【全話挿絵】婚約破棄された悪役令嬢、実は元覇王でした ~小僧、婚約を破棄し国外追放するだと?   作:よっちゃ

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第20話 エレクシアの薄い本と壊れた王太子④

 続き

 

 

 マーガレットがやり切った顔で紅茶を(すす)る。

 

「と、まあこんな感じでござる」

 

 エレクシアが腕を組み、感心したように頷く。

 

「ううむ、見事だ。

 王太子を物理的に破壊するのではなく、

 精神汚染して狂わせるとは」

 

 四天王セラフィーナが静かに言った。

 

「なかなかのものです。

 肉体を壊すより、精神を壊す方が後処理が簡単」

 

 醜姫(しゅうき)ブスが腕を組む。

 

「甲乙つけがたい……皆、素晴らしいざまぁだった」

 

 エレクシアが脚を組み直した。

 白磁のように滑らかな脚がちらりと覗く。

 

「そうだな、ではそれぞれ、これだけはやりたいポイントを挙げていこう」

 

 指を一本立て、少し誇らしげに言う。

 

「俺様はやはり無礼者は粉砕したい。

 究極奥義で股間から焼き尽くす」

 

「推し様は“物理的”ざまあでござるな」

 

 マーガレットが頷く。

 

 セラフィーナが淡々と言う。

 

「私はまずは漢の生き様を問い、

 やはり王太子如き、槍で始末したいです」

 

「“漢の生き様”と槍攻めでござるな」

 

 醜姫ブス・グロリアが腕を組む。

 

「むう、オレは……」

 

 三人の視線が集まり、恥ずかしそうに告げる。

 

「覇帝エレクシアン様が白馬の王子のように現れ……

 それで、その……プロポーズされたい……」

 

「呪いが解けて聖女になるのは?」

 

 セラフィーナが補足する。

 

「いや、そこは重要ではないんだ。

 オレは別に醜女(しこめ)のままでも構わないからな」

 

 最後にマーガレットが望みを言う。

 

「我は王太子を狂わせたいでござる。

 狂った後なら焼き尽くされようが、

 串刺しにされようが構わぬでござる」

 

「では──ふむ。

 全部まとめてやるとどうなるだろうか」

 

 全員の目が輝く。

 

「さすがはエレクシア様。素晴らしいお考えです」

 セラフィーナが紅茶を置く。

 

「では全入れの簡易版をやってみるでござるか。

 令嬢役はブス殿で」

 

 全員が頷いた。

 

「ニホンの神々よ、これが正真正銘のざまあ。

 (とく)とご覧あれ」

 

 ┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈

 

 王宮の大広間。

 

「ブス・グロリアよ! 貴様との婚約を破棄する! 

 理由は貴様が醜いからだ」

 

「はい、仰る通り私は醜女です」

 

 王太子の宣言に、ブス・グロリアが崩れ落ちる。

 

 その瞬間──

 ドォン!! 

 扉が弾け飛び、覇帝エレクシアンが現れた。

 

「探したぞブスよ。我が妃となってくれ。

 貴方を心から愛している」

 

 覇帝が(ひざまず)き、プロポーズをする。

 

 真実の愛に呪いが解け、ブスは光に包まれ

 ──聖女へと姿を変える。

 

「ふざけるなぁ! 死ねえ!」

 

 王太子が豹変し、剣を振り上げる。

 

 だが次の瞬間。

 空が黒く染まり、

 覇天エレクシアンの護衛騎士セラフィーナの声が静かに響いた。

 

「──愚か」

 

 数千の鋼の槍が天から降り注ぎ、王太子を串刺しにする。

 

「ぐぼぁああ!」

 

 血まみれで死に損ないの王太子の周囲で、

 無表情のメイドたちが輪を作り歌い出す。

 

 おしーえてー

 おうたーいしー

 おしーえてー

 おうじさま

 

 おんなのー

 いきざまと

 いまのきもち

 

 メイドたちと貴族たちが次々と王太子に問いかける。

 

 ねえ、いま

 どんな気持ち? 

