異世界転生モノだと思ってるバカ   作:さぼさぼさん

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エタ&削除しがちな人間なので許せとはいいませんが
続きを望む人たちの声で良心が痛みました


少年時代の思い出
急展開こそ転生モノの醍醐味


 一度は生まれ変わってファンタジーモノの世界に転生!そんで俺TUEEEE!って展開を体験したい……って気持ち、あるよな?

 

 昨今異世界転生〜!だの異世界転移〜!だの死ぬほどコンテンツがのさばってる世の中、俺も例に漏れず、超憧れた。その時はなんだったかな……小説家になっちゃえ!……だっけ?そんな感じのサイトの異世界転生モノをバカスカ読んでうおおお!って目を輝かせてたね。

 

 んな事からも分かる通り、俺はあんま特別身体が病弱……とか、親がまあまあな毒で……とかありがちな設定は無いのよ。フツーの学校通って、フツーの部活動して、フツーの大学受験して、フツーの企業に就職する。マジで『フツーの人生』だったわけ。おもんないっしょ?

 

 多分昨日か一昨日かに食った生牡蠣が悪かったんだろうな。エグい食あたり起こした挙句なんか熱が下がらなくて寝込んでたらぽっくり死んじまった。あと健康診断で数値の悪い箇所か何個かあったのも原因だと思う。知らんけど。

 その前くらいにダチと任〇堂ダイレクト見てポ〇モンのリメイク発表やら、新作発表やらに死ぬほど湧いてたのに、死んじまったからできねーでやんの。やりたかったわ、ちくしょうが。

 

 んでちょっくらここでクエスチョンよ。なーんか死んでからの俺の走馬灯?独白?何でもいいけど猶予長くね?って。

 そしたら目ぇ開けられるもんだから超びっくり。思わず泣いちゃったよね。赤子だからそりゃ泣くんだけどさ。

 

 さて、ちょっくらクエスチョンは俺が転生したって答えで返ってきたわけなんだけど、マジでテンション上がったね!我らが日本とは違うディテールの建物!雰囲気!そんで親父とお袋のイケメン美女具合!あとはおまけかなんかなのかケモ耳まで付いてるときた。大好きですよそういうの!

 

 まあバブちゃんに出来ることって最初はないからさ、色々現地の言葉とか覚えてお袋に「まま!」とか言って泣くくらい喜ばせたり、親父のところてちてち歩いて「だっこ!」とか要求して死ぬほど可愛がられるくらいしかなかったね。うん、てか泣くくらい喜ぶって親バカかな?

 

 ああ、でもちょっとハプニングはあったよ。俺ってば悪戯っ子だからさ、結構な頻度でキッチンにめっちゃ侵入してお袋にだっこされながらお部屋に戻されるというガキムーブをかましてたんですけどね?そんときどーやらキッチンに前世みたいなIHヒーター?ガスコンロ?そーいうやつが見当たらなかったのよ。

 

 代わりになんかオレンジ色の拳くらいの石をなんかの機械に嵌め込んで、そこになんか魔法っぽい力を込めて加熱させてたんよ。おおい!魔法じゃん!キター!!!!

 って喜びのあまりお袋の方に突っ込んじゃったらね、火傷しちゃった♡

 くっそお袋は青ざめて心配してたし、親父には怖い顔で怒られた。怒られてるとき、首を縦にガチ本気で振るほかなかったです。あまりの気迫にビビったしチビった。あ?小便くせぇって?かけてやろうかこんにゃろ。

 

 ほんでまあこの火傷、5歳になっても治んねぇの。どうやらこの魔法みたいな力って自然治癒じゃ治りにくいっぽいのね?なんていうの、アレよ。ケ〇ルとかホ〇ミとかで治さないと完治しないっぽいのよ。

 

 まあさ、5歳にもなったし色々教えてもらわないとこちとら自己防衛できませんわな!っていう脅し文句で親父に色々この世界のことを何点か聞きまくったよ。大きくわけて三つか四つほどね。

 

