【全話挿絵】婚約破棄された悪役令嬢、実は元覇王でした ~小僧、婚約を破棄し国外追放するだと?   作:よっちゃ

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第18話 淑女の女子会 王太子の扱いは汚物以下②

 続き。

 

「ブス・グロリア! 醜い貴様との婚約を──

 今この場で破棄する!」

 

 王城大広間に、王太子の高笑いが響き渡った。

 

「そうよそうよー! あんたみたいな醜女(しこめ)

 視界に入るだけで気分悪いわ!」

 

 令嬢が扇で口元を隠し、くすくすと嗤う。

 ざわめき、嘲笑(ちょうしょう)憐憫(れんびん)

 グロリアはうつむいた。

 ぽたり、と涙が大理石の床に落ちる。

 会場は誰一人として彼女を庇わない。

 

「……はい。私は(みにく)醜女(しこめ)です」

 

 満足げに頷く王太子。

 

「ようやく自覚したか。

 安心しろ、代わりにこの美しいマリアンヌを妃に迎える」

 

 隣のマリアンヌが誇らしげに胸を張る。

 そのとき。

 

 ──轟音。

 大扉が内側へ弾け飛んだ。

 砂煙の中から、日輪のように輝く赤金(しゃっきん)の軍装を(まと)う青年が歩み出る。

 

「ブス・グロリア」

 

 低く、甘く、しかし王の威圧を宿した声。

 

 隣国の若き皇帝にして覇王──エレクシアン。

 月光を宿す銀髪。 星を砕いたかのごときルビーの瞳。

 見る者すべてを黙らせる、圧倒的な美。

 会場が静止する。

 

「な、なぜ覇天(ざまあ)帝国の皇帝がここに!?」

 

 王太子の声が裏返る。

 

 エレクシアンは歩み寄り、膝をついた。

 そして──

 グロリアの手を取る。

 

「やっと見つけた。私の愛しい人よ」

「ブス・グロリア。私と結婚してくれ」

 

「なにぃぃぃ!?」

 

 王太子の顔が(ゆが)む。

 

「私は……見ての通り醜女(しこめ)

 あなたに釣り合うわけがございません」

 

 覇帝エレクシアンは微笑んだ。

 

「外見など関係ない」

 

 その瞳が、じっとブス・グロリアを見つめ揺るがない。

 

「我は、そなたの愛が欲しい」

 

 ──瞬間。

 天井から光が降り注ぐ。

 ブス・グロリアの身体を(まと)っていた黒き呪紋が、

 ぱきり、と砕け散った。

 

 光が収まり、そこに立っていたのは──

 女神すら(かす)む超絶の美女。

 白金(しろがね)の髪に蒼き瞳。

 まさしく聖女。

 

 年老いた宰相が叫ぶ。

 

「おお! まさしく三百年に一度現れる聖女様」

 

 会場が震える。

 

「う、嘘だ……」

 

 先ほどまで笑っていた貴族たちが、次々と膝をつく。

 マリアンヌは顔を引きつらせる。

 

「私は呪われていました」

 

 聖女は静かに告げる。

 

「醜い姿に変えられる呪い。

 それを解く唯一の方法は──

 醜い私を愛してくれる、 真実の愛」

 

 覇帝エレクシアンが聖女を抱きかかえる。

 お姫様抱っこ。

 

 

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「さあ聖女グロリア。我と共に行こう」

 

 王太子は腰を抜かした。

 

「ま、待て……それは俺の婚約者だぞ!」

 

「違いますわ」

 

 グロリアは初めて微笑む。

 

「あなたが先程捨てたでしょ」

 

 言葉が、刃のように刺さる。

 

 マリアンヌが急に覇帝エレクシアンへすり寄る。

 

「あ、あの……エレクシアン陛下。わたくしも──」

 

「貴様のような女に興味はない。我が愛する人は聖女グロリアのみ」

 冷酷なまでの一刀両断に、会場に忍び笑いが広がる。

 

