全自動怪人製造マシーンin異世界   作:あなたちゃん

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7:最初の怪人①

 

さて、そんな細々とした作業を続けたわけだが……。

 

 

「あ、あの。アオさん。少し時間いいですか?」

 

 

深刻な顔で話しかけてくる“候補”の一人。

 

自身としては『ようやくか』と零しそうなほどに待たされている。故についため息をつきそうになるのだが……。まだ“笑う”時ではない。

 

怖気が走る“優しい正義”のような笑みを張り付けながら、それに応える。

 

 

「えぇ勿論です。……何かお悩みのようですね。」

 

「忙しそうなのにごめんなさい。」

 

「いえいえ、お気になさらず。あぁそうです。折角ですからお茶でも入れて“二人”でゆっくり話しましょうか。」

 

 

そう笑いかけながら、動かしていた手を止め彼女と共に“別室”へと移る。

 

現在私は、ゆっくりとだが確実に基地機能の復旧に勤めている。未だゴブリン以外の人材、複雑な頭脳労働を任せられる相手がいないため、鬼籍に入り霊安室で眠る先達たちが欠伸をしてしまうような速度だが……、着実に進んではいるのだ。

 

そもそもの話、この基地はかなり危険な状況だった。

 

なにせピレスジェットに襲撃され人員だけでなく多数の設備にも被害が発生している。発電施設である小型核融合炉も止まって非常電源に切り替わっていたし、食料及び飲料水の生産ラインも大半が破壊されていた。

 

 

(全く、修理は専門じゃないんですけどねぇ?)

 

 

新たな世界と、新たな生命体。

 

それらをクモ女様に捧げられる喜びから少々突っ走ってしまっていたが、そもそも自身の役職は支部長だ。転移したことで名称をニューヨーク第三支部から異世界第一支部に勝手に変更したとしても、やることは変わらない。

 

ということでマニュアル片手に残骸とにらめっこし、一部修復を諦めながら何とか形に。そして破損した部位を埋める様にリクルートしたゴブリンたちに仕事を任せ、彼らの頭でも理解できるような指示を出していく。

 

 

(お陰様で発電施設は復旧完了。食料品の生産ラインは……。念入りに洗浄した後全身アルコール消毒したゴブリンたちがせっせと働いてくれている。)

 

 

お陰様で、我らが基地は“物資不足による自滅”という結末を排除することに至った。もう二度と『いつまで電気持つんだろ』や『ゴブリンどもが喰うせいで食料の備蓄が……!』や『再生水で補えはするけど、これ実質人の排泄……』ということを考えずに済むようになった。

 

大変素晴らしいことである。

 

そしてソレに付随して、更に素晴らしいことが。

 

 

(作業がひと段落して時間が空いたってことは“候補たち”との交流時間を増やせるということ。ふふ、“正義”っぽい振る舞いをしたかいがありましたねぇ?)

 

 

現在この基地で確保している素体だが、最初期に確保した3人以外の入手にも成功している。ゴブリンが確保していたものをそのまま運ばせただけの存在であるため、少々状態が悪いものだったり、既に息をしていないものもあったのだが……。

 

合わせて9体。確かに少ないが、私一人で面倒を見るとなればちょうどいい具合の数だろう。

 

 

(数だけ見れば20近くは合ったけど、残りはちょっとねぇ? 死んだものを改造することは出来ないし、欠損も酷い以上霊安室送りしか出来ない。……私の部下だった先輩方は地球に埋葬する予定だったけど、こっちの人間はどうしたらいいのかな?)

