全自動怪人製造マシーンin異世界 作:あなたちゃん
「んふ~! 改造っ! 改造っ! ようやく改造~!」
やっと! やっとちゃんとした構成員を確保できますねぇ!? ここまでほんと長かった! まだ転移からそこまで時間は経っていませんが、地球の時のように『攫って即改造!』が出来なかったせいで非常に面倒でした!
でもその分成功した時の達成感が素晴らしい!
「これでようやくイジイジできますよ! まぁ私じゃなくて機械がするんですがッ!!! ……ちょっとテンション上がり過ぎですかね?」
そう一人で息を整えながら、機器を操作していく。
この装置はかなりの便利物で、これさえあれば改造にまつわるすべてが補える優れものだ。御覧の通り機械に備え付けられたカプセル、その中に素体である彼女を放り込んでみればあら不思議。すぐにガスが放出し麻酔が完了している。更に幾つかの管が彼女の脊髄に突き刺さって行き、『適性検査』すら開始済み。
ま、名前の通りの“全自動”。それぐらいしてくれなければ困ってしまうというものだろう。
「さてさて。彼女の適性ちゃんは……」
お気に入りのタブレット端末とリンクを構築し、その様子を眺め始めてみれば、一気に表示されていく適性たち。
この機械に記録されている地球上すべての生物と、物体。それに対する“適合率”のチェックだ。まぁこの辺りも全てマシンに任せることが可能で、モチーフ素材を保管してる倉庫と連結しておけば最高値を叩き出した素材を自動で輸送し、このあたりも全て勝手にやってくれるのだが……。今は少し停止中。確かに地球産の素材の数が大幅に減ってしまっているというのもあるが、やはり最初の怪人は“こだわり”たいもの。
“この世界の存在”との合成。
異世界で怪人を作るのであれば、まずはそれからだ。
「ま、コレは興味本位の確認ってやつだね! ある程度の傾向も見れるわけだし! ……お、哺乳類への適性が高い感じか! まぁそれ以外は全滅みたいだけど。」
確認してみれば、脊椎動物。その中でも哺乳類への適性が高めに見て取れる。
全体の平均にはなるが、約40%。ギリギリ怪人化の基準が80%と考えるとその半分と言ったところだ。一応その他の脊椎動物、クモなどの虫を中心とした無脊椎動物。そして私のようなスライムなどの無機物の適性も見ていくが……、軒並み0に近しい数値。
まぁ40%と言っても、哺乳類すべての種族に対する適性。全体の平均なため、より詳しく見れみれば80%を超えるものもあるだろう。そう悲観することではない。
……にしても、素体が人間という哺乳類な事を考えると少々低すぎる気がする。これまで無かったわけではないが、“地球人”における全体の哺乳類への平均適性は約60%。気に成って少し調べてみるが、素体である彼女に何かしらの疾患があるわけでもない。適合率を下げる様なものは見受けられないため……。そもそもの種族による問題。
「ん~、やっぱホモサピエンスじゃない感じ? 死体とか見る限りそこまで違いはない様に思えたんだけど……。まぁいいや。ちな哺乳類の中で一番高めなのは……。おぉ『兎』!」
まぁ今そこを気にしてもどうにもならないこと。すぐに切り替え哺乳類の欄をクリックし、ソートをかけてみるが……。一番高く表示される、兎系の動物たち。どうやら全体的にそっちの才があるようで、一番高いのでも92%ほどの数値を叩き出している。
私のスライムへの適性2000%や、我らが主であるクモ女様の53万%と比べるといささか低い数値ではあるが……、一般的な平怪人の数値と考えると十二分なものだ。
「と言うことは……、アレだ!!!」
すぐに通信機を手に取り、指示を出すのは倉庫近くにいたゴブリン。そして命じるのは、先日捕まえたばかりの新しい素材候補。
ワクワクしながら少々待ってみれば、2体ががりで鉄の折を運んでくる備品たち。そしてその檻の中にいるのは……。
「ホーンラビット! 兎に適性があって、そもそもこの世界出身の生物であるならば……!」
そう口にしながら、若干怯えている兎の首根っこを掴み、そのまま装置の中に放り込む。
