全自動怪人製造マシーンin異世界 作:あなたちゃん
「ん~、異世界転移ってやつかぁ。」
そんなことを零しながら、若干廃墟と化しているこの支部の地面に寝転がる。
色々と調べてみたが、やはり今いるこの星は『地球』ではない。この部屋の外に出ずとも、データがこの結論を事実だと教えてくれる。不審に思い何度かやり直してみたが、どれも全く同じ結果に行きついてしまう。
どうやら自身は亜空間ではなく、全く違う世界にやってきてしまったようだ。
「どうしよ。」
無論、私も異世界には理解がある。
それほど詳しくはないがアニメや漫画といった娯楽作品からの知識もあるし、そもそもアカデミーでの専攻は『空間』だったのだ。その存在を認知していないわけがない。
組織の花形とも呼べる『怪人製作』分野に比べるといささか華やかさに欠ける分野であるが、自身の周辺に広がる世界そのものをゆがめ意のままに操るのがこの学問である。よくある『この建物、外から見た大きさと明らかに違わない?』をより効率的に、ローコストで生み出すために研究していると言えば解りやすいだろうか。
まぁ自身はそこから一歩すすみ、空間と空間の狭間に存在する完全なる無の場所。『亜空間』を有効活用する方法を探っていたのだが……
「さっきまでいた『地球』と『異世界』。この隙間に入り込むはずが、飛び越えちゃったって感じか。」
そう考えれば、学術的な興味がモリモリと湧いてくるというもの。
組織に身を捧げた人間ではあるが、同時に学問へ身を捧げた人間でもある。地球でも異世界からやってきた妖精なる特異生物を利用して変身するヒーローの存在はいたし、我が組織が確保して色々と研究したという記録は見たことがある。検体が少なかったためこちらから“アチラ”に飛ぶことは叶わなかったそうだが……。我らがいた地球以外にも様々な世界、所謂『並行世界』が存在するのは周知の事実だ。
どこの並行世界に飛んだのかは解らないが、記録上自身は初めての『地球から異世界への渡航者』である。とても興味深い状況だ。自身というサンプル含め、叶うならば気のすむまで延々と研究させて頂きたいところだが……。
「早く帰らないと不味いよね?」
自身は既に新生デスカンパニー。そのニューヨーク第三支部を任せられた支部長だ。
階級的には“幹部補佐”とそこまで責任のある役職ではないのだが……、支部を任された以上役目を果たさなければならない。しかも基地ごと転移しているので元々あった場所はもぬけの殻になっているだろうし、お預かりしていた部下は全員ピレスジェットに殺されてしまった。ニューヨークに存在する支部すべてが襲撃を受けていたらしいし……、ともかく新本部に勤める先輩方にお伝えする必要がある。
そして逃げ延びられた理由であるこの技術。『亜空間緊急脱出装置』を何としてでも形にしなければならない。なにせコレが実用化できればボタン一つでいつでもどこでも離脱できるようになるのだから。
生存率が段違いになる以上、私だけでなく組織に所属する他研究員と合同でことに当たるべきだ。
「でもコレ。もう一度起動して“同じ結果”になるとは思えないんだよなぁ。」
半ば事故のようなもので、異世界転移したのが今回の事例だ。
全く同じように成るのであれば今度は地球に飛ぶ、帰還することが出来るのだろうが……。
そもそも『亜空間』に飛ぶはずが失敗して『異世界』に飛ばされたのである。そしてそれ以外の実験結果が総じて爆発四散のことを考えると、次起動すれば即死の単なる自決用兵器となってしまうだろう。
……え、もしかして一人で装置完成させろって言ってる? まだ専用設備の搬入すら終わってなかったのに???