 

 

いまだ発見できていないこの世界独自の文明。それを調査する過程で見ておこうと考えながら、より思考を深めていく。

 

先程述べたように、私はこの9体の“素体候補”に対して多くの時間をさける様に成った。そして何をしていたのかと言うと……。以前予定していたように“罪悪感”を煽る作業だ。

 

 

(衣食住を此方で用意し、何も仕事をさせない。そして同時に私だけが“何か”に苦労しているように見せる。)

 

 

そして時折見せる、“怪人化”という内容。

 

最初に確保した3体だけには成るが、既に私が『人ではない何か』という情報は開示している。そしてそれが“カイジン”だということも。どうやら彼女たちの持つ語彙には該当する者が無いようで、少々受け入れるのに時間がかかったようだが……。想定通り、特に問題は生じていない。

 

まぁカミングアウトしたといっても、怪人スライム女としての本性を現したのではなく、常人では明らかにおかしい身体能力を開示した程度。そしてすぐに“曇った”ような顔を張り付けておけば適当にあちらが納得してくれた。

 

 

(ストレスを与えるために娯楽とかは与えてないんだけど、それで壊れるのは困る。ということで最初の3人は途中から同室にしたんだけど……。会話も行動も全部筒抜けとは思わないよねぇ?)

 

 

色々と話してみた結果、やはり彼女たちは中世ヨーロッパに近しい文明の人間だった。

 

何度か“魔法”と聞き取れる単語を話していたのが気がかりだったが……。少なくともあの部屋に監視カメラやマイクが仕掛けられているとは欠片も思わなかったのだろう。半ば軟禁状態であった部屋の中での出来事は全て把握済みである。

 

それを纏めた結果……。

 

彼女達から見た“この身”は、どうやら事故によって人を超えた力を手に入れてしまった被害者のような存在だという。1人は『私達を実験台にするんじゃ』と聡いことを言っていた者もいたが、残りの2人に撤回させられている。何度も家に帰る手伝いをするように言っていたのが功を期したのだろう。

 

 

(外では“私”しか出来ない何らかの作業が行われており、それが終わるまで帰れない。この部屋に窓が無いことから地下に埋まっている、もしくは何らかの魔物に襲われている。そしてこの“何等か”の作業が出来るのは“カイジン”のみということ。)

 

 

他にも色々話し合っていたが、纏めるとこんな感じなのだろう。

 

随分と都合のいい様に勘違いしてくれたものだが……。私としては申し分ない結果だ。すぐに彼女達の会話から人物像とカバーストーリーを再構築し、決して明言しないようにしながらも、彼女たちの推論が“事実”であることを補強するように存分に振舞ってやった。

 

まぁそうして出来上がったのが……。

 

どこか覚悟を決めた顔を浮かべる、この哀れな“検体”というわけだ。

 

 

「あ、あの。アオさん。ここは?」

 

「私の自室です。特に何もない場所なのですが……、ゆっくり話すのにはちょうどいいでしょう? さ、入ってください。」

 

 

そんなことを考えながら、案内するのは何もない部屋。

 

自身の部屋と彼女には説明したが、勿論そんなわけはない。誰にも割り振られていなかった空室に案内しただけ。

 

私の部屋は少々散らかっている上に、支部長という立場から少々豪華なものになってしまっている。彼女達を病室という檻に閉じ込めている私がそんな場所に住んでいると知れば、これまで築き上げて来たものが一瞬に崩れ落ちてしまうだろう。

 

まぁ単に色々散らかり過ぎている上に、基地内のマニュアルなどが大量に転がっているので“まだ”身内ではない彼女に見せられないというのもあるのだが。

 

 

(部屋に帰らず“何かしらの作業”をしている。この何もない部屋はそういう演出にはちょうどいいですからねぇ?)

 

 

故に基地に勤める構成員たちに割り振られる一室、家具などが最初からそろっている部屋に通したわけだ。それにここには基本、新入りへの選別としてアメニティが幾つか置いてある。紅茶のパックと茶菓子はそれを使えば十分だろう。

 

 

「口に合わないかもしれませんが。」

 

「……ありがとうございます。」

 

 

まるで使い慣れているように用意し彼女に手渡してみれば、お礼の言葉。

 

しかしながら口に付けようとはしない。

 

……面倒ですけど待たないとですねぇ?

