異世界転生モノだと思ってるバカ   作:さぼさぼさん

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La solitudine (孤独)でLSです
 トラディトーレが滅び独りになった用心棒
 父親の愛を求めているがもう二度と愛されることはないとわかっているベアトリーチェ
 テラに転生したが1人だけ異質な存在としてありつづけるアッシュ
 みんながみんな、孤独を抱えている。


影と灰/LS-1

 存在感を増した『影』が蠢いて俺のことを呑み込もうとしてくる。人によっちゃあフェチかもね。使い手がむさ苦しい男だってことが一番マイナス要素だと思うけど!

 

「ナァァァ!!!!避ケルナヨォォォォ!?!?」

 

 そうそう、鉱石病って悪いことばかりじゃないんだよね。体表および体内に生成される源石はクソみてぇな造られ方とはいえ腐っても源石なんだわ。

 つまり最高効率のエネルギー変換を可能にするってことで……そんなモンが体ん中にあるんだぜ?そりゃあよぉ、『アーツ』の触媒として最高の働きをしてくれるってことに他ならないわな。

 

 このクズの『影』はその恩恵で死ぬほど強くなった。元々の『影』に潜む力が他者にも及ぶようになって、今も足元に影があると引き摺り込まれそうな感覚がある。

 『アーツ言語』によるテレポートで地面の接地回数を減らすって荒業でどーにかなっちゃいるが、ポジションを限定させられてるってだけでやりにくいったらありゃしねぇ。

 

「……さて、どうしたもんかねぇ……」

 

 キモいのは強くなった箇所はそれだけに及ばないってこと。他にも色々言い出しゃキリないくらい大幅強化されてんのさ。ソシャゲで不遇だったキャラがバカみてぇにリワークされた時くらいつえー。

 

 影人形の素体がシンプル硬ぇし、影から影へと瞬間移動する能力の展開が前見たときより死ぬほど速いし。あとなんだ?俺のアーツ解析で次の動きが予測できない。ずっと(けん)に回らないといけねぇ。

 

「……逃ゲテバカリナノハ、何カ意味ガアルノカナァ?

 アッシュクン……ケケ……クケケケケ!」

 

「……あーら、俺が手をこまねいてるの、バレちゃった?」

 

 つーかさぁ、元々俺の『アーツ言語』だけじゃあこいつの『影を操る』アーツに対抗はできねぇの!だからラップランドに『抑制』してもらったり、アンジェリーナにそもそも行動をさせないように『重力操作』で潰してもらったわけでぇ〜!

 

「あとそのラップランドみてぇな喋り方……キモいからやめろボケェ!」

 

 苦し紛れにとりま物質精製した石礫を二、三発射出する。用心棒の喉元ドストレートに放ったそれを、このカスは部分召喚した影人形で防ぎやがった。普通に『影』のヴェールとかでいいだろうがよ、悪趣味かこのバカ!カス!間抜け〜!

 

 でもありがとう。そのお陰で君の懐に潜り込めるよ。影人形の部分召喚で自分の視界もそん時遮られちまったよなぁ?逆手に持ち替えたナイフでてめぇの心臓一突きじゃオラ!

 

「────ごぽっ。…………は っ゛ぁ゛ ?」

 

 …………ありゃ?

 

「アーア……バカダナァ……オレノ『影』ハヨォ……!

 部分召喚ダケジャネェ! 実体モ部分的ニ……『影』ニデキンダヨォ……コノダボガァ!!!!」

 

 さっき確かに俺はこいつをさくっとぶっ殺そうとナイフを突き立てたはず。あー……あの時心臓周辺だけを『影』にして、影ん中に潜り込むことによる反撃のロスを無くしたのね?そんでノータイムのカウンターで俺のどてっ腹にドスッとなっ!てか。おー、理解理解。

 

 よく怪我するときさぁ、『あ、このままだと怪我するな』って覚悟できてる時ってそんな痛みとか汗とか出ねぇじゃん。今その逆だわ。

 喰らうと思ってなかった反撃でいま死ぬほど激痛を訴えてくるし、カラダ全体が冷や汗をバカみてぇにドバドバ出してきやがる。

 

