全自動怪人製造マシーンin異世界 作:あなたちゃん
とまぁそんなわけで粛々と“勧誘”を行っているわけだが……。
「何が『無理しなくていいですからね、大変なことがあったばかりなんですから』だ。虫唾が走る。我ながらよくあんな気持ち悪い声がだせるものだよね。」
「……ギャ?」
うん、正義っぽい振りするのしんどいよね、って話。
いや正義ではないのだが、彼女たちに信頼される様に優しい顔を張り付けてそういうこと言ってるとね? 自然と正義陣営っぽい感じになるんだよ。定期的に外に出たり、半ば趣味な研究して発散してるけど普通にイヤなのよ。私悪の存在ぞ?
「……はぁ、まぁいい。後ゴブリン? 私を気遣うのは良いが仕事してね?」
「ギャ!」
思考を取りまとめ備品に指示を出しながら、得物片手に走り回るゴブリンに視線を移す。
現在私は、同志候補の彼女達から離れ再度フィールドワークに赴いている。目的は2つあり、1つは更なる備品確保。もう1つは“素材”の入手だ。
私が支部長を任された『ニューヨーク第三支部』だが、本来は数百人規模で運用される場所だ。情勢悪化による人手不足、これに対応するため幾つか機械化が行われ何とか100人程度でも回せるようにしていたそうなのだが……、それは基地の勝手を知った構成員たちによるもの。既に鬼籍に入ってしまった者たちであるからこそ、回せていたのだ。
(備品が20程度増えたとはいえ、全然足りないんだよねぇ。)
なんとかマニュアルは破壊された残骸の中から発掘することが出来たし、確認した結果『全自動怪人製造装置』を始めとした幾つかの機器類も動かせる状態であることが解っている。また壊れたものも時間をかけて修理すれば幾つか元通りにすることも可能だろう。
しかし、知能が足りず単純労働しか出来ないのがゴブリンである。
機器の修理など不可能だし、少しやらせてみたが使用すら危うかった。薬品を無から生成して調合するマシンを触らせてみたのだが……。
「誤操作とはいえなんで初手で王水製作して頭から被ろうとするんだろうね? 死ぬぞ?」
「ギャ?」
「しかもソレ忘れてるしさ……。」
その他にも色々やらせてみたのだが、ことごとく失敗。
仕方なく幾つかの基地機能の復旧を諦め、扱いが難しい作業や重要度の高い機器の復旧は私が担当し、他の単純作業。もしくは細分化して“単純作業にした”ものを彼らに任せる方針で動くことにした。彼女達への“勧誘”が成功すればかなり楽になるはずなので、それまでの辛抱だ。
しかし食料や飲料水の確保など、我慢ではどうしようもないものがある。
故に方針通り作業を細分化しゴブリンに叩き込むことで何とかしようとしたのだが……。やはり20では数が足りな過ぎた。更に作業を単純化したせいでより人手が必要になってしまっている。
そのため更なる人員補強は急務。新たなゴブリンをリクルートしに来た、というわけだ。
(ゴブリンたちの食料も、素体候補3人の食事も同じ工場で作るわけだしね。ラインが本格稼働すればまだ養えるはずだし、とりあえず100は確保したい。)
まぁそんなことを考えながら、外に出てきたわけだ。
最初と同じようにゴブリンの勧誘のため、私自ら足を運んでもよかったのだが……。それだと効率が悪い。故に使用するのは、先日から使用しているマイクロドローン。あの後も情報収集のため周辺の地図の作成を行わせていたのだが、その過程に小規模ながら他のゴブリンの存在を確認している。
後はその拠点に洗脳済みゴブリンを派遣し。仲間だと勘違いした野良ゴブリンたちを此方に連れてきてもらい、洗脳を行う。
「ちょっと時間はかかるけど、洗脳手術はすぐ終わる。私はここで待ってるだけでいいし、楽出来て良いね。それに……」
「ギャ!」
「お、良いの取って来たね!」
そしてもう一つの目的が、“素材”確保。
改造人間のモチーフとなるべき素材の入手だ。
(失った分補充しとかないと。)
実はあれから色々基地内を調べていたのだが、保管されていたはずの“地球の素材”の大半が破損していたのだ。ほぼ全滅と言ってもいいだろう。
そもそも我らデスカンパニーでは、十全に怪人を製造できるよう一定数の素材を確保している。怪人となるにはそのモチーフの存在への『適正』が必要で、個々人によって差があるのだ。戦力を確保するため急遽攫ってきた存在を改造することもありうるため、色々とカバーできるよう備える必要がある、というわけだ。
故に多種多様な動植物、特に虫類をメインとしたその多くを生きたまま冷凍保存し、基地と特殊倉庫に保管してあったのだが……。
先のピレスジェット襲撃により冷凍設備が破損。気が付いたときには遅く、そのほとんどが生命活動を停止してしまっていた。無論幾つか確保出来た素材もあり、かなり強力な素材が残っていたのは幸いなのだが……。まぁ数が減ったのは事実なのだ。失ったものを取り戻すために補給を行う必要がある。
それに、この世界独自の怪人を作るためにも“調査”はいずれ行うつもりだった。いい機会だと思うことにして、新しい発見を楽しむことにしよう。
ちょうど目の前に面白い存在がいることだし、ね?
