【全話挿絵】TS女神転生~合体事故?でジョブは死霊でした。憑依スキルを使った女性たちの様子が変なんです。 作:よっちゃ
かなりエッチな内容になっていますので、ぜひお読みください。
ノクターンノベルズで
『TS女神転生』や作者名『よっちゃR18』でご検索ください。
R18版をむしろ本編としてやっていきたいと考えています。
第17話
朝の光が街道を照らしていた。
空気は澄み街には久しぶりの静けさが戻っている。
かつては不浄と悪の象徴だった領主邸の裏手──
今は整えられた広場の中央に、一台の輝く高級馬車が鎮座していた。
「……正直、もう別物ですね。これは馬車と言って良いのでしょうか」
ミーナがぽつりと漏らす。
目の前の馬車は、艶やかな黒塗りの車体に精巧な金具。近づくだけで嫌な気配を感じていた“あの頃”の名残は欠片もない。
さらに馬車全体が神聖な輝きを帯びている。
「器は悪くなかったからな。たっぷりとおれの加護をかけておいた」
TS女神は腕を組み満足そうに頷く。
「浄化、補強、空間制御……さらに内部はすごいぞ」
「“ついで”の規模じゃないんだよなぁ……」
「長旅になる。必要なものは揃えておく」
同行者はいつものメンバーのみ。
TS女神。
ミーナ。
ニキ。
そして御者役を務めるエリーゼ。
冒険者たちは街に残り、街の防衛を任せることになっている。
「この街には相当強力な結界をかけておいたから、今は放っておいても簡単には崩れない。が、一応魔王軍の動きがわからん以上、用心するに越したことはない」
TS女神はそう判断した。
「それに少数の方が動きやすいし、冒険者共には他にもやってもらいたい仕事があってな」
「まずは食料品なんかの買い出しだな。みんなで市場に行こうぜ」
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午前の市場は久しぶりに活気を取り戻していた。
浄化の噂はすでに広まり、人の流れも声の張りもどこか明るい。
「まずは食料ですね」
ミーナが
「馬車の中は快適でも、食べるものが貧相だと気分が沈みますから。馬車に冷蔵装置があるとは言え、一応保存が利くものを買い込んでおきましょう」
ニキが干し肉の屋台を指差す。
「じゃあ干し肉、燻製、硬パン。この辺は鉄板かな」
「なるほど」
香草屋の前でミーナが足を止める。
「塩、胡椒、乾燥ハーブは多めに買っておきましょうか。
味があるだけで旅の疲れは全然違いますから」
「ほんとにその通りだよね」
ニキが頷きながら袋を受け取る。
「あとは、砂糖かな。思った以上に減るよ」
「ふむ、なるほどな、お前たちは慣れている」
二人のやり取りに感心したTS女神は、ミーナとニキの頭を撫でてやる。
一方、少し離れたところでエリーゼが帳面を開いている。
「飲料水、予備容器、簡易医療品……
包帯、消毒用の薬草も必要です」
「そんなもの必要か? 回復なんか俺がしてやるぞ?」
「いえ、TS女神さま。想定外というのは常に起きます。想定外を想定するのです」
エリーゼはそのような事態に慣れているのか、淡々と続ける。
「ですから“使わずに済めば幸運”な物ほど、持っておくべきです」
「なるへそ、そういうもんか。勉強になります」
さらにニキの案で、布屋では毛布と着替えを追加した。
「夜は冷えるからね」
「馬車の中は温度制御してあるぞ」
「それでも準備は完璧に。備えあれば憂いなし。そうでしょエリーゼ?」
「うむ、その通りだニキ」
TS女神は一瞬だけ口をつぐみ、頷いた。
「……ここはお前らプロに任せた方が良さそうだな。あと荷物持ってあげられなくてごめんね」
雑貨屋ではランタンと火打石。
「火は大事だよ」
ニキが言う。
「魔法が使えなくなる状況も、ゼロじゃないよ」
「そういう時のために準備しておくべきだよね」
「備えあれば患いなしだな」
最後に、ミーナが小さな菓子屋の前で立ち止まった。
「……お菓子も少しだけ、いいですか?」
焼き菓子と干し果物。
量は多くないが、丁寧に包まれている。
「長い道中ですから。きっと食べたくなると思うんです」
ミーナは照れたように言った。
「こういうのがあると、ほっとするので」
「却下する理由はない。もっとたくさん買っておけ。これも“備え”だろう?」
籠はいつの間にか、ずっしりと重くなっていた。
「……調子に乗って買いすぎちゃったかな?」
