少女と呪霊
2018年8月某日某所
「うーん、すごいことになってるね」
白髪に目隠しをした長身の男性は独り言を続ける。
「呪霊の気配が一切しない。蠅頭ですらほとんど見えない」
「それに、1級……特級か?とんでもないのが2体いるな。ハハッ、これは早めに来て正解だったね」
──どうなってんだよ
「ひーなーこーーー!!!たーすーけーてーーーー!!!」
茶髪にツーサイドアップの少女は比名子と呼んだ亜麻色の髪の少女に抱き………泣きついていた。
「美胡ちゃん、もう少しだから頑張ろう?私も手伝うから。ほら?分からないところどこ?」
「うぅ……ありがとうね比名子。もーー!日本の妖怪が英語を勉強する意味ーー!!!」
美胡と呼ばれた少女は感極まって泣き声をさらにあげる。
………そんな彼女を気にもとめず比名子の傍で眠り続ける少女が1人
「というか!前から言ってるけどあんたも宿題しなさいよ!半魚人!!」
「いやでーす。そもそもなんで妖怪が律儀に宿題をやってるんですか?」
「あんたねぇ!」
「ま、まあまあ2人とも…」
美胡と半魚人……もとい汐莉の間を取り持つ比名子。
この3人の日常だ。
今は夏休みということもあり、比名子の自室で繰り広げられているが学校のある日は教室や屋上などでこれが見られた。
こんな正反対な美胡と汐莉が共にいるのには理由があった。
比名子……八百歳 比名子は妖怪を引き寄せる特異な体質を持っている。
魑魅魍魎にとって非常に美味なその血肉は、本来であれば山分けされてしまっているだろう。
それが理由である。片や親友、片や
そんな2人の喧嘩や語弊のある描写はまた別の話。
………
……………
…………………
「あーーー疲れたぁぁぁぁぁぁ!!!!」
「結構勉強したもんね。そろそろ休憩にしよっか。お茶、入れてくるね」
時刻は正午過ぎから夕方近くに。はるか異国の文化に悪戦苦闘していた友人の為に比名子は厨房へと向かうのだが……
「あれ、お茶が切れてる。」
―美胡ちゃんは紅茶の方が好きみたいだから良かった………あれ?
「紅茶も無い……」
「比名子ー?どうしたの?」
「あ、美胡ちゃん。ちょっとお茶切らしちゃってて。直ぐに買ってくるから待ってて。」
すぐそこだからと出かけの準備を始める比名子を慌てて止める美胡。しれっと美胡をおいて比名子とふたりで外に行こうとする汐莉。
いつもの日常だ。
日常、だった。
「悪い事しちゃったよね……」
結局1人で買い物を終えた比名子。僅かな油断が生命の危機になる事は嫌というほど理解している。どれほどの過保護も足りないほどである。
2人がいたから何事もなく即座に解決したのだがつい先日にも襲われたところなのだ。
それでも1人外に出たのはただの気まぐれという訳でも無い。
美胡と汐莉……比名子が
確実に余計なお世話というやつなのだが、比名子なりの優しさなのであった。
………そしてその彼女なりの未来を想った優しさは裏目に出る
…………………最も『八百歳 比名子』という人間が『悔いの無い死』を遂げる選択であれば正解だったかもしれないが
「ねぇ、君。ちょっといいかな?」
「えっと、なんで………しょう?か?」
比名子の問いかけが疑問形に疑問を重ねる形になったのも無理もない。
上下真っ黒目隠し白髪の長身男性が声をかけてきたのだから。
控えめに言っても不審者そのものである。
(見えてるのかな?)そんなごく当たり前な疑問を浮かべる比名子を他所にその男は話を進める。
「この辺りでお化けとか妖怪とか、そんなのに出会った事ある?」
質問も一般人からすれば意味不明だ。聞いてるのが比名子だったから良かったが一般人に聞いていたらタダの不審者だ。既に不審者だった。
「えっと」
素っ頓狂な質問に対して比名子の脳裏に駆け巡るのは
「えっと、おっしゃってる意味が……」
シラを切った。実際、最善手だろう。
「うーん、そっか。時間とらせちゃってごめんね、じゃあ僕はこれで。」
………。
「あー、そうそう。もし、そういうのに出逢ったら迷わず逃げる事。それじゃあ!」
………………。
「なんだったんだろう」
とりあえず家に帰ってきたところでひとり呟く。
「(妖怪の事知ってたし汐莉さん達に聞くのがいいよね。)ただいま」
「おかえり比名子!!!大丈夫!?変な奴に絡まれたりしてない?!」
「私は大丈夫だよ。あ、でも」
「? どうかした?」
「目隠しをした人にこの辺りに妖怪がいないかって聞かれたんだけど」
瞬間、美胡の目つきが鋭くなる
「比名子、私たちの事は」
「言ってないよ?」
「……私はともかく半魚人が危ないか……。わかった、とりあえず中で説明を─「その必要はないよ」」
瞬間、緊張が走る。
「今年入って話せる個体、異常だな。なんかあるのか?」
「っ!」
先ほどの
そこにいるだけのはずなのに
((動けない……))
「ねぇ、君たち。もしかしてだけど友だ──」
目隠しの男の背後から水しぶきが上がる。水柱から除くかぎ爪、青く光る鱗
「地面を水面として扱える術式ってところかな。けど、」
汐莉の攻撃は男の後頭部の僅か手前で静止する
「僕には届かない」
一触即発の中1人だけ呑気に口を開く。
「うーん......どうしたものかな」
初めまして、もしくはお久しぶりです
わたたべはネ友とリアフレから推されたからなのと上田 麗奈さんがCVをしていると聞いたので見始めました
いつのまにかこんなことに
章タイトルは、死と生命を統括する海から芽生えた物語の行く末は という意味です
最推しは美胡ちゃんですが全員均等に盛ります全員好きなので
それではよろしくお願いします