残クレチェリーニアの語感が良すぎて第二陣を思いつくのにかなり力を使った。
で、積み立てチェリーニアってなんですか?
さっきまでの戦いを振り返ってみよう!アドバンテージ的には俺は傷を負っていなくて、チェリーニアは傷を負っている。するってーと、明らかに俺が有利なはずなんだがー?あら不思議!今は何故か俺の方が押され気味だヨ!
「……ここ、だっ!」
「あぶねぇ……なぁ!」
物質精製したでけぇバスターソードを思いっきり叩きつけるチェリーニア。こういうのは隙がデカい代わりに威力がデカいが常識なんだが、頭のおかしいフィジカルをしてるこいつが使うと隙が無くて威力もデカいとかいうズルい仕様に早変わりする。本当にバグだろ。
そのままバスターソードの剣の腹を足場にして突貫してくるチェリーニア。さっきみたいに刃が分厚くどちらかといえば鉄の塊で押し潰すような剣の種類ではなく、今度は刃先が鋭く細いレイピアのような精製武器で動きの要である関節を狙って突いてきやがる。
ぶっちゃけ直剣から大剣あたりはナイフで触れる面が多いから身体強化とナイフの扱い方でどうにか剣筋をズラす、または弾くことができる。一変してレイピアは細い刃先で、ナイフで触れる面がほぼ無い。いやギリ弾けはするんだけど、手元に伝わる力は弱いから何度も立て直しができてしまう。
脳筋バカだと思っていたが、武器精製のチョイスはバカじゃなくて怖いんだけど。頭の悪い一撃一撃を繰り出しながら、それに対するリアクションをちゃんと反映して的確にこいつは俺の苦手な武器を特定している。んで、相手しててなによりもダリぃのが、そういったあらゆる武器種に対しての……
「てめぇ、使えない武器はねぇのかよッ……!」
「お爺様に使えるものは全て使えるようにと仕込まれたのでな、弓以外ならば大体は扱える!」
オール適正S、補正Sって感じの守備範囲の広さ。こーれが厄介だ。ナイフでの応戦が難しいと判断した俺は『アーツ言語』での遠距離射撃にシフトした。そこら辺に転がってる石ころを弾として使えばいいし、最悪微細な物質を『アーツ言語』で固めて物質精製すりゃ弾切れの問題はない。
俺としては問題はなかったけどな、チェリーニアはここでずっと細剣を使い倒すほどバカじゃなかった。多い弾幕に対して長柄の直剣とそれよりも長い大剣……ダークソ〇ルプレイヤーなら御用達、ツヴァイヘンダーの二刀流に戦闘スタイルが変化した。
時にはツヴァイの腹で受け、長柄の直剣で斬り墜とす。移動をさせないようにずっと射撃してるってのに、その場に突っ立ったまんまで全て捌きやがる。うぜぇ〜!明らかに俺の『アーツ』とこいつの『アーツ』、相性がチェリーニアの方に分があるんですけど〜!!
でも俺ってば天才的だから、こういう手詰まりになったとき、閃きってのが訪れちゃうんだよなぁ〜。みつを。
今まで俺はナイフを手元に戻す『アーツ言語』をそのままバカ正直の意味合いで使ってたよな?ほんっと、アタシってバカ……。
そ、俺→ナイフから俺←ナイフのこの感じでよぉ。これは同質のアーツは引き寄せることができるって理屈の芸当だったが、なら俺もナイフの方へと引き寄せることができるんじゃねぇの?
だから、やりたいのは俺→ナイフからまた俺→ナイフってことになるかな。え、この図だと思ったより分かりにくっ。
うーんと、ナイフの方に引き寄せられることで、擬似的な瞬間移動を可能にしたいんですよ、分かって♡
じゃ、さっさとやるか。『アーツ言語』による射撃へ割いてる意識を5割くらい減らして、減らした分のリソースをこの新造する『アーツ言語』に持っていく。
設定するとして『任意に発動/同質のアーツを引き寄せる』ってところか?