 一つ目。この世界ってなんて言うの?ってこと。

 まあ前世で言うところの地球。またの名をアース。またの名をガイア。色んな呼び名があった地球君のように、俺が転生したこの大地にも名前があるだろ、ってことで聞くのは当然だわな。

 

 二つ目いくぞー。俺らが住んでる国ってなんて言うの?はいコレ。異世界転生御用達じゃないですか?やっぱ〇〇王国とか〇〇帝国とか。そういう名前があってこそ異世界ってのは質感高まってくもんですからね。これも当然聞きますよっと。

 

 はーい三つ目ー。俺や親父やお袋の種族名ってあんの?ってこと。お袋とショッピングモールとか行って分かったことなんだけど、ケモ耳って全員一緒じゃないっぽいんだよな。

 今んとこ見たのは俺ら家族みたいにオオカミっぽいやつと、若干似てて分かりにくかったけどキツネっぽいやつ。まあ違いがあるなら区別する名称が無いとね、わかりにくくない?まあ呼び名あるだろ、という推測で聞いてみた。

 

 んで、最後に四つ目。俺が火傷した原因のあの不思議パワーはなんなの?ってこと。二人の話を盗み聞きして分かったことは『魔法』って名称では絶対にねぇな!ってのと、割と結構危なかったってことなんだよな。そんな不思議パワー気になるし使いてぇじゃん。転生者だよ?俺。

 

 この四つの質問に親父は快く答えてくれましたとさ。ちょっとはぐらかしてたところもあったけど、まあ子供に聞かせられない話ってのもあるよな、分かる分かる。為替レートってなに?って5歳の息子に聞かれたらはぐらかすもんな。どうだろう、はぐらかさない気もする。才能を感じて教えそう。

 

 で、親父の話をさくっと俺なりに噛み砕いた内容で話すな?まずこの星の名前を『テラ』って呼ぶらしい。そんで、色々国があるらしいんだけど、俺らが住んでるこの国はテラのちょい東側に位置する『シラクーザ』って国。

 ほんで、俺らオオカミっぽいケモ耳の獣人は『ループス』、キツネっぽいケモ耳の獣人は『ヴァルポ』っつー名称なんだと。なんと実は種族は他にも色々居るんだとさ、そんなに覚えられねぇよ。

 

 さて、一番のトリはこれよ。あの不思議パワー!

 この不思議パワーの名前は『アーツ』っていってまあさっきも言ったようにイメージは魔法だよね。これは元々誰でも持ってるものらしくて、ある程度のアーツなら皆使ってるんだってよ。

 お袋たちが危ないよ〜って話してたのは、このアーツを伝達するのに超親和性の高い『源石』っていうやつがどうやら関係してるらしいんだけど、これはあんま話してくんなかった。なんつーか、「話したくもない」?って感じ。いや、「想像したくもない」かな。上手く表現できねぇけど。

 

 いやぁ、燃えたよね。顔も燃えたけど心も燃えたよね。アーツ使って俺なんかやっちゃいましたか?やれるやん。めっちゃアーツの才能磨いたろ思いましたよね。鼻息荒くしてる俺に苦笑いして、ちょっと引き気味の親父。

 

「……さて! 今日はもう遅いし、お話は明日にしようか」

 

「えぇー、もっと話してくれよ! 気になるよアーツの話!」

 

「アッシュは元気だなぁ……父さんはもう仕事疲れでクタクタだよ」

 

「アッシュ、父さんを休ませてあげて? ほらこっちに来て、あなたが気に入るオペラがやってるわよ」

 

「オペラは難しくてわかんないよ……お袋……」

 

 お袋マジでオペラ好きだけど、俺ちっとも良さが分からん。なんか大体悲劇調だし、クライマックスも仄暗いし。てかシラクーザ全体がジメジメしてっからかな、なんか住んでる人もネガティブだよね。あんまりにも駄々を捏ねすぎたもんで、親父に肩車されてお部屋に連れていかれちまった。背が高い爽やかイケメンを乗り物として扱う気分や良し。

 

 ベッドに寝かせられ、布団を被せられて、天井を見つめる俺。うん、寝れるわけないよね。異世界の情報てんこ盛りで未来にワクワクしてっからよこっちは。目ぇギンギンですわ。こういうときやっぱ羊を数えた方がいいのかな。なんであれって羊なんですか?

