オリキャラと東方キャラで超次元サッカーする話 作:みかづき椛
一話 異世界転生
令和七年から百年ほど前、雪が降る山奥の獣道が途切れた場所、そこには土砂降りの雨が降り注いでいた。
普通は人の気配すらないはずの木々の間に大人が一人、さらに中に入るほどの大きさがある白い麻袋が地面に横たわっていた。
白い麻袋は蠢き、袋の口が開かれる。
「う……うえぇ……」
中から顔は真っ青、唇は激しく震え、白い装束をまとった黒髪のおかっぱの女の子が体を震わせながら這い出てきた。女の子の髪に雪が少しずつ積もり始める。
「ここは……どこ……? 寒い……」
女の子の声はか細い。唇を震わせて周囲を見渡す。すると、背後から雨に打たれている四十代後半と思わしき男が右手に薪割り用の斧を持って荒い息遣いで女の子に近付いて来ていた。
「お前さえ……いなければ」
男のかすれた声に女の子は反射的に振り返る。二人の目が合った瞬間、女の子の瞳が大きく見開かれた。
「おじさん……!?」
「お前のせいで……儂の妻も……娘も……息子も……みんな死んだんだ……」
女の子は首を横に振りながら弱々しく後退りをするも、鬼のような顔をしている男は近付くことを止めようとせずに近付く。女の子の白い装束が泥で汚れていく。
「そして儂も……もうすぐ死ぬ……お前もだ」
男は斧を握る手に力を込め始める。
「やめて……!!」
女の子の叫びも男は全く通じない。男はさらに近付くと、
女の子は木の幹に背中をぶつかり、逃げ場を失った。
男は無言で一歩、また一歩と近付く。
「……死ね!」
振り下ろされた刃は女の子の首の左側に深く食い込んだ。
「うっ……! い……いた……い……」
刃は骨に引っかかり完全には通り抜けなかった。男は目を血走らせ、歯を食いしばる。
「ハァ……ハァ……一回じゃ……切れないのか……!」
女の子は震えた左手で傷口を押さえた。指の間から熱い血が溢れ、雨と混じり、白い装束を赤に染めていった。
「助け……て……」
掠れたほとんど息だけの声を上げた女の子を確認した男は一瞬怯んだように後ずさり、腰を抜かす。
「うわぁぁぁぁぁっ!!」
男は悲鳴を上げ、斧を落とす。さらには腰を抜かしてその場に尻餅をついた。
「人殺しにはなりたくない!!」
男は這うようにして後退し、慌てるように立ち上がって木々の間の闇の中へと逃げていく。
残されたのは雨音と、静かに横たわる一人の女の子だけだった。
「う……う……」
女の子の目は虚ろいていく。呼吸は止まる。
死体は雪で覆われていき、虚しくも女の子の命は奪われてしまった。
◆
とある草原、とある町の入り口前に、白い装束を着た首に三日月形の傷跡がある女の子が立っていた。
遠くをぼんやり眺めていた女の子の背後から足音がだんだんと大きくなる。
女の子は振り返ると、黒髪ショートの20代前半くらいの男が笑顔で立っていた。
「お前、前に来た時もここで外を見てたな! 俺の名前はクロマグロ! お前の名前は?」
「え……?」
◆
数分後、互いに自己紹介を終え、女の子は少し戸惑いながらも自身が殺害された時のことをクロマグロに話し終えた。
「お前が病気になったことが発端で村の人たちが次々に死んでいったって言われて殺されたんだろ? そのじじい最低だな」
「……だから私はその人が来るのを待っているのです」
「その首に傷をつけた奴……きっとそいつは死んでも地獄に落ちるぜ」
クロマグロの言葉に女の子は首をかしげる。
「地獄……?」
「死んでも異世界転生するだけじゃねぇって意味だよ。やべぇ奴は地獄に堕ちるってことだ」
女の子は唇を噛みしめ、長い沈黙が流れる。待ちかねたようにクロマグロが右手を差し出す。
「俺たちのパーティーに入らないか?」
「パーティー……?」
「そのおっさんは死にかけで、いくら待ってもこの世界には来ないんだろ? やっぱり地獄に行っちまったんだよ」
細い指が男の大きな手にそっと重なる。
「よろしくお願いします……」
「まだ二人だけだけどな!」
クロマグロは豪快に笑い、女の子はその笑いにつられるように微笑んだ。
◆
それから一年が経過。クロマグロ率いるパーティーは百人を超える規模となっていた。
そんなある日、世界を震撼させる知らせが一斉に流れ込む。
「神が……殺された?」
別の異世界の神が、クロマグロたちが住む世界の神を殺したという、信じがたい知らせが瞬く間に広まり、街は混乱と不安に包まれた。
◆
数日後のとある時刻、女の子は目が覚めると壁も床も天井もすべてが同じ緑色の部屋の床で横になっていた。
「ここは……?」
「我は三つの世界を創造した神である」
部屋にしかし圧倒的な存在感を帯びた声が響いた。女の子の心臓の鼓動が早くなっていき、
女の子が振り返るとそこには長い白いあご髭を生やした老人が立っていた。その老人の全身から柔らかな光が溢れていた。
「まさかあなたが……クロマグロが言っていた異世界の全てを創った神……?」
「次の神をお前に継がせたい」
女の子は息を呑む。無意識に三日月形の傷跡に手を当てる。
「私に神が務まるとは……到底思えませんが」
「務まるかどうかはお前が決めることだ」
その後、女の子は神になることを了承する。
しかし神になれず百年もの間、封印されることになる。