オリキャラと東方キャラで超次元サッカーする話 作:みかづき椛
一話 異世界転生
山奥の獣道では土砂降りの雨が降っていた。木々の間に視線を下に向ける中年男性が突っ立っている。
さらに人が中に入れられるほどの大きさがある白い麻袋が、その男性の側に転がっていた。
「う……うえぇ……」
麻袋の中から顔は真っ青、唇を激しく震わせ、白い装束をまとった黒髪のおかっぱの女の子が這い出てきた。
「ここは……どこ……? 寒い……」
女の子の声はか細く、衰弱しきっていた。そんな女の子を荒い息遣いの男性が上から睨みつける。
「お前さえ……いなければ」
男のかすれた声に女の子は反射的に振り返る。目が合った瞬間、女の子の瞳が大きく見開かれた。
「おじさん……!?」
「お前のせいで……私の妻も……娘も……息子も……みんな死んだんだ……」
女の子は首を横に振りながら地面を引きずるように後ずさりし、男性は斧を持つ右手に力を込め始める。
「そして儂も……もうすぐ死ぬ……お前を……殺す」
「やめてください……!!」
女の子の叫びも男は歩みを止めず、鬼のような顔付きで聞く耳を持たないといった様子だった。
背中に木の幹がぶつかり、女の子は逃げ場を失った。男は歯を食いしばりながら一歩、また一歩と近付く。
「……死ね!」
◆
時は流れ、とある町の入り口に、白い装束を着用、首に三日月形の傷跡がある女の子が立っていた。
遠くをぼんやり眺めている女の子の背後から、黒髪ショートの青年が近付き、女の子は反射的に振り返る。
「俺の名前はクロマグロ! お前の名前は? いつもここにいるよな」
「あなたは……誰……?」
女の子は戸惑いながらも自身が中年男性に斧で殺害された時のことをクロマグロに話し終えた。
「お前が病気になったことが発端で村の人たちが次々に死んでいったって言われて殺されたんだろ? 村とじじい最低だな」
「だから……私はその人が病気で死に、異世界転生して来るのを待っているのです」
「その首に傷をつけた奴……きっとそいつは死んでも地獄に落ちるぜ。死んでも異世界転生するだけじゃねぇって意味だ。やべぇ奴は地獄に堕ちんだよ」
「地獄……」
女の子は唇を噛みしめて涙ぐむ。沈黙が流れる中、クロマグロが微笑み、右手を差し出す。
「俺たちのパーティーに入らないか? そのじじいは死にかけで、いくら待ってもこの世界には来ないんだろ? そいつを待つ意味ないって」
細い指が男の大きな手にそっと重なる。女の子は一瞬躊躇したが、クロマグロと手を交わした。
「よろしくお願いします……」
「パーティーつってもまだ二人だけだけどな!」
クロマグロは豪快に笑うと、女の子はつられるように微笑み、初めて異世界で幸せを手にした。