黒鬼の動画編集班(個人)兼マネージャー   作:まあまああまあま

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ポケモン対戦にわかだったんですけどchampionsをきっかけに対戦を始めてみました。
ブリジュラス強すぎナーフしろ。SVだとボディプレあったってマジ?


謎の検証勢"M1TSUKUN1"

『前回はツクヨミのマップの下限を調べました。詳しくは概要欄の前回の動画を見てほしいんですが、その結果ツクヨミ内で最も高度が低い地点から大体200m掘ったところくらいが高度下限だということがわかりました。

 今回はですね、こちらどうにか出し抜けないか色々試してみたいと思います』

 

 動画配信サイトに投稿されている動画。黒衣(くろご)を着用し、安っぽいボイスチェンジャーを使用している投稿主は、どうやらツクヨミ内の様々な事象を検証しているようだった。チャンネル名を"ミツクニ検証ch"という。

 過去動画では『気球を使えばミラーボールの月まで届くのか』『ワイヤーの耐荷重について』『ログインした瞬間全力ダッシュすれば夜の前のツクヨミいける説』など、ニッチな検証動画がずらりと並んでいる。

 

『今回考えたのはですね、マップ端から降りながらピッケルを振れば高度下限の壁をぶち破れるんじゃないかという説です。

 みなさん、結構昔にマップの端まで行こうとしたのを覚えていますか。海を泳いで越えようとしてもスタミナが切れ、船で行こうとしても途中から波が高くなりすぎて転覆したあれです』

 

 内容に一貫性はなく、ただただ気になったことを検証しているようだ。通常のプレイ動画は一切なく、配信も行っていない完全動画オンリーの検証勢。

 たまに検証に人手が必要なときにSNSで参加募集をかけているがファンとの交流はその程度。今どき珍しいくらいに広報に力を入れていないそれは、完全な趣味として行われているというのがよくわかる。

 

『私は考えました。潜水艦、つくればよくね? と。このゲーム、自由度がかなり高い。シンプルな構造の潜水艦なら作れるのではないかと思いましてね。

 そして潜水艦で端まで行ってから離脱。ロープを固定し採掘する。これが今回の下限突破の作戦です』

 

 重箱の隅をつつくような、普通の人であれば気にも留めないようなことばかりをしているミツクニ検証chは、爆発的人気を誇るということはないが、カルト的な人気があった。

 顔も見えない声もボイチェン。個人情報の一切を隠しているミツクニ。その正体はいったい誰なのだろうか──。

 

 

 

第三話 謎の検証勢"M1TSUKUN1"

 

 

 

 (ミナト)の部屋にて。彼は今、デスクに突っ伏しブツブツと何か呟いていた。

 

「なんだよあのクソデカ鯨。剣盾のホエ◯オーよりでけえじゃねえか。悪質タックルやめてくれよ……」

 

 ご想像の通り、謎の検証勢"M1TSUKUN1"の正体は湊であった。どうやら潜水艦作戦は失敗に終わったようだ。

 潜水艦自体はうまく動作した。スクリュー等の動力部を手動にするといったシンプルすぎる構造なのだから成功してくれないと困るのだが。

 検証は成功、以前失敗した検証もリベンジ達成だぜ──湊がそう思った瞬間、横から巨大な鯨が突っ込んできた。

 突如突っ込んできたそれに対処できるはずもなく、潜水艦は無惨にも砕け散り、海中からマップの端に行ってみようという挑戦は失敗に終わった。

 何者か(ヤチヨ)の介入を感じるものだったが、本人……本AIに確認を取ったところ、

 

『ヤッチョはなんにもしてないよ~。そうプログラムされてるだけなんじゃないかにゃあ』

 

 というありがたいお言葉を頂いた。なんなら挑戦を応援するとも言われたので妨害されているわけではなく単に向かおうとするのを防ぐように設計されているようだ。

 他のゲームでよくある"見えない壁"方式でないようだが、どうやって向かえばいいかとんと検討もつかない。空路は上空に強風が吹いていて不可能のようだし。

 

「気分転換に編集でもするか……」

 

 Black onyXの動画ではなく、ミツクニ検証chのものである。ミツクニの動画は基本的にカットと字幕だけでいいから気が楽なようだ。たまに図解などを入れることもあるがそれはそれで気分転換になる。

 ちなみにBlack onyXの動画編集は全く気分転換にならない。効果音テロップBGMブラーなど、単純に作業量が多すぎるためである。

 

「……ってかワンチャン海底トンネルとか掘れたりしねえかな。最低高度と海底ってどっちが高度低いんだ?」

 

