異世界転生モノだと思ってるバカ   作:さぼさぼさん

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はぐれらっぴー が なかまになりたそうに こちらをみている!

 転校生イベントってちょっと激アツだよな。色々シチュエーションがある。学校で出会う前、ツンデレヒロインと一悶着起こした後、「な、なんでアンタがここにいんのよ〜!」みたいなベタなやつ。それからあとなんだ?やべぇ思いつかないから後は想像力豊かなお前らに任せるわ!

 

「……ここ、隣いいかな?」

 

 で、このシラクーザでそんなギャルゲーみたいな展開は無いってことはもう分かるよな?ほら見てよこいつすげぇ美人だよ。ヒロインみたいな顔立ちはしてるよ?けどよ、首筋から覗くあの傷跡はなんすか?ふつーああいう刃渡り何センチかの刃物で斬りつけられたりしないとできない傷って10歳の女の子につかないですよね?

 あとにこにことテーブルに肘ついて俺を見つめるのやめてね、俺もお前が怖くてチラチラ盗み見してるってのに目が合うの怖いから。

 

「……ねぇ、キミって……最近マフィアの中で有名な、ヴェネツィアファミリーでやり手の暗殺者でしょ?」

 

 内心コミカルにやってたらほのぼの時空に飛ばねえかなってかすかな望みにかけてたってのに真正面からぶっ壊されちゃった♡ ふざけてるけど今心臓に冷たいナイフを宛てがわれてるような感覚に襲われてます。

 どこで知った?基本的にルートは絞られないように自家用車とか徒歩の選択肢は排除しているし、経歴はヴェネツィアの人間とは足がつかないように偽の姓を使ってるんだが。

 

「……一方的に人の秘密を暴くのはさぞ気持ちがいいだろうなぁ、お嬢様?」

 

「不快にさせちゃったかな? キミのパーソナルな部分を刺激するつもりはなくてさ」

 

「『パーソナルな部分』