黒鬼の動画編集班(個人)兼マネージャー 作:まあまああまあま
ちなみに全然本編じゃありません。蛇足~~!!の日常パートです。別名お茶濁し。
ドキドキ! 地獄のダーツ大会!!
とある日の事。Black onyXはツクヨミ内の一角に集められていた。
「んで、俺ら何すんのミト?」
「知らん。おれだって帝に呼ばれただけだし、雷はなんか聞いてたりしねぇの?」
「……なにも聞かされていない」
帝に召集された三人は何をするのかよく知らない。というかここはどこなんだ。帝に『ここにワープポイントセットしといたから』とだけ言われ、テレポートしたはいいものの飛んだ先は薄暗い室内。当たりを見渡しても特になにかあるわけでもない。
雷はまだしも乃依は若干どころか普通に飽きてきている。これが帝からの招集でなければもうすでに帰っていそうな様子だ。
帝来ないし黙って帰るか? mitoがそう提案しようとした次の瞬間、一室の壁が
「ようお前ら、待たせたな」
「本当にね。……で、何の用? 何するかなにも聞いてないけど」
待たされたからか声色に少し苛立ちを滲ませる乃依。それを感じずにか、はたまた感じ取ったうえで無視しているのか帝は何事もないかのように続ける。
「俺は思うんだ。『お前ら、最近格好つけすぎじゃないか?』と」
「……一番格好つけているのはお前だろう」
「そもそもおれは裏方だしな」
「というわけで! 今回行う企画はこちら!!」
「無視かよ」
帝が手に持ったスイッチを押すと、天井から企画名が書かれたボードが下りてきた。そこに書かれていた企画名は──
「負けたら黒歴史披露、ドキドキダーツ大会!!」
碌でもない企画名だった。ついでにカメラも回されている。あわよくば動画化するつもりらしい。
「ミトの黒歴史は俺がよく知ってるし、雷乃依に関してもご両親に色々聞いてきたから安心しろよな」
「てめぇふざけんな!! マジでやめろ!!」
「この前『用事あるから
「……すぞ」
非難囂囂であった。雷に至っては放送禁止用語を発しており収集がついていない。帝に詰め寄る三人。武器まで抜き出したところで、体が動かなくなった。
「おいたはダメだよ~」
この場にそぐわない緩い声。声の主は皆様ご存じこの仮想現実の管理人、月見ヤチヨであった。首から『審判』というタグをぶら下げ、黒のポロシャツを着用している。
「と、いう訳でヤチヨちゃんに来ていただきました」
「帝様にお呼ばれされました!」
「お前らが素直にやるわけないのは読めてたからな、強制的にプレイしてもらうぜ」
話もまとまったところでルール説明だ、と帝。ルールはシンプルな501*1を三試合。一位は3点、二位は2点、三位は3点とのことだ。
「じゃ、あとはがんばれよお前ら」
「は? 帝もやるでしょ?」
「いやぁ、俺様に黒塗りしたい歴史とかないし? 本当に、ほんっっっとうに申し訳ないが不参加にさせてもらうぜ」
「帝様にも参加してもらうべくヤッチョが用意しておいたよ~~」
帝がありえない速度で目を見開きつつ振り向き、他三人が歓喜の声をあげる。ヤチヨは楽しそうに不透明なウィンドウを弄っている。中身を垣間見ることはできないが恐らく帝の黒歴史を見ているんだろう。
「初心者のころとか本当に最初期の個チャンの非公開動画とか、過去のログ漁ればいくらでも出せるよ~」
と、いうことで帝様も強制参加ねという
そのダーツ大会の様子は……あまり語るべきではないだろう。ルールに抵触しない範囲のありとあらゆる妨害、おおよそ放送できない暴言、泣き崩れる一般男性etc.