 無様にやられて

 聖女をねとられて

 (おんな)の生き様もわからず

 

 ねえ、教えてよ

 ねえ、答えてよ

 おんなの生き様と

 今の気持ちを

 

 兵士たちが盾を打ち鳴らし、雄々しく叫ぶ。

 NTR! 

 NTR! 

 DVD! 

 DVD! 

 

 その時。

 王太子の背後から、

 マーガレットが優しくそっと(ささや)いた。

 まるで聖母のように。

 

「王太子殿──

 貴方様こそ、ざまあの愛し子にござる

 恐れず受け入れるのです」

 

 マーガレットが、まるで聖母のように微笑んだ。

 

 王太子の身体が震える。

 

「ウヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒ!」

 

 肉が裂け骨が歪み、

 王太子は異形の怪物へとその姿を変える。

 

「ぼくは! 

 ざまあのいとしごだぞぉ! 

 みんな、こんやくはきして…………喰ろうてやるわ!」

 

「愛しき聖女ブスよ、離れておれ」

 

 覇帝エレクシアンが一歩前へ出る。

 

「覇天奥義──日輪(にちりん)滅股(めっこ)殺蹴(さっしゅう)

 

 太陽の如き蹴りが、怪物の下半身を焼き尽くす。

 股間から焼かれ、やがて王太子は灰となり崩れ落ちた。

 消えゆく中で王太子だったものは小さく(つぶや)く。

 

「さすがだ……覇帝エレクシアン……

 余の勝てる相手ではなかった。

 そしてありがとう……余を止めてくれて……

 これで、()ける……」

 

 

 ──終劇。

 

 

 ┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈

 

「ま、こんな感じか」

 

 エレクシアが満足そうに伸びをした。

 

「よし、じゃあみんなで甘味でも食べようか」

 

 メイドに軽く手を振る。

 

「ケーキを持って来てくれ。あと紅茶も」

 

「おお、ケーキか!」

 

 ブス・グロリアがぱっと顔を輝かせる。

 

「早く食べましょう」

 

 セラフィーナが小さく頷く。

 

「甘味は死闘の後の楽しみでござる」

 

 マーガレットも目を輝かせた。

 

「拙者は苺の乗ったものが良いでござる」

「オレはチョコがいいな」

「いや待て、全部食べればよいではないか」

「メロンが乗ったのもいいですね」

 

 テーブルにケーキが並び、四人は楽しそうに笑った。

 キャッキャッウフフ。

 乙女たちの女子会は続く……

 

 

 

 ──これで終わりのはずだった。

 

 

 

 ┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈

 

 ──その頃。

 王都の街角。

 一人の男が街をふらふらと歩いていた。

 貴族の衣服を着ており、明らかにやんごとなき身分の男。

 

 それは──

 

 この世から消滅したはずの

 王太子その人。

 

 

 近くを歩いていた母娘が、彼を見て囁く。

 

「ママー、あのおうたいしさま、

 なんかぶつぶついってるー」

 

 母親が慌てて子供の目を隠す。

 

「しっ、見ちゃいけませ……

 いや、ま、まさか、あれは! 

 あのヘビは破滅の悪魔(あくま)化身(けしん)!?」

 

 

 王太子は虚ろな目で同じ言葉を繰り返していた。

 まるで誰かに語りかけるように……

 

 わたしは

 こんやくはき(アスビック)

 

 えいえんの いのちをもつ

 のろわれた へび

 

 ざまあされても

 ねとられても

 おういを はくだつされても

 

 ほかの さくひんに

 のりうつり

 

 また

 こんやくはきを

 してしまう

 

 えいえんに

 ものがたりを

 くりかえす

 

 のろわれた あくまのけしん……

 

 

 王太子は、そう呟きながら

 どこかへ歩いていった。

 

 

【挿絵表示】

 

 

 

 生成AI先生による力作(指示:GLっぽい表紙)

 

 

 

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