グリーンなシゲルくん   作:煮干し銀

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サイコロ
1,4 ……フシギダネ
2,5 ……ゼニガメ
3,6 ……ヒトカゲ


レッド。お前から先にポケモン選ばせてやるよ!

 さて、ポケモントレーナーとして旅立つ当日の朝。シゲルが着替えて研究所となっている一階に降りると、そこにはオーキド博士の姿はなかった。今日は他の研究員の人もいないようで、研究所内は静かだ。

 

 そんな中、不意に隣の部屋へ続く扉が開かれる。出てきたのはシゲルの姉のナナミだ。

 

「あらシゲル。早いのね。旅立ちの日だから興奮して眠れなかった?」

 

「そんなわけないでしょ姉さん。ただ今日から僕も一人旅だからね。少し自分に厳しくしようと思ったのさ」

 

「ふーん、そうなの。シゲルもちゃんと成長してるのねぇ。お姉ちゃんちょっと嬉しくなっちゃった。という事で、そんなシゲルにプレゼント。はいこれ、タウンマップよ」

 

「ありがとう姉さん。ところでお爺様は?」

 

「それがちょっと緊急事態が起きちゃってね。今は一番道路の方に行ってるの。もう少しすれば帰ってくると思うから、待ってて」

 

「わかった。もらったマップでも見て待ってるよ」

 

 適当な椅子に座ってタウンマップを広げながら、シゲルは全く別のことを考える。緊急事態とやらについてはわからないが、この流れはゲームの最序盤でレッドがポケモンを持たずに草むらに入ろうとしたところ、オーキド博士がやってきて止めるという場面に繋がりそうだ。ならばもう時期オーキド博士がレッドを連れて研究所に帰ってくるはずである。

 

 タウンマップはざっと見てすぐに閉じた。前世のゲームで見たものと同じだったので、見る箇所がなかったのだ。ちなみにこのタウンマップはカントーマップだ。他の地方は見れない。

 

 そのため暇を持て余したシゲルは、今日渡される事になっている3匹のポケモンが入ったボールを観察し始めた。よく見るとうっすら中のポケモンが見える。フシギダネ、ゼニガメ、ヒトカゲ。今日シゲルはこの3匹の中の1匹を連れていく。一生の相棒になるかもしれない。

 

 シゲルは現時点でこの中の誰を選ぶかは決めていなかった。それは、レッドが選んだポケモンに有利になるように選ぶつもりだからだ。もしレッドがヒトカゲを選ぶならシゲルはゼニガメを選ぶ。フシギダネならヒトカゲを、ゼニガメならフジギダネを選ぶ。ファイアレッドでのライバルの強さは、相性不利なモンスターを最初に選ばれていたことが少なからず要因としてあった。それに習うつもりなのだ。

 

 そして、ポケモンを選ぶということ以上に重要な確認もある。それは転生したことで身についたと思われる自身の能力が、この最初のポケモンを選ぶという重要な事項に対して、どう影響するか見極めることだ。

 

 シゲルは転生してから自分に何か不思議な力が宿っていることを悟っていた。だがその力がどういうものかわかったのは最近になってからだった。

 

 ある日いつものようにオーキド博士の研究を手伝っていた時、餌やり中に誤って蹴った小石が原因でケンタロスを怒らせてしまい、突進されようとしたことがあった。絶体絶命、最早死ぬか大怪我で寝たきりかを覚悟していた際、その能力は突然発現した。もうダメだと目を閉じた瞬間、いつのまにか状況が小石を蹴ってしまう直前に戻っていたのだ。

 

 それから何度か同じようなことを経験し、任意でできるかを試したりしてシゲルは確信を得た。自分にはほんの少し前の時間に巻き戻しできる能力があることを。

 

 検証の結果この能力は節目のタイミングか、どうにもならないピンチの場合のみ発動することがわかったため、バトルの結果を変えることなどはできない。正直に言って使い勝手が悪い能力だ。転生特典だとしたらかなり微妙だろう。

 

 とはいえ何もないよりはマシだ。それに、場合によってはかなり使える能力にもなりうる。

 

「あの力を使って何度もポケモンの受け取りを繰り返したら、個体は変わるのか……?」

 

 普通に考えたらあり得ない。すでにここに用意されているポケモンがいるのだから、用意されたそのままの個体を何度も受け取るだけだ。性格も能力も変わりはしない。けれど、ここにレッドの存在が効いてくる。レッドはゲームのキャラクターだ。そしてゲームではこの受け取り時点で能力が決まる仕様になっている。つまり個体が変わる。