……うし。設定し終えた!んじゃ、射撃の頻度が落ちて好機だと思って詰めてきてるクソ怖チェリーニアさん目掛けてもっかいナイフを〜?投擲〜!結構殺す気で投げた。簡単に避けられたけど。魂の死ねがでそう。死ねどす〜。
「なぁ、避けるの辞めてくんね?」
「避けられる速度で投げる方が悪いだろう」
んだそのイジメられる方が悪いだろ理論みたいなカス理論。ツヴァイの長いリーチで俺が左右に逃げられないように大振りの横で空間を削ぐチェリーニア。こういうのはタイミングなんだよ。後ろに半歩退いて、振るい終えた最後のここ。
さっきみたいにお前はナイフの回収軌道上にいることに気付いてんな?意識を向けていないフリをしつつ警戒をしてんのバレバレだっての。だから、俺も前に詰め寄って同じことを繰り返してやるよ。物質精製で刃を三本。バラバラにぶっ刺しても大して痛くないだろうしな、これももう一度肘の付け根だバーカ。
「────それを許す私だと思うのか?」
「思わないから逆にやってんだろうが。──発動」
刹那、いつの間にか俺はチェリーニアの背後に立っていて、チェリーニアは見えない衝撃に仰け反っていた。
「……ぐっ、なんだその速度はっ」
「教えるとおもってんのか? ばぁーか!!!!」
結果から言えば成功した。でも……いやぁ、初めてやったナイフ回収のときと似たような感想を抱きますた。細かい座標指定をしていないから俺の向きはチェリーニアの方を向かずにテレポートした。後は障害物があると当たり前だけど衝突しますね。要改善。
咄嗟に軌道上にいるチェリカス蹴ったから最後までテレポートできたけど、これ下手するとRTA走者みたいにバグで壁めり込んだまま動けないとか有り得そー。そん時は発動してる『アーツ言語』を中止すりゃいいんだろうけど。それってミスじゃんね。
ほんでもってまあまあ遠くに飛んでいってたナイフくんのお陰でチェリーニアの背後は取れたが距離があるよ♡マジで本末転倒とはこのことを指し、マヌケとは俺のことを指す。でも一回やりゃダメなとこっての改善できるからさ、二回目はもー大丈夫。多分。
「ごめん、チェリーニア。死んでも知らねーって言ったけど、本当にお前死んじゃうかもしんない!」
「……ふざけろ、私が死ぬのは今この場でじゃない」
テレポートでコンボハメしてやろうと『アーツ言語』の二重がけとか試してみようとしてたら、チェリーニアも本気を出すつもりなのか、明らかにやばそ〜な雰囲気を放つ『アーツ』の剣が四本チェリーニアの周りに突き刺さった。
まるで突き刺さってんのは剣だってのにチェリーニアと同じ紺色の狼の群れがこちらを睨んで遠吠えをあげているような錯覚に陥る。
「……スーッ、ハーッ……一瞬で片を付ける」
「────凌げねぇとでも思ってんのか? 舐め腐ってんじゃねぇぞ」
『アーツ言語』の二重設定はまた今度だ。まずはこの生意気なキレ症狼を理解らせてやんねぇとなァ!?俺も全出力をフルベットで物質精製に偏らせる。創るのはそうだなぁ……!
─────パチンッ!
「ハイハイ、二人ともそこまで。楽しそうで何よりだけど、お互い無傷じゃ済まないところまでエスカレートしちゃダメでしょ?」
指鳴りが辺りに響き渡ったと同時、物質精製を完了しかけていた微細な粒子がさらさらと崩れ落ちてく。俺の『アーツ言語』だけじゃなく、チェリーニアの周りに顕現してた狼の化身もすぅーっと煙のように消えちまった。
ッチ、今いいところだったのによ……。こんなことができるバカみてぇなチート『アーツ』を俺は知ってる。これができるのはあいつしかいねぇ。
…………邪魔すんじゃねぇよ、ラップランド。
「邪魔を……するな。ラップランド」
おっ♡考えてることが一致したねチェリたん♡でも俺の方が考えるの先だったから俺の勝ちな。お前の負け、負けったら負け!!!!
