オリキャラと東方キャラで超次元サッカーする話 作:みかづき椛
幻想郷の曇天の夜、紅魔館内の部屋にあるベッドでは、仰向けで静かな吐息を立てるレミリアがいた。
部屋の隅にはほんの少しだけ表情に曇りがある咲夜の格好をしているシラウオが体育座りをしていた。
(紅茶を出すたびに偽者だと気付かれてしまう……やはり洋風は苦手……)
シラウオは目を閉じ寝息を立て始めたその時、鬼気迫る形相の黒幕子が天井の付近に瞬間移動で出現する。
「悪魔は……死すべし」
黒き刀を両手で握る黒幕子はレミリアに向けて降下し始め、思い切りベッドを突き刺した。
「……手応えがない。なぜ?」
ベッドにはレミリアの姿はなく、黒幕子は視線を横に向けると、そこには咲夜の姿をしたシラウオが立っていた。
「私の部屋で暗殺だなんて……いい度胸ですわ」
シラウオは左腕で顔色の悪いレミリアを抱きかかえ、右手には豪華な見た目の剣が握られている。
「その邪魔な荷物を離したらどうです?」
シラウオは黒幕子の言う通りに左腕の力を緩めてレミリアを床に落とし、黒幕子の視線がレミリアに移る。
「うっ……!」
一瞬にして黒幕子は左胸を苦無で貫かれ、血が少し垂れた。黒幕子はふらつき、仰向けに倒れる。
「悪魔は……死すべし」
心臓に刺さった苦無を抜いた黒幕子は立ち上がり、つけられた傷があっという間に治った。
「逃さない」
黒幕子は周りを見回すと、二人の姿が消えていることを確認し、低空飛行で部屋の外に出た。
少し飛んだ黒幕子はレミリアを包帯で固定しているシラウオに追いつくと、鬼の形相に変わった。
「この夜から消えろ!!」
剣と刀が激しくぶつかり合う。連続で黒幕子の刀をシラウオは涼しい顔で受け止め続ける。
(現役の剣王、アキスほどじゃない)
「お前らなにやってんだ!」
サバミの怒鳴り声がその場に響くと、パジャマ姿のコチヤーズメンバーがその場に集まった。
「邪魔を……しないでくれませんか」
「そりゃするわ! 再び超次元サッカー脳にさせてやる!」
そう言い放ったサバミは左の人差し指を黒幕子に向けた。しかしその瞬間、黒幕子から闇を放出し始める。
「なんだ!? 暗っ……!!」
辺りが真っ暗となって1分後、辺りに光が戻ると、黒幕子・レミリア・シラウオの三人の姿が消えていた。
「お……おい! 消えたぞ! あいつらどこに行ったんだ!?」
魔理沙に詰め寄られたリードシクティスはガクッと膝をついて座り込み、両手で顔を覆った。
「居場所というか……今、黒幕子が使った魔法なら分かります」
「瞬間移動の魔法ではないのか?」
「はい……次元の狭間への封印魔法です……」
「??? 封印魔法とはどういうことだ?」
落ち着いた様子のラックは質問を投げかけると、近くにいるアシカがハッとした表情に変わった。
「もしかして……封印魔法」
「はい……」
返事をしたリードシクティスの顔は青ざめ、顔から多くの汗が滲み出し、絶望するように顔を伏せていた。
◆
壁・床・天井が一面赤黒く、どんよりしている空間に黒幕子・シラウオ・レミリアの三人が瞬間移動した。
「この場所は……?」
周りをキョロキョロと見回し始めるシラウオ。数メートル離れている黒幕子が歩いて近付き始める。
(血の臭い……恐らくここは神様の実験場だった……)
「ここで私は悪魔の力のせいで苦しめられた……!」
「レミリアは関係ありません。なので、ここから出してください」
刀を握る黒幕子は唇を強く噛みしめると、高速でレミリアをおんぶするシラウオに向かって飛び始めた。
(話が通じない……ならば外からの助けを待つしかない……それまでレミリア・スカーレットは必ず守ってみせる)
シラウオの剣と黒幕子の刀が一度ぶつかり合ったその時、レミリアの両目がゆっくり開く。
「咲夜……?」
「お……お嬢様……!!」
一瞬動揺したシラウオは体に大きな切傷を負い、体を巻いていた包帯が切り裂かれ、レミリアは地面に倒れた。
「悪魔……その者は十六夜咲夜などではない」
黒幕子はそう言うと、一瞬でシラウオが黒い忍び装束を身にまとう白髪ショートの姿に変化した。
(仮装が……! まずい……)
「あなたは……咲夜じゃないの……?」
「私は十六夜――」
「咲夜じゃないわ……」
レミリアはシラウオの言葉を遮ると、頭を両手で抱え、何かに怯えるようにしゃがみ込んだ。
「申し訳ありません。私は十六夜咲夜ではございません……ですが、あなたのお命は必ず守って見せます。だから……」
二人の会話の途中、黒幕子は低空飛行で飛び始める。シラウオはレミリアの前に立ち、剣を構えた。
(やっぱり咲夜じゃなかった……)
シラウオが黒幕子の猛攻を受けている間、レミリアは頭の中で咲夜に仮装したシラウオとの思い出が流れ出す。
「お口に合いませんでしたか?」
「いいえ……」
その思い出とは違和感を覚えながらも食事をするレミリアと、咲夜の格好をした者がいる場面だった。
「今、楽にしてあげましょう」
刀を握る黒幕子がそう言った瞬間、レミリアは右手に槍のような武器を手にし、立ち上がった。
「神槍『スピア・ザ・グングニル』!」
レミリアは手にした武器を持って投げ、黒幕子を吹き飛ばした。シラウオは振り返り、ほっとため息を吐く。
「あなたが徐々に料理の味付けを洋風から和風にしてくれたおかげで、小さな変化から受け入れられるようになった。ありがとう」
「意図していませんが……とにかく元に戻って良かった」
「フラン役、パチェ役、小悪魔役にも後でお礼を言わなきゃね」
(……小悪魔さんは本人ですけど)