「王家は聖女を捨てたのか」

「なんという愚かさだ」

「この国は終わりだ」

「覇天帝国の属国に下ろう」

 

 囁きが刃となる。

 王太子の顔は真っ青。

 

「やめろ……やめろぉ……!」

 

「行こうか、愛しきブス皇后よ」

 

 ブス聖女は頬を赤らめ、彼の首に腕を回した。

 

「ふふ……では陛下」

「どうかこの醜女(しこめ)を落とさないでくださいね」

 

「我は、前のそなたの顔も愛していたぞ」

 

「もう……陛下のいじわる」

 

 グロリアはぷくっと頬を膨らませる。

 

「では今の私は?」

 

「どちらも我の愛するグロリアだ」

 

「……そんなこと言われたら、離れられません」

 

 二人は顔を見合わせ、小さく笑った。

 

 

 王太子の絶叫が響く。

 

「ま、待て! それは私の──!」

 

 二人は光に包まれ、消えた。

 残されたのは、

 膝をつきすべてを失った王太子と、

 取り巻きすら離れていく新婚約者マリアンヌの姿。

 

 遠くで祝福の鐘が鳴った。

 

 

 ──終劇。

 

 

 ┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈

 

「ふう、今回は王太子殿は御存命でござるし、

 女子の好む甘味の如きTheざまぁでござるな」

 

 マーガレットが額の汗を拭う。

 

「婚約破棄する者など砕け散ればいいと思うんだがな」

 

 エレクシアが不満げに言う。

 

「しかし、それぞれの話に良いところがある」

「すべてまとめた話も、面白そうだな」

 

 時計を見たセラフィーナが静かに言った。

 

「エレクシア様」

「夜も更けてまいりました。そろそろお休みの時間です」

 

 エレクシアがふと窓を見る。

 

「……もうそんな時間か」

 

 軽く肩をすくめた。

 

「続きはまた明日だな。今日は良い勉強になった」

 

 

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 マーガレットが伸びをする。

 

「では拙者も寝るとするでござる!」

 

 醜姫ブス・グロリアが笑う。

 

「次はマーガレットの話も期待している」

 

 エレクシアが立ち上がる。

 

「うむ。楽しみにしているぞ」

 

「……おやすみ」

「おやすみなさい」

「おやすみなさいませ」

「おやすみなされ」

 

 

 そして四人はそれぞれ部屋へ戻っていき、物騒な女子会はお開きとなった。

 

 

 ──翌日、新たに哀れな被害者(王太子)が生まれる。

 

 

 

 

 ★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★

 

 電覇書房刊『実在した! 世界滅殺拳法列伝 外伝』より

 

 ──日輪滅股殺蹴(にちりんめっこさっしゅう)──

 

 日輪覇滅掌の流れを汲むとされる、失伝した異端の奥義。

 その起源は南方光覇宗の修行僧の一派にある。

 彼らは日輪覇滅掌の修練において、

 掌では耐えきれぬ太陽の闘気が存在することを知った。

 

 そこで彼らが目をつけたのが──

 人体で最も強靭な部位、脚である。

 伝承によれば、ある高位修行僧が

「掌で受ければ骨が砕けるならば、脚で放てばよいではないか」

 と喝破し、日輪の闘気を脚へと巡らせる秘法を編み出した。

 

 こうして誕生したのが、

 日輪の灼熱を一点に叩き込む禁断の蹴撃

 ──日輪滅股殺蹴である。

 この技は、敵の下腹部(男にとっては急所)に日輪の闘気を集中させることで

 全身の経絡を瞬時に焼き尽くすとされる。

 

 古記録には次のように記されている。

「日輪覇滅掌が太陽そのものならば、

 滅股殺蹴は太陽を一点に落とす流星である」

 しかし威力があまりにも凄まじかったため、

 修行僧たちはこの技を

「武人の誇りを砕く禁脚」

 として封印したという。

 

 なお、この技を完全に使いこなせた者は

 史書によれば

「三名のみ」

 とされている。

 

 

 ③へ続く。

 

 

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