 

 薄らと見えている彼らの姿も、モンスターボール越しではハッキリとは見えない、モンスターボールを開けるまで中のポケモンがどんなものかはわからない。シュレディンガーの猫だ。

 

 シゲルとしてはできるなら個体が変わってほしいと思っていた。それは今後のために自分が動きやすくなるから。もし変わらなければ、レッドの選択によってはかなり厳しい旅になるかもしれない。

 

 そうしてポケモンたちのボールを見ていると、やがて部屋の扉が開いた。入ってきたのはオーキド博士とレッドだ。やっぱりレッドはポケモン無しで草むらに入ろうとしたらしい。

 

「待ちくたびれたぜお爺さま。レッドも」

 

「おお、シゲルか。すまんすまん、ちょっと問題があってな」

 

「…………おはよう」

 

「はぁ、レッド。お前は相変わらず無口だな。これから旅立つってのに、そんなんじゃ買い物もできねーぞ。っとそれよりお爺さま、早速ポケモンをいただきたいのですが!」

 

「そうじゃな。では、一番にここにきたシゲルからポケモンを選んでもらおうかの。……と言いたいんじゃが、すまんが先にレッドに選ばせてやってくれんか? 家がここのお前とレッドで早いもの勝ちではあまりにフェアではないからのう」

 

「それは構いませんが、それだと他二人も待たないといけないのですか?」

 

「いいや、それは待たんで良いじゃろう。指定した時間はたった今過ぎたからな。ここからは早いもの勝ちじゃ」

 

「わかりました。それじゃあレッド。お前から先にポケモン選ばせてやるよ!」

 

 流れとしてはほぼゲームそのまま。元々ポケモンを選ぶのはレッドに先を譲るつもりだったし、オーキド博士の提案はむしろ嫌な言い方をして先にレッドにポケモンを選ばせる必要がなくなるのでシゲルとしては助かったまである。

 

 シゲルがレッドに先にポケモンを選ぶように言うと、レッドは迷いなく3つあるボールから一つを取った。そして取ったそばからポケモンを外に出す。

 

 ポン! という独特の音と共にモンスターボールが開き、中から赤い光が出たかと思うと、次の瞬間にはレッドの目の前にフシギダネの姿が現れた。

 

「ほう、フシギダネを選んだか。そいつは育てやすくて良いポケモンじゃぞ!」

 

 レッドがフシギダネを選んだということは、必然的にシゲルはヒトカゲを選ぶ事になる。そしてそれは同時に旅の序盤がキツくなることを意味していた。

 

 こうなると、リセットで個体が変わる事を願うしかない。

 

 シゲルは一度残り2つのボールの前で目を閉じると、すぐに開いてヒトカゲのボールに手を伸ばした。

 

「それじゃあ、僕はこいつにするぜ!」

 

 シゲルは ヒトカゲを ゲットした!

 

 同時にシゲルもレッド同様モンスターボールからヒトカゲを出す。図鑑はもらっていないので能力値はわからない。けれど散々ポケモンの観察をしてきたので、見れば性格ぐらいはわかる。

 

 出た瞬間にシゲルに飛びついてこようとするヒトカゲ。元気いっぱいのわんぱくな性格だ。それを見てシゲルはヒトカゲを受け取る前と同じように目を閉じる。

 

 ……リセット。

 

 そして再び目を開けると、ヒトカゲの姿はなく、目の前の台座には2つのボールがあった。

 

 シゲルはリセットがうまくいった事を安堵して、もう一度ヒトカゲのボールを手に取る。

 

「それじゃあ、僕はこいつにするぜ!」

 

 そうしてまた受け取った直後にボールを開くと、今度のヒトカゲは飛びついて来ようとすることもなく、ポケーっとシゲルを見ていた。たぶんのんきな性格だろう。

 

(よし! 個体が変わっている!)

 

 リセットで個体が変わることは確信できた。これは今後の旅でも色々と使える場面が出てくるだろう。

 

 とはいえ今はヒトカゲだ。リセットはまだ続ける必要がある。シゲルが狙うのはたった一つの条件を満たした個体。

 

(色違い個体を引く。じゃなきゃこの先早々に詰むからな。出るまで何回でもリセットしてやるぞ!)

 

 そう心の中で決意を固めて。シゲルはまた目を閉じるのだった。

 




結果は6
ヒトカゲになりました。
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