〖壊れろ……! 潰れろ……!……全てを無に帰せ……!〗
なあ、気ぃ失ってたらなんか聞き覚えのある声で呪詛吐いてる明らかやばそ〜な鎧が都市の方へのろのろ歩いてるんだけど、ナニコレ?のろのろすぎてまだ屋敷ん中で草ではある。
それにぶっ殺したはずのクズもこの鎧によってかゾンビみてぇに動き出してるし。自我は無いみたいだからこっちに襲いかかってくるわけじゃないっぽいけど。
あと俺のこの脚はなんだ?色んな物質がごちゃ混ぜになって形の悪い脚のようなモノとしてひっついてる。ちょっと触ってみたら神経通ってるっぽくてゾワゾワしてキモかったわ。言えよちゃんと神経繋がってるって。これモラハラ?何に対しての?
あ゛〜、訳分かんねぇ〜。脚だけじゃなくてなんか腹に空いたデケェ穴も塞がってるしさぁ。とりま立ち上がって、残存する保有アーツ量の3割くらいアーツ解析に充てて鎧の性質を調べることにした。
「血液中の源石密度……をイジってる? いや、違ぇなぁ。これは……血液中の源石密度に『感応』してんのか!」
ムズい事してるから説明もムズいじゃねぇか。どーしてくれんのこのヤバそうな鎧ちゃん(推定ベアトリーチェ)は。
ええっと、今や超源石社会なこの世界で、体内に源石の微細な粒子が入ってないやつは少ない。これまず覚えてますか?おっけー、次に進もう。
で、この体内にあるどれっっだけ小さい源石だろうと、この鎧の『言葉』は操作?……上手い表現が見つからねぇな。うーんと、鎧の思い描くような動きを命令?ができるみてぇだ。
ただ、デメリットも付き纏ってるっぽいな。鎧側のデメリットじゃないぞ。無理やり動かされた無機物・有機物の方だ。
多分急激に内部の源石が結晶化して活性し始めてる。抑制剤無しでもまあまあ短命な方だけど、これはもっと酷いんじゃないの?余命一月とかのレベルじゃねーぞおい。今日中にお命頂戴しますってレベル。
〖LaLa……こんな世界、いらない!……LuLa……〗
ベアトリーチェみてーな声の鎧が哀しみながら口遊む歌声が響く度、かつて用心棒だった成れの果てがバケモノみてぇに蠢いてその身を厭わず『影』の軍団を生み出し続けている。
ほへぇ、生きてたときも鉱石病の恩恵で召喚数の上限増えてたのに、もっとですか!?ま、死体にリミッターとか無さそうだもんな。増えてるって言うか際限なしに命令され続けてるって感じ?
あの鎧の方も『出せるだけ出せ』って命令してそうなのはマジっぽいし。ちょっとした救いはこいつの歩行速度がナメクジみてぇに遅い事かね?
一旦こいつの事を無視してラップランドとチェリーニアが今どんな感じか確認するために、玄関をぶち破って外に出ることにする。
「二人とも〜! 手こずってないですかぁ〜!?」
お、なんだもう終わってんじゃん。ラップランドは余裕そう。チェリーニアはちょっと疲弊してるって感じか。
なんならもう少ししたら中に突入しましょうか!くらいの空気感だったね。その決意、俺が邪魔しちゃった?ごめんね♡
「……なんだ。その顔は」
「いいや? チェリーニアさん俺らより歳上なのに苦戦したんすね(笑)って思っただけ」
「……後で絶対にシメる」
「まあまあ、落ち着いてよ。……それより、その脚とお腹の傷は?」
いやぁ、隠せないよね。てか隠す気も無かったんだけども。脚を動かしてみたり、腹を叩いてみたりして変なことが起きる様子がないのを見せつけつつ、俺も全然不思議な顔をして答えた。だって俺も分かんないもんね、まんまその通りに答えるよね。
「なんか普通に死にかけたんだけどよ、気を失ってたら知らぬ間に生えてた……っていうか。よく分かんないけど治ってた」
「…………アッシュ」
おお、ポーカーフェイスが得意なラップランドの顔が絶妙に歪んでら。心配?不安?なんか困り眉でどういう言葉をかけていいのか分かんねぇって顔しやがる。
ラッピー、隣のチェリーニアを見てみろ。こいつなんか「死にかけてて草」って感じで俺の事鼻で笑ってんだぞ?もうちょいあれくらい気楽に考えようや。
ムカつきはするから後で絶対にボコすけど。
「とりま死んでねーだけマシと思おうぜ!