「角アリのうさぎ、“ホーンラビット”ってところかな? 脚力を生かして接近し、角で貫く。うんうん、良い怪人になりそうじゃん!」
「ギャギャ!」
私が与えた鉄製の小型檻、それに入れてゴブリンが持ってきた物体を眺めながら彼を誉める。
同族をスカウトさせに行ったゴブリン以外には素材の入手を任せていたのだが……、流石に素手では難しいだろうと思い、色々と装備を持たせている。つい先日復旧させた3Dプリンターで作った虫取り網や、倉庫で埃をかぶっていたこの鉄檻などがそうだ。
「……うん。特にケガしてないみたいだし、角もちゃんと残ってる。十分素材になりそうだね。んじゃご褒美にブロッククッキーを……。おん? 何して。あ~、うん。食べるんじゃなくてね? 取っておくの。解る?」
「……ギャ?」
犬にあげるオヤツのノリでクッキー、基地の食品製造ラインで作り始めたソレを渡そうとして見れば、何故か木の枝を集め始めている彼。
身振り手振りで何とか聞き出してみれば、おそらく『食べないのか』のような問いかけ。……こいつは私の説明を聞いていなかったのだろうか?
作業に従事しているゴブリンたちには既に説明しているが、改造手術に使用するモチーフ素材は生きたまま、五体満足であることが望ましいとされている。詳しい原理は専門が違うため解らないが、出力が明確に変わってくるとのことだ。故に確保する素材には傷をつけぬよう装備を渡し、理由も説明していたのだが……。
「ギャギャギャ」
「……あ~、うん。火を起こしたいんだったらもういいよ、うん。クッキー上げるからそれでも焼きな? 味変わらないと思うけど。」
「ギャ!」
そう言いながらブロッククッキーを手渡せば、大喜びしながらそれを口にする彼。
……もう何度も他の個体と同様のやり取りを繰り返したため特に言うことはないが、『お前さっきまでウサギの代わりにクッキー焼くって言ってなかったか?』と突っ込みたくて仕方がない。まぁデスカンパニー特製の味にもこだわったクッキー、軍用レーションみたいなものだからすぐに食べたくなるほど美味しいのは解るのだが。
これまでのやり取りを見て解るように、やはりゴブリンのおつむは信用できない存在である。洗脳改造によってこちらを完全な上位者と捉え、同時に命令を聞きそれを実行することに脳内快楽物質が放出されているのは見て取れるため、離反の可能性が無いのは良いことだが……。あまりにもおつむが弱い。
同数の犬であれば即座に交換したくなるありさまだ。だってあっちの方がモフモフでかわいいし。……犬飼いたいな。
(んんッ! 脱線しちゃったね。)
だがかといって、すぐに切り捨てられるような存在ではないのがゴブリンだ。
最初の“リクルート”を以て20近い数を確保した備品の彼らではあるが、実は一つだけ“整備不良”で廃棄した存在がある。そう、あの洞窟の前で欠伸をし門番の仕事をまともに熟していなかったゴブリンである。
正直に言えばどれでも良かったのだが……。その生態を調査するため一度開き、色々と調べさせてもらったのだ。
(いくつかの調査機器に入れて分かったこともあるが……。)
まず彼らの特徴として、非常に高い繁殖力を持っていることが解っている。地球における創作の内容からある程度理解はしていたが、実際に解剖して検査した結果、裏取りが出来た形だ。遺伝子的に雄しかいない不気味な生物ではあるが、余所から雌を奪って来ることで種族を維持する存在。
そしてこの世界でも“弱い”存在であるからこそ多産。母体に多くの負担を掛けるが、同時に複数の子を孕ませ短期間で成熟させることが推察出来る。
