グリーンなシゲルくん   作:煮干し銀

4 / 16
タケシ対策と2度目のバトル

 マサラタウンから次のトキワシティまでは、車で約30分の旅路になる。レッドが旅立ってから1時間と少し経っているものの、徒歩なら3時間はかかる距離なので、シゲルは余裕でレッドを追い越してトキワシティに到着するはずだった。

 

 そのはずだったのに、トキワシティに到着して道具の買い足しのために向かったフレンドリィショップで、なんとレッドに遭遇した。まさかの展開にシゲルは驚愕する。

 

「レ、レッド!? お、お前どうやって1時間でここまで来たんだ!?」

 

「? ……シゲルも来てる」

 

「いや、俺は車で来たから。でもお前は徒歩だっただろ」

 

「……走って来た」

 

「走ったって、どこからだよ」

 

「……マサラタウンから出たところの草むらにピカチュウがいて、追いかけてここまで来た」

 

「は……? その重い荷物持ってマサラからここまでずっと走って来たって、バケモンかお前は」

 

 シゲルはレッドがここまでキャンプ道具やら着替えやらの入った重いリュックを背負って走って来たという事実に戦慄した。見たところ汗の一つもかいていない。前世でサトシは高すぎる身体能力からスーパーマサラ人とか言われていたが、まさかレッドもそうだったのだろうか。

 

 シゲルは自分が同じことをしろと言われたら出来ない自信がある。運動は嫌いではないが、普通の範疇は越さない程度の身体能力しかない。マサラ人がおかしいんじゃない。サトシとレッドがおかしいだけだ。そうに決まってる。

 

「お、お前、まさかこれから先ずっと走って旅するわけじゃないよな?」

 

「……普通に歩く」

 

「そ、そうか。良かった」

 

 シゲルは安堵した。ずっと走ると言われてしまったら、シゲルは最後まで車から降りられなくなる。

 

 そんなシゲルを他所に、レッドは抱えていた小包をシゲルに見せる。

 

「……シゲル。これ」

 

「なんだ? お爺様宛の荷物?」

 

「……渡してくれって」

 

 そこでシゲルは思い出す。そういえばゲーム序盤にこんな展開があったなと。確かトキワシティのフレンドリィショップから荷物を持って帰るとそこでようやくポケモン図鑑をもらえるという、なんとも面倒なシナリオだったはずだ。

 

 シゲルはポケットからポケモン図鑑を取り出す。

 

(もう持ってるんだよな。ポケモン図鑑)

 

 ポケモン図鑑がここにある以上、これから研究所に帰るのはただの遅延だ。本来ならオーキド博士の孫であるシゲルが荷物を届けるべきなのだろうが、車で来たこともあってポケモンが全然育っていないし、一匹も捕まえていない。ここはレッドに頼んでみることにする。

 

「わるいレッド。僕はここまでお前に追いつくために車を使ってしまって、ポケモン一匹すら捕まえてないんだ。だからできればお前がおじいさまに荷物を届けてきてくれないか? 僕が乗ってきた車を使わせてもらうように言っておくからさ」

 

「……」

 

 シゲルの頼みだが、流石にレッドもマサラタウンに戻るのは渋る。そんな黙ってしまったレッドに対して、シゲルは続けてある提案を持ち掛けた。

 

「僕はレッドが帰ってくるまでセキエイ高原方面の草むらでポケモンのレベル上げとゲットをしておく。もどったらバトルしないか?」

 

「……わかった。行って来る」

 

「サンキュー、レッド。助かる」

 

 シゲルは分かっていた。レッドはポケモンバトルにハマるということを。だから、強くなったシゲルと戦えるなら、その機会は逃さないだろうということを。

 

 結果レッドはシゲルの思惑通り荷物を届けにマサラタウンへと戻って行った。ただレッドは車は使わないで走ってマサラタウンに戻るそうだ。どうやら道中でポケモンを鍛えるつもりらしい。

 

 シゲルはレッドを見送った後、レッドに言った通りにセキエイ高原方面へと向かった。この先はポケモンリーグへ挑戦する者が進む道、バッジを8個集めた選ばれしトレーナーだけが行くチャンピオンロード。ただ、現在は時期がずれていることもあって人っ子一人いない。

 

 トキワシティからセキエイ高原の方に出てすぐのところにある草むら。シゲルは迷うことなくそこに踏み入ってポケモンを探し始めた。

 

 最初に現れたのはねずみポケモンのコラッタだ。群れではなく単独行動を好み、意外と好戦的な一面も持っている。ポケモン図鑑で調べたところによるとレベルは4。この辺りのポケモンとしては高い方だ。

 

 威嚇してくるコラッタに対してシゲルはヒトカゲで応戦する。ヒトカゲのレベルがまだ5なので少々苦戦してしまったが、結果はヒトカゲの勝利。フレンドリィショップで購入した『きずぐすり』でヒトカゲを回復させ、次のポケモンとのバトルに備える。

 

 その後、シゲルとヒトカゲはポッポとコラッタを中心にバトルを繰り返し、勝利を重ねていった。そのおかげでヒトカゲはレベル9になり、途中でレベル5のコラッタとレベル4のポッポも捕獲。レッドとのバトルに向けて力を蓄えていく。

 

 けれど、一見順調に思える状態にもかかわらず、シゲルはひどく焦った表情をしていた。

 

「マンキーがいない」

 