てかさ、ベアトリーチェがなんか変な鎧に引き篭ってヤベー感じなんだけど、アレなに?」
「鎧だと?……お前がベアトリーチェを救出する手筈だっただろう」
「ボクも、屋敷内での出来事は知らないよ。
……そもそもキミの言うそれが本当なら、ベアトリーチェの『アーツ』って彼女の歌声だけだったのかな?」
おお、当たり前を疑うその姿勢、誉れ高い。確かにな?ベアトリーチェの『アーツ』だけじゃあんな禍々しい鎧は形成できるイメージ湧かねぇや。
……と、なるとモブ使用人どもが言ってた「巫王の余韻」関係の厄ネタかなぁ……?
〖aa……あなたたちも……yuu……ゆめなんでしょう……?〗
顎に手を当ててめちゃくちゃ考えてっと、屋敷の中から鎧が外へとバカでけぇ体躯を晒そうとガシャンガシャンつって歩いてきてる音がした。
構図的には俺が屋敷に背を向けていて、ラップランドとチェリーニアが都市側っつーか鉄門側に背を向けている状態な。
冗談抜きの化け物に目ェ見開きつつ、一瞬で臨戦態勢取ってる2人はこれで連戦になるってのに流石だね。マジリスペクト。
ちなみに俺も衝撃の展開を目の当たりにしてて目を見開いてる。え、何が俺の視界で起きてんのかって?
ラップランドとチェリーニアが殺しただろうルパートとエリザが蘇って背後から2人の脳天かち割ろうとしてきてんのよ。
おいおい、命令できるのは鉱石病に罹った死体だけじゃねぇのかよってマジビビってる。
超最速で『アーツ言語』を起動する。物体射出の設定じゃミリで間に合わないんで、2人の真後ろにテレポートしてルパートとエリザの顎下を狙ったダブルラリアットかますしか方法がなかった。気分はプロレスラー♡
ちなみに身長差があったからちょっと斜め上に飛んだわ。これから身長メキメキ伸びると信じたい。てかそのときこのヘンテコな脚はどーなんのかね。そこらへんも不思議。
「クソッ……おい、一旦ベアトリーチェがどうだとかの事態じゃねぇ!」
「ああ、分かっている」
「……しぶといね、さっさと死んでてくれないかなぁ?」
〖sh……死……ああ、エリザ……ルパート……どうして……どうしてっ……aaaAAAA!!!!〗
死体に意識とかあるのか知らないけど、結構えげつめなラリアットだったんだけどな。普通なら意識トんでますよ。
だってのに、また鎧から放たれる哀しみによってエリザとルパートはまた一瞬で立ち上がってきちまった。
本体を叩かなきゃ永遠に蘇ってくるゾンビ三体に、近寄るのも一苦労な大元の鎧。ギミックボスにしちゃあ難易度極Sじゃない?
「くっ、キリがないっ……」
「うっぜぇなぁもー!!!!」
もっと言えばあの『影』のバカのせいで影人形も込みか?笑えてくんな。つーかなんなら既に俺とチェリーニアはキレる一歩手前って感じで手当り次第影人形を潰しまくってるんだけどね!
だって3vs無限(多分)ってどーしろってんだよ。全部無視して本体叩こうかなとかも思ったよ?ラップランドの『抑制』頼りでな。
そしたら効かねぇんだもん!あの天下の『抑制』がだよ?凡そ予想がつくけどさぁ、ベアトリーチェの言霊の方が干渉の押し合いで勝ってるんだろうね。んなこと初めてだから焦るわ。
〖Eeee……エリザ……全てを斬って。Luuu……ルパート……貴方の音色で……わたしを護って……〗
「……ハハッ! 人間の持てる能力の域を超えてるよ……コレはッ……!」
ベアトリーチェちゃんは俺らを護ってくれないのかな?うゆゆ〜って感じっすわ。都合のいい悲劇だけ受け取って哀しみやがってアホの子鹿の子が。エリザとルパートは俺らが殺しちまったけど、友達の俺らは生きてるってのによぉ!
「ま、人生二週目のばあちゃんみてぇとか思ってたけど、そうは言っても10歳そこらのガキだよなぁ……お前の過去がどんなんだったか分かんねぇけど、いいぜ」
何もかもぶっ壊して台無しにしたくなることなんてガキにはよくあることだよな。こんなにお前が哀しんでるのに顔も合わせに来ちゃくれねーロクでもないお前のクソ親父に代わって俺がげんこつ喰らわせてやんよ。
チェリーニアが精製する剣の嵐の物量で影人形の軍団を一掃してもらって、俺がルパートの成れの果て、ラップランドがエリザの成れの果てを相手している。
むさ苦しい男と戦うのは用心棒のクズでもう懲り懲りだったんだけど、ルパートはつまらないからっていうラップランドのわがままで俺が相手することになった。ぐすん。
「どっっこが『つまらない』んだよ、どこがぁ!!!!」
鎧による『アーツ』の制限が無いのもあるだろうけど、こいつの『アーツ』万能すぎるだろ!それぞれの旋律によって効果の変わる『アーツ』!
