全自動怪人製造マシーンin異世界 作:あなたちゃん
「さてさて適性ちゃんの方は……。お、爬虫類向きか。なるほどなるほど。」
先程まで泣き叫んでいた彼女こと候補者。ソレを改造機のカプセルに入れた後、手元のデバイスを確認する。
既に検査が終わっていたようで、色々とデータが吐き出されていくが……。やはり全体的に低い。比較的爬虫類への適合率が高くて3割台、人間という同じ哺乳類ということで約2割といった感じだが、それ以外は軒並み0近くとなっている。類別による平均値なため、まだ彼女が怪人になれる素質無し、というわけではないのだが……。
(ハゼちゃんの時も、軒並み地球産モチーフとの相性が悪かった。まだまだサンプルが必要だけど、やっぱり地産地消を主軸に置いた方が良さそう。)
そもそもの話。我々が使用する改造人間の作成プロセスと言うのは、“ホモサピエンス”に対するものである。我らが人と呼ぶ者に対して、様々なモチーフ素材の良さを引き出し、埋め込むことで新たな生物として確立させる。それが改造人間だ。
しかしそも根本、この世界の人間が“ホモサピエンス”ではないのなら……。地球産のものが合致しにくいのもその要因として考えられるだろう。
まぁ作成プロセスがこの世界の人間に合致していないのであれば改造人間など作れないだろうし、『この世界の生物とかけ合わせれば成立しやすい』という理由にも説明が付かない。専門外故に触り部分しか知らない私では見えないところが色々と絡んでくるのだろう。
(もうちょっと勉強しても良かったのかね、っと。)
そんなことを考えながら、デバイスの爬虫類の部分をタッチ。するとざっと候補素材が浮かび上がってくる。ここから大まかなモチーフの傾向を掴み、この世界の生物へと当てはめていくことでより良い怪人を目指せるのだが……
「お! どうやらトカゲが良い感じみたいだね! アメリカドクトカゲが87%だって!」
「あめ……? なんだそれ。」
「アメリカって国にいる大きめの神経毒持ったトカゲだね。まぁそんな毒強くないし、怪人としての先例は顎の力を強化していく感じの奴だけど。」
「はぇ~。……アメリカってどこだ?」
彼女の問いかけで、そう言えばまだ“地球”についての説明を行っていなかったことを思い出す。
その能力というか、義務教育以前の学力のせいで、四則演算と読み書きを優先して習熟させているのだが……。ある程度時間に余裕が出れば社会科としてその辺りを伝える必要があるだろう。それにこれまでの聞き取りの結果、『クモ女様→私→ハゼちゃん』のラインが出来上がっているのは確認しているのだが、まだデスカンパニーの組織周りについての認識が甘いということが解っている。地球に戻る算段が付いていないため、知らなくてもそう問題は起きないだろうが……。こちらも時間を見つけその脳に叩き込んでおくべきだろう。
「ま、その辺りは追々ね。んでハゼちゃん。この辺りに毒持ったトカゲっぽい魔物? 動物? まぁそんな感じのいない?」
「いるぜ。というか何日か前にゴブリンが捕まえてなかったか?」
「あ、そうなの?」
そう聞いてみれば、良い返答。
まだまだ教育途中ではあるが、ハゼちゃんはあの低能なゴブリンとは違い自身でしっかりと考えることが出来る子だ。故に面倒な仕事、ゴブリンの管理などを一部任せているのだが、確かその中に『彼らが確保してきたモチーフ素材候補の整理』もあったはずだ。
私は私で基地の復旧作業などがあり、彼女に任せた分野は現状どのようになっているのか把握しきれていなかったのだが……。ヘルプの相談が無かったことや、細かい手順。仕分け方や、コールドスリープの仕方は絵にして壁に張り出しておいたはずだ。今話題に出しても彼女の顔色が一切変わらなかったことからも、問題なく行えているのだろう。
「ちょうどいいね! んじゃソレ持って来てもらおう。」
「りょ。んん……『おいクソゴブリンどもッ! 倉庫のトカゲもってこいッ!!!』」
お願いすれば、渡していた通信機のスイッチを入れ、大声で叫ぶ彼女。
更に続けて『少しでも遅れたら踏みつぶす』と言っているあたり、とても彼女らしいと言えるだろう。嗜虐的と言うか、見下しているというべきか。まぁ確実にゴブリンのことを『備品』以下と捉えているハゼちゃんのことだ、彼女が少しでも遅いと感じれば確実に処断するだろう。自身としてはどれだけ破壊してもその分自分で補充してくれれば問題はないのだが……。
(私がそう誘導したとはいえ、他のストレス発散方法を考えた方が良さそうですねぇ?)
