オリキャラと東方キャラで超次元サッカーする話 作:みかづき椛
幻想郷にあるジメジメとした空気が漂う魔法の森では、フワフワピンクボブの女性キクラゲと腰に二刀下げている赤茶ツインテールのアキスがのんびりと歩いていた。
「あ〜暇だねぇ……」
アキスが大あくびを漏らした瞬間、キクラゲがぴたりと足を止め、一点を見つめ始める。
「あれってもしかして!?」
「お姉ちゃん! もしかして敵!?」
目を輝かせて駆け出すキクラゲを見たアキスは二刀抜いて構えるが、すぐに肩の力を抜く。
「キノコーー!」
キクラゲは地面に生えた小さなキノコの前にしゃがみ込み、まるで宝物を見つけた子どものように笑った。アキスは呆れたようにため息をつく。
「……あ、キノコね」
「いっただきま〜す!」
キクラゲは躊躇なくそのキノコを引っこ抜くと、口に放り込んでむしゃむしゃともぐもぐと噛み砕き、しばらく味わうように目を閉じる。
「お味はどー?」
「あぁ、これは幻覚作用があるね〜」
「へ〜。何か見えるの〜?」
「う〜ん、私は効かないみたいで何にも見えないね〜」
アキスはがっかりしたようにうなだれる。
「つまんないね〜」
その時、木々の隙間からショートカットの黄色い髪で青い服を着用、隣に宙を浮く人形が付き添っているアリス・マーガトロイドが姿を現した。アリスは不審者を見るような細い目つきで二人を見つめている。
「あなたたち、魔法の森に迷い込んだの?」
アリスが質問した直後、無邪気な笑顔に変わったキクラゲが人形へ向かって右手に握るキノコを投げつけた。
「危ない!」
人形は飛んでくるキノコを間一髪でかわす。アリスの息遣いが少し乱れ始める。
「な……何!?」
「へぇ〜……人形使いか。私のライバルにはならなそう」
あくびしながら余裕をこくアキスの言葉に、アリスは唇を噛みしめ、アキスを鋭く睨む。
「失礼ね……あなたたちは一体何なの?」
「私はアキス。こっちのキノコ投げたのがお姉ちゃん。異世界から来たんだよね」
「空き巣……? 物騒な名前ね」
アキスは再びあくびを漏らす。
「……アリス? なんだ一文字違いじゃん」
「ふざけないで。とにかく私が森から出られるように案内してあげる……というかさっさと出てって」
アリスの指摘に覇気のない顔付きのアキスとキクラゲはうつむく。
「え〜……せっかく面白そうなキノコがいっぱいありそうだったのに〜」
「キノコを使う人……? あなたキノコ使いなの?」
「そうだよ〜! は〜い!」
「え!?」
キクラゲはアリスに向かってキノコを投げるも、間一髪でよけられる。その時、上空から慌てた様子でリードシクティスが降りてきた。
「キクラゲさん! アキスさん! やっと見つけました!」
「来た! リードさん! 早く敵のところに連れてって!」
リードシクティスはアキスを無視してアリスに向かって深々と頭を下げた。
「この姉妹が何かご迷惑をおかけしていたら本当に申し訳ありません!」
「え……ええ……?」
アリスが呆気に取られる中、三人は空へと舞い上がり始める。
「じゃあね〜」
アリスは木々の上に消えていく三人の背中を呆然と見送った。
「なにが起こったのかしら……」
◆
幻想郷の夜空を飛ぶ三人の背後から何者かが迫る。
「おい!」
三人は背後からの呼びかけに反応して振り返ると、箒にまたがって空を飛んでいる霧雨魔理沙が追いかけて来ていた。飛行中のアキスが腰の二本の刀を抜く。
「へぇ〜……なんか強そう! 名前は?」
「霧雨魔理沙。普通の魔法使いだぜ」
その言葉にアキスの表情が一瞬で曇った。
(普通の魔法使い……? つまり弱いってこと……?)
「戦う時間はありません! 急ぎますよ二人とも!」
三人が飛ぶ速度が上がる。魔理沙も速度を上げ、追跡を止めない。
「そういえばどうしたのリードちゃ〜ん? そんなに切羽詰まって」
「実は……サバミさんとカサゴさん、それに幻想郷に住むお二人が……ターゲットの毒にやられてしまって……キクラゲさんなら何とかできるのではないかと……」
「分かった〜。やれるだけやってみるよ〜」
キクラゲは気楽に答えると、アキスの手に視線を移した。アキスは両手に一本ずつ刀を握っていた。
「アキス〜刀しまわないと落としちゃうかもよ〜」
「私を置いてって。どうせ何もできないだろうし」
アキスがそう提案した瞬間、キクラゲは右手で持っているピンク色のキノコを手放した。
「キノコか!?」
魔理沙が空中で急停止し、取り憑かれたように落ちていくキノコを追いかけ始める。その隙に三人は一気に距離を引き離した。
「しまった……! つい追いかけてしまった……」
見ず知らずの三人に引き離された魔理沙は再び箒に乗って空を飛び始めた。