【全話挿絵】婚約破棄された悪役令嬢、実は元覇王でした ~小僧、婚約を破棄し国外追放するだと?   作:よっちゃ

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第6話 真の漢に退けとは言えぬ!愛とともに滅びよ

 続き

 

 

「馬鹿な……肉体は砕けたはず!」

 

「貴女は太陽だ。すべてを照らす。

 だが、その輝きは強すぎる……」

 

 立ち上がった醜姫ブスが、一歩、踏み出す。

 

「オレは背負う。(むく)われぬ想いを。

 喰らい尽くす、すべての(あざけ)りを!」

 

「うぬごときが(まと)(しゅう)など、我が拳の前に無力。

 ならば、貴様の()り所は──(むく)われぬ愛か!」

 

 エレクシアの拳が、まるで小さな太陽の如く、赤く燃え上がる。

 

 

【挿絵表示】

 

 

「愚か者めが。愛などと! 

 愛ゆえに人は苦しみ、

 愛ゆえに人は(もろ)くなる! 

 太陽は焦がすのみ、抱きはせぬ。

 滅びよ──醜き愛と共に!」

 

 

『受けよ! 日輪(にちりん)覇滅掌(はめつしょう)!』

 

 灼光(しゃっこう)奔流(ほんりゅう)となって(ほとばし)る。

 

「愛ゆえに人は悲しみ、

 愛ゆえに人は醜くもなる!

 だが、その醜愛(しゅうあい)を背負う覚悟こそが──オレの覇道!」

 

『喰らい尽くせ──冥覇(めいは)喰尽(くいじん)!』

 

 黒き覇が広がり、太陽を呑まんとする。

 

 光と闇が衝突した瞬間

 ── 世界が、白に染まる。

 轟音が鳴り響き、床が裂け、天井のシャンデリアが砕け散る。

 

 冥の覇は日輪に呑み込まれ、醜姫ブス・グロリアの身体が宙を舞った。

 赤き絨毯を裂き、壁に叩きつけられる。

 

 だが── 日輪の奔流(ほんりゅう)もまた、無傷ではなかった。

 エレクシアの赤きドレスが、衝撃に裂ける。

 (ひるがえ)った(すそ)が焼け落ち、

 白磁(はくじ)のように(なめ)らかな美脚が、(あらわ)になる。

 

 静寂だけがあった。

 

 そして粉塵(ふんじん)の中、立つのは覇姫のみ。

 だがその足元には、 わずかに焦げた裂布(れっぷ)が揺れていた。

 

 エレクシアはゆっくりと視線を上げる。

 その瞳から、(あざけ)りの色は完全に消えていた。

 

「見事だ、醜姫(しゅうき)ブス・グロリア。

 そして天に感謝せねばなるまい。

 これほどの猛者(おんな)を、俺様(わたくし)の前に送り出した事。

 フフフ、このエレクシアをここまで本気にさせるとはな。

 もはや貴様を(あなど)らぬ」

 

 血が石畳に落ちる。

 それでも倒れぬ醜姫を前に、エレクシアはわずかに顎を引いた。

 

「次の一撃が貴様の最後になろう。

 真の(おんな)に対して退けとは言えぬ。

 我が最強の技にて貴様を(ほうむ)り送ろう。

 それが強者(つわもの)への礼儀」

 

 エレクシアが静かに構える。

 赤き覇気が収束し、その背後に、巨大な光輪(こうりん)が浮かび上がる。

 

 

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「天を裂き、

 地を断つ。

 神殺しの一撃。

 これぞ我が究極の奥義──」

 

 一方、醜姫は膝を震わせながらも両腕を広げる。

 闇が足元から広がり、会場の光を呑み始める。

 

「退かぬ、

 折れぬ、

 この無様な愛も(かえり)みぬ! 

 喰ろうてやる……すべてを! 