現在こちらが確保している怪人素体は、その入手方法の都合上、全員がゴブリンの被害に合った女性たちである。
洗脳改造を施すゆえにそれまで溜め込んだ不平不満、恨みなどが暴発する可能性は高くないだろうが……。このまま怪人の数を増やしていくと、ゴブリンという備品の数が足りなくなる可能性がありそうだ。各々の性格の差はあるだろうが、確実にハゼちゃんのような子が増え、補充が追い付かなくなるのだ。
(“外部スカウト”にも限界あるだろうしねぇ。)
確かに彼らは愚かで本当に簡単な単純労働しか出来ないが、逆に言うと『ソレだけ』は出来るのだ。
最低限の休憩と食料だけで、ライン作業を延々と文句なしにやり続ける。常人では難しいことを喜んでしてくれるのは彼らの利点と言えるだろう。この基地の運営に必須とはまでは言わないが、いた方が便利。数を用意できれば潤滑な基地運営が可能な“重要資源”。いずれ必要がなくなる日も来るだろうが……、当分先の話だ。
(これから仲間が増えるから話し相手も増えて少し落ち着くだろうけど……。ゲームでも渡してみるか? 確か娯楽室にまだ無傷なのが残ってたはずだし。)
その怪人の担当医の趣味や、個人の性格に大きく影響を受けるのだが……。
怪人という存在は、基本的に我が強い傾向にある。それまで抑圧されていた感情などが、“急に手に入った力”や“組織と言う一般とは違う新たな世界”によって爆発してしまい、好き勝手してしまうような感じだ。
無論先達が拳で教育したり、洗脳改造のレベルを引き上げたりして抑えることも出来るのだが……。組織では対策として様々なストレス発散方法を実施していた。私がハゼちゃんに教えた『クローン無限増殖ゴブリンぶっ殺し祭』もその一つと言えるだろう。
しかし我ら『異世界第一支部』は物資不足の真っ最中。深刻とは言わないが、ピレスジェットの襲撃で受けた傷が回復しきっていない以上、そこまで大規模なことはできない。
(ハゼちゃんの性格的に荒っぽいのがいいだろうし、上手く行けばゲームで文字の勉強とかになるかもしれない。……うん、ちょっと前向きに考えようか。)
「ギャ! ギャギャギャ!!!」
「遅いッ!」
「ま、まぁまぁハゼちゃん。掃除も面倒ですから、ね?」
そんなことを考えていると、ようやく部屋の中に飛び込んでくるゴブリン。指示通りトカゲらしき生物が入った鉄籠を幾つか抱え、慌てながら走って来るが……。その姿が気に障ったのだろう。若干キレながら叫ぶハゼちゃん。
少し腰が下がり踏み込みの準備を始めていたので、静止するために粘体をその足に這わせておく。折角新入りが増えるのだ、最初に見るのがゴブリンの死体では気分も冷めてしまう事だろう。
「ちッ! 命拾いしたな、お前。」
「ギャギャギャ!!!」
「はいはい、煩いから悲鳴上げない。んじゃ、とりあえず突っ込んでチェックしてみましょうか。」
悲鳴のようなものを上げるゴブリンに黙るよう指示しながら、受け取った籠をマシンのカプセルの中に放り込む。
するとすぐに処置が始まり、少々トゲが多い初めて見るトカゲの数値が現れて来る。地球産のモチーフ素材、毒を持つトカゲ類の数値が高かったことからこれで上手く行くと思うのだが……。
「お! 187%! 一気に上がったねぇ!」
「……それ、すごいのか?」
「良い方だねぇ、ハゼちゃんには劣るけど、いい子に仕上がると思うよ? それに、毒ってことは、トリッキーな戦い方。正面戦闘以外のことも出来るってこと。……宿敵のこと思い出すからあんまり好きじゃないんだけどね? まぁアイツは正面切って殺しに来るし別物だけど。ほんとうざったい。」
「お、おう。」
私の雰囲気の変化。我らが怨敵であるピレスジェットが話題に出たせいで変化したソレに驚いたのだろう。何故かちょっと距離を取られてしまったが、まぁ無視して次の工程に移ることにする。
ハゼちゃんにもやったように、素体と素材の要素。ゲームで言うスキルのようなものを見比べ、不必要なものを抜く作業だ。
「さ、って! どんなのを持ってるんですかねぇ?」
〇素体要素
薄情
第六感
多感
〇素材要素(トカゲ)
麻痺毒
再生
自切
変温
「お、ハゼちゃんよりも多いね。やっぱ素の出力じゃなくて能力で勝負するタイプなのかな?」
「……読めねぇ。」
「……読み上げたほうがいい?」
「頼む。」
そんな彼女に読み聞かせて解説を入れてやりながら、思考を回す。
先ほど言ったようにハゼちゃんは素の力を全力で振るうタイプの性格、そして能力になっているが、新しく入るこの子は違う方向になりそうである。毒がその理由には成るのだが……、そもそもこのトカゲが持つ能力自体がかなり強力と言えるだろう。
何せこの“再生”と“自切”が良い。組織の他トカゲ系怪人を参考にすると、おそらくこの機能は尻尾だけにとどまらない。腕や足にダメージを受けたとしても即座に切り捨てることができ、瞬く間に元通りになることが出来る。ピレスジェットのような全身を吹き飛ばしてくる高火力持ちには少々分が悪いが、それでも強力な能力であることは変わらない。
それに此方で何かしらのサポート器具、マイクロドローンなどのアイテムを渡し使い方を覚えさせれば、『自切した部位を操る』ことも出来るだろう。
習熟は必要だが、大いに化ける可能性がある怪人。
(うん、イイ! 今後が楽しみな子だね! とりあえず邪魔な“薄情”と“変温”は抜くけど……。この第六感ってのも鍛えればいい感じに仕えそう。ハゼちゃんの違和感を感じ取れたわけだし、毒も使えるなら前線指揮官だけじゃなくて、拷問官とかも出来るかなぁ?)