 編集中にふと、そんなことを思った。わからないのなら検証するしかない。編集作業をほっぽり出してスマコンを取り出し着用する。ボイスチェンジャーを起動し、録画を開始する。

 

「追加検証です。高度下限から横に掘り進めて行けばうまいこと海底トンネルを掘れるんじゃないでしょうか。検証していきます」

 

 インベントリからドリルを取り出す。そのまま一心不乱に掘り進める。暫くしてミツクニの頭上から水音が聞こえてくる。どうやら海底のすぐ下まで来られたようだ。

 

「よしっ! 皆さん聞こえますか、水の音ですよ! きっと今海底の下にいます!」

 

 視聴者に語り掛け、再度掘り進める。ここより水深が深い場所がありませんようにと祈りながら。

 祈りが通じたのか否か、掘り進めた先から水が出てくることはなかった。これは勝った。湊は内心ほくそ笑む。

 

 ──突然だが、青函トンネルというトンネルを知っているだろうか。青森県と北海道を結ぶ海底トンネルである。

 このトンネルの土被り厚*1は100mはある。

 それはなぜか? 答えは単純明快。

 

「ん? なんかみしみしって音が……」

 

 水圧があるからだ。

 天井が崩落する。海水が流れ込む。そしてそのまま流され続け視界がブラックアウトし、気が付くとツクヨミ内のとある地区の谷底にいた。ツクヨミ内で最も高度が低い地点である。

 ミツクニが掘った穴は埋められている。どうやらロールバックか何かが行われたらしい。がっくりと項垂れ〆の言葉を述べる。

 

「え~、失敗しました。このゲーム物理演算すごいっすね。ってことで追加検証も失敗に終わったということでね。マップ端案は一旦棄却とさせていただきます。高度下限ぶち抜く案ありましたらコメント欄にてお願いします。それでは」

 

 ログアウトし、ベッドにダイブする。流石に行けるとは思っていなかったがそれはそれ。あれだけの労力が水の泡になったのだ。萎えもする。

 ベッドに寝転がると自然とスマホに手が伸びる。もはやルーティーンとなってしまっているベッドでのSNS徘徊をしていると連絡が届いた。蒼空(ソラ)からだ。確認すると『神戦しよう』という5文字だけが送られてきていた。

 

「編集のやる気も起きんしこの後用事もないし付き合いますか」

 

「おけ」の2文字を送信し、デスクへと向かう。編集中の動画ファイルをしり目にスマコンを装着した湊は、本日三度目のツクヨミへのログインするのであった。

 いつもの灯篭、いつもの水面、そこにいるヤチヨ。もう見慣れたはずだというのに、この世界は何度見たって飽きることがない。

 とはいえ慣れはするもので、mitoはまっすぐ鳥居へと歩いていく。水の膜を潜り抜けるような感覚。少しの浮遊感とともに、ツクヨミのパブリックスペースにログインすることに成功する。鳥居の前には一人の人物の姿が見える。

 

「ミトやっほ」

「ありゃ遅刻? すまんね」

「んにゃ、僕が早かっただけだから気にしなくていいよ」

 

 ユーザーネーム"sky"、当然蒼空である。オーバーサイズの服の袖をひらひらと振りながらmitoのもとへ向かっていく。

 

「んで何すんの? SENGOKUかISSEN*2バトロワ*3か」

「……SETSUNAって選択肢はハナからないのね」

「だっておれが勝っちゃうじゃん」

「うっっっざ。僕でもワンチャンあるでしょ」

「じゃあSETSUNAやるか?」

「……ISSENで」

 

 勝ち誇った笑みを浮かべるmitoと悔しそうな顔をしたsky。そのまま二人で他愛ない話をしながらKASSENサーバーに移動する。

 鳥居型のワープゲートをくぐりKASSENサーバーに降り立つ。城の天守閣からKASSENのフィールドを見渡せる。

 

「野良あり3人(トリオ)2人(デュオ)か」

「デュオで」

「りょーかい。マップは竹林でいいよな?」

「いいよー」

 

 システムウィンドウを弄り設定を決める。

 竹林マップは障害物や遮蔽が多く存在し、視界も悪いため上級者向けのマップとなっている。また、ツクヨミの物理演算は病的なまでにリアルなため、竹林内で戦闘となった場合大ぶりな武器は竹に動きを阻害されやすい。総じて不人気ステージである。

 ただし、mitoもskyも腕の立つプレイヤーであり、またビルドもskyは軽量ジョブ、mitoも特殊ではあるが比較的軽量ジョブであるため竹林の影響を受けにくい。

 武器を取り出し準備完了ボタンを押す。カウントダウンが始まる。緊張感が高まる。skyが口を開く。

 

「スコア低い方ごはん奢りね」

「財布に余裕あるんだろうな?」

 

 カウントが0になり、桃に乗ってKASSENのフィールドへと降り立っていく。

 

GameStart! 

