そもそも、影電404号機のような一般兵器に教えられる情報など無いかも知れない。
もしくは、隊長が配慮してくれたのかも知れない。
404号機には、わからなかった。
わかったことは、モルノーンが数十年ぶりに襲来したということ。ヤツラはもうほとんど壊滅したと思われていたゆえ、後手を踏んだのだという。
「君たちが遭遇したモルノーンの群れは、多分威力偵察か何かだと思うんだ。私達にはあんまり知らされてないんだけど」
隊長は言う。日の光は暖かく、心地よい快晴なのに対し、顔は少しだけ影っていた。
その後ろでは、滑走路の拡張工事をやっている。大本営はモルノーンの出現に対して、大規模な軍拡の方針をとっているようだ。
昨日の戦果は敵を三機撃破、一機を損傷させたのに対し、こちらは二七機のうち十六機。惨敗も良いところだ。
「…『貴女の夫は、部下と仲間、そして貴女の住まう街を守るために、たった一人敵の群れに単身突撃し、敵三機を道連れにして散ったのです』…か。そんなこと、誰も信じるわけないのに」
ボソッと、隊長が言った。どう聞いたって闇があるような言葉だが、404号機には一つの単語が引っかかった。
「夫、とは?」
「…ああ、269号機は一応奥さんがいたんだ。モルノーンがいなくなってから結婚とかの規制が緩和されてたからね。
でも、昨日のせいでそれらの規制は全部厳しくなったんだ」
404号機には、夫だとか、奥さんだとか、結婚だとかそういう知識はよくわからない。そんなことより、269号機先輩は男性型だったんだ…とだけ。
「おー?そこにいるのは味方殺しの013号機ですかぁ?」
聞いたことのない声が聞こえた。それと同時に、隊長が私を隠すように前に出た。
「なんの用だ、二一型」
隊長の声が、明らかにザラついている。嫌悪どころではなく、殺意まで混ざっているようだ。
「別にぃ?ただ味方殺しの名前で知られるお前がぁ、仲睦まじく部下と話してるのを見つけたから寄っただけぇ」
嫌な声だった。鈴のように澄んでいるのに、何か泥を塗りたくったような声だ。
隊長の影から相手を見てみた。
透けるような白い白髪、脚部が車輪型、軍刀を持った零戦二一型のヘイキガミだった。
「おやぁ?この娘が新しい部下?ハハハ、人形みたいな奴だねぇ」
「私の部下は関係無いだろう」
こちらを見て言っているのに、目線が合わない。遠くを見ているのか、近くを見ているのかも分からない。
不気味な目だった。
「まぁ精々殺されないように頑張りなぁ〜」
結局目線が合うことのないまま、あのヘイキガミは行ってしまった。
「気にしないでくれな。あいつ目が見えなくなってからずっとあんな感じなんだよ」
それを聞いて、404号機は尚更嫌な気分になった。
その気分に呼応するように、不吉なサイレンが鳴り響いた。
少し書き方変えました。