異世界転生モノだと思ってるバカ   作:さぼさぼさん

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ラップランドとテキサスの百合カプ好きの皆さんすいません。
ぶちこわです


地獄のお誘いに耽溺する

「あ゛〜〜っ……痛ってぇ……」

 

 こっちは獲物(ナイフ)握ってるってのに、徒手空拳で俺の方が傷だらけなのおかしくない?一応俺ちゃんもいつもみたいにアイツの片手片足当分は使い物にできなくしたけど。肺に肋骨が刺さってんのか、呼吸をしようとして肺を膨らませようとすると刺さった骨が動いて痛ぇ。

 

 最近バベルにお世話になりすぎてるからなぁ、「またですか……?」みたいな顔されんの嫌なんだよ。つーかインターンかなんかしてんの?シラクーザ支部って。よく医療部エリアで小っちゃい女の子みかけるんだけど。

 

 あ、ベアトリーチェじゃないよ。あいつはなんだっけなぁ……でっけぇ移動船に乗ってテレジアたちと各地を転々とする旅に出てる。名前は、ロドス・アイランド号……だっけか。しかもさぁ、そのインターン生(決めつけ)ちゃんってば飛び級で大学進学してるさいっこ〜に才媛だって言うじゃないの。

 

 一応オペレーター名もあるらしく、本名かどうかは分からんけど『ススーロ』ちゃんって言うらしい。挨拶するときついでかのごとく「時間がよろしければいつでも健康診断を待っていますから!」って釘を刺してくる。

 

 医療部のうるっさい診断勧告はこの娘の影響かもしれない……めちゃくちゃ睨んでくるもん。「不健康ですよ……」という恨み節が飛んできている気もしないでもないし。

 

「……そーいうのも含めてお世話にはなりたかないねぇ……今度こそ検査されちまいそうだし……」

 

「────次のキミのセリフは……『鉱石病の初期症状みたいな現象も起きてるし』……かなぁ?」

 

 ……おっとぉ。今日チェリーニアとの喧嘩は鳴かず飛ばずで収穫もなく……たーだ仲が険悪になっただけで終わっちまったという現状を、見ていたんですかぁ?ラッピーさん?

 あと人がいないと思って言いそうになった言葉をビタ当てするのやめてね、怖いから。

 

「……あれ?てか俺ってばお前にそのこと言ったっけ……?」

 

「アハ! さっきチェリーニアに隠し事は下手って言われたでしょう……? 分っかりやすいんだよ、キミって」

 

 長くいたから分かります。こいつがこんな感じで冗談めかして笑ってる時は誤魔化している時またはかなり怒ってる時のどちらかなんだよね。もちろんブチ切れ!かなりおこだよ!

 

「それにさぁ、最近のキミってばずっと危なっかしくて見てらんないんだよね! ニコニコ取り繕って隠してるつもりだろうけど……ときどき耐えかねて隠れて吐いてるの……知ってるから」

 

「アッシュって、そもそもあんまり生きていたいと思ってないでしょ? ボクも()()だからわかるんだ、治しなよとは言わない。……けど、()()()()()()()で苦しんでるのを見ると……無性に腹が立ってしかたがないんだ」

 

 壁に寄りかかっていたラップランドが、こちらにゆっくりと近付いてその細い指で俺の顎をなぞるように触る。

 いつものように貼り付けた笑顔……4年も経過すりゃあ、違和感が違和感だったとかいうのも無くなって、長く一緒にいた俺とかしか分からない程度には上手くなった擬態。

 

 そんなラップランドの目の奥に、どろどろとした粘着質な『何か』が垣間見えた。触れる指は、次第に俺の首筋へと下りていき……いきなり首を絞めるかのように地面に押し倒して両手で掴んできた。

 馬乗りになって息が頬に触れるほど顔を近づけている。笑顔は消えて、どんな顔をしたらいいのか分かんねぇって顔をしてる。してはいるが、そこに感じるのはやっぱり怒りとか……嫉妬とか……心配とか。

 

「どうしたら、ボクの見ていないところで苦しまなくなる? どうしたら、ボクの見ていないところで死なないでくれる? 黙りこくってちゃあ、何もわからないじゃないか……教えておくれよ、このボクにさぁ!!」

 

「ぐっ……なあ、苦しいんだけど……ラップランド……!」

 

「あっ、ああっ……! ごめんよ、アッシュ……!でも、キミのその顔……ボクのせいで……ボクだけで苦しんでるって分かると……胸がじんじんって、熱くなるんだよっ……!」

 

 歪なやつだよなぁ、ラップランドって。昔、似た者同士じゃないって否定したのはさ、まじであそこで否定しないと()()だからなんだよ。見て見ぬふりがお上手な俺ちゃんだけど、今は流石にヤバいなって分かる。あ、俺のメンタルがね?限界近いってさ。

 