 

 バカみてぇなことを考えてたら、親父とお袋が居るであろうリビングから何やら物音がする。気になっちゃうお年頃だからね、もしかして愛の営みかもしれないからね。これは下世話だし最低かも。ちょっと殺して欲しい。

 

 なんにせよ、気になったんで扉を恐る恐る開けて、リビングの方を見やると、さっきまで話してたお袋がどくどくと腹から血を出して自分の血の池に倒れ込んでいた。

 母親ってのはすげーもんで、俺が部屋から覗いてることをいち早く気付いて、なにか口パクで伝えようとしてる。ごめん、けどわかんねぇっす。親父は浅く開けた扉の角度じゃ見えないが、おかしいくらい静かなのを考えると同じく死んでるってほうが可能性高ぇかも。うーんと?整理するとー?

 

 ええーーー!?!?ちょっと急展開すぎないか!?異世界転生してすぐに両親が死ぬなんて聞いてねぇよ!?ファンタジーモノでもダークファンタジーかよちくしょうが!!!

 

「────そこに居るのは誰?」

 

 音立ててないのになんでバレるんですかね?もう仕方ねぇから恐る恐るとか関係なく扉をぶち開けてやったわ。あーあ、口から血ぃどばどばだしながら親父がこっちを見てら。「なんで出てきたんだ」みたいな悲痛な顔してるよ。まあ、任せとけって、おめーの息子を信じたまえよ。

 

「──子供? おかしいね。情報だとこの夫妻には子供がいないと言われていたのだけど」

 

「……間違いなく、俺はそこの二人の息子だよ。 チェーネレ家のアッシュだ」

 

「……そう。 別に、二人殺すはずだったのが一人増えただけ。 下手に抵抗しなければ楽に殺してあげるけど」

 

 目の前の殺し屋?よく分からねぇけど能面みてぇな氷を思わせる女が剣に滴った血を払った。ううん、ごめん親父。俺もそっちに行くかもしんね。

 

「……どうせ死ぬんだし、無知でバカな俺に冥土の土産として教えてくんねーか? どうして俺の親父とお袋は殺されなきゃいけなかったんだ?」

 

「ふぅん。『無知』で『バカ』……。 にしてはその歳で泣き叫ばないし、下手な真似もしない。君、外見と中身が一致していないね」

 

 ぞわっとした。こいつやべぇぞ。なんでちょっとの言葉だけでそこまで察知できる?殺し屋ってのはそういう感性も磨き上げねぇとやってらんねぇのか?

 ただ、幸か不幸かそれがこいつの少しの興味を引いたのか剣をソファの傍に立てかけ、冷たい表情のまま女もソファに腰掛けた。いいよ、教えてあげる。そう言って。

 

「君のご両親はなんてことない都市の市役所勤めの公務員でね。 悪事を働いたわけでも、その逆で善い人すぎたわけでもない。ただの普通の人だよ」

 

「……っ、じゃあ」

 

「────じゃあ、なんで殺したか。彼らの勤めている部署が問題でね。ウチのファミリーの事業の足止め……まあ、市役所って色々監査を行って……信頼に足るかを見極めてから融資を……ってするよね。それを億劫に思ったドンが『取り壊し』を望んだんだ」

 

 ファミリー、ドン。聞き馴染みのない言葉だけどよーく分かるよ、日本で言うヤクザ。イタリアとかで言うマフィアってことだろ。だーから親父がちょーっとシラクーザの話をするとき目を逸らしてたのはそういうことね。そりゃ教えられんわ、マフィアが堂々と市政をぶち壊すことのできる国なんてなぁ……。

 

「ここの都市の市長とはドンは顔馴染みでね。丁寧に『お願い』をしに行ったら快く取り壊しを認めてくれたそうだよ」

 

「……倫理観、終わってないか?」

 

「これでもウチのファミリーはマシな方だよ。……他?知らない。きっと、殺されるよりもっと酷い目に合うんじゃないかな」

 

「……おっけー、聞きたいことは聞けた。いいぜ、一思いに殺りな」

 

