【全話挿絵】TS女神転生~合体事故?でジョブは死霊でした。憑依スキルを使った女性たちの様子が変なんです。 作:よっちゃ
ください。
第3話
前方に見える巨大な城壁が視界を覆った瞬間、俺は確信した。
石と鉄で築かれた城塞都市。
人の流れ、商人の声、衛兵の視線。
そして──テンプレ的直感。
「どうかしましたか、TS女神さま?」
ミーナが小声で聞いてくる。
「うん、このまま霊体のおれがふらふら入って行くと、色々と面倒事が起きそうだ」
俺は意識を集中させ存在を極限まで薄めた。
半透明どころか完全な不可視。
この状態ではミーナにしか俺は見えないし声も届かない。
「お美しいTS女神さまがほとんど見えなくなってしまいました」
「ふふふ、会話はできるが静かに話そう。変なやつに思われる」
「は、はい」
「……じゃあ行こうか」
ミーナはただの村娘として何の問題もなく門をくぐった。
まずは第一関門クリアーだな。
城門をくぐった瞬間、空気が変わった。
土と血と汗の匂いが混じっていた辺境の村とは違う。ここには人の熱気と金の匂いがある。
……なるほど大きな街だ。石畳の道、左右に並ぶ露店、行き交う人、人、人。
人族だけじゃない。
猫の耳を揺らす獣人に背の低い小柄な種族。
ミーナは少し緊張した様子できょろきょろと周囲を見ていた。俺はミーナに先っちょだけ憑依したまま、その横を誰にも見えないまま漂う。
……賑やかだが笑顔の数と同じだけ歪みもある。
露店の影にボロ布を被った小さな影が蹲っていた。
孤児だろう。
汚れた顔に痩せた腕、虚ろな目。
通り過ぎる大人たちは誰一人として視線を向けない。
俺は弱体化しているとはいえ神聖魔法の使い手。
回復と洗浄を混ぜた、ごく微弱なものを孤児に飛ばしてやる。
それが孤児の体に触れた瞬間、その小さな身体がびくりと震えた。
「……?」
孤児は周囲を見回し、何が起きたのかわからないままそれでも少しだけ背筋を伸ばした。
俺はそれ以上何もしないし今はできない。
ミーナがじっと俺を見つめていた。
しかし…… 格差が激しいな。
この規模の街でこの扱い。
領主がまともならばもう少しマシなはずだ。
……まあ十中八九、腐ったウジ虫だろうよ。
それもテンプレだと女神のスキルが告げている気がする。
「TS女神さま……」
小声でミーナが呼びかける。
「だ、大丈夫でしょうか……私、場違いじゃ……」
「問題ない」
俺は即答した。
「お前は胸を張って歩け。
この街の連中より、よほど人間らしい」
ミーナは少しだけ驚いた顔をして、それから小さく笑った。
「……はい」
やがて見えてくる冒険者ギルドの建物。
確信に近い予感。ここで必ず一悶着ある。
俺は力を極限まで抑え完全に不可視となる。
「ミーナ。いいか」
「は、はい」
「何を言われてもまずはぐっと我慢し、無視しろ」
「……はい」
ミーナはごくりと唾を飲み頷いた。
そして俺たちは何も知らない顔をして、
冒険者ギルドの扉を押し開けた。
城塞都市の中心部にある石造りの立派な建物──冒険者ギルド。
中に入った瞬間、酒と汗と鉄の匂い。
屈強な冒険者たちの視線が一斉にミーナへ向いた。
受付カウンターには整った顔立ちの美人な獣人女性が立っていた。
「冒険者登録をお願いします」
ミーナの声は少し緊張していたが、しっかりしている。
その背後から──
「おいおい」
モヒカン頭の男が下品な笑みを浮かべて近づいてきた。
「ここはお嬢さんが来る場所じゃねえぞ」
(辛いかもしれんが、まずは無視しろ)
俺は姿を消したままミーナに告げる。
ミーナは言われた通り何も返さなかった。
「田舎娘か? 迷子ならさっさと村に帰りな」
汚らしい笑い声。
周囲の冒険者もゲラゲラと肩を揺らす。野蛮な奴らだ。
「では、こちらに手を」
獣人受付嬢がスキルオーブを差し出す。
ミーナが手をかざした瞬間── 光が走り表示が浮かび上がった。
ジョブ:くすぐり師
スキル:くすぐり
一瞬の静寂。
そして──
「ぶっはははは!」
「なんだそりゃ!」
「くすぐりで魔物倒すのかよ!」
ギルド中が下品な爆笑に包まれた。
「おやめください!」
美人受付嬢が声を荒げる。
「冒険者にはどんなジョブでもなれます!」
「そうは言ってもよお」
モヒカンがミーナを見下ろす。
「悪いこと言わねえ。田舎に帰れ」
「可愛い顔じゃねえか、それとも、ヒヒヒ、夜の仕事の方を、紹介してやろうか? それとも、俺の女にしてやってもいいぞ?」
(……よし、殺しちゃお)
俺は姿を現しモヒカンとその仲間達を睨みつけてやる。
「おいゴミクズ共、その小汚い口で
ギルド内が凍りついた。
「な、なんだこいつ……ご、ゴーストか!?」
可愛いミーナを笑ったクソ虫共に情けなど無用。