さすれば先ほどの彼女と同様にカプセル内が麻酔で埋め尽くされ、処置が完了。すぐに素体の彼女と素材の兎の適合率が計算され始め……。
「Unknown、……223%!? うっわめっちゃ上がったッ! 逸材じゃないこの子ッ!!!」
表示されたのは、明らかに高い数値。
幹部基準の1000%には劣るが、それでも滅多にない数値だ。地球では十万に一人のレベル。もしデスカンパニーがまだ崩壊していなければ地方支部の幹部、キャリアを積めば私同様支部長まで狙えるかもしれない数値。それが初回で手に入るとは……、もしかすると私は運がいい方なのだろうか? それかクモ女様が祝福を下さったか。
「後者だったら最高なんだけど……! っとモチーフが決まったのなら次に進めなきゃ! というわけで決定!」
そう言いながらデバイスのボタンを押せば、ガコンという音と共に装置が動き始め、改造への準備が始まっていく。
兎と言う種族に適性を持ち、この異世界という同じ世界で産まれた存在にも適性がある。これを考えるとホーンラビット以外の魔物。例えばゴブリンでは確保できない様なより強固な兎系の魔物を探し、そちらの適合率も調べて見たくなるところだが……。それをし始めるとキリがない。
なにせ未だこの世界は未知にあふれているのだ。調べた結果が『ホーンラビット』よりも低い適性しかなかったということもある。ならば今できる最上を選択していく他ない。
「うしうし、問題なさそうだね。んで次は……、要素の取捨選択か。どれどれ?」
〇素体要素
精神力〇
剣術×
〇素材要素(Unknown)
狂暴
硬角
跳躍〇
「はぇ~、こんな感じなんだ。」
デバイスに表示される複数の要素たち。
一応こちらもアカデミーで基礎は学んでいる。ある程度の理解はあるのだが、それでも改造手術やこの機器の使用は初めて。マニュアルから要素を選択することが出来ると聞いていたが、こんな感じになるとは。……おそらく、その存在の肉体的特徴だけでなく後天的に入手した技術なども表示されるタイプなのだろう。
「ゲームのスキルみたいな感じかな? まぁ解り易くていいね。……戦闘も任せることになるだろうし、狂暴は置いておくとして……。無難に×ついてる剣術外すだけでいいか。」
そう考え剣術のボタンを押すことで適応から外し、準備が完了する。
これで大まかな作業は完了。後は改造処置開始のボタンを押すだけで何とかなるのだが……。まだ一番大事なことを決めていない。
「名前、どうしよっか。」
怪人という新たな存在に生まれ変わるのだ。前の名前を捨てろとまでは言わないが、新しい名前を用意してやるのが組織の先達、そして支部長としての役目だろう。
そう考え少し思考を回してみるが……。
「ウチの命名法則を考えると、『怪人ホーンラビット女』になるんだけど……。ちょっと長いよね。あと呼びにくいし。」
となると他の名前を考える必要が出てくる。
仕える要素としては角と兎。安直ならホーンバニーだが、なにか少々可愛らしい響きが出てくる。確かに兎ゆえにそれ相応のプリティはあるだろうが、我々は悪の秘密結社だ。例えばアイドルとしての活動を命じられていた怪人のような、“そうあれ”と作られた者であれば問題ないが、彼女は違う。
モチーフが兎である以上私のような研究職は難しいだろうが、それでも戦闘よりの『要素』を幾つか持っている。となると任せるのは私の代わりに前線に立ったり、ゴブリンたちの統括を任せるような感じ。つまり可愛さはあまり必要ないだろう。
あと要素に『狂暴』をいれた手前あんまそういうの気に入らないと思う。
「となると今は亡き総統閣下がお好きだったとされるドイツ語を参考に……。ホルンハーゼ。うん、良さそうじゃない? 意味は一緒だけど。」
内容は同じだが、響きはドイツ語のおかげで少しマシになっている気がする。それにハーゼ、Haseは野兎を表す単語だ。ペットや食肉ウサギとは違い、大自然を生きる力強い兎。少し誇張しすぎかもしれないが、新しい彼女にぴったりだろう。
まぁそれでもちょっと名前長いから“ハゼちゃん”と呼ぶことになるだろうが。……魚かな?