 だから、柄にもなくこうやって……ラップランドを抱きしめて……あの時あいつがやってくれたみたいにさ、背中を優しくさすってやったりしちゃう。これは、ある種の自慰行為だ。

 壊れかけてる俺の空いた空洞をこいつで埋めるための、気持ち悪くて自分本位の*シラクーザスラング*。

 

「…………っあ……アッシュ…………」

 

「────ごめんな。 俺ってバカだから、自分の悩み事を誰かに打ち明けようって思えなくてさ。つーか打ち明けられるわけがないんだよ、この感情って」

 

「……それは、知ってるよ。 ボクはその胸に燻る暗い感情に惹かれてキミに出逢ったんだから」

 

 頭がおかしくなっちまったかな。唯一こいつだけなら、打ち明けてもいいと思えている。俺らは正しい在り方を知っている。イングリッドのように圧倒的な強さによって自己を保つだとか……チェリーニアのように泥沼の中足掻き逃げ出そうとするとか……そういうの。

 

 知ってるからこそ、それを体現できない。俺らは中途半端に強くて、中途半端に才能があるから、自分がシラクーザから逃げ出すことができないことを一瞬で理解できてしまった。もうちょっと頭が悪くて、視野が狭ければ……俺らは置かれている現状が悲劇だと分からずに済んだというのに。

 

 俺は長くは生きたくないと思っているのに、さくっとイングリッドに復讐を挑んで負けにいかない。生きていたくないと思うのに、望んで死ににいくことはない意地汚さ。俺は結局あらゆることに一貫性が無い。いい子ちゃん気取りの優柔不断男なんだ。

 

「……ふふ、自己嫌悪してるね。それでいて、心拍数が上がった。……キミは、これから言うことが取り返しのつかないものだって、思ってるんだね」

 

「……うっせーやい。俺ァ、鉱石病で段々とイカれちまってきてる。……しかもあんま良くない方向に」

 

「…………まずは一緒に検査に行ってあげるよ。危険を顧みないのはいいからさ。でもボクの知らないところで死なないで」

 

 さっきまで中々怖い顔していたラップランドだが、首に回していた手を今度は頭を抱えるようにして、こちらと目が合うように額をくっ付けてきた。

 ちょっとくらくらするような甘い匂いがラップランドの髪から香って、いけない事をしているような気分になる。俺は悪くない。こいつがエロいのが悪い。

 

「…………お前、目に見えてテンション変わってんぞ」

 

「えぇ〜……? 素直に喜んじゃだめなのかな……? それともなにさ、いつものつれないボクがお好き……?」

 

「いんや。おめーみたいな美人に甘えられたら男冥利に尽きるってもんさ。……きっと俺はロクでもない死に方をする。誰に見つかることもなく、シラクーザの雨音に消え去ってしまうような……滑稽な死に方だ。それでもいいのか?」

 

「むしろそれがいいんじゃない。ボク以外はアッシュのした事を覚えない。誰もキミの名前を後世に語り継がない中、このボクだけが────!

 愛しい愛しいキミの屍を抱きしめることができるんだから…………とっても幸せでしょ?」

 

 ああ、今のラップランドの顔をお前らに見せてやりたいよ。手に入ると思ってなかった宝物が自分の胸元へ飛び込んできた、ガキみたいなはしゃぎ方をしてる。気持ちはやって俺の首筋に歯型をつけようとしてるしさぁ、まるでこれは自分の『所有物』かってくらいに。

 

 目は喜びで潤んで、頬は上気している。やけにこちらを見つめる時間が長い。かと思えば声にもならない声で胸元に頭をぐりぐり押し付けてくる。犬かテメーは。

 一旦落ち着きのない犬っころラッピーさんの肩を掴んで、引き剥がす。あ、怒ってる。甘えてんだから邪魔すんなって?えい、でこぴん。

 

「……はぁ、お前って好きになる男のセンスが無いよ。

 そんなお前に声をかける俺もセンスが無いかも。いいぜ、一緒に地獄に堕ちようじゃねぇか、ラップランド」

 

「キミこそ覚悟してね?一人で幸せになろうなんて許さない……どこか遠くへ行こうものならテラの果てまで追いかけてあげるよ……ふふっ。 あと、ボクを選ぶのが『センスがない』ってどういうことさ、ん?」

 

 あー、昔みたいな調子を取り戻してきた〜。絶対ラップランドは追いかけてこない。真面目ちゃんで一途だから、元カレの連絡先を消すに消せず、未練ありまくりの「元気にしてるかな……?」みたいなメッセージを送るに決まってる。

 

 んで、返信が来たらメソメソ泣いてた態度を一変させて、めちゃくちゃウキウキでまた追いメッセするね。これは長年ラップランドをみてきたラップランド専門家の俺の見解が正しい!そうに決まってる!

