【全話挿絵】婚約破棄された悪役令嬢、実は元覇王でした ~小僧、婚約を破棄し国外追放するだと?   作:よっちゃ

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第17話 淑女の女子会 王太子の扱いは汚物以下①

 

「公爵令嬢エレクシア、貴様のような陰気な女との婚約は

 ──今この場で破棄する!」

 

 王城大広間に、王太子の怒声が(とどろ)いた。

 

「フフフ……よかろう、

 ならば……死ぬがよい!」

 

 エレクシアの背後の空間が、ぐにゃりと(ゆが)む。

 漆黒(しっこく)の闘気が()ぜ、床石が音もなく崩壊する。

 

 

 

【挿絵表示】

 

 

 

覇天(はてん)日輪(にちりん)究極奥義──

 日輪(にちりん)滅股(めっこ)殺蹴(さっしゅう)!」

 

 エレクシアの白磁(はくじ)のように(なめ)らかで、

 彫像のように美しい脚が(ひらめ)いた。

 

 次の瞬間、王太子の()()()に日輪の如き光が炸裂する。

 

「ぐおおお! 余の股間が、燃え盛る太陽のように熱いイイイイイ!」

 

 王太子の身体が灼熱に包まれる。

 恒星(こうせい)の如き熱量が解き放たれ、

 その存在は光の中で焼かれていく。

 

 元勇者であり歴代最強と(うた)われた王太子は、

 燃やし尽くされながらも笑みを浮かべた。

 そこにあったのは強者(つわもの)への(けい)の念。

 

「み、見事だ……エレクシア。甘さを捨てきれなかった貴様が、

 まさか、魔王すら退けた勇者を一撃で(ほうむ)るとは……」

 

 エレクシアは振り返らない。

 

「執念。それが我を覇王へと変えたのだ」

 

 死の間際──好敵手(とも)は最後に彼女を見た。

 

「エレクシア……フフッ、俺ごときの……勝てる相手ではなかった……

 貴様こそ真の覇王よ……」

「ぐばあ!!」

 

 言い終えるや否や、王太子の肉体は日輪の灼熱に焼き尽くされ、

 やがて灰となって崩れ落ちた。

 

 その灰さえも熱風に巻き上げられ、跡形もなく消え去る。

 

 

 ──終劇。

 

 

 ┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈

 

「と、こんな感じでどうだろうか。我ながら素晴らしい出来だと思う」

 

 エレクシアは誇らしげに胸を張った。

 

「王太子殿あそこを焼かれて逝った──!! 

 肉片の欠片も残らず文字通り燃え尽きたでござる!!」

 

 マーガレットは扇を広げ、目を見開いた。

 

「いと恐ろし! いと理不尽!」

 

「いや、婚約破棄なんぞするやつだからな、自業自得だろう」

 

「さすがはエレクシア様。

 王太子如き汚物にも、人としての尊厳ある最期を与えるとは……」

 四天王セラフィーナが、不敵に笑った。

 

「ニホンの神々が刺激を求めるのならば、

 次はこのセラフィーナが作ってみましょう」

 

 

 ┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈

 

「セラフィーナ、陰気な貴様との婚約を破……

 なっ!?」

 

 王太子がそう言い終わる直前。

 空が(きし)み、数千の鋼鉄の槍が顕現した。

 それらが王太子の身体を、雨のように容赦なく貫く。

 

「ぐぼぁっ……!」

 

 鮮血が舞う。

 だがセラフィーナは前へ歩み寄る。

 

「下衆よ、冥府へ逝く前に問いましょう」

 

 槍に貫かれながらも、なお立つ王太子へ、セラフィーナが問いかけた。

 

(おんな)の生き様とは、なんぞや?」

 

 王太子は血を吐きながら、笑った。

 

「女か……フッ、女など顔が美しければそれでよい……」

「ぎゃびいっ!」

 

 槍が一斉に(うな)る。

 無様にも王太子の身体は千片(せんぺん)裂断(れつだん)された。

 

 細切れの肉片が音もなく地に落ちる。

 セラフィーナは背を向ける。

 

「愚か者め」

 

 風が黒髪を揺らす。

 

(おんな)の生き様とは──

 退()かず、()びず、(うつむ)かぬこと」

 

 セラフィーナがそう言い終えた瞬間、

 王太子の汚らわしい残骸(ざんがい)は、

 (ちり)となって消えた。

 

 

 ──終劇。

 

 

 ┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈

 

「ウヒイイイ! 王太子殿また()った──!!」

「今度は裂断(れつだん)されて

 残骸(ざんがい)すら残らず(ちり)になったでござる!?」

 

 マーガレットは額を押さえた。

 

 エレクシアは腕を組み、うむと(うなず)く。

 

「しかし、なるほどな。こうして物語を作ってみると……

 マーガレットの申していた“ニホン”とやらに住まう神々が、

 なぜこのような話を好むのか、少し理解できる」

 

 マーガレットはぴくりと肩を震わせた。

 

「神々……と申されましても、上位次元よりこの世界を観測しておる方々にて候」

「ゆえに、この世界では“婚約破棄される令嬢”が量産されるのでござる」

「ニホンの方々が、それを好むゆえに」

 

「フフフ……迷惑な神々だな」

 

 エレクシアは脚を組み直した。

 白磁(はくじ)のような脚がちらりと覗き、

 ハイヒールの鋭い踵が、怪しく光った。

 

「よかろう」

「しかしだ、婚約破棄をするような無礼な下郎に対し、

 軽快に“ざまぁ”を叩き込む。

 これは確かに、スカッとする」

 

「そうですね。理不尽に捨てられし側が、圧倒的力で逆転する。

 それがざまぁ。

 短く、強く、わかりやすいゆえに流行る、と」

 

 セラフィーナが淡々と分析する。

 

 

「オレにも作らせてくれ。

 実はオレも生前は日本で生活していた記憶が朧気(おぼろげ)ながらあるんだ」

 

 醜姫(しゅうき)ブス・グロリアがニヤリと笑う。

 

「婚約破棄ものは……そこそこ読んだからな」

 

 

「ほお、それは楽しみだ。では醜姫(しゅうき)よ、

 元ニホンジンの腕前、見せてもらおうではないか」

 

 

 ②へ続く。

 

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