ヘイキガミ   作:ヴェールヌイ510

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 配慮なのかは知れないが、戦闘後にこれといった出来事はなかった。
 そもそも、影電404号機のような一般兵器に教えられる情報など無いかも知れない。
 もしくは、隊長が配慮してくれたのかも知れない。
 
 404号機には、わからなかった。


準備

 

 

 わかったことは、モルノーンが数十年ぶりに襲来したということ。ヤツラはもうほとんど壊滅したと思われていたゆえ、後手を踏んだのだという。

 

「君たちが遭遇したモルノーンの群れは、多分威力偵察か何かだと思うんだ。私達にはあんまり知らされてないんだけど」

 

 隊長は言う。日の光は暖かく、心地よい快晴なのに対し、顔は少しだけ影っていた。

 その後ろでは、滑走路の拡張工事をやっている。大本営はモルノーンの出現に対して、大規模な軍拡の方針をとっているようだ。

 昨日の戦果は敵を三機撃破、一機を損傷させたのに対し、こちらは二七機のうち十六機。惨敗も良いところだ。

 

「…『貴女の夫は、部下と仲間、そして貴女の住まう街を守るために、たった一人敵の群れに単身突撃し、敵三機を道連れにして散ったのです』…か。そんなこと、誰も信じるわけないのに」

 

 ボソッと、隊長が言った。どう聞いたって闇があるような言葉だが、404号機には一つの単語が引っかかった。

 

「夫、とは?」

「…ああ、269号機は一応奥さんがいたんだ。モルノーンがいなくなってから結婚とかの規制が緩和されてたからね。

でも、昨日のせいでそれらの規制は全部厳しくなったんだ」

 

 404号機には、夫だとか、奥さんだとか、結婚だとかそういう知識はよくわからない。そんなことより、269号機先輩は男性型だったんだ…とだけ。

 

「おー?そこにいるのは味方殺しの013号機ですかぁ?」

 

 聞いたことのない声が聞こえた。それと同時に、隊長が私を隠すように前に出た。

 

「なんの用だ、二一型」

 

 隊長の声が、明らかにザラついている。嫌悪どころではなく、殺意まで混ざっているようだ。

 

「別にぃ?ただ味方殺しの名前で知られるお前がぁ、仲睦まじく部下と話してるのを見つけたから寄っただけぇ」

 

 嫌な声だった。鈴のように澄んでいるのに、何か泥を塗りたくったような声だ。

 隊長の影から相手を見てみた。

 透けるような白い白髪、脚部が車輪型、軍刀を持った零戦二一型のヘイキガミだった。

 

「おやぁ?この娘が新しい部下?ハハハ、人形みたいな奴だねぇ」

「私の部下は関係無いだろう」

 

 こちらを見て言っているのに、目線が合わない。遠くを見ているのか、近くを見ているのかも分からない。

 不気味な目だった。

 

「まぁ精々殺されないように頑張りなぁ〜」

 

 結局目線が合うことのないまま、あのヘイキガミは行ってしまった。

 

「気にしないでくれな。あいつ目が見えなくなってからずっとあんな感じなんだよ」

 

 それを聞いて、404号機は尚更嫌な気分になった。

 その気分に呼応するように、不吉なサイレンが鳴り響いた。




少し書き方変えました。
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