「潔いね。 遺言は無いかな。 あるなら、今晩のディナーまでは覚えておくから」

 

 目を瞑って色々思い返す。思い返すことなんてあんまねぇよ!!!!第二の人生短すぎだろうが、ちくしょー!!!!俺TUEEEE諦めなきゃですか?だめですか?あ、はい。

 

「──来世はシラクーザじゃないところでお願いします」

 

「いいね。私も次の生があるなら極東に生まれ変わりたいと思っている」

 

 そうして、女の振るう剣によって俺の首が刎ね────られることはなく。力強く瞑っていた目をゆっくり開くと、さっきの無表情が嘘みてぇな複雑そ〜な顔で振り翳す手を止めていた。

 

「……雨雲に隠し月夜にこころえず、叢雲風とむべなるかな」

 

「──んぇ? い、いきなり和歌? しかも、オリジナル……?」

 

「君は極東出身でもないのに、よくこの歌の形象を知っているね。……そう、私のことを好きでたまらない男がよく詠んでいてね、いつしか私も口遊(くちずさ)むようになってしまった」

 

「……え、えっとぉ。 たまたま! たまたま知る機会があってさ、はは」

 

「……まあ、後で問い詰めるとして。 なぜ私が手を止めたか、気になっているね。 私は今お腹に命を授かっている。

 この子は女の子なのだけど、君を殺すと寝覚め……というか、この子に顔向けできないと思ったんだ」

 

 物事が上手くいかない様は()(うた)として諳んじられるけど、実感したのはこれが初めて。そう言いながら、まだそこまで大きくなっていないお腹を優しい顔でさする彼女。

 うへぇ、そんな暖かい表情できるのかよ。しかもあれか、「私を好きでたまらない男」との子供だろ絶対。こんな必殺仕事人みてぇな女の心を解かす男ってどんなラノベ主人公なんすか?会ってみてぇ。

 

 結構失礼なことを考えている俺の内心を知ってか知らずか、佇まいは依然殺伐とした殺し屋のまま、二本の指を立てて説明し始めた。つーか子供を殺すのは寝覚めがわりぃつって殺すのを躊躇うのに、どーしてその子供の両親を殺すことには躊躇いがないんですかね。全然こいつイカれてるわ。

 少し人間っぽいところあるんだなとか思って絆されかけたわ、あぶねーあぶねー。

 

「今君にある選択肢は二つ」

 

「一つは、このまま私が見逃してチェーネレの名を捨て、ただのアッシュとして一人でたくましく生きていく道。

 雨季ばかりのシラクーザでも、今週はとりわけ酷い雨だ。悲鳴は雨音にかき消されるだろうし、流れる血は水溜まりと共に排水溝に流れて残らないだろうね。私はおすすめしないかな」

 

「もう一つは、私の所属するファミリーの一員になることだ。厳密には私直属の部下として働いてもらうことになるかな。きっと、君も私と同じく多くの人の人生をドブに捨て去ることが多くなるだろう。けれど、この血なまぐさいシラクーザにおいて数年くらいは生き延びることができるよ」

 

 はぁ?んなの実質一択じゃねぇか。シラクーザ人ってのはなんだ?選択肢を与えるフリして人を追い詰めるのが趣味なのか?

 

「──なるよ。なってやる。アンタの部下でも駒でもなんでもな。雑用でも汚れ仕事でもなんでもござれ。生きるためなら泥水だって啜ってやるよ」

 

「威勢のいい子供は嫌いじゃないよ。この世界じゃ主張すらできない人間から死んでいくからね」

 

 こうして、俺はこのイカれた殺人鬼との師弟関係?それともなんだ?奴隷契約?を結ぶことになった。

 まあこいつとの出会いがなかったら、後々出逢うアイツらとも仲良くなれなかったんで、マジで運命の転換点なんだが……一つだけ言わせてもらっていいか?

 本気だすには場所が悪いって。




後書きは怪文書コーナーにしようと思います。
極東の学校文化に興味を持ち夫とのイチャイチャでセーラ服コスをするイングリッドを誰か書いてもいいんですよ?
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