【全話挿絵】婚約破棄された悪役令嬢、実は元覇王でした ~小僧、婚約を破棄し国外追放するだと? 作:よっちゃ
荒廃した世紀末の世に生まれ、
世界中の修羅を集めた漢の塾で育った元覇王(享年十八)がTS転生した、
公爵令嬢のエレクシアは、今だ「愛」というものを知らなかった。
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醜姫よ、貴様の愛羅武勇をよこせ。
おなごの顔面の造形など、漢にとって些末な事。
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王都の灯が遠く滲む丘の上。
公爵家本邸は今や婚約破棄を狩って回る“
庭には見張りが立ち、廊下には武装した兵が控え屋敷そのものが一つの要塞。
本来なら舞踏会の音楽が流れるはずの大広間には、鎧が立てかけられ軍旗が垂れていた。
その奥、暖炉の炎だけが静かに揺れている。
公爵令嬢にして
月光を浴びながらなお、その横顔は夜に属さぬ光を
銀の髪は
月は彼女を照らしているのではない。
ただ、その美を映すことを許されたに過ぎぬ。
それが ──覇姫エレクシアという存在であった。
傍らには男爵令嬢のリリアーナ。
婚約破棄のあの日、尻に刻まれた覇姫の裁きを境に彼女は影となった。
「エレクシア様、どうなされたのですか?」
「リリアーナよ、貴様は愛とは何か知っているか?」
「愛……ですか」
リリアーナは炎を見つめたまま、静かに答える。
「私は貧しい男爵家を支えるため、幾度も男に愛を
あの言葉は、私にとって刃と同じ。相手の心に入り込むための」
小さく首を振る。
「ですが……私自身が、誰かを愛したことはございません」
炎が、ぱちりと
「かつて俺様の師が言っていた」
エレクシアの
「愛を知る人間こそ
愛を知らぬ者に天は握れぬと」
前世の最期を思い出す。
天へと指を掛けながら、その手は誰の手も取らなかった。
ただ、
──覇王の敗北。
しばしの沈黙。
「それで……愛を
わずかな間ののち、リリアーナは答える。
「それは、よく使われるのは
──“愛してる”。
あるいは “I love you” です」
炎が揺れる。
「……
エレクシアはその音を
「
低く、確かめるように。
リリアーナが小さく頷く。
「男の耳元で
「ふむ、やはりな」
エレクシアは腕を組む。
「
それは
わずかに目を細める。
「……え?
それは、私にはよく分かりませんが、昔から使われている言葉です」
「古代から続く……男殺しの暗殺拳か」
リリアーナが困惑したように固まる。
エレクシアは構わず続ける。
「愛を
「死とは、それすなわち己を失う事」
「天を掴もうとするのではなく」
「流す……送り出す、か」
「つまり──
リリアーナが恐る恐る口を開く。
「あの、エレクシア様、それは……」
炎が揺れる。
エレクシアが力強く叫ぶ。
「そして
エレクシアはそっと目を閉じ、その音を吟味する。
「愛を
「“愛”とは
「“羅”とは網。すべてを受け止める器であろう」
「“武”は力」
「“勇”は恐れを踏み越える意志」
瞳が細まる。
「つまり
「愛を抱いたまま、戦い、守り抜く覚悟。
まさに愛死天流の極意がここにある
くわっと
その瞳には、光が宿っていた。
「我が師の言葉、愛を知らぬ者に天は掴めぬとは、
あのクソ爺めが、その奥義を教えぬとは!
ならば……俺様自ら、愛を、知らねばなるまい!」
低く
「あの
ふ、と唇がわずかに
炎がその横顔を静かに照らしていた 。
「ふふ、見きったわ。
愛を
そして──
「確かに
続く。