【全話挿絵】婚約破棄された悪役令嬢、実は元覇王でした ~小僧、婚約を破棄し国外追放するだと?   作:よっちゃ

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第5話 婚約破棄野郎は消毒だーと漢の死合

 

《 覇天軍軍歌 》

 破約(はやく)系女子の生き様は

 退()きなし (こび)なし (なさけ)あり

 誓いを裂かれしその日より

 涙は鋼の刃となれり

 傲慢なる一物(いちもつ)は粉砕され

 軽薄の証は灰と散る

 愛を侮る愚か者よ

 貴様の未来(むすこ)は もう機能せず(しんでいる)

 

 ┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈

 

 とある学園の卒業パーティー。

 燦然(さんぜん)と輝くシャンデリアの下

 ── (きらび)びやかな会場の中央で、今日もまたいつもの断罪が始まった。

 

「子爵令嬢シンシアよ! 陰気な貴様との婚約を破棄し、俺はこの愛らしい男爵令嬢キャロラインと結ばれる!」

 

「そ、そんな……なぜ」

「ふふん」

 

 膝から崩れ落ちる、すべてを失った令嬢シンシア。

 大きな胸を張り、勝ち誇る泥棒猫の令嬢キャロライン。

 

 周囲の冷たい嘲笑(ちょうしょう)

 シンシアを見下ろし、(えつ)に浸る男。

 

 ここにまた一人、婚約破棄を宣告され、

 未来を断たれ、地に伏す女が生まれる。

 

 ──と、思われた、その時。

 

 

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「ヒャッハー! 婚約破棄野郎は消毒だ!」

 

 轟音(ごうおん)

 

 扉が吹き飛び、嘲笑が凍りついた。

 

 ┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈

 

 ──ある日を境に、婚約破棄の現場には“太陽”が昇るようになった。

 嘲笑が起これば、轟音が鳴り響き、

 断罪が始まれば、扉が砕け散る。

 

 銀髪を揺らし、美の覇気を(まと)い、数多くの婚約破棄男を(ほうむ)ってきた美しき覇者。

 公爵令嬢──覇姫(はき)エレクシア(十八)。

 かつて覇王(享年十八)であった記憶を取り戻し、今生でも覇道を往く(おんな)の中の(おんな)

 

 そしてその太陽に(つど)いし淑女たち。

 かつて捨てられ、かつて(わら)われ、絶望を味わった乙女たち。

 婚約破棄を狩って回る覇の軍勢──

 

 ──覇天軍(はてんぐん(ざまぁぐん))

 

 ┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈

 

 真紅のドレスが大きく円を描き、覇姫エレクシアが悠然と姿を現す。

 

 

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「立てい、むすめよ! 

 そのような愚物(ぐぶつ)に膝を折るな!

 立ち上がり、見事そやつの一物(いちもつ)を粉砕してみせよ!」

 

 その言葉に、絶望に染まっていたシンシアが涙を拭い、悪鬼のように立ち上がる。

 再び熱を()びたその瞳は、ただ一点(股間)を見つめていた

 ── ニヤリ、口元が歪む。

 

「ひいいい! は、覇姫エレクシア! 覇天軍!! 

 噂は、本当だったのか!」

 

 無様な悲鳴をあげ、股間を押さえて後退(あとずさ)る男。

 

 ここにまた一人、婚約破棄を宣告し、

 未来(あれ)断たれ(つぶされ)、血に伏す男が生まれる。

 

 まさに、その時。

 

「待てい」

 

 静まり返る会場。

 

 そこに立っていたのは一人の(みにく)い女。

 醜女(しこめ)

 鼻は低く、頬は張り、肌は荒れ、神に見放され、祝福されぬ造形。

 選ばれぬ女。美の対極──(しゅう)

 だが、その身に宿るは覇。

 

「令嬢よ、捨てた男の一物(いちもつ)を潰したとて、その断罪劇(ざまあ)では、お前は救われぬ!」

 

 今まさに、元婚約者(うわきもの)陰嚢(いんのう)を消毒しようとしていた子爵令嬢シンシアの眼に、迷いが生じた。

 

「ふん、醜女(しこめ)よ、うぬは何者だ?」

 

 覇姫エレクシアが、凍てつく双眸(そうぼう)で無礼者を見下ろす。

 

「名乗らせて頂こう! 我こそは……」

 

 (みにく)い女は外套(がいとう)を脱ぎ捨て、胸を張る。

 

覇姫(はき)エレクシアを(あお)ぎ見、覇道を(こころざ)し、その背を追い、なお並び立たんとする者! 

 この風貌(ふうぼう)ゆえ、我は(しゅう)(まと)い、(しゅう)(きわ)め、覇に挑む。

 ──我が名は、醜姫(しゅうき)ブス・グロリア!」

 

 一瞬の沈黙。

 覇姫エレクシアの長き髪が、大きく揺れた。

 

「ハハハハハハ!」

 

 それは覇に挑む“愚かさ”を(わら)うのではない。

 覇に挑む(おんな)の“覚悟”を喜ぶ声。

 

「その容姿、貴様も男に捨てられたな。

 そして修羅の道を往く強者(つわもの)……

 (しゅう)の道を極めんと足掻(あが)き、この覇姫(はき)に挑むか! 

 よかろう、その意気や良し! 

 ならばまずは、その生き様、試してやろう!」

 

 エレクシアは、ただ一歩、踏み出した。

 それだけで空気が裂ける。

 

「受けてみろ、このエレクシアの無敵の一撃」

 

 

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輝天(こうてん)覇断掌(はだんしょう)

 

 両掌(りょうしょう)から放たれた光は、奔流(ほんりゅう)となって一直線に駆けた。

 それは、祝福され、選ばれし美の、絶対の一撃。

 

 美しい光が醜を呑み込む。

 轟音(ごうおん)が響き、床石が砕け、壁が(きし)み、 ()ぜた衝撃が会場を揺らす。

 

 醜姫(しゅうき)ブス・グロリアの身体は、光に()まれたまま吹き飛び、

 赤き絨毯(じゅうたん)を転がり、柱に叩きつけられる。

 

「誇れ、そして眠れい、覇姫(はき)に挑みし醜姫(しゅうき)よ」

 

 身を(ひるがえ)すエレクシア。

 誰もが確信した。 終わった、と。

 

 ┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈

 

 光の中で、意識が沈む。

 

 ──ここまでか。

 覇姫エレクシア……やはり、強すぎた。

 

 闇が迫る、その時。

 知らぬ記憶が、溢れ出す。

 

 (ページ)をめくる指、夜更けの部屋、光る画面。

 恋愛譚(ガールズラブ)転生譚(ハイストーリー)、華やかな逆転劇(ざまあ)

 笑い、泣き、読み(あさ)る“わたし”。

 でも最後まで心に残ったのは

 ── 祝福されぬ女、選ばれぬ女、(むく)われぬ女。

 背を向けられても、(わら)われても、

 愛を捨てなかった、あの醜い女。

 救いのない物語。

 

 だけど私は──あの生き様に、惚れた。

 

 迫るトラック……

 

「わたしの……なまえ……さ、と……み……?」

 

 だが。

 

「否!」

 

 闇を裂くように、頭に、魂に声が響く。

 

「オレは(しゅう)()く者──ブス・グロリア!」

 

 

 続く




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