(ここで地球の理論が通用するかは不明だけど、普通に考えれば『死ぬ可能性の高い弱者』ほど多く子孫を残そうとする。自然界、特に虫を見ればそれは明らかだよね。)
早い話、数を増やしやすい種族なのだ。単純労働しか出来ないお馬鹿な存在ではあるが、マンパワーの不足している此方にとってはありがたい存在と言えるだろう。現状手元の人員を母体にする計画は一切無いが……。増えやすいということは、そこらを探せば幾らでも見つかる、ということになる。
そして数がいるところには、現在確保している3人の素体候補。それと同様の境遇の人間がいることになる。どんな生物も母がいなければ数を増やせぬ以上、少なくともグループに1人はいるはずだ。
(これも良い感じに『同意』してもらって、怪人にする。うんうん、戦力増強としてちょうどいい生物だね、ゴブリンって!)
まだ基地施設の稼働が安定しておらず、怪人化への同意の成功例が無いため大きく数を増やすことは出来ないが……。ちょうどいい手駒候補であることは間違いない。
これでもう少し強ければ戦闘員としての雇用も考えたかもしれないが……。弱すぎるためそれもなし。まぁ今後は良き備品として頑張って行ってもらうことにしよう。
「さぁて、次は……。あ、君も持ってきたの。何を……。いやほんとに何持ってきたの? 鹿の足? なんで足だけ。……狩った? いや狩るな馬鹿っ! 私は生きたまま連れてこいって言ってんの!」
「ギャ?」
「そうだっけ、じゃないッ! ……はぁあの三人マジで早くこっち側に入れよ。んでゴブリンの指揮まかせる。絶対そうする。」
〇出張拡大! ゴブリンでも解る! ネオ・デス博士の怪人講座!(ゴブリン編)
はーはっはっ! ごきげんよう諸君! ネオ・デス博士である! 今日もゴブリンに等しい貴様らでも理解できるよう、“懇切丁寧”に講義を務めさせて頂こう! さて今回の議題であるが……。おぉ、この講義名にもなっているゴブリンの解説か。怪人ではないため我が専門ではないが……。まぁいいだろう!
では、基本スペックだ!
■身長:112.0cm
■体重:18.0kg
■パンチ力:0.1t
■キック力:0.2t
■ジャンプ力:0.2m(ひと跳び)
■走力:15.0秒(100m)
★必殺技:なし
……よわ。
っと済まぬ! 解説の途中であったな。うむうむ。さてはて、何から言葉にしようか……。まず創作物によく出てくるメジャーなやられ役魔物として恥じぬスペックをしているだろう。成人男性程度の力であり数も多いため一般人では相手をするのが難しいが、一定の強さがあればどうとでも成る相手。主人公が圧倒するにふさわしいちょうどいい敵、と言う奴だな。
後はそうだな、人型の哺乳類? に近しい生態ながら成熟のスピードが速く増えやすいことか? 弱者故の生存戦略であり、敢えて種族を雄だけに固定し他種族の雌に負担を強いることでゴブリンという種族の生存力、競争力を高めていると思うのだが……。いや普通に駄目ではないか? 女性攫って孕ませるとか。うむ、辞めた方が良いと思うぞ。本当に。倫理的にアウトだ。
それとだが、私が思っていたよりも頭の出来が悪く少々申し訳なくなって来たな。流石に諸君をこれと同等にするのは申し訳ないだろう。次回からは講義名と前口上の変更をさせてもらうとしよう。……うむ、こんな所か。
ではな諸君! 次の講義まではもう少し真面な頭脳を手に入れておくがいい! さらばだ!
感想、評価、お気に入り登録いつもありがとうございます。
してくれなかった人はピレスジェットにデスカンパニー構成員として通報しときますね♡