「と、とりあえずこの支部がどれだけ生き残ってるか。あと外がどうなってるのか調べよっか。うん。ほ、方針考えるのはその後で……」
そんな現実逃避を行いながら、立ち上がり部屋の外へと向かっていく。
支部長室を出てみれば、案の定ピレスジェットに破壊された怪人や戦闘員たちの亡骸が転がっているが……。とりあえず放置。怪人である自身の肉体であればすぐに処理できるだろうが、正直仲間の死体をあまり直視したくないのだ。いくら切り替えたといっても、いまだ“奴”の余韻が残ってしまっている。
故に死体や床や壁に叩き込まれた真っ赤なペンキから目を逸らし、向かうのは資材倉庫。カードキーで鍵を開け、少々漁ってみれば出てくる一つの段ボール箱。
「これこれ。着任する前に備品は確認してたんだよねぇ。」
取り出したるはミクロン単位の小さな金属粒たち。
そう! 我らがデスカンパニーが誇る技術力の結晶。マイクロドローンだ!
名前通りマイクロサイズで空中を飛翔し、風力及び太陽光で半永続的に稼働可能な極小ドローン。もちろん飛翔するだけでなく映像や音声の転送。必要ならば対象の体内に入り込み悪さすることだってできる優れものである。
「まだ外がどんな状況か解らないからね。……ピレスジェットが一緒に飛んできてる可能性だってあるし。うん。」
無いとは思いたいが、そう言い切れることはできない。
確かに今回の転移では奴以外の全てをそのまま切り取って転移することが出来たわけだが、この程度で安心など出来るわけがない。何せ我らが怨敵である彼奴は、文字通り不可能を可能にしてきた相手だ。油断できるわけがないだろう。
本部が爆破されてしまったせいで詳しい情報は解らないのだが……、ピレスジェットにやられた大幹部様の中には、私のように空間を操る能力者の方がいらっしゃったり、時間を止めることが出来るお方もいたという。真偽は不明だが、そのお二方が協力し奴の時間を止め亜空間に放り投げたことがあるらしいのだが……。
「私の目の前に現れたことからまぁ……。なんか脱出してきてるんだよね、うん。」
まさに“そのとき不思議なことが起こった!”という奴なのだろう。
そもそも、我ら新生デスカンパニーの存在はかなり高いレベルで防諜されていたはずである。そして存在がバレたとしても、基地の場所は厳重に秘していたはず。どれだけ奴らが探し求めようとも作戦実行役の怪人が見つかる程度。出来る限りの対策を重ね、被害が広がらないよう努めていたはずだ。
なのにこちらがその予兆を掴めぬままに発見され、撃破されそうになったのだ。
もう奴は何でもありの化け物として考えなければならない。
「水中で核と一緒に爆破したのに帰ってきたっていう話もあるくらいだし……。どうやったら死ぬんだアイツ?」
まぁそんな恐ろしいことを考えながら、マイクロドローンを起動。
とりあえず基地にあった半数。50万程を起動すると、砂のように箱の中で集まっていた金属粒たちが動き出し、徐々に空気に溶けていく。怪人体として強化された自身の視力でも視認が難しい存在だ。外部に何がいるか解らないが、そう見つかることはないだろう。
手元のデバイスと同期し、編集された映像が流れ始めているのを確認。そのまま通気口を通りながら外へと動かしてみるが……。
「……成程。土ということは地中か。」
画面に映し出される、比較的地球のものと大差ない土。
成分分析などは出来ないため推測には成るが、現在いる惑星は地球とあまり環境の差が無い場所。大陸型惑星と考えられるだろう。そして基地の頂上目掛けて動かしていたドローンがそれを発見した以上、この基地は地中。もしくは土によって覆い隠されていると見て取れる。
「うんやっぱ密度的に地中だね。ならさっさと地表にでちゃおう。」
