【全話挿絵】婚約破棄された悪役令嬢、実は元覇王でした ~小僧、婚約を破棄し国外追放するだと? 作:よっちゃ
続き
空気が凍る。
「はあ?」
即座に反応したのは四天王、メスガッキーナ。
「なに言ってんのこの雑魚♡
ざーこ、ざーこ。ねえおばさん、頭大丈夫なの?」
メスガッキーナが前に出る
「変な格好の雑魚のくせに、 いきなりエレクシアちゃんをナンパとかキモすぎでしょ♡」
火花が散る。
だが、エレクシアは手を軽く上げた。
「……落ち着けメスガッキーナ。こいつはなかなか面白そうな
「えー、でも、エレクシアちゃんがそういうなら我慢する♡」
エレクシアは静かにキャサリンを見つめる。
その目は、わずかに楽しんでいるようにも見えた。
「なかなか気合いの入ったドレスと髪型だな。それがお前の生き様なのか?」
エレクシアが一歩前へ出る。
キャサリンは口の端を吊り上げた。
「へえ、この世界にはビッと気合いの入ったヤツはいねえと思っていたが、アンタ、顔だけじゃなく、センスもあるんだな。最高だぜ」
互いに、間合いを詰める。
「
キャサリンが闘気を纏う。
「勝った方が全部もらう。それで文句ねえよな?」
「構わん」
エレクシアは静かに答える。
その瞬間──
空気が爆ぜた。
キャサリンの足が床を砕き、一瞬で間合いが消える。
拳が唸りを上げる。
「喰らえ!
振り抜かれた拳の軌跡に、龍の幻影が走る。
轟音。
空気そのものが引き裂かれる。
「ふむ、威力はなかなかだが」
「遅い」
エレクシアは、半歩だけ身を引いた。
「……フフ、殺しはせぬ」
「──日輪掌打(にちりんしょうだ)」
繰り出された一撃は、拳というより“光そのもの”だった。
眩い閃光が、一直線に奔る。
衝突。
龍と日輪が、正面から激突した。
──ドォォォン!!
衝撃が天へと突き抜ける。
天井が、空が──
まるで裂けたかのように震えた。
大気が波打ち空間が軋む。
だが、勝敗は一瞬だった。
煙が晴れ、そこに立っていたのは──
覇姫エレクシアのみ。
キャサリンは、床に膝をついていた。
「……は、はは……
ゆっくりと倒れ込む。
その視線が、ふと上がる。
──エレクシアの脚。
戦闘で裂けたスカートの隙間から、白磁のような白くしなやかな脚線が露わになっていた。
キャサリンの目が、見開かれる。
「……なんて……細くて、綺麗な脚してやがる……」
ガクッ──
そのまま、意識を手放した。
──────────
覇天軍本拠地、公爵邸。
優雅な庭園にて、淑女たちがティータイムを楽しんでいる。
白磁のカップ。
磨き上げられた銀のティーポット。
そして、三段に整えられたケーキスタンド。
キャサリンは椅子にふんぞり返りながら、紅茶を一気に飲み干した。
「……決めたぜ」
乱暴にカップを置き、
まっすぐにエレクシアを見る。
「アタイは、あんたに心底惚れちまった」
場の空気が一瞬止まる。
「こんなに強くて良い
エレクシアは微かに目を細めた。
「いいだろう。
お前も婚約破棄された“
まずは淑女のマナーからだ」
キャサリンはニヤリと笑い、胸の
その横で──
「ざーこ♡ ざーこ♡」
メスガッキーナが足を組みながらニヤつく。
「ねえリーゼントオバサン、ケンカで負けて即落ちとか、ちょろすぎなんですけど~? あなたチョロインなの? ねえ、今どんな気持ち?」
キャサリンがそちらを見る。
一瞬の沈黙。
「……メスガッキーナ先輩。
これからもご指導ご
場が一瞬、静まり──
エレクシアがくすりと笑い、紅茶を一口、口に運ぶ。
「……時が来たやもしれぬ」
「天に挑む時が、な」
「エレクシア様、まさか」
側に仕えていたリリアーナが息を飲む。
「そうだ」
「
紅茶の香りが、静かに広がった。
続く。
──────────
──電覇書房刊「実在した! 世界滅殺拳法列伝」より
古代王朝期に成立したとされる秘拳「
太陽信仰を基盤とするこの拳法は、“光”と“熱”を気の流れとして体内に取り込み、掌に凝縮することを特徴とする。
日輪掌打は、その凝縮した気を一撃として放出する技であり、見た目は単なる掌打に過ぎないが、実際には“高密度の陽気圧”を叩き込むものである。
本来は人体を内側から焼き尽くす殺技であるが、熟練者はその威力を自在に制御可能とされる。
エレクシアが用いたそれは、急所を外しつつも衝撃のみを通す高度な加減が施されており、単なる武技を超えた“統御された暴力”の域に達している。
なお、日輪法の継承者は歴史上きわめて少なく、その多くが王侯貴族に連なる存在であったと記録されている。
龍牙裂衝は、特定の流派に属さない“喧嘩殺法”の極致とされる打撃技である。
その起源は明確ではないが、キャサリンの前世──白百合愚連隊総長としての実戦経験の中で自然発生的に生まれた技と考えられている。
本技の本質は、「踏み込み」「体重移動」「打撃」の三要素を一切の無駄なく同時発動させる点にある。
繰り出された拳は、単なる殴打ではなく、“空間ごと引き裂く衝撃波”として作用し、その軌跡にはしばしば龍の幻影が知覚される。
これは使用者の闘争本能が極限まで高まった結果、視覚的イメージとして外部に投影されたものと推測されるが、詳細は不明である。
また、本技には決まった型が存在せず、その都度最適化されるため再現性は極めて低い。
しかし一度“噛み合った”瞬間、その威力は体系化された武術すら凌駕することがある。
いわば──理を持たぬがゆえに、理を超える一撃である。
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