 マンキーはファイアレッド、リーフグリーンではこの辺りに生息していた格闘タイプのポケモンである。

 進行上、最初に挑むことになるポケモンジムは岩タイプのニビジムになる。炎タイプが岩タイプに弱いということもあって、マンキーはヒトカゲを選んだ者にとっては救世主的存在だった。 

 

 そんなマンキーが出ない代わりに、この辺りの草むらではニドラン♂とニドラン♀が希に出てくる。ファイアレッドでは出てこなかったので、シゲルにとっては違和感しかない。

 

「ゲームとは違うってことか」

 

 マンキーがいないとなると、バタフリーを使うかニドランを捕まえるか。シゲルはニドラン系のポケモンをまともに使ったことがないため、それで対策になるか微妙にわからない。かろうじて『にどげり』を覚えたような気がする程度だ。

 

 この世界、アニメが含まれているせいで、ポケモンジムで数の暴力を使えない。ジムリーダーのタケシが使うポケモンが2体なら、こちらも2体しか使えないことになる。育成時間を考えるとバタフリーではなくここで主軸となるポケモンを捕まえたいのがシゲルの本音だった。

 

 悩んだ末、シゲルは次に遭遇したニドラン♀を捕まえて育てることに決めた。バタフリーを使う方が勝率は高そうだが、育てるのが難しい。キャタピーとトランセルの期間が弱すぎる。

 

 その後、ニドラン♀を中心にレベル上げを行い、ニドラン♀のレベルが10になったところでレッドがやって来た。

 

「遅かったなレッド」

 

「……ポケモン育ててきた」

 

「ほーん。僕もポケモン捕まえて結構育てたぜ。レッドは何匹捕まえたんだ?」

 

「……2匹」

 

「なら俺も2匹でバトルしてやるよ。準備はいいか?」

 

 シゲルがそう聞くと、レッドは無言で頷く。2人は見晴らしの良い道路に出ると、距離をとって向かい合った。手にはモンスターボール。準備は万端だ。

 

 2人がボールを投げたのは同時だった。

 

「いけっ! ニドラン!」

「いけっ! ピカチュウ!」

 

 先手はピカチュウ。流石の素早さで先制攻撃を仕掛けてくる。

 

「でんこうせっか」

 

「ピカッ!」

 

 対してシゲルは避ける指示も出さず、その場で受ける姿勢のまま技を指示する。

 

「ニドラン。なきごえ!」

 

「にど!」

 

 『なきごえ』は相手の攻撃力は下げる技。とは言え、『でんこうせっか』は先制技のため、『なきごえ』の効果を受けるよりも先にニドランに攻撃が入る。

 

 攻撃を受けたニドランは多少ダメージを受けたが、タイプ不一致の『でんこうせっか』だ。まだ耐えられる。シゲルは続いて『しっぽをふる』を指示。今度は防御力を下げにかかった。

 

 対するレッドは、攻撃力を下げられたこともあって技を『でんきショック』に切り替える。だが、『でんきショック』に切り替えた途端、シゲルはニドランに避けるように指示。十分に間が空いていたことで、低レベルの『でんきショック』は避けられるスピードになっていたため、ニドランは簡単にこれを回避した。

 

 ニドランはずっと『しっぽをふる』と『なきごえ』を交互に使っている。このままではまずいと判断したレッドは、ピカチュウをニドランに接近させようとするも、その動作を察知したシゲルがニドランにピカチュウに接近するように指示してきて、既に防御が数段階も下がっている状態では近づけなかった。

 

「……でんこうせっか!」

 

 レッドは仕方なくピカチュウに『でんこうせっか』での一撃離脱戦法を指示。攻撃力の下がった少ないダメージでも、何もできないよりは良いと考えたのだ。

 

 シゲルはニドランに耐えるように指示し。展開はニドランの防戦一方となる。だがシゲルの目は諦めるどころか、むしろ笑っていた。

 

 攻撃の最中、不意にピカチュウがよろける。シゲルはそれを見逃さず、ニドランに指示を飛ばす。

 

「今だ! ニドラン、ひっかく!」

 

「にーどっ!」

「ビカッ!?」

 

 1回、たった1回のニドランの『ひっかく』で、ピカチュウの体力は全て削られる。そしてピカチュウはその場で目を回して倒れた。

 

 ニドランの特性である『どくのトゲ』。これがピカチュウを毒状態にして動きを鈍らせたのだ。

 

「……」

 

 レッドは黙ってピカチュウをボールに戻すと、次のポケモンを出す。

 

「いけっ、フシギダネ」

「ダネダネ!」

 

 戦況は2対1。有利な状況にシゲルの笑みが深まる。

 

「どうだレッド。お前のポケモン倒してやったぜ!」

 

「……まだ終わってない。つるのムチ」

 

「へっ、そうだよな。よけろニドラン!」

 

 しかし、シゲルの指示をニドランが実行することはなかった。というより出来なかった。

 

「まひ状態!? チッ、せいでんきか! ……いや違う、レッドお前、最後に『でんじは』してやがったな! ズリーぞ! 指示なしで技使わせるなんて!」

 

「……トレーナーが指示した技しか使ってはいけないなんてルールは無い」

 

「そりゃそうだけどよ……。あー、まあいい。戻れニドラン。それならこいつで終わりにしてやるぜ! いけっ! ヒトカゲ!」

「かげー!」

 

 倒れたニドランを戻し、出て来たヒトカゲがキランと光る。

 

 トレーナー同士、ポケモン同士のライバル対決。その結果は、炎技を覚えたことで、ヒトカゲが圧勝。

 

 第2回目のライバル対決は、シゲルに軍配が上がったのだった。

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。