「邪魔って……非道いなぁ。ボクは大好きな二人のトモダチに仲良くしてほしくて、仲裁に入っただけだっていうのに」
肩を竦めて思ってもないような素振りで語るラップランド。これね、『思ってもないような』ってのがミソ。実はしっかりと思ってるし、素直じゃないこいつにしてはしっかりと本音を伝えてる。ちょっと誤魔化してるけど。俺にはお見通し。友達大好きすぎだろって♡
「サルッツォの仲間を仲間と思ってもいないようなお前が、心配?……冗談も休み休み言え」
「それを言われちゃうと、ボクは何も言い返せないかもね……アハハ!」
おっとー?チェリーニアさん!?マジすか?ほんまっすか?このラップランドの完璧に誤魔化しているようでアホほど分かりやすい心配を、じょ、じょじょ、冗談!?鈍感ラノベ主人公かよこいつ。
……あ。ラップランドと強烈なハジメマシテをしたときにそういや『怖がらないやつ』は俺でふたりめとか言ってたよーな……。まさかですけど、チェリーニアがひとりめ?
俺とこいつだけだったの?ラップランドを怖がらないのって。え、チェリーニアと同類なのヤだなんか。ラップランドに似た者同士って言われた時より嫌だ。
短気で?言うこと聞かなくて?鈍感?俺そんなんじゃねーし!めっっちゃ気が利くし!
めっちゃ同情の目でラップランドを見つめてたら、「ボクにもお手上げ(笑)」みたいなやれやれポーズで見つめ返してきやがった。いや、お前の方が関わり長えだろ。どうにかしろよこの女を。
てかさぁ、ラップランドが恐れられる理由こいつにもありそうだよね。シラクーザの全マフィアの憧れである老サルヴァトーレの孫娘って肩書きを出されたら誰でも憧れるっていうか……尊敬するに決まってんだよなぁ。
そんなやつが居候してきたら、尚のことギャップっていうか、「チェリーニアさんに比べてラップランドさんは……(失笑)」ってなりますがな。ただこいつは真面目にサルッツォ(動詞)してるだけだってのにね?
……今度ラップランドと飯食いに行く時は奢ってやろう。いつも頑張ってるやつに労いはね、必要だよ。つーか運動して腹減った。今度じゃなくて今行くぞおら!
「……勝手に予定を決めるな」
「ふぅん。じゃあボクとアッシュの二人で外食に行くからいいけど」
「……行かないとは言ってないだろう。不味かったら許さないからな」
「任せろって! 俺の舌は肥えすぎてうめーもんしか食えねぇ身体になってんだわ。だから絶対美味い」
いやー食った食った。まじで飯にはうるさかったけど死ぬほど店回っただけあるわ。満腹感が尋常じゃないっす。
なんで店回ってたかって?チェリーニアが「この店は知ってる」とか「ここの料理の気分じゃない」とか口数少ねーくせに否定だけは一丁前にするんだもん。
結果ラップランドと俺が色々調べて短気バカが満足するまでに計4件!4件もの店を見て回りましたよ。まあ美味かったからいいんだけど。ラザニアの美味ぇ店でした。
最初より大分機嫌が良くなって口数もちょい増しで喋るようになったチェリーニア。おかげでどんなやつか段々分かってきた。短気でマイペース、でもどっか放っておけない感じのやつ。するりと人の懐に入るのが得意なやつ。
上に姉がいるけど他に男兄弟がいない末っ子長男的なエッセンスを感じたね。なんつーの、両親と姉とかに甘やかされたことで甘え方みたいなのを自然と習得してて、なのに長男適正気質がある……時々見せるリーダーシップのあるやつ、みたいな?チェリーニアはひとりっ子だけども。