ピレスジェットに真っ先に突撃し蒸発した同期のモグラ男。彼ならば地質学的見解からこの情報だけで様々な情報を伝えてくれたのだろうな、なんて考えながらデバイスを操作。幾つかのドローンで螺旋を描くことで、即席のドリルを作り上げる。
後は回転数を跳ね上げ、どんどんと掘削開始。削れていく土を数分程眺めていると……、ようやく明度が上がって来る。
地表だ。
「さ、ご対面~。」
ガコっという音声と共に、貫かれる大地。一気に飛び出したせいかカメラの調整があわず、一瞬デバイスが真っ白に染まるが……、すぐに復帰。ゆっくりとだが未知の世界が映し出されていく。
「お、よくある平原。気候は……、温帯かな? うんうん、過ごしやすくていいね。んじゃドローンちゃんたち、本領発揮しちゃえ!」
そう指示を飛ばすと、開けられた小さな穴からどんどんと外に飛び出してくドローンたち。数にして50万、大都市相手ならば少々心もとない数ではあるが、現状の未知なる世界の探索という点で考えればこれほど素晴らしいものはない。
現住生物に発見される可能性が極めて低く、映像と音声。そのほか大まかではあるが各種データまで読み取ることが出来る。あとはこっちのデバイスでその情報を収集、再構築していけば……。
「きたきたきた! ……おん?」
どんどんと上がって来るデータたち。手元のデバイスだけでは捌ききれないため、デバイスの外にスワイプ、ホログラム化してそのすべてに目を通していくが……。
明らかに見慣れぬ、存在。
いやある意味“見慣れた”存在が、一つ。
「ゴブリンじゃん。」
緑色の身体を持ち、醜い顔と長い耳と鼻。
知性を感じられる要素など一切なく、毛皮を巻いただけの貧弱な文明力。
けれどその手には、不釣り合いな“長剣”。
まるでもっと背丈の高い存在、『人間』が生み出したかのような。彼らよりもより高度な文明を持ち、私達地球文明と比べ格段に低い技術力しか持たない存在が作り上げた品を、持っている。
「あは! あはは! あははははは!!!」
そういう、そういう世界ね! あぁ成る程、すごい!
空想が本当になるなんて!
こんなに面白いことはそうそうない! 面白過ぎるっ!
「……待って、じゃあつまり!?」
すぐにデバイスから手を離し、向かうのは倉庫の奥深く。
本来ならば必要のない装置。何かあった時の為に配備されはするが、各基地には専門の執刀チームがいるため必要のない存在。けれど今の自身。この身以外の同胞がいないこの状況に置いて、専攻が違うゆえに独力では不可能なソレを全て解決出来てしまう希望。
『全自動怪人製造装置』
人間とモチーフになる“何か”を投入することで誰でも簡単に怪人を生み出してしまえる、我らがデスカンパニーの誇る技術力の結晶。
「ゴブリンがいるってことは、それ以外の“魔物”もいるってことだよね! そしてその大本である“人間”もいる!」
まだ不確定だが、あの長剣を見る限りどこまで高度で合ってもその技術力は中世の域を出ないッ! そしてこちらは単身ながら21世紀! しかも悪の秘密結社で、大天才デス博士のおかげで技術力はもっと先にある! 圧倒できないわけがない! カモだ! カモがネキを背負ってる! 素材が集め放題だなんて! 怪人作り放題だなんて! ここって天国!? 天国だよねぇ!!!
「……! そうだ世界! この世界を手土産に!!!」
我らデスカンパニーはピレスジェットや他の新興組織によって徐々にその支配領域を失ってしまっている。つまり手に入る資源の数も徐々に減っているのだ。物資だけでなく、怪人に必要な“人間”という素材も、だ。
けれどこの世界を手中に収め“牧場”と化してしまえば……。我らデスカンパニーは真に不滅の存在になる! どれだけ地球で追い詰められようとも、ここさえ確保してしまえば何度でも蘇ることが出来るっ!
そして何より、こんな面白い世界……。
我が主である怪人クモ女様が治めるにふさわしいッ!!!