確かにこいつ単品ならそこまでかもしれねぇが、チェリーニアがやり損ねた影人形にこいつのバフが掛かればバカにならん……!
俺を狙ったやり損ないの影人形の拳が地面のタイルをぶち壊して、小さなクレーターを作った。うへ、身体強化の旋律?マジであれだね、モン〇ンの狩猟笛。旋律効果の攻撃力【大】だっけ。めちゃくちゃお世話になりました。ゴ〇マ〇オス狩る時に。
こっちに突っ込んでくる影人形の胸ぐら(?)を掴んで『アーツ言語』を付与する。付与した言語は『接触時発動/無作為に暴発』!これをゾンビルパートくんにどーん!
そしてどかーんと爆発!それで一撃解決!……してくれたらよかったのになぁ。音の防護膜を張って彼は無傷です。酷い。
まあでもいいよ。数秒だけでもこっちに手を出せなくなりゃあよぉ、俺はベアトリーチェの方へ向かうことができんだからさ!ナイフでテレポ、俺を見上げる鎧ちゃんの隙間にナイフの刃くい込ませてハイこんにちは!
「オラ出てこいよベアトリーチェ……!」
〖Aaa……アッシュ……? あなた……生きていたの……?〗
「おうよ、俺も驚いた! ふつーに死んだと思ったもんな!」
〖LaLa……聴いて……エリザが……ルパートが……死っ……死んで……〗
「……それなぁ、殺したのは俺たちなんだ。ただ、許されるつもりも、言い逃れするつもりもないよ」
〖……な、なんでっ……〗
「……なんつーのかな、本当に、道を違えたんだよ」
その言葉にまた表情が歪んでいくベアトリーチェ。おお、怖いね、その血の涙。こいつからしたら訳わかんないだろうしね。影の中で仮死状態から戻ってきて、友達が生きてたと思ったらそいつらが幼い頃から一緒に居てくれただろう使用人をぶっ殺しました、だなんて。
じゃあ、彼女は俺らに真っ当に怒るべきなのか、それとも何か事情があると受け入れて飲み込むべきなのか。俺はそんな無責任な選択をベアトリーチェに押しつけにきたわけじゃない。
「────だからさぁ! 思う存分泣いて喚こうぜ!俺らも思いっきり抵抗して、あるだけ力振り絞って、大喧嘩してやっから!」
ぐっ、鎧の再生が早すぎる……!結構力込めてナイフ挟んでんすよ!?それが押し出されるってどんな勢いだよ!
一旦鎧から飛び降りて、今の戦場を俯瞰して考える。ずっとフル稼働してるチェリーニアはアーツがガス欠手前、俺はあと残り半分ちょい、『抑制』が使い物にならねーラップランドだけが必然的にアーツの余裕がある。
〖aaa、ア……アッシュ……!わたしをっ……
「はいはい、精一杯頑張りますよ、歌姫さんや」
実はこのジリ貧、どうにか活路を見い出せねぇかってある助っ人に連絡入れておいたんすわ!クイズミリ〇ネアのテレフォンシステム的なね?
そいつには超ざっくりと、今いる現在地点と『ここに来てくれ』の一言だけ送った。既読は結構前に付いてるから、もうそろ来んじゃねーのかなって思ってんだけど、どうかな。
鎧がベアトリーチェを呑み込んで、正気を失った彼女がまた大きな悲鳴を上げた。それに呼応するように死体たちの全てのステータスが上昇していく。
「────いきなり呼び出して、どんな下らない内容かと思ったら」
バカみてぇな火力と硬さになった影人形の軍勢に力負けしてチェリーニアなんかは殺られる一歩手前、ラップランドだって速度に磨きがかかったエリザの成れの果てによる猛攻に防戦一方って感じだった。
それがいきなり全ての影人形の首が吹っ飛んで、骸エリザは片腕がくるくると宙に舞って肩から先が無くなってるし、旋律強化で補助に回っている骸ルパートはアーツユニットを使えないように指を10本落とされてる。
こんなあっさりと神業染みた所業ができるやつなんてあいつしかないよなぁ!?少しくすんだ金の髪に、黒のコートを羽織った冷徹な殺人鬼。俺の師匠であり、俺の第二の母みたいな存在。
「……来んのが遅せぇって、イングリッド!!!!」
「この程度で手こずるような教育はしていないはずだけど。なにか理由があると見ていいのかな、アッシュ」
つまりはよぉ、相手がバカみてぇに強いなら、こっちもバカみてぇに強いヤツを呼んじゃおうよってわけ。
ウルピスフォリアの強さをアルティメット俺の愛によって盛っています
母は強しっていうじゃないですか。