ヤチヨは隅で爆笑し、Black onyXの面々はそんな笑い声も聞こえないほど
ちなみに動画は満場一致でボツとなった。
タイマン勝負は懐かしい
これは公にされていない情報だが。Black onyXの面々は帝以外学生である。そのため撮影は休日や夜に行われることが多い。平日の昼間は帝が個人チャンネルで配信していたり、一人でSENGOKUやSETSUNAに潜ったりしている。が、この日は違った。
「んで、ミトはなんで平日の真昼間から
「教授が海外出張とやらで休講になったんよ。もっと前に連絡よこせよなフツーに」
ソファでくつろぎながらキーボードをたたくmito。普段は「物理的にキーボードを押す感触がないと気持ち悪い」とリアルで編集作業をしているmitoだが、今日は珍しくツクヨミ内で作業しているようだ。
「ま、ラッキーなんじゃねえの」
「まあね。とはいえやることもねぇし惰性で編集してるけどぜんぜん進まねえのなんの」
ウィンドウを閉じソファに倒れこむmito。残っている作業はテロップくらいなのだが、それゆえ進まない。単調作業というのは集中できないと進まないというのがmitoの持論だ。そして今は全然集中できないパートに突入しているらしい。
「んじゃSETSUNAでもするか?」
「あーそれありだな。でも帝から誘ってくんのも珍しいな」
「俺も大概暇だからな。あいつらいるときは俺から誘うこともそうそうないし」
話ながらSETSUNAのフィールドに移動する二人。話していることは取り留めもないことだ。呆れたり、笑ったり、小突いたり。なんてことない話をしながら移動する。
「んじゃ5先で負けた方は最近出た武器スキン奢りな」
「うえ、おれブランクだいぶあるんだが?」
「俺だって最近SENGOKUしかやってねえわ。アップくらいにしかつかってねえよ」
「予防線やめろ」
お前もな、など言いながら試合開始のボタンをクリックする。フィールドに降り立つ二人。カウントダウンが始まる。数字が減少していく。数字が0になった瞬間二人が同時に飛び出し、そして──
「新スキンあざーっす! 拳銃タイプあんま使わねえけどデザインいいしこれを機に使ってみよっかな」
「……俺のほうが先に当たってただろ最後のは。リプレイ検証だろリプレイ検証」
「負け犬の遠吠えは気分がいいなぁ!」
勝者はどうやらmitoのようだ。帝は判定に納得いかないのかブツブツとなにか呟いている。トッププロかつトップライバーである帝にとって新スキンの奢りなど然したる出費ではない。ただ、
溜息一つ零して気持ちを切り替え、帝が口を開く。
「こうしてSETSUNAするとお前を黒鬼に誘った時の事思い出すわ」
「だいぶ昔じゃねぇか。あんとき雷と乃依誘う前だったろ」
「そりゃ印象に残ってるからな。なんだっけか、『なんだおまえ、鬱陶しいな。おれが仲良しごっこ「わああぁぁやめろやめろマジで!!」なんだよ、ここからがおもろいのに」
「何が面白いんだよマジで。人の黒歴史弄りやがって」
けらけらと楽しそうに笑う帝。mitoの取り乱し様を見て負けたことに対する溜飲を下げたらしい。元々そこまで気にしていなかったようだが。
ポリポリと気まずそうに頭を掻くmito。何かを言おうとして、なにか考え、そして何も言わずに口を閉じる。
「なんだよなんか言いたそうにしやがって」
「……べつに。ただ、これでも帝には感謝してんだぜ。あのままだったら碌なことになってなさそうだし」
「感謝の印に新スキン奢ってくれてもいいんだぜ?」
「それはそれ、これはこれ。勝ったのはおれ、買ったのはお前」
「上手いこと言いやがって。次は負けねえからな」
雷と乃依からメッセージがくる。
『今からインするけどなんかやる?』
確認した二人は目を見合わせ、小さく笑いあう。
「企画立案頼むぜマネージャー」
「無茶ぶりやめろマジで。KASSENでもやっとけ」
「ミトも出るなら」
「ぜってぇ嫌だ」
ただの大学生の一日
とある日の大学の講義室。講義が終わり学生たちが席を立つ。
「もりみーどうする? いったん家帰る?」
一緒に受けていた蒼空が話しかけてくる。2限が終わり次の講義は4限。二時間以上空いているが、帰って何かするには微妙な時間。湊がボッチであったらそれでもよかったが、幸いにも蒼空をはじめとして友人が何人かいる。大学周辺で二人で時間をつぶすのがいいだろう。
「いや、このへんで適当に時間でもつぶそうぜ。しかし空きコマってマジでさぁ……」
「まぁわかるけど。ごはんどうする? 学食でも行く?」
「もう混んでるだろうし外で食おうぜ」
「おっけ」
昼食をとりに向かう道中、コンビニに立ち寄る。蒼空が買い物をしている間、ふらふらと商品を眺めると、一番くじに目が留まる。そこにいるのはBlack onyXの面々。
たった今、目の前でくじが買われる。残った景品も少なくBlack onyXの人気が伺える。
もちろんマネージャーとして一番くじが行われるというのはだいぶ前に知らされていたし驚きはない。しかし、目の前で買われたり残っている景品が少なかったり。それらを実際に目にする、というのはチャンネル登録者だったりエゴサーチだったり、データで見るのとは違った嬉しさがある。自然と口元に笑みが浮かぶ。
「? もりみーなに嬉しそうにしてるのさ」
「いや、なんでもない。前レジ空いたぞ」
少し慌てた様子でパタパタとレジまで歩く蒼空を見ながらこう思う。
(どうよ、あいつらすげえだろ)
雷君は絶対えげつない黒歴史あるよねという偏見。だって「俺の中学の出席番号きく?」とか言う男だし。
ひっそりとTwitterやったりしてます。生存確認とかに使ってもらえれば……。あんま動かないけど……。(@warolol)