノになったことで、言葉すら紡げなくなったのだろう。何も話せぬ彼女を連れて、移動を開始する。

 

そしてもちろんその場所は、かの機械が鎮座する場所。

 

 

「な、何! 何して!」

 

「連れていくんですよ、とっても素敵な所に。」

 

 

ようやく彼女の精神が話せるほどに復活したころには、ちょうど目的の部屋の前へ。

 

そう、『全自動怪人製造機』が待つ場所。

 

さぁさ、楽しい楽しい施術の時間と行こうか。

 

 

「な、なんで! わ、私のこと助けるって! 何もしないって!」

 

 

彼女の常識では、アレが何か理解することは出来ないだろう。

 

しかし何も口を開かぬホルンハーゼと、笑顔を張り付けるのを辞め本来の顔を出した私を見て、”何が起こるか”は理解したに違いない。

 

そう叫びながら、何とか拘束から逃げ出そうとする彼女だったが……。常人が怪人に抑え込まれて、抵抗など出来るはずがない。

 

 

「あら、何もしないとは言ってませんよ? “痛い事”、“苦しい事”をしないと言っただけです。もし本気で拒否したいのであれば、自分に何をされるのか説明を求めるべきでしたねぇ? まぁ聞かれても答えませんけど。……同意したのは、貴女ですよ?」

 

「あぁぁぁあああああ!!! やだ! やだ!!!!!」

 

 

泣き叫びながら大声を上げる彼女。

 

あまり煩いのは得意ではないのだが……。

 

その大いに崩れた顔は、大変面白い。

 

 

「たすけ、助けて! 誰か! 誰か! り、リリ! 助けてリリ! お願い! お願いッ! 助けてぇぇぇええええええ!!!!!!」

 

「もう“リリ”じゃねぇ。」

 

 

おそらく元の名で助けを求める彼女だったが、怪人となった者に対して。そして過去を嫌う彼女に対しては逆効果。そもそも“仲間を売る”と公言した相手を助けるほど彼女はお人よしではないだろう。

 

そして助けを求めれば来るであろうヒーローも、この世界にはいない。

 

最後まで藻掻き暴れ、逃げ出そうとする彼女だったが……。何も為せぬまま、装置のカプセルの中へ。全力でそのガラスの壁を叩き割ろうとするが、それよりも早く麻酔処理が開始される。

 

 

「そう悪いことじゃねぇから暴れんな。……んじゃ、また会おうぜ、マーサ。」

 

 

どこか悲しさを含んだホルンハーゼの言葉。それをかき消そうとするようにカプセル内部から拳の音が鳴り響くが……、徐々に小さくなっていく。

 

白い煙と共に噴射される麻酔が内部を覆った頃にはそれもなくなり、手元のデバイスには“完了”の文字が。

 

これで自身を遮るものは、何もなくなった。

 

 

「よし! さ、改造改造!」

 

「いやテンション。……黙ってみてたけど普通にアイツ仲間売ったな。いや仲間って言っても単なる同室と同じ被害者みたいなもんだけど。」

 

「人間って案外そういうものだよ? でも怪人になれば話は別。ハゼちゃんが前の自分が嫌いなように、多分彼女もそうなるんじゃないかな?」

 

 

いつものような緩めの声を出すが、そう突っ込まれてしまう。

 

しかし自身が言ったように、人と言うものは元来そういうモノなのだ。追い込まれれば追い込まれるほどに生物としての本性が現れ出てくる。むしろそんな状況になっても他者を守ろうとする“正義”の方が狂人と言えるだろう。

 

そこに輝きを見る人間が一定数いるらしいが……、正直理解できそうにない。

 

 

「……ま、新しい仲間だしな。前は忘れて付き合うべき、ってやつか。」

 

「そうそう! さ~って、どんな子に改造できるかな~!」

 

 

二人目の怪人、楽しみだねぇ!!!

 

 

 






〇出張拡大! とてもよく解るネオ・デス博士の怪人講座!(ピレスジェット編)

はーはっはっ! ごきげんよう諸君! ネオ・デス博士である! 今日もゴブリンと比べれば格段に優秀な貴様らに相応しい講義を“懇切丁寧”に勤めさせて頂こう! この人類史上最高の頭脳を持つ私に勝ることは不可能だが、その足元に及ぶ程度には後押ししてやる! さて今回の議題だが……、むぅ! 宿敵ピレスジェットではないか! 我が最高傑作であるクモ女に劣るコヤツなど解説する必要性もないが……。敵を知るのもまた学びの一つであることは否定できん。仕方あるまい! 諸君! 一度しか言わぬからしっかりと聞くがよい!

では基本スペックからいこう!

■身長:184.0cm
■体重:85.0kg
■パンチ力:100.0t
■キック力:200.0t
■ジャンプ力:150.0m(ひと跳び)
■走力:0.3秒(100m)
★必殺技:ハイパージェットキック

む! これは奴の後期スペック。デスカンパニー本部が奴によって破壊された後のスペックだな!

この講義が初となる者の為に説明しておくが、奴は簡潔にまとめると“毒”と“進化”の能力を持つ改造人間だ。敵となる存在に特攻の毒を即座に選択し、体内で生成。接触時に打ち込んだり散布することでダメージを与える、という感じの戦い方をするのだ。

これだけ聞くとあまり強くない怪人、玄人向けに見えるかもしれないが……。もう片方の要素、“進化”が非常に厄介と言えるだろう。

何せその時のピレスジェットでは勝てぬ相手と相対した時、体内で特殊な毒が生成され奴の肉体と反応させることで、異様なほどの成長。“進化”を促すのだ。それによって基礎スペックが向上したり、新たなフォームを手に入れたりするわけだな。このせいで何度奴より強い怪人を生み出したとしても撃破されるという無駄な行動を繰り返したか……!

そしてこの“後期ピレスジェット”と呼ばれるような存在はデスカンパニー総統との戦いを経て更に進化し、基本フォームが最終フォームと同等以上のスペックを叩き出せるようになった、という感じだ。ここから更に他の強化フォーム、更に強くなったソレに変化できるのが厄介と言えるだろう。

しかァし!!! それは我が最高傑作であるクモ女も同じ! いやそれ以上だッ!!!

あやつは“進化”などという不確かなものではなく、“成長”という力が埋め込まれておる! ただ息をするだけで上へ上へと伸び続ける真なる強者! それが怪人クモ女よ! たとえピレスジェットが更に強化されようとも、更にその上を行く!

さぁ我が人生の誉よ! 今こそ憎きかの怨敵を滅ぼして……。あ、いま忙しい? あ、そうなのか。うむ、邪魔して済まぬな。うん。ま、まぁ気が向いたときにな? 考えてくれるとな? 嬉し……。あ、いや。そ、そこを何とか……!

で、では今日の講義は以上! 次までにもう少し真面な頭脳を手に入れておくがいい! さらばだ!






感想、評価、お気に入り登録いつもありがとうございます。
あとデス博士が『クモ女への良い説得方法を考えた者には加点をしてやろう!!!』だっ♡
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