オリキャラと東方キャラで超次元サッカーする話 作:みかづき椛
コチヤーズ対クリアナイトの第十試合が3−3で幕を閉じた頃、観客席はざわついていた。
フィールドの芝生には神奈子・典・はたて・たかね・にとり・千亦の六名がうつ伏せに倒れている。
クリアナイトとして試合に出ていた阿梨夜・諏訪子・椛・妖夢・龍の五名の姿は消えていた。
「あややや……救出優先度が一番低いはたてだけが助かりましたか……」
そう言った文は微笑んでため息を吐いたその時、ベンチ付近で早苗を中心とした和ができる。
「レミリアのところで勝った分も力を抜いただろうな」
鋭い眼光のラックの言葉でリードシクティスが軽く一度頷くと、満面の笑みの早苗が右拳を突き上げた。
「今日の感じで引き分けなら次の試合、絶対勝てますよ!」
魔理沙はタオルで顔の汗を拭いながらベンチに腰掛け、チームメイトに囲まれている早苗に視線を移す。
「お、引き分けなのに機嫌がいいな。神奈子を助けたからか?」
「もちろんですよ! 諏訪子様はまだですが……次こそは……」
会話の途中、早苗の笑顔が消えた。周りが一瞬驚愕した時、早苗は腹を抱えて苦悶の表情へと変わった。
「キャプテン!? 大丈夫――」
慌てるようにカサゴが声をかけたその瞬間、早苗の全身が一瞬にして黒い炎で覆われた。
「え!?」
早苗を囲む者たち全員、一歩後ろに下がると、リードシクティスが両手に透明な水をまとわせた。
「みなさん! 離れてください!!」
眉間に強いしわを作ったリードシクティスは両の手のひらを早苗に向け、大量の水を広範囲に放った。
しかし、リードシクティスが放った水は早苗に被ろうとすると、早苗の姿が瞬間的に消える。
「まさか消し炭になったんじゃ……!」
「違う! 上だ!!」
アシカの予想を即座に否定したサバミは上空を左手の人差し指を向ける。そこには早苗ともう一人浮いていた。
黒い炎に身を包む早苗の隣には、巫女服を身にまとう無表情の晴奈がコチヤーズメンバーを見下ろしていた。
「おい晴奈! キャプテン早苗を燃やすなー!」
橙が晴奈を右手の人差し指で差しながら怒号を飛ばすと、晴奈は何かを否定するように首を横に振った。
「これは、私の半身が燃えている現れです」
「な……半身だと……!?」
かすかな震え声でラックはそう言うと、早苗を包む黒い炎は晴奈の全身を巻き込み始めた。
(黒い炎が晴奈を包んだ途端……晴奈から感じる魔力が急激に上昇し始めた……)
内心そう言ったシラウオは無表情ではあったが、汗が頬を伝い、両手が小刻みに震え始める。
周りの異世界出身の者たちも体が震え始めた時、黒い炎が一瞬にして全て消え去り、早苗の姿が消えていた。
「早苗は……? まさか焼失させたんじゃないだろうな……」
眉間にしわを寄せている魔理沙は上空に向けて質問するも、晴奈は黙ったまま、口を紡いでいる。
「……待ってろ早苗! 今、お前の仇を取りに行くからな!!」
うつむいて両拳を一度強く握った魔理沙は走り始め、スタジアムの室内へと通じる扉へと入っていった。
「私は……滅ぼす……異世界を……」
目に光がなくなった晴奈はそう呟くと、自身の目の前に空中に漆黒の刀を出現し、その刀を両手で握った。
「まずいな……晴奈は今、早苗の中に入っていた半身と融合したせいで、超次元サッカー脳ではなくなった!」
「え!?」
サバミの説明に周りの者の目が見開かれる。何人かが息を飲み、その場に沈黙が流れ始める。
そんな中、リードシクティスは芝生の上で伏して倒れている者たちに向けて両手をかざした。
「これで倒れているみなさんに触れても、毒に侵されることはありません!! なのでみなさん逃げてください……! ここは私が晴奈を食い止めますので!!」
意を決するようにそう言ったリードシクティスの隣に、緊張感とは真逆の笑顔をしているユニが立つ。
「何言ってんのリードちゃん! 私も食い止める側に回るよ!」
「ユニ……私が管理する世界の問題だけど……今回は頼ってもいい?」
「もちろん!」
笑顔のユニがそう返事をした時、異世界の神二名以外の者が倒れている者を抱えて離れ始める。
◆
数分後、サッカースタジアム内の控室では、解放されたクリアナイトの選手だった者が寝かされた。
「ねぇサバミ。さっきキャプテンの中に晴奈の半身がいたって言っていたけど……どういう意味か説明してもらえる?」
睨みつけるような目をしているアシカの質問を背中で受けたサバミは部屋の出口に向かって歩き始める。
「悪い……説明している暇はない」
「……サバミ、事情を聞いた後に殴ってやるからな。だから必ず生きて戻って来い」
そう言った短気であるラックは真面目な顔をしていた。サバミは黙ったまま頷き、扉を開けて走り始める。
(シクティスさんとユニさん……異世界の神二人の足止めなら、晴奈を再び超次元サッカー脳にできるはずだ……!)
サバミは勢いよく扉を開き、外に出て目にした光景はひび割れた芝生に倒れている異世界の神二人であった。
「そんな……あの二人が……」
その光景を見たサバミは息を呑み、恐る恐る空を見上げると、黒いオーラを身にまとう晴奈が見下ろしていた。
(いや……異世界の神が二人合わせても敵いそうもないから、晴奈を超次元サッカー脳にし、私たちが勝ったら力を放出させる……最初の私の目的はこれだったな……)
背中に白い天使の翼と黒い悪魔の翼を片翼ずつ生えたサバミは左手に青い炎をまとわせながら飛行し始める。
「一撃さえ当てれば……」
サバミは燃えている左手が震え、唇も怯えるように震え始める。恐怖に抗うように表情が勇ましく変わった。
「行くぞ! 晴奈!!」
気合を入れるようにサバミがそう叫んだ時、どこからかミニ八卦炉を持つ右手が晴奈に向けられる。
「恋符! マスタースパーク!」
箒に乗って空を飛ぶ魔理沙はそう叫ぶと、右手に握るミニ八卦炉から極太の黄色いレーザーが放たれる。
晴奈は自身に向けて飛んでくる極太のレーザーに視線を移し、サバミがいる方向へと回避した。
「……今だ! プルートゥ・ボンバー!!」
サバミは左手の人差し指を上空にいる晴奈に向けた瞬間、指先から広範囲な青い爆発が発生した。
「よっしゃ!! これで晴奈はまた超次元サッカー脳だぜ!!」
左手でガッツポーズしながら笑顔でそう言ったサバミの隣に穏やかな表情の魔理沙が並ぶ。
「あいつはどうなった?」
「晴奈の気配は消えた。また十日に試合になる……」
「サバミ……大事な話がある。早苗のことも含めて、ミーティングルームで話そう」
神妙な面持ちの魔理沙からの言葉を受けたサバミはほんの少し首をかしげ、表情が強張る。
(まさか魔理沙……チームを抜けないよな……)