 

 

「……私、冒険者だったんです。」

 

「…………えぇ、以前お聞きしました。」

 

「昔から周りの男の子達よりも強くて、何でもできるって思って。私も物語の人間みたいに冒険者になろうって村を飛び出したんです。」

 

 

そこから始まる、彼女の半生。

 

正直欠片も興味がないためほぼ聞き飛ばしていくが、顔だけは真面目に整え適宜頷いておく。どうせ無謀な挑戦に失敗し、最後に何もかも失うような失敗をしたというものでしょう。この異世界ではどうか知りませんが、地球ではありふれ過ぎた事柄だ。

 

まぁ我らデスカンパニーもピレスジェットという埒外の存在に吹き飛ばされたわけだが、彼女と我らでは“差”があるのだ。彼女は仕える主人も組織も持たず、同時にあのゴブリンたちに捕まり“抵抗を諦めた”。発見時に精神が死に掛けていたのがソレを表している。放置していればそのまま死んでいたであろう状況から“あの後再起するつもりだった”という言い訳は通用しない。

 

 

「……それで、失敗しちゃって。……あとはアオさんの思ってる通りです。ゴブリンに捕まって、それで……。」

 

「辛いのであれば口にしなくてもいいのですよ。」

 

「すいません。……でも、これで終わりたくないんです。」

 

 

けれど……、そこに立ち上がる意思があるのであれば。

 

 

「もっと、力が欲しい。アオさんみたいな強い力が。もう何もできないのは、もう奪われるだけなのは。嫌なんです。それに、アオさんがずっとしんどそうにしてるのに何もできないのが、辛くて……。」

 

 

我々は、歓迎しよう。

 

 

「……一度進めば引き返せぬ道です。元に戻りたいと願う事すらできなくなるでしょう。常人であればやめておけとその身を縛ってでも止める方法です。それでも、貴方は力を欲するのですか?」

 

「はい。私にはその“カイジン”が何なのかは解りません。でもそれ以上にこのままでいるのが嫌なんです。……それに、ゴブリンたちに捕まった時点で私達は死んだようなものでした。そこから助けてもらったのなら……。アオさんの為に命くらい使わせてください。」

 

 

強い意思を持った、彼女の目。

 

思わずといった形で顔を覆い、空を見上げますが……。

 

隠す口元に浮かべるのは、強い笑み。

 

 

「…………その覚悟を、賞賛いたしましょう。」

 

 

そう言いながらゆっくりと立ち上がり、彼女の手を引きながら基地の奥深くへと進め始める。

 

なんと素晴らしい啖呵だろう。彼女をあの機械の中に放り込むまでこの演技を止めることはできないが、いつもの自身であればあのシーンを何度でも繰り返し再生していたことだろう。なにせあの部屋で起きた事項は彼女たちの病室同様、撮影されている。いわばその啖呵が契約書替わり。

 

 

(えぇ、本当に素晴らしい『合意』が取れました。)

 

 

これで彼女を改造してもピレスジェットは来ることはないだろう。

 

彼女は自分の意思で力を求めたのだ。

 

正義の味方などお呼びではない。

 

確かに彼女の本意は違うのかもしれないが……、問題などあるわけがない。新しい自身として目覚めた時にはもう彼女は我らの仲間。記憶は連続するが既に真なる同志となっている。文句を言う気すら起きないだろうし、むしろ喜んでくれることだろう。何せ我らがデスカンパニーは構成員に対して酷く優しい組織なのだから。

 

 

(実際業界じゃぁ福利厚生の満足度がトップ……。っと、着いたね。)

 

 

過去の栄光を思い出していると、ようやくたどり着いた処置室。

 

ドア自体に自身の手を当て認証を終わらせると、ゆっくりと扉が開いて行く。

 

そして薄暗く何もない部屋の中央に鎮座するのが……

 

この基地の希望にして、私の生命線。

 

 

『全自動怪人製造機』

 

 

「貴女にはあの機械の中に入ってもらいます。えぇえぇ、何も心配はありません。ほんの少し眠るだけ。痛みも辛いことも一切なし。ほんの少し素敵な夢を見るだけで……。起きれば“全て”、変わりますよ?」

 

 






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してくれなかった人はゴブリンと一緒にマシーンに放り込みますね♡
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