 

「…………まだ心を誤魔化してないとは言い切れないけど、よかった。 初めて会ったときの優しいアッシュみたいな雰囲気に戻ったね」

 

「おい、まるで今は優しさの欠けらも無いやつってことか? 酷くないか、おめー!」

 

「そうとは言ってないじゃないか! 大体さぁ、いっつもネガティブな方向に解釈しがちなんだよキミってさぁ……」

 

 傍から見ればめちゃくちゃほのぼのしたやり取りで、バカップルみたいな事言ってるように見えてんだろうなぁ……実際のところは、『泥沼のシラクーザで生き抜くために、互いに傷を舐めあって生きていこう』っていうめちゃくちゃ気持ち悪い関係なんだけどね。俺はそれにずぶずふと溺れる選択をした。ただそれだけー。

 

 

 

「…………まだ日も改めていないというのに、なんだ」

 

「謝りに来たんだよ、さっきラップランドにこっ酷く叱られてさ」

 

 おお、片脚の傷を隠すために学校指定の長ジャージを着て、片腕は包帯を巻いて隠してら。こいつって髪が長いからかろうじて女って認識できるけど、今の感じだと……神〇駿河みてぇ。あ、思ってることバレた。ごめんって!あう、いたいっ!

 

「ええと、挑発しまくって悪かった。……ねぇ、ぶっちゃけ最近の俺ってヤバかった?」

 

「……まあ、近寄り難い雰囲気を感じるくらいにはな」

 

「…………だよねー。客観視できるようになった今ならマジでわかるよ」

 

 精神異常の手っ取り早い解消法って、異性との関係に溺れることだと思うんだよね。バカみてぇにヤるもよし、散財してキャバクラの嬢ちゃんの乳を揉むもよし、なんでもいいけど快楽はその時ネガティブに陥ってる頭を麻痺させてくれる。

 

 俺からすればそれはラップランドとの関係になったわけだ。あいつがどんなことがあっても俺を見てくれると言ってくれたお陰で、空いた精神の柱はまたラップランドで埋まることとなった。罪悪感とかはまだあるよ。

 

 ベラ姉は今でも大切だし、助けたいとも思ってる。なのにそのポジションを誰かで代替してる。おかしいって分かってる。多分ラップランドがなんかの理由で死にかけたらもう俺は駄目だろう。()()()()()()

 

 そうなるかもしれないことを理解した上で、ラップランドとは『一緒に地獄に堕ちる』んだ。これから良い方向になんか進むわけない人生を、泥沼に浸かりながらも生きていく選択をして。

 

「とりあえずトラディトーレをテキサスん中にぶち込んだ理由、後で教えてよ。お前も確かに関わってんだろうけど、十中八九お前の父親……ジュセッペの仕業だろ? あ、呼び捨てだめだった?」

 

「私は便()()()お父様と呼ぶが……お前がどう呼ぼうが私の預かり知らん領分だ。好きにしろ」

 

「うい、おっけー。……何よその目ェ、だってお前老サルヴァトーレに似てるね〜ってイジったらキレるんだもん。『お爺様の名を軽々しく口に出すな!』ってさぁ」

 

 これ暗にお父さんのこと好きじゃないですやん。老サルヴァトーレのことはめちゃくちゃ好きなのに。まあジュセッペってラップランドのお父さん……アルベルトとはまた違ったゴミ親感あるよね。

 自分のことインテリヤクザだと思ってそうだし、チェリーニアのことも英才教育でインテリに育て上げたいと思ってそう。絶対に毒親。老サルヴァトーレも……まあ変なんだけど。

 

「とりあえずは、そゆことで。てかお前も傷だらけだし、バベルに行く? まっじでおもしろいよ〜あそこは」

 

「……ベアトリーチェの一件でコネクションを得た組織か。ようやく鉱石病検査を受ける気になったのか?」

 

「……ラップランドが俺のことを尻に敷いてくるのよ……『行かないと顔も見せてあげない』そうで」

 

「ふっ、惚れた弱みというやつか」

 

 ああ、良かった〜!ちょっとずっと表情硬いからさぁ、まだ許されてないのかと思ってマジでハラハラしてたんだよ。

 てきとーな笑い話で笑ってくれると一気に肩の力抜けるよな。ほっとしたわ。

 

「んじゃ、またな〜!

 あ、惚れたのは俺からじゃなくてあいつのほうからだから! 違うから! 俺から告白したわけじゃないから〜!!!!!」

 

「…………言い訳がましいやつめ」




アッシュくんは体外に源石結晶が露出しない結構特殊な鉱石病……です
あでもちゃんと精神に支障をきたしたり、高濃度汚染域に曝露すりゃ同じ鉱石病患者みたく死ぬんで^^
あと脚と腹が明らかに変わってるから普通の鉱石病より分かりやすいまである^^
あと使うか分からない設定だから落としておくと、未来に出会うかもしれないクライデくんたちの「塵界の音」には明らかに4倍弱点くらい相性が悪いです。
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