 腹からなんかこぼれ落ちそうなのを手で押さえて、後退しながらさっき立ってた床に『任意で発動/無作為に暴発』を設置する。

 ベアトリーチェは『影』の中で仮死状態だろうってのはクソほど役に立たねぇアーツ解析で推測できてる。あの部屋にはベアトリーチェの存在が目視できなかったし、アーツの残滓もなかった。

 

 だから今はまず俺が死ぬ方がマズい。ここにいちゃ一方的に嬲られるだけだ。『アーツ言語』で設定したアーツ力場で部屋をぶっ壊してその崩落に乗じて逃げる。ごめんねベアトリーチェ!おめーのお家後で弁償すっから!

 

「げほっ、邪魔くせぇなぁ……この影人形どもォ!」

 

 ただでさえ硬ぇのに障害物みたいに召喚してくんなマジでぇ!攻撃してくるのもくるのでウザいけどね、ケツがデカくて処理しにくいトークンカードってカードゲームにおいてやっちゃいけないスタッツってわかるっしょ!?お前のはそれですぅ!!!

 

 

 

 アッシュの『アーツ言語』によって仄かな青みを帯びた石の槍が屋敷内を駆け巡る。『アーツ言語』は極限までアーツ消費を減らした彼独自の技術である。この技術は確かにコストパフォーマンスという点では秀でている。

 

 秀でているが、『アーツ』の威力および効果の(クオリティ)は消費するアーツの量に比例する。『アーツ言語』はその強化にかける消費倍率をほぼ0に設定しているため、術師同士での戦いにおいては殺傷能力が低い。

 よくて相手の手足一本を駄目にする程度。足止め・ブラフの子供騙しの技。それが『アーツ言語』である。

 

 かつてトラディトーレのテオドーロを殺したあの一手は、アンジェリーナによって拘束されており、かつ十分なアーツを込めることができる余裕があったから行えたものであった。

 しかし今のアッシュは片腹に穴を開け、影人形に対してのリソースを常に吐き続けなければならない。十分なアーツを込める余裕なぞ、どこにもなかった。

 

 対して、用心棒の『影』はその身を蝕む鉱石病によって更に出力を増した。自らのもつ『アーツ』の解釈を拡張することでも術師の能力は飛躍するが、鉱石病による『アーツ』適正の上限突破はその比では無かった。

 

 用心棒の脳で生成された源石結晶は彼のアーツを倍々式に増幅・強化する……いわば内蔵されたアーツユニットとして機能している。その力の代償は、彼の人格の崩壊。抑制剤も持たずして鉱石病に罹った彼の命は一月と保たないだろう。

 

 しかし、彼にとっては些細なことだ。クルビアからシラクーザまで、クルビアでも立場の弱いトラディトーレを立て直すため祖父らの古臭い故郷へと足を運んだというのに、半年もしない内にファミリーは壊滅してしまった。

 

 それもこのアッシュとかいうガキのせいだ!あの白髪のガキの方はサルッツォの一人娘だという情報は掴んでいた。だがこいつは、こいつはッ!

 

 勝手な用心棒の激情によって強化された影人形たちがなんてことの無いように『アーツ言語』によって射出された槍を破壊する。その行動の後隙を狩るように、背後から影人形の頭と首を泣き別れにするアッシュ。

 腹にじんわりと滲んだ血の染みが、アッシュに残された時間がもうわずかであることを残酷にも告げていた。

 

 やっと、一体倒した。残り、五体。

 

「召喚数も増えてんのかよ……アホくさ……ごほっ!」

 

「アーッシュクーン!

 アーソービー……マー……ショ!!!」

 

 よろめきフラついたアッシュの足元から、影の凶刃が彼を激しく突き刺そうとしてくる。それを目では捉えてはいるものの、避けるほどには反応が間に合わなかったアッシュは左脚を貫かれ、その場で動けなくなってしまう。

 

「アレ? コンナニコイツ……弱カッタ? アレ?

