【全話挿絵】婚約破棄された悪役令嬢、実は元覇王でした ~小僧、婚約を破棄し国外追放するだと?   作:よっちゃ

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なろう、カクヨム、アルファポリスでも投稿しています(する予定です)
全話挿絵がありますので、ぜひイラストもお楽しみください。

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第1話 TS公爵令嬢【覇姫エレクシア】見参

 

 覇王(享年十八)の記憶。

 令嬢(当年十八)の記憶。

 どちらも俺様(わたくし)の生き様。

 ┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈

 

 大理石の広間にざわめきが満ちていた。

 貴族たちが息を呑み視線を集める中心で、

 王太子が得意げに宣言する。

 

「公爵令嬢エレクシア!

 貴様のような、全く可愛げのない氷面姫との婚約は破棄する! 

 どれだけ美しかろうが貴様は俺に微笑まぬ! 

 それどころか、人の心を持たぬ悪役令嬢などと言われているようだな!?」

 

 王太子の声が大講堂に高らかに響いた。

 ざわりと空気が揺れる。

 貴族の子女たちの囁き、嘲笑(ちょうしょう)安堵(あんど)、期待。

 そのすべてが鋭い刃となってエレクシアへ向けられた。

 それに異を唱える声は一つもなく、王太子に逆らう者などいない。

 

(なんて、愚かな男なのかしら……)

 

 それでも美しきエレクシアは(うつむ)かない。

 彼女が孤立しているのは明白だった。

 

「そして私は、真に清らかで心優しき女性、

 ──男爵令嬢リリアーナと結ばれる!」

 

 王太子の腕にしがみつき、その豊満な胸をこれでもかと押し付けている男爵令嬢。

 潤んだ瞳、か弱い微笑み、男好きのする顔。

 

 観衆は「まあ……」「なんて可憐な」と(ささや)き合う。

 

 ──エレクシアの胸の奥で、何かが小さく(きし)んだ。

 これまでにも幾度となく感じてきた違和感。

 公爵令嬢としての振る舞いを完璧に演じてきたはずなのに、どこか噛み合わない感覚が常にあった。

 

 ──その時だった。

 

「フフフ……小僧、俺様(わたくし)との婚約を破棄するなどとは、笑わせおるわ」

 

 エレクシアの口から、自身でさえ信じられぬようなおよそ令嬢らしからぬ言葉が漏れた。

 

(え、こ、こぞう? わたくし、何を言って……)

 

 エレクシアの頭の奥で何かが砕け、視界が反転する。

 

 雪原、血、咆哮(ほうこう)

 幾千の拳と、幾万の断末魔。

 そして強敵(とも)との死闘。

 天を()く闘気、(かばね)の上を往く覇道。

 

 ──覇王

 己はかつてそう呼ばれていた。

 ただ「強さ」だけで世界を席巻した(おとこ)

 

(そうだ、わたくし(俺様)は……

 エルドレイン公爵家の長女、エレクシア・エルドレイン。

 そして……)

 

 エレクシアは、ゆっくりと瞬きをした。

 

(ふむ……全て思い出したわ)

 

 胸の奥で眠っていた炎が目を覚ます。

 背筋を貫く暴力的なまでの確信。

 

 ──俺様(わたくし)は、力で全てをねじ伏せて来た。

 ──覇王でも公爵令嬢であっても、その生き様は変わらぬ。

 

 エレクシアはキャンキャンと喚く王太子(こいぬ)を見た。

 いや、見下ろした。

 

(この程度の、毛も生え揃わぬ餓鬼が……

 この俺様(わたくし)に向かって(さえず)るとは。フフフ、愉快)

 

 口元が自然と(ゆが)む。

 それは社交界の華と(うた)われた令嬢の微笑ではない。

 かつて覇王と呼ばれた者だけが浮かべる、強者(つわもの)の笑みだった。

 

「…………」

 

 静かな沈黙が講堂を支配する。

 

「それで……話は終わりか、小童(こわっぱ)よ」

 

 その声は、鈴を転がすように澄んだ年若き令嬢の麗声(れいせい)だった。

 だが──内包する圧は、(おんな)だけが発する威圧。

 

「こ、こわっぱ? いや、まだ話は終わっていないぞ! 貴様を、この俺の王国から……追放する!」

 

 次の瞬間。

 

「フハハハハハハ、羽虫(はむし)ごときが、この俺様(わたくし)を追放とはな! 

 青二才がなかなか(さえず)りおるではないか!」

 

 胸を震わせエレクシアが(わら)う。

 

「きさま! 殿下に向かってその無礼な態度は何だ!」

 

 王太子の取り巻きの一人、次期騎士団長と言われる男が、エレクシアを力で組みしだこうと走り寄ってくる。

 か弱き令嬢相手に剣を抜き、獣のような笑みを浮かべて踏み込んだ。

 

 ──その慢心、その傲慢(ごうまん)

 

(わめ)くな雑兵(ぞうひょう)!」

 

 エレクシアのスカートの(すそ)が揺れた。

 細く、白く、神に愛された造形の脚。

 氷像(ひょうぞう)(ごと)き美を宿す、

 公爵令嬢の脚が(あらわ)になる。

 

 

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「 ──  陰嚢粉砕脚(いんのうふんさいきゃく)  ── 」

 

 その一歩はまるで舞踏だった。

 静謐(せいひつ)で優雅で、寸分の狂いもない。

 舞姫が円舞曲(ワルツ)を刻むように、

 氷上を滑るかの如く音もなく踏み込む。

 

 グチャッ!

 不快で嫌な音が響いた。

 

 騎士(それ)は世にもおぞましい断末魔(ひめい)をあげ崩れ落ちる。

 主人を失った剣が乾いた音を立てて床を転がり、もはやそれを握る者はいない。

 騎士団長への、そして男としての未来は無残にも(つい)えた。

 

 学園の大広間に重い沈黙が落ちる。

 

 エレクシアは花弁がこぼれるようなあどけない微笑を浮かべ、小首をかしげて言った。

 

 

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「未熟者! 漢たるもの、全身全てが武器! 

 我が師の剛嚢(ごうのう)であったならば、

 逆に俺様(わたくし)の脚が砕け散っていたわ!!」

 

 

 続く

 




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