「今後も増やしていくだろうし、異世界産怪人の名前はドイツ語で統一する感じにしようかな、っと! 入力完了! じゃぁじゃぁ、ようやく……! 改造開始だっ!!!」
そう言いながらスイッチを入れると、急激に動き始める機械。
基地内を走る電気が次々を流れ込んでいき、強い発行。電気特有のスパークと破裂音が部屋の中に響き渡り、カプセル内部での処置が行われていく。
素材から要素を取り抜き、素体に適応させ、埋め込んでいく。細胞一つ一つに適切な処置を施すことで人間を超えた新たな存在、改造人間へ。この世界の歴史など欠片も興味は無いが、文明レベルを考えればこれは確実に初めての施術。歴史に残るであろう瞬間を目に焼き付けておく。
そして。
「そろそろかな?」
そう零せば、徐々に点滅が納まって行き、不必要な煙を外部へと送り出し始める機械。私が生唾を飲み込むのと同時に、カプセルがゆっくりと開かれていく。
薄れゆく蒸気から現れるのは、天高く伸びた1本の螺旋角。
高らかに響く、新たな同志の声。
「さぁ、お名前を聞きましょうか。」
「はッ! 良いぜ! オレの名は『怪人ホルンハーゼ』っ! よろしくな、主サマっ!」
兎の大きな耳を揺らしながら、そう叫ぶ彼女。
……な、なんでオレっ子に?
あとなんで主様???
「わ、我らの主はクモ女様では? も、もしかして離反して新勢力作ろうって思われてる??? そ、そんなわけないじゃないですかッ! く、クモ女様! 誤解です! 私にそんな気なんてあるわけがッ! お、お許しを……ッ!!!!!」
「……なんで寝転んだんだ? というか違うのか? オレを作ったってことは主人ってわけだろ? なんかこう、“上の立場”ってのがなんとなくわかるし。だから主サマ。あと見たこともない奴を主人にするのは……」
地球にいらっしゃる大総統怪人クモ女様に五体投地を決めながら、ウチの新しいバカな部下にクモ女様のブロマイドを見せつける。
あ、貴方どれだけ恐ろしい事を口にしてるのか解ってます!?!?!?
「絵か? すっごい綺麗な……、は? こ、こ、これって……、神様???」
「神より上ですッ!!!」
「た、確かにこれは不敬になる奴だわ……。え、絵だけでも覇気がやべぇ。でも主人は主人って呼びたいし……。あ、そだ。じゃぁ大主様ってのは? 主様の上。」
「それならいいです。」
「急に冷静。」
〇出張拡大! とてもよく解るネオ・デス博士の怪人講座!(怪人ホルンハーゼ編)
なんか最後の方ゆるゆるになっておらんか? まぁコヤツからすれば久しぶりの同志で色々とテンションが上がっても仕方のないことだろうが……。
っと、失礼した! ごきげんよう諸君! ネオ・デス博士である! 今日もゴブリンと比べれば格段に優秀な貴様らに相応しい講義を“懇切丁寧”に勤めさせて頂こう! さて今回の議題だが、やはりこれ! 新たに生み出されたホーンラビットの怪人、『怪人ホルンハーゼ』を解説していこう!
では、基本スペックだ!
■身長:187.6cm
■体重:85.9kg
■パンチ力:10.5t
■キック力:50.3t
■ジャンプ力:38.7m(ひと跳び)
■走力:4.5秒(100m)
★必殺技:ホーンストライク
うむうむ、まぁ悪くはない怪人だな! 機械産と聞いていた故に出力が大幅に下がってしまうのではないかと危惧していたが、おそらくマシン自体が後期型。改良されたものだったのだろう。低下は見られるが許容範囲に収まっておる。まぁこの適性率でこの私が施術していれば倍近く伸ばせただろうが……。一般の改造担当者であればどれだけ頑張っても2割増し程度。貧弱な異世界人相手であればこれで十分だろうな!
して怪人の特徴であるが、やはりその脚力を生かしたキックが主体の戦闘になるだろう。角自体もかなりの堅さが見て取れる故に、これを上手く使った突撃を“必殺”と置き、それまでを蹴り技主体で埋めていく。そういった戦術が有効だろう。そして何より我が最高傑作であるクモ女を“神”と賛美しておったからな! その“目”は評価してやらねばならない!
いいだろう我が人生の誉は! すごいぞ! 強いぞ! かっこいいぞー!!!
……んん、失礼した。まぁ今後が楽しみな怪人ということで締めさせてもらおう。魔物という新たなモチーフ素材という興味深い題材もあることだし、今後も退屈はしなさそうだな。
では今日の講義は以上! 次までにもう少し真面な頭脳を手に入れておくがいい! さらばだ!
感想、評価、お気に入り登録いつもありがとうございます。
してくれなかった人はホルンハーゼの角で串刺しにしますね♡