それと比べるとラップランドはまじでTHE・ひとりっ子!って感じだよな。下に弟妹がいないから甘やかすのも下手、上にも兄姉がいないから甘えたことがない。なんならここに両親共に共働き!みたいな要素加えてもいい。だから飢えてる?みたいな。
雑貨店を通り過ぎそうになって、いきなりチェリーニアが止まるもんだからどうした?って聞いてみたら、「少しここで買いたいものがある」とか言って雑貨店ん中に入っちまった。待たされること数分。暇だからラップランドと雑談を洒落込むことにした。話してて死ぬほど思うけど、本当に思ったより常識的なんだよなこいつ。
「てかあいつの歳聞いてなかった。……ラップランドは知ってんの?あいつの年齢」
「ボクらより歳は上なんじゃないかなあ? ……そんな『知らねぇのかよ……』って顔しないでよ。淑女に年齢を尋ねるのってマナーとしてはアウトでしょ?」
「……すまない、待たせた」
紙袋を腕に抱えてがさごそと中からなんかを取り出してぶん投げてくるチェリーニア。前世草野球チームで鍛え上げられたこの腰の強さとキャッチャーセンスを見せつけてやる!つってフォーム取ったらチェリーニアにバカをみるような顔された。シラクーザでスポーツあんまり盛んじゃないですもんね。知ってます。
どうやら店の外で待たせたことと、しょっぱな殺り合ったことの詫びだそうで、小せえ紙ミルクをくれた。俺はいじけた甥っ子かなんかだと思われてんのか?キレそう。
中指立てて威嚇してる俺を鼻で笑いながら、チェリーニアも紙袋からマルボロを取り出して慣れた手つきで自分の服からライターを取り出した。そのままトントン、とタバコの箱の下を叩くようにして一本のタバコを取り出し、口の方に持っていって咥えた。
シラクーザは湿気が多いから上手く火が付かねぇんだろうな、何回かカシュッ、カシュッ!ってヤスリを回して火を付けてた。正直ちょっとエロいと思った。ラップランドはそれに気付いてたし、「お子様だね」とかイジってきてた。仕返しに耳を揉んでやった。くすぐったいからって逃げんな!
「……ん、てかチェリーニアってまだ未成年だよな。いいのか、タバコ吸って」
「未成年は人を殺していいんだったか?……吸っていいか悪いかなぞ知らん。私が吸いたいから吸う、それだけだ」
「ハハッ!チェリーニアのお爺様も言いそうなセリフだね!子は親に似るって言うけど、本当に生き方が似てると思うなぁ」
ふー……っと気だるげに口から煙を吐き出しながら壁に背をもたれてタバコ吸う人特有の腕の組み方をしているチェリーニア。いや、ヤニカス。
え?腕の組み方がイメージできない?こう……前で腕を組んでさ、指にタバコを挟んで……肘を……ええい!こうだよ、こうっ!!!わかれ、わかれよぉ!
「……あいつは何をやっているんだ?」
「ああ、気にしないで。アッシュって時々ああやって変なことをする癖があるんだ」
おいそこの二人!聞こえてるからな!?
俺ァ知ってんだぞラップランド!お前学校の机の下にベラ姉も読んでたロマンスモノの恋愛小説全巻隠してるってこと!
片や少女趣味のイカれたフリした純情乙女と、片やクソボケ鈍感ヤニカス短気女だろ!?やーいやーい!
あ、待って!?俺だけ『抑制』するのはやめてっ!チェリーニアの『アーツ』を防御手段無しでは避けられないっ!!きゃー!!!!い、いたいって、謝るっ、謝るからぁっ──!!!
自分用頭の整理メモ
ラップランド、アンジェリーナ、アッシュは10歳
チェリーニアのみ12歳
1092年にテキサスファミリー粛清が行われるのでその頃にはチェリーニアは17〜18歳であるとする
ので、時系列的には1086年前後が現在
メインテーマ1〜8章までが1096年からなので、その頃には……