Stage 1 制限時間内にミニオンを全て倒せ! 

 

「竹と竹の間を縫うような完璧スナイプ!!」

 

 mitoは背中から弓を取り出し引き絞る。その弓は乃依の物と比べると小さい、俗に言う短弓であった。取り回し・連射は和弓に勝るが威力・射程は低くなっている。

 通常、短弓というものはある程度射程を維持しつつ戦う中距離向けの武器だ。だが、mitoは嬉々としてミニオンの集団に近づいて行った。所謂凸スナである。

 

「その激キショムーブやめなって!」

 

 そう叫ぶskyは真っ当な双剣である。Stage 1の雑魚ミニオンはたいして耐久が高くない。火力に劣る二刀流でも問題なく狩れる程度には脆い。

 二刀流の手数を活かし順調にスコアを稼いでいくsky。しかし、mitoのスコアを見ると同程度稼がれている。

 元よりPS(プレイヤースキル)に差があるのはわかりきっている。しかし、矢を番える都合上、どう頑張っても手数では劣るはずだ。ステージが進みミニオンが固くなってきたときに単発火力で劣る自身が追い付かれるのは仕方ないにしても、今のミニオンの脆さでスコアの稼ぎ方が同じなのは納得がいかない。

 そう思ったskyがmitoのほうをちらりと見てみると──

 

「ひゃほう雑魚狩り楽しいねぇ!! どっかのエフェクトだけ派手な剣と違ってちゃんと火力出て気持ちいわまじで!!」

 

 一度に矢を三本番えてかつ2in1*4をしているmitoの姿があった。

 

「まじでなんなのあいつ、ペース上げないとまずい……!」

 

 双剣を振るう速度を上げるsky。序盤で貯金を作っておかないといけないというのにあんなイカレたプレイをされては作れるものも作れない。

 

「あっやべミスった」

 

 少し離れた場所でアホの声が聞こえる。それを機に一気にスコアを稼ぎに行き、そして──

 

 

 

 

 

 十数分後、最後のステージまでクリアした二人が天守閣からKASSENのステージを眺めている。

 

「いやぁスカイ惜しかったなぁ、最後ウルト切ってればLA(ラストアタック)入っておれの負けくさかったのになぁ」

 

 満面の笑みを浮かべるmitoと、不貞腐れ地面にのの字を書くskyの姿があった。

 

「うざ。どーせ僕がウルト吐いたら合わせてくるくせに。……はあ、mitoこの後暇?」

「特に予定もないし朝まで付き合えるぞ」

「んじゃごはんいこ。約束のおごり」

「まじで?! タダ飯最高、焼肉行こうぜ!!」

「ふざけんな僕が店選ぶに決まってるだろ。んじゃ僕は先ログアウトするから準備できたら連絡して」

 

 返事を聞かずにログアウトするsky。一人取り残されたmitoは「……もう一回だけソロで行くか」と一人でインキューし、桃に包まれKASSENのフィールドに落ちていった。

*1
地下に施工した構造物の天端から地面(この場合は海底)までの厚さ

*2
PvEモード。本編冒頭で彩葉、芦花、真実がプレイしていたゲーム

*3
vs月人のときのあれ。本作では一番最初のゲームモードということでサブタイトルがついていないという設定

*4
一発で二人仕留めること。今回は三本の矢それぞれで2in1をしている




読まなくてもいい設定コーナー
 本作のツクヨミではサブ垢は認められてる。ただし、それを使ってKASSENなどのランクマッチに潜ることはできない。ついでにヤチヨは誰のサブ垢かを判断できるため、スマーフなど使用者なら数日BANされる。
 M1TSUKUN1は検証しているうちにちょくちょくバグを見つけており、それを適宜ヤチヨに報告している。その甲斐(?)あってかヤチヨとそれなりに仲が良い。一話でヤチヨが演出を手伝ってくれたのはこのおかげもあったりする。


地の分でmitoはツクヨミ内でのユーザーネームのまま表記しているんですが、ミツクニはツクヨミ内のユーザーネームがM1TSUKUN1なので視認性と入力のしやすさから基本的にミツクニと表記しています。mitoもミトにしようかなと悩み中。
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