まぁ本人の気質や好みもあるだろう故に、此方からは勧める事しか出来ないが。
そう考えながら、再度確認。
特に問題ないようなので名前の策定に入るのだが、既にホルンハーゼという先例がいるためそう悩む必要はない。この世界で生み出した怪人の名前は、元総統閣下がお好きだったドイツ語を使用することにしてある。つまり彼女の素体である、ドクトカゲ。でもトカゲはちょっと響きが良くないから連想してドラゴンを使用。
これをドイツ語に翻訳することで……。
「ギフトシュヴァイン! 通称ギフちゃん! これで改造開始だ!!!」
声を上げながらスイッチを入れると、急激に動き始める機械。
基地内を走る電気が次々と流れ込んでいき、強い発光。電気特有のスパークと破裂音が部屋の中に響き渡り、カプセル内部での処置が行われていく。素材から要素を取り抜き、素体に適応させ、埋め込んでいく。細胞一つ一つに適切な処置を施すことで人間を超えた新たな存在、改造人間へ。
そして、ゆっくりとソレが開かれていき……
「…………。」
「……うん?」
「あら、無口さんに仕上がっちゃいました?」
何故かそのまま、動かない彼女。
おそらく素体のトカゲ自体が、雌の方が大きくなる種族だったのだろう。先程までよりも身長が伸び、女性らしい凹凸もより大きくなったのが見て取れる。トカゲを魅せる太く長い尻尾、そして口元から伸びる青く小さな舌が“手術の成功”を表しているのだが……。何故かその場から動こうとしない。
何かしらの不具合が起きている。そう考え言葉を紡ごうとした瞬間……
「たいへん申し訳ございませんでしたッ!!!!!!!」
音速の土下座。
しかもかなりの精度。地面につける手の角度、声の勢い、そして全身を曝け出し全面に押し出す全力の謝意。私がこの領域に達したのは十代の前半……!
「……え、何かされました? ハゼちゃん?」
「あ~、改造前に暴れたこと言ってんじゃね?」
「その節は大変申し訳ございませんッ!!!」
「え、いや全然気にしてないよ? というかよくある事だし、気にしなくて大丈夫。というか自分から入って行ったハゼちゃんがアレっていうか、異常なとこまでありますから。人、信用し過ぎですよ?」
「なんで今オレ怒られんの……?」
そんな会話をしていると、彼女もこちらが怒っていないことを理解できたのだろう。どこか安心した表情を浮かべながら、ゆっくりと立ち上がる彼女。さぁ、折角名前をプレゼントしたのだ。その存在を確立するためにも、自分から名乗ってもらうことにしよう。
「……んん! えぇ、では名乗らせて頂くわ。我が名は『怪人ギフトシュヴァイン』。ご主人様? どうかこの身、上手く使ってくださいましね?」
「あ、そういうキャラで行くのね。」
「え!? だ、ダメでしたか……?」
「いやいいけど、そこで素出るの駄目じゃない? ハゼちゃんじゃないんだし。」
「だからなんでオレッ!?」
上品なお姉様っぽい感じ。顔の系統も似通っているし、問題はないだろう。
まぁ彼女なりの”筋”を通した結果、初手でソレが演技だということをばらしてしまったわけだが。やはり一定数“改造ハイ”になるのは仕方のないことかもしれない。私は改造モチーフがスライムと言う無機物だったせいで逆に感情が希薄になってしまい、その辺りのことがあまり解らないどころか、復元するまで非常に面倒だったのだが……。
自身としてはこれが黒歴史にならないことを祈るばかりである。うん。
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してくれなかった人は脳内に無数の黒歴史を叩き込みますね♡