オリキャラと東方キャラで超次元サッカーする話 作:みかづき椛
エリィがコチヤーズのメンバー入りしてから数時間後の夜、エリィの部屋に紫色のスキマが静かに出現した。紫がひっそりと姿を現すと、1頭のミヌエットが警戒心むき出しで鳴き始めた。
「電気はどこかしら……」
周囲を見渡す紫は天井中央に吊るされた照明の紐を見つけ、軽く引っ張ると部屋が明るくなり、猫たちが一斉に鳴き始める。
「ニャーニャー!」
「待っている間に部屋を漁ってみようかしら」
エリィの机近くの五段の本棚に目をむけた紫は一番下の段の一番左の一冊を手に取り、ページを開く。
(今日もホワイトがかわいい……ホワイト?)
記帳を元に戻す。部屋にいる五匹の猫を確認する。
(飼っている猫は五匹だったわよね……一匹亡くなってしまったのかしら?)
紫は本棚の上の空いたスペースに気付き、中央の日記帳を取り出した。
(ちょうど真ん中の内容は何かしら……)
黙読していくと、クリーム・ブルー・グレーが登場せず、ホワイトもいないことに気付く。続けて中央の一つ左隣の日記帳を手に取り、読み進める。
「この日記帳……登場する猫はブラウンだけのようね……」
再び一番左の日記帳を手に取り、黙読を始める。
(ホワイトのことばかりね……そう言えば、あのお手伝いさんのことが書かれていないわね……)
さらに読み進めると『何回告白を振ってもしつこい男子がいる』という内容があった。
「しつこい男子……? ストーカーかしら」
さらに数分後、紫は空白が続く日記帳を手にしていた。
「この日記帳……序盤だけ書いてあってあとはただの空白だわ……」
日記帳を元に戻し、隣の日記帳を手に取ったその瞬間、外からエリィの明るい話し声が漏れていく。
「エリィが帰ってきたようね……」
日記帳をそっと戻し、振り返る。エリィが部屋の扉を開けて無口なお手伝いさんと共に入室した。
「あっ! 紫さん! 部屋にいたんですね! 猫ちゃんたちとは仲良くしてました?」
「いいえ……全然懐いてくれないわ〜……あ、もし良かったらブラウンのことを教えてくれない?」
「ブラウンですか……ブラウンは元々お手伝いさんが飼っていた猫だったんです……お手伝いに聞けば分かるんじゃないですか……? 口では無理ですけど……」
「……めんどくさいからいいわ」
紫は軽く流すと、お手伝いさんに目を向ける。無口なお手伝いさんは本棚に視線を向けていた。
(お手伝いさん……日記帳がある本棚を見てるわね……)
◆
太陽が沈んだ真夜中、エリィがベッドで眠りについた部屋に再び紫色のスキマが現れる。スキマから伸びた紫の手が本棚の一冊をつかむ。
(確かこれよね……)
1ページ目を開き、黙読を始める。
(猫が猫にエサをあげてとっても癒されました……くらいね……)
数ページ確認してそっと本棚に戻す。
(空白のページの前の内容は、ペルシャのホワイトを飼っていて、つきまとっている男に迷惑している……今読んだ日記帳にはお手伝いさんとブラウンが登場している……)
さらに、空白の日記帳より少し過去の日記帳を手に取り、ページをめくる。
(いつものオレンジ髪のあの男子が近付いてきた……本当に迷惑……)
日記帳を戻し、スキマを閉じた。
「いつもつきまとっているオレンジ髪の男子……なんだかとても嫌な予感がするのは気のせいかしら……」
◆
次の日の朝、エリィが朝練のために元気よく部屋の扉を開けた。
「行ってきます! 紫さんも猫ちゃんたちと仲良くなれるように頑張ってください!」
部屋には五匹の猫、お手伝いさん、そして紫が残される。
数十秒の沈黙の後、突如としてお手伝いさんの頭はスキマから出た右手に掴まれた。
「この感触は……! やっぱり……!」
スキマ越しに紫は右手を引っ張ると、スキマを通して猫耳カチューシャと黒髪ツインテールのかつらが引き抜かれた。
「うわっ!!」
部屋に声の低い青年声が響き渡る。
「ちっ……バレちゃしょうがねぇ。エリィに内緒な」
紫はお手伝いさんの頭を注目すると、髪がオレンジ色のショートヘアになっていることを確認した。
「あんまり驚いてないってことは……日記帳を読んだな?」
「えぇ。あなたみたいなオレンジ髪の人につきまとわれているって」
「おいおい……人の日記を勝手に読むだなんてプライバシーねぇな」
「あなたに言われたくないわ〜……」
お手伝いさんが素早く猫耳カチューシャと黒髪ツインテールのかつらを拾い、頭に装着した。
「さっきエリィに内緒って言ったわよね……」
「あぁ、でなきゃ暖かい春にマフラーなんかしねぇ。それでどうするババア。エリィにお手伝いさんの正体をバラすのか?」
「バ……」
右頬がピクピクと動かしながら紫は怒りを抑えるように息を整える。
(生意気ね〜……あ〜ぶっ潰したいわ〜! 美しく残酷にこの部屋から往ねと言いたい気分よ……!!)