【全話挿絵】TS女神転生~合体事故?でジョブは死霊でした。憑依スキルを使った女性たちの様子が変なんです。 作:よっちゃ
ください。
第2話
村を出てからすでに半日が経っていた。
俺は──正確にはミーナの体に憑依した状態で、舗装もされていない街道を歩いている。
夕暮れが近づき空が赤く染まり始めたころ、ミーナが小さく息を吐いた。
「……TS女神さま。そろそろ、日が沈みます」
「ここまでご苦労さま。疲れたよね。ここで野営をしようか」
俺はミーナに取り憑いているだけだから疲労は全くと言ってない。いや、死霊だからか? とにかく、ミーナにあまり無理はさせられない。
疲れない、腹も減らない、眠くもならない。
俺はミーナから少しだけ距離を取って、宙に浮かぶ。
「ミーナ、おれはどう見える?」
「はい、TS女神さまはとても美しく、神々しく、可愛らしいお姿です。その、上半身だけで、下半身はありません。あ、あと、む、胸が大きいです!」
ふむ、胸が大きい上半身だけの美少女か。
「……そうか、ありがとう。暗くなる前に夕食を済まそう」
ため息が音もなく空気に溶ける。
ミーナは焚き火を起こし簡単な食事を済ませると、毛布にくるまって横になった。
安心したような寝顔だった。
……無理もない。
村は救われ、命も尊厳も失わずに済んだのだから。
だが──俺は違う。
眠れない俺は焚き火の向こうで腕を組み考える。
俺は何者だった? 思い出そうとしても、
名前は思い出せない。
年齢も、職業も。
ただ、ひとつだけはっきりしている事。
「……おれは、眼鏡をかけた日本人だったな」
それは不思議なくらい確信があった。
言葉の感覚、常に目にあった
そして──
「TSが、好きだった」
それもやけに鮮明だ。
TSという物語ジャンルが好きだった?
だが、肝心の「TSが何の略か」は思い出せない。
「すなわち、おれという存在は、
性別は、多分男だったのだろう。理由はわからないが、私、より、俺、と言う言葉が自然に出るし。
今は上半身だけなので特にそれ以上思うこともない。何となく、下に
まあいいか。気を取り直して俺は自分のステータスを確認する。
◆◆◆
種族:TS女神 ( 18 )
ジョブ:死霊 ( ユニーク )
スキル:憑依 ( B )
種族魔法:神聖魔法( 弱体化中 )
概説
三身合体により、TS好きが女神に転生した望み通りのTS女神転生。
現在、女神としての力は弱体化されている状態。バストはDカップ。
◆◆◆
ミーナの話によると、この世界にはジョブがあるらしい。
ミーナはくすぐり師で俺は死霊? ゴーストって事だよな?
このユニークっていうのは何だ? 個性的、珍しいみたいな意味か?
女神で死霊だなんて、確かに珍しくはあるんだろうが。何か嫌な予感がする。
三身合体? これは一体何の事だ?
よく分からないが、無茶しやがって、という感じはする。
そしてこの、TS女神。
やはりTSとは属性的なものだろうか。愛の女神のような、TSを
それでTS好き?
ふむ、よくわからないな。
( 18 )というのは年齢の事だろう。
生前はこんなに若くなかった気がする、が。
バストは、まあいいだろう。けっこう大きいのか?
