【全話挿絵】婚約破棄された悪役令嬢、実は元覇王でした ~小僧、婚約を破棄し国外追放するだと? 作:よっちゃ
テーマソング二番
♪ 行く手を阻む 巨大な魔の沼♪
♪ 底なし沼が 侵入者の 行く手を阻む♪
♪ 巨大なピラニアが 沼より現れる♪
♪ エレクシアの 白い脚が 怪魚を蹴り飛ばす♪
♪ さらに密林を 進むと♪
♪ 奇妙な足跡が 続いてる♪
♪ 人のものとは 思えない♪
♪ 不思議な足跡だ♪
♪ 密林の奥地に 原住民発見!♪
♪ 腕には何故か スマートフォン♪
♪ この密林には まだ誰も知らない♪
♪ 恐るべき秘密が 隠されている♪
♪ ゆけ ゆけ 覇姫エレクシア♪
♪ ゆけ ゆけ 覇天軍女子♪
♪ ゆけ ゆけ 未来のために♪
♪ 密林の奥へ!!
続き
その時だった。
黒い水面が、突然──盛り上がった。
──ドォン!!
巨大な影が、水中から次々と跳ね上がる。
全長二メートルはあろうかという、
人を喰らう巨大ピラニアの群れ。
口いっぱいに並ぶ鋭い牙。
濁った黄色の目が、侵入者を睨みつける。
魔の沼に棲む捕食者──
【
ギチギチと顎を鳴らしながら、
巨大魚たちが一斉に口を開く。
水面が爆ぜるように弾け、
群れは弾丸のごとくエレクシア隊長へ襲いかかった。
しかし──
隊長の表情は、まったく変わらない。
「ふん」
水面を蹴った隊長の身体が、ふわりと宙に浮いた。
紅いドレスが
そして──
バキィィッ!!
エレクシア隊長の
最前列の怪魚の顔面を蹴り抜いた。
究極奥義──覇天撃怪魚脚。
衝撃は頭蓋を貫き、
巨体はそのまま水面へ叩きつけられる。
ドォォォン!!
一匹が沈む。
だが次の瞬間、さらに数匹が跳ね上がる──
だが遅い。
宙に舞う隊長の脚が、
連続して閃いた。
バキッ、バキィッ、バキィィッ!!
次々と叩き落とされる巨魚たち。
巨大魚は大きく跳ね、やがて力を失い、
そのまま黒い沼の底へと沈んでいった。
エレクシア隊長は何事もなかったかのように着地し、再び走り出した。
水面を蹴る音だけが密林に響く。
やがてエレクシア隊長は対岸へと到達した。
最後の一歩で地面を踏みしめると、手に持っていた鋼鉄ロープを近くの巨木へと結びつける。
太い幹にぐるりと回し、固く締め上げる。
これで、一本の鋼鉄索が沼の上に張られた。
隊長はロープの張りを確認すると、満足そうに頷き、対岸へ向かって手を軽く振る。
その合図を見た覇天軍女子たちは、待っていたと言わんばかりに動き出した。
「参りますわ」
一人の令嬢が、ロープに滑車を掛ける。
腰に結び、ロープを両手で握る。
そして──
「ヒャッホーイ!!」
シュオオオオオオッ!!
令嬢の身体が一気に沼の上を滑り出した。
ドレスが大きく広がり、まるで赤い花が空を舞うようだ。
沼の黒い水面の上を、優雅に、そして凄まじい速度で滑り抜けていく。
「まあ! 楽しそうですわ!」
「次はわたくしです!」
「ドレスを押さえてくださいませ!」
次々と令嬢たちが滑車を掛けていく。
シュオオオッ!
シュオオオオッ!
赤、桃、白。
色とりどりのドレスが、風を受けて膨らみながら次々と沼を越えていった。
その様子は、まるで空を渡る貴族の行列のようである。
沼の魔物たちも、さすがに手が出せない。
もし飛びかかったとしても──
先ほどの巨大魚の末路を見れば無事では済まないからだ。
やがて最後の令嬢が対岸へ到達した。
スカートの裾を整え、優雅に着地する。
「ふう……思ったより速いですわね」
「風が気持ちよろしいですわ」
覇天軍が誇る行軍術──
覇天軍
鋼鉄の索を張り、滑車を用いて一気に谷や沼を越える大胆不敵の渡河法である。
ドレスを汚すことを嫌う覇天軍女子たちにより開発され、現在の優雅な形へと進化した。
その速度は熟練者であれば時速八十キロに達するとも言われる。
やがてエレクシア探検隊は、密林の奥地で奇妙な光景を目撃した。
木々の合間に粗末な小屋が並ぶ集落があったのである。
そして。
そこで隊員たちは──
いつもの光景を目にした。
──────────
四天王メスガッキーナが一歩前に出る。
「……ざーこ♡、おまえ、ここで婚約破棄をしたの?」
翻訳
『ちいさなさかな すきです、 あなたは ここで こんやくはきを なさいましたか?』
司祭は、ゆっくりと頷いた。
「そうだ、こむすめよ」
翻訳
『はい、仰る通りでございます。可愛い小さな私の娘様』
そして、恐るべき顔で淡々と言い放つ。
「われわれにとって、こんやはきは──ぎしきなのだ!」
翻訳
『
「※§ΛΦ〇ΧΨ※§ΛΦ〇ΧΨ!!」
周囲の未開の部族たちが一斉に叫び声を上げた。
「キィィエエエエ!!」
翻訳
『私共は貴方様方を捕縛し、
なお、逃走はお控えいただけますと幸いです。
──そちらの、ちいさな魚、ちいさな魚と煩い小生意気なメスガキ。
貴様は最も新鮮な状態で献上いたしますので、ご安心くださいませ。どうもありがとうございました。では、いただきます』
蛮族たちが狂ったように目を見開き、探検隊へと襲いかかってくる!
「何と言う野蛮人だ!」
「容赦は無用だ! 撃退せよ」
婚約破棄を弄ぶ者に慈悲はない。
一瞬で戦場は制圧され、未開の部族たちはすべて地面に伏し、縄で縛られ身動き一つ取れない。
静寂が戻る。
四天王メスガッキーナが愚かな司祭を見下ろし
「……儀式、ねえ。ふふふ、ざーこ」
翻訳
『あらあら、そんなにいきりたって……それがあなたがたの“ぎしき”なの?
ずいぶんとおそまつで、かわいらしいこと。
いっしょうけんめい こわがらせようとしているみたいだけれど、ごめんなさいね、すこしもこころがうごかないの。
ねえ、いまどんなきもち?
たいせつにしていたものを、こんなふうにかるくあしらわれて……
くやしくて、くやしくて、しかたがない?
ふふ、それでもなにもできないなんて──ほんとうにあわれだわ。
ほら、もうすこしがんばってみせて?
でないと、さいごまで“ざーこ”のままよ?』
なぜ、この未開の部族は婚約破棄を繰り返すのか。
それを“儀式”と呼ぶ理由は何なのか。
そして──
あの奇妙な
謎は、ますます深まるばかりであった──。
ここまで読んでくださって、ありがとうございました。
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