オリキャラと東方キャラで超次元サッカーする話 作:みかづき椛
クリアナイトとコチヤーズの開幕戦終盤、ドリブルで駆け上がる黒幕子に気迫のこもった表情の早苗が迫る。
「ここは絶対に通しません!」
無表情の黒幕子はボールにバックスピンをかけ、左斜め前の地面に落とす。
「ひとりワンツー」
ボールは正確に黒幕子の足元へ戻り、早苗が悔しげにじだんだを踏んだ。
「うっ……!」
すると、黒幕子を中心に左右に玉兎が二人ずつ並ぶ。
「必殺タクティクス……エターナルラン」
黒幕子を中心とした五人は一斉に直進し始めた。
「皆さん! なんとしても食い止めて!」
コチヤーズのディフェンダー陣が一斉に走りかかるも、五人の走りを止めることはできなかった。
「コチヤーズ、大ピンチです!」
ゴール前に立つラックは全身に力を込め、黒幕子だけを注視していく。
(誰が撃つか……それは考えるまでもない。必ず黒幕子! 奴に違いない!)
黒幕子は足を止め、右足のかかとでボールを軽く浮かせながら手を使わずに倒立前転を決める。空中で体を横回転させながら跳び、右足にまとわせたオレンジ色の激しい炎で渦を作っていった。
「あれはまさか……!」
ベンチに座るカサゴが勢いよく立ち上がって叫んだ。
「ファイアトルネード!」
黒幕子は右足を振り抜き、炎のボールはゴール右上隅を襲い始める。
「止める!」
ラックは全力で跳び、右手を精一杯伸ばすもボールに触れることも出来ずにゴールを許した。審判の笛の音がスタジアムに響き渡り、試合終了となった。
「試合終了ーー!! なんと先制点が決勝点!! 黒幕子の右足によるアレス版ファイアトルネードが炸裂し、開幕戦は0−1でクリアナイトの勝利となりました!!」
コチヤーズは重い雰囲気に包まれる中、咲夜は涼やかな表情で前髪を軽くかき上げた。
「炎……ボールは可燃ごみだから燃やしたってことかしら」
ラックは悔しさのあまりゴールポストに右拳で殴った。咲夜の冗談も耳に入らないほどだった。
「くそ……止められなかった……!」
ベンチではカサゴが両手で顔を覆う。隣に座っていた萃香が静かにカサゴの背中をさする。
「負けたから……私たちの世界は本当に滅んじゃうの……?」
「なぁ、たかが一回負けただけで世界が滅びるのか?」
カサゴは返事をせず、軽くため息をついた萃香は空へ飛んでいった。
そして、フィールド上では審判団と黒幕子を除くクリアナイトの選手たちが次々と瞬間移動で姿を消していく。黒幕子はリードシクティスの目の前まで歩を進めた。
「な……なんですか……」
「十日後。また試合をしましょう」
黒幕子はそう言い残し、瞬間移動でその場から姿を消した。
◆
幻想郷の人里の近くに浮かぶサッカースタジアム、その内部にある横長の机とホワイトボードがあるミーティングルームではコチヤーズメンバーによって重苦しい空気に包まれていた。
「私、チームを抜けるわ」
咲夜が沈黙を破る、周りはざわめき出す。
「咲夜さん! 負けっぱなしでいいんですか……!?」
今にも泣きそうな顔の早苗の質問に咲夜は微笑む。
「負けっぱなしは嫌だけど……第二のゴールキーパーも嫌ですわ」
「止めてやるなキャプテン。後半は咲夜の方が我よりキーパーしてたからな。咲夜の能力は制限がかかっていても頼りになるが……」
ラックの言葉で早苗は静かにうなだれる。そしてリードシクティスは咲夜の前に立ち、頭を下げた。
「咲夜さん……ありがとうございました」
咲夜は振り返らず、軽く右手を上げながらミーティングルームを去っていった。