スキル【
しかもこのスキル、憑依相手の事がある程度わかるようだ。
試しにミーナについて深く知ろうとする。
ミーナ
種族:人 ( 16 )
ジョブ:くすぐり師
スキル:くすぐり ( E )
辺境の村で生まれ育った。現在16歳。彼氏なし。
経験なし。
希望のないこの世界で、妹に少しでも笑ってもらいたいと願い、よく妹をくすぐっているうちに、ジョブとして顕現。
根は優しく、しかし強い意志を持つ性格。
バストはB。しかし成長中。
敏感な体の部位は……
男性より女性に好意を持ちやすく……
おっと、これ以上はいけない。
知ろうと思えば、まだまだわかる気がする。
ふむ、では可動範囲はどうだろうか。
試しにミーナから離れてみる。
……五メートル。
……八メートル。
……十二メートル。
「……ここらが限界か」
それ以上進もうとすると、見えない壁に阻まれる感覚があった。
「つまり、誰かに取り憑いてないとほぼ行動不能ってわけか」
なるほどね。
TS女神でジョブは死霊。
ダメだこりゃ。
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
翌朝。
ミーナが目を覚ました瞬間、俺は声をかけた。
「いいかミーナ。今日は気をつけろ」
「え?」
「こういう旅路ではな……必ず何かが起きる。テンプレがそう告げている」
「テンプレ?」
「……おれにもよくわからんが、女神の持つ予知能力的な物だろう」
歩き始めてしばらくすると、遠くから怒号と悲鳴が聞こえてきた。
「ほら来た」
「えっ、本当に……?」
街道の先。
馬車が止められ、十数人の男たちに囲まれている。テンプレ通りの盗賊。
実に分かりやすい馬鹿共だ。
「……TS女神さま?」
「よし、また体を借りるぞ!」
俺は即答し、ミーナとの繋がりを深くする。
「行くぞ」
「はい!」
盗賊たちは、こちらに気づいて
「ヒヒヒ、えらいべっぴんな女じゃねえか? それに、なんだ? 美少女の、ゴースト?」
次の瞬間。
「悪即斬──スキル発動。【くすぐり】」
空気が震えた。
「ぎゃははははは!!?」
「な、なんだこれ、ひ、ひいっ!」
盗賊たちは一斉に地面に転がり、腹を抱えて笑い転げる。
「ひゃはは、や、やめ……! く、くすぐるなぁ!! ああ、そこは、そこはだめええ、
魂はくすぐっちゃらめえ」
汚らしい盗賊共が嫌な声を上げ始め、ぐったりと力なく横たわった。
「よし、汚物の無力化完了」
俺は満足げに頷き、小汚い盗賊たちに命じた。
「全員、その
「「「え?」」」
「聞こえなかったか? ズボンを脱いで貴様らの異臭のする小汚い
「い、いや、その……」
逆らえるわけがない。
男どもは涙目でズボンを下ろした。
「……このミーナの綺麗な手で、汚ケツなど触りたくもないからね」
俺は近くに落ちていた
「ぐああ!?」
「ひいい!!」
「大方、生活苦から盗賊に堕ちたのだろう! この薄汚いシリアナ共が! 」
腫れ上がる汚尻。
涙と鼻水。
TS女神による、見事なまでのわからせだった。
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
「……も、もう、盗賊はやりましぇん!」
「な、何でもします、いえ、させていただきます」
「よし、その言葉、貴様らの魂に刻み込んだぞ。女神的なアレでな!」
俺は満足し、ミーナの村へ行くように告げる。復興と警備の手伝いなど、する事は山ほどある。
「「はい! TS女神の
「……誰が姐さんだ!」
だが、盗賊たちはキラキラした目で俺を見ていた。
「オイラたち、TS女神教の信者になります!」
「ふん、勝手にしろ」
その瞬間──
体の奥に、ほんのわずかな力の増加を感じた。
「……なるほど」
信仰によって能力が上がるのか? 女神らしいシステムだ。
ミーナが、興奮した弾む声で言った。
「……本当にすごいです、TS女神さま」
「そうか?」
「はい。とても……暴漢共の、汚らわしいお尻を容赦なく打ち据えるお姿が、そ、その、すごく……素敵でした」
俺は、少しだけ照れ隠しに笑った。
「……次は冒険者登録だ、女神スキル【テンプレ】がそう告げている」
助けた馬車と、元盗賊共をミーナの村に向かわせ、
死霊系TS女神と少女ミーナは、次の街を目指す。
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