「ふ、ふへへ! ここ丸ごと捧げたらどんなお言葉を頂けるんだろ! も、もしかしたらすぐに幹部。いや新しい大幹部に任命して頂けるってことも! そ、そしたらずっとあのお方の傍にいられる? いられるよね???」
思わず取り出してしまう、懐に大事にしまっていた“かのお方”のブロマイド。
不敬にも構成員の誰かがクモ女様の目を盗んで撮影したもの。そのため彩度はよくなく若干ブレてしまっているが、そのお顔ははっきりと見える。撮影者は不敬ゆえに処刑されたそうだが、“この写真には”罪が無い。
アラクネを思わせる下半身を巨大な蜘蛛としたお姿。全身の細胞一つ一つが狂気的なほどに整えられており、写真越しにでもその強烈な覇気を感じられる。
たった一撃で数都市を纏めて蒸発させることが出来るという驚異的なお力。そして既に鬼籍に入ってしまわれたが、ピレスジェットにやられるその瞬間に『クモ女はお前を上回るどころか圧倒している! はーはっはっ!』と笑いながら爆散為されたというデス博士の証言。
まさに我らの頂点に立つお方!
「そ、そうと決まれば早速動き出さなきゃ! 今日からここはニューヨーク第三支部改め、『異世界第一支部』だ! 人沢山集めて沢山怪人にして、この世界をデスカンパニーに染める!!!」
クモ女様に捧げて褒めて貰うためにも! 頑張るぞー!!!!!
〇出張拡大! ゴブリンでも解る! ネオ・デス博士の怪人講座!(怪人クモ女編)
はーはっはっ! ごきげんよう諸君! そして久方ぶりであるな受講生たちよ! あの憎き“ピレスジェット”に組織を破壊されてしまったが、この私の類まれなる頭脳によって復活を遂げたデス博士! いや、ネオ・デス博士である! 今日からゴブリンにも等しい貴様らの頭脳でも理解できるよう、“懇切丁寧”な説明をしてやろう!
さて初回はやはり……、我が最高傑作から行こう! 基本スペックだ!
■身長(人間形態):190.5cm
■体高(怪人形態):240.8㎝
■体重:300.0kg
■パンチ力:120.1t
■キック力:275.3t
■ジャンプ力:321.4m(ひと跳び)
■走力:0.2秒(100m)
★必殺技:スパイラルエンド
うむうむ、やはりいつ見ても素晴らしい数値であるな! そして何より、これだけではない! 我が最高傑作であるクモ女だが、その設計の真髄は『永久的に成長し続ける』ものである! 外部から手に入れた情報を適宜自身の中に組み込むことが出来るその処理能力、得た力をすぐに扱うことの出来る適応能力。そして永遠に生き続け成長し続けるという生存能力。そのすべてを兼ね備えたのがこの存在なのだ。
無論、作成当時から今日この日まで“ピレスジェットのスペックを圧倒”しておる。まさに最高傑作であろう?
ちなみにこの数値は“基本スペック”でしかない。既にクモ女は幾つか強化フォームを手に入れているし、そもそもの計測は完成当時のことだ。しかも当時の総統が色々とややこしかった故な、少々低めに記載している。今はもっと強くなっているだろう。
まぁ本人があまり力を使う気が無いというか、性質が何故か善寄りなのだが……。その辺りは以前の受講生であれば知っているだろう。話が分からず、同時に気に成る者は過去のアーカイブを確認するといい! 『怪人クモ女』で調べてると出てくるはずだぞ! あ、それとあの講義の再開は予定しているが、明確な日程は決まっておらん。こう、大学側とのアレが色々あってな? 気長に待ってくれるとありがたいぞ、うん。
……にしてもまぁ、物語の世界が実際にあったとはな。私も異世界の存在は知っていたが、このようなタイプがあるとは思いもよらなんだ。なろう風ヨーロッパ、ナーロッパと言う奴か? 私はあまり興味は無いが、魔物モチーフの怪人も面白くはあるだろう。転移したコヤツがあまり良い怪人ではないのが不安要素だが……、まぁよい! せいぜい我が最高傑作の為に貢ぐが良い! 我は否定せんぞ! 我は!
ではな諸君! 次の講義まではもう少し真面な頭脳を手に入れておくがいい! さらばだ!
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してくれなかった人は亜空間放流しますね♡