ニキが少し心配そうに言ったが、すぐにTS女神が否定する。
「いや、足りないよりは絶対にいいはずだ。資金も十分にある。それに馬車の積載についても問題ない。空間は余っているぞ」
旅の準備とは、こうして気持ちを整える行為でもある。
「よし」
エリーゼが帳面を閉じる。
「必需品は揃いました。出発できます」
市場を抜け、馬車へ戻る四人の足取りは軽かった。
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市場から戻ると、浄化された馬車は朝日に照らされて静かに佇んでいた。
「では、積み込みましょう」
エリーゼが手際よく指示を出す。
手伝いに呼び出した冒険者達によって、籠や袋が次々と馬車の中へ運び込まれていく──はずだった。
「……あれ? 何か少し変じゃないですか?」
ミーナが首を傾げる。
「まだ入る、ですよね?」
干し肉、袋詰めの香草、飲料水の樽、毛布に道具類などなど。
かなりの量のはずだが荷室は一向に窮屈にならない。
「空間拡張しておいたからな」
TS女神があっさり言った。
「見た目の三倍、いや五倍は入るぞ」
「普通に言わないでよ……」
ニキが思わずため息をつく。
「これ、ちょっとした倉庫だよ」
最後の荷を入れ終えても、全体の半分にもなっていない。まだまだ余裕があった。
「……これで全部、積みましたよね?」
ミーナが不安そうに確認する。
「ああ、間違いなく全部積んだ」
エリーゼが断言する。
「じゃあ次はみなさんお待ちかね、馬車の中を見せてやろう」
TS女神の指示により、扉が開かれた。
「──え」
ミーナの声が、素直に漏れた。
外観からは想像もできない広さ。
床は柔らかな絨毯敷き、壁には落ち着いた装飾。
揺れをほとんど感じさせない配置で、クッション付きの座席が向かい合っている。
「……中、広っ」
ニキが率直に言った。
「これは……馬車、ですか?」
エリーゼも一瞬、言葉を失う。
「長旅になりそうだからな、お前たちに負担はかけられん」
「馬車というか、移動宿泊施設みたいにしてみた」
奥には高級宿顔負けの清潔なトイレ。
さらに仕切りの向こうには、立派な沐浴設備まである。
「……えええ、ちょっとすごいですよこれ」
ミーナが口に手を当てる。
「快適すぎませんか?」
「うわーすごい、見て! 寝室まであるよ! 馬車旅で、ベッドで寝られるなんて」
ニキが寝室のベッドにダイブする。
「ふん、お前ら全員が横になっても余裕の大きさだ」
「揺れも、ほぼ感じません」
エリーゼが床に視線を落とす。
「衝撃吸収……いえ、これは魔法ですね」
「外殻は結界で覆ってある」
TS女神は指を鳴らした。
「矢、魔法、獣の突進。その程度なら自動で弾く仕様だ」
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「目的地は、水の都ベネザエラだよね?」
「そうだ、そこにミーナの妹がいるらしい」
ミーナが静かに答える。
「はい、両親の知り合いがあの水の都に住んでいるんです。魔王軍の動きが激しくなる前に、妹だけ避難させました」
「それに、そこはかなり大きな都市だろう。
この目で見ておきたい気持ちもある」
エリーゼが御者台に座り手綱を取る。
「準備は整いました。いつでも出発できます」
「よし頼む」
「皆さんお気をつけて!」
「お土産買って来てくださいよ」
「街の防衛は俺らにお任せください」
冒険者に送られ馬車は出発する。
街の門を抜けるとき、ミーナは一度だけ振り返る。
不安はある。それでも、立ち止まる理由にはならない。
「不安か、ミーナ」
「いえ、大丈夫です。みんなやTS女神さまが一緒ですから」
TS女神は小さく笑った。
「昔、どこかで聞いた言葉がある。
── 迷わず行けよ、行けばわかるさ、とな」
「有名な方が言った言葉なんですか?」
「さあな、眼鏡のやつの心の師だったのかもしれん。
とにかく、その言葉だけは妙に胸に残っているんだ」
「よーし! 水の都ベネザエラへ出発だー! 何が起こるかなんて、行けばわかるさ!」
この旅が、何も起こらぬはずがない。
馬車は街道へと滑り出し、
過剰なまでに守られた移動要塞は、静かに旅を始めた。
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