 世の(あざけ)りも醜も、全てを焦がす貴女の光も──」

 

 互いの矜持をかけ、両者が同時に踏み込んだ。

 

『滅せよ! 天煌(てんこう)覇皇断(はこうだん)!』

『纏う! 冥府(めいふ)喰界(くいかい)!』

 

 

 ──その刹那。

 天が裂けた! 

 ズガガガガガ──ン!!

 

 二人の間に、雷光が落ちる。

 光が、闇が掻き消え、衝撃波が吹き荒れる。

 

 醜姫(しゅうき)ブスは再び地に叩き伏せられ、

 覇姫(はき)エレクシアもまた、数歩よろめいた。

 

 

「……ば、馬鹿な!」

 

 覇姫エレクシアが天を睨む。

 

「天よ、貴様、なぜ邪魔をする!」

 

 ただ静寂だけが答える。

 

 やがて。

 

「……ハハ」

 

 紅き唇が弧を描く。

 

「ハハハハハ!」

 

 凛然(りんぜん)たる哄笑(こうしょう)が、広間に木霊(こだま)する。

 それは(あざけ)りではなく歓喜。

 

「天よ、この醜姫(しゅうき)に何を見た!?

 よかろう、貴様が止めるというのなら

 ── この戦い、預けようではないか」

 

 エレクシアは一歩退き、赤きドレスの裾をつまみ上げる。

 完璧なる角度、完璧なる静止。

 それは宮廷礼法の極致──

 真の淑女にのみ許される優雅なるカーテシー。

 

 

【挿絵表示】

 

 

「ならば次は、天すら裁いてみせよう」

 

 覇姫の赤き背が闇に溶ける。

 残された空間には、まだ熱を帯びた沈黙だけが横たわっていた。

 

 誰も動けない、誰も息を整えられない。

 

「あの醜女(しこめ)が……」

 

 震える声が、ようやく(こぼ)れる。

 

「無敵無敗の美の覇者を……止めた……?」

 

 地に伏した醜姫。

 その唇に、確かに浮かんだのは

 

 ── 敗者の笑みではなかった。

 

 

 

 ┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈

 

「ねえママ! どうして、あのおねえちゃんたちは、きゅうにケンカをはじめたの?」

 

(わらべ)よ、(おんな)の戦いに理由などない。

 (おんな)は、強者(つわもの)を見れば血が騒ぎ、

 目が合えば死合(バトル)が始まるのよ。

 そして(おんな)には退けぬ(とき)がある。

 ただそれだけ。

 あれが、生き様というものよ」

 

「へーそうなんだ。ちゅうにびょうなんだね♪」

 

 

 ★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★

 

 覇阿メルン書房刊「実在した! 世界滅殺拳法列伝」

 

 ──輝天覇断掌(こうてんはだんしょう)

 太古、南方光覇宗(なんぽうこうはしゅう)に伝わりし最終殲滅掌(せんめつしょう)

 

 両掌の間に極輝覇核(きょっきはかく)を生じ、敵の存在そのものを断つ。

 一度放てば大地は裂け、天井は崩れ、敵は血に染まる。

 

「達人と言えど二度は撃てぬ。

 使えば、(おの)が拳が先に砕ける」

 

 

 ──日輪覇滅掌(にちりんはめつしょう)

 その名の通り、太陽(日輪)の力を(てのひら)に収束させ、敵を滅する究極掌撃である。

 

 その起源は、遠く古代──インド・ガンジス河畔(かはん)にて修行を積んだ

 伝説の武僧・バラモン=ドヴァが編み出したとされ、太陽礼拝の秘儀にその源流を見ることができる。

 

 彼らは真昼の太陽を直視し、眼球を焼きながらも精神を鍛えたという。

 やがてその修行法はシルクロードを経て西方へ伝播。中世ヨーロッパにおいては、

 十字軍騎士団の中に密かに受け継がれた。

 

 そして掌打へと昇華されたのが現在の形──日輪覇滅掌である。

 

「太陽は万人を照らすが、等しく救わぬ。

 耐えられぬ者は焼かれ、立ち続ける者のみが天の覇に並び立つ」

 

 

 




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