「ミーナ、ちょっと奥まで入るぞ! ゆっくり息を吐くんだ」
「は、はい! ん、んん、も、もっとおくまで、だ、大丈夫です」
奥まで入ったことにより、より憑依の結びつきが強くなる。
「初めての時と比べて、だいぶ慣れてきたようだな。そして問答無用の、スキル──【くすぐり】」
「だいぶ慣れてきたようだな。そして問答無用の、スキル──【くすぐり】」
魂に直接届く感覚。
「ぎゃはははは!!」
「な、何もされてねえのに!!」
笑っていた冒険者全員が床に転げ回った。
「や、やめ……ひひひっそこは、らめえ!! 魂はくすぐっちゃ、ダメええ! 」
俺はぐったりしている汚モヒカンを見下ろす。
「愚かなモヒカン頭よ、おれのミーナを笑った罰だ。貴様の汚らしい
「あ、ああ、え?」
「早くしろウスノロが! ズボンを脱いで、貴様のそのモヒカンみてえな小汚ねえ汚ケツをこっちへ向けろ! とわたしは言いましたよ」
「ひっ……!?」
俺は魔法使いが落とした適当な杖を拾い、それを容赦なくモヒの汚尻へと振り下ろす。
「ぎゃああああ!!」
「ミーナを笑った罪だ」
「貴様が泣くまで、叩くのをやめない!」
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
「何事だ!」
2階から威厳ある男が降りてくる。
そして男は見た。
村娘に見える少女が、冒険者を罵りながら魔法杖で尻を打ち据えている。
止めようと近づこうとして──何か不思議な力で進めなかった。
「……近づけん?」
「ギルドマスター、助けてください! この女が、突然モヒカンの兄貴をシバキ始めて!」
ギルドマスターと呼ばれた男は、少女の執拗な汚らしいケツへの激しい仕置きを、ただ見ているだけしか出来なかった。
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
モヒカン冒険者が泣きながら少女に謝罪している。少女もそれで気が済んだのか、血の付いた魔法杖を投げ捨て手続きを再開していた。
我に返った冒険者やギルドマスターが、少女にやり過ぎだなんだと非難の言葉を浴びせ始める。
「その上半身だけの半透明女は何者だ!? お前はゴーストに憑りつかれているのか?」
その言葉を聞いた瞬間。
少女──ミーナの表情が憤怒のものに変わる。
「 静まれ! やかましいぞ、この、便器にこびりついた糞より劣る 汚物共め! 」
空気を叩き割るような怒声がギルドを震わせた。 もはやそこにあったのは村娘のものではない
「便所虫以下の脳ミソしかないお前ら如きが、軽々しく声をお掛けして良いお方じゃないのが、本当にわからないほど馬鹿なのか!?
こちらにおわすお方を、どなたと心得る!」
「
「 TS女神さま であらせられる!」
ピカーとTS女神の体から神威が溢れ出す。
「モヒカンとその手下共、図が高いぞ!」
ミーナが足元にいたモヒカン冒険者を蹴り飛ばす。
冒険者たちは一斉に平伏した。
「は、ははーっ!! TS女神様」
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その後、俺たちは冒険者登録の手続きを終え、ついでに数人の冒険者共から金を巻き上げ本日の宿へ。
清潔な部屋で、もちろん
「あの……TS女神さま。わたし、そろそろ
「ああ、体を洗うのか、すまん。憑依したままだと困るよな」
俺は慌ててミーナから距離を取る。
「いえ、その……わたしは一緒でも……全然、構わないというか……、むしろ、一緒に洗いっこ、したいなって。さ、さっき、私のこと、 おれのミーナ って……言ったし」
頬を赤く染めてモジモジするミーナ。
「小娘が、女同士で何を色気付いていやがる!」
ミーナの尻を引っぱたいた俺の掌は、当然すり抜けた。
前世の俺の
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ミーナは幸せそうに眠っている。
俺はと言うと、する事もなくミーナの寝顔をぼんやりと眺めていた。
その時、突然鍵が開く音がした。
「へえ、上玉だな」
「余計な事はするなよ。売れば金になる」
(……ふう、悪党というものは、ゴキブリみてえにどこにでも湧きやがるな)
若い女と汚いおっさんがそっと部屋に忍び込んで来た。
ふむ、しかしミーナを起こすのは可哀想だ。
異臭のしそうなおっさん盗賊など死んでも御免だが、この若い女盗賊になら取り憑いてやっても良いだろう。
憑依対象を定めニヤリと笑う。
フフフ、人攫い共よ、お仕置きのお時間ですよ。
ここまで読んでくださって、ありがとうございました。
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