 アレアレアレアレ?」

 

 用心棒はもう少し胸に燻る復讐心が晴れやかになるものだと思っていた。だというのにあれだけ憎んだアッシュにもうトドメを刺せてしまう。おかしい。この殺人衝動はこいつを殺した後どうやって発散すればいい!?

 

「────まだ殺してもねぇのに終わりだとか思ってんじゃねぇぞ」

 

 脳内で煩わしく喚く自分ではない声の数々に頭を抱え、狂気に悶えていると、アッシュの声が背後からきこえた。ハッと顔を見上げると、そこには貫かれたままの左脚……膝から下()()があった。

 

 火事場の馬鹿力とは言ったものか、残り五体の影人形のアーツ反応が消えていることに気付く用心棒。アッシュは自ら脚を千切り、コンマ数秒で片付けたのだ。あの数を!

 

「オマエェェ……逃ゲテイイナンテ、アタシハ言ッテナイッ!!!!」

 

「一人称が『アタシ』になってんぞメンヘラ野郎ォ!」

 

 アッシュは失った脚先から止めどない血を流しながら、『アーツ言語』によるテレポートを用いて器用に接近した。

 先ほどの戦いで素直に攻撃を与えたとしても、部分的に『影』によって透過されてしまうのは学習済みだ。

 

 だから、ナイフを突き立てる前、ほんの一瞬の隙間。この気付きを気取られてはいけない。ただのヤケクソの一撃だと思わせなければならない。

 用心棒の心臓と刃のその小さな小さな隙間に……精密な『アーツ言語』の設定によって、微細な粒子を集中させることに成功する。

 

「てめぇさぁ……。同じところに短いスパンで『影』化はできねェんだろ……?

 実体から『影』に、『影』から実体に……っていうその可逆的な性質だけはどうやらイジれなかったみてぇだなァ……!」

 

 ぼとぼとと脚から流れ出る血が、テラの大地に降り積もる灰のように堆積していく。本来液体であるはずのそれは、千切れた内側の肉まで混ざっているために、少しだけ固形の状態を成していた。

 

「────アッシュゥゥ!!

 何時モオマエハァァァ!!!!!!!」

 

「地獄でまた会うんだ。

 仲良く『アッシュくん』って呼んでくれよ」

 

 ここでネタばらしをしなければ、アッシュは確実に用心棒を殺せたのかもしれない。もしかしたら用心棒はこの一瞬で奇跡のような一手を打ち、アッシュの死に際の一撃を防いでしまうかもしれない。

 

 それは神のみぞ知る。アッシュはただ残りの力を振り絞り、大きな雄叫びをあげながら『アーツ言語』による物質精製で『影』化を誘発させ、実体に必ず戻るその瞬間にナイフを突き立てる以外は何もしなかった。何もできなかったと言ってもいい。

 

 残念ながら、生まれてこの方アッシュはバカなのだ。こういうときにイキってマウントを取りたがるし、圧倒的な屈辱を与えて殺してやりたいと思うクソガキなのである。それは自分が死にかけていても変わらない。

 

「どっちが先に地獄に行けるかゲーム……スター……ト……」

 

 力を使い果たし、仰向けになったアッシュは色々中途半端にやり残したことをなんだか思い出してしまった。

 例えば、閉じ込められていた影が解除されただろうベアトリーチェの救出だとか、これが終わったらチェリーニアに飯を奢らなきゃなんだったとか、リサちゃんの誕生日プレゼントをまだ渡せてないなとか。

 

「あっははは、やっべぇ……まだ死にたくねぇかも……お袋、親父ぃ……まだそっちには、行けないや……」

 

 その言葉を最後に、全身から力が抜け落ちて重い瞼を閉じてしまったアッシュ。

 彼の中で生きたいと思う気持ちと、もう十分満足に生きただろと思う気持ちが混ざり合って、不快ではなく、むしろ心地いい感情に心が浸っていくような気がしていた。

 その表れか、死闘を繰り広げたとは思えないほど穏やかな表情でアッシュは力尽きるのだった。




戦闘描写を上手く書けない

あ、リミテッドは異格銀灰2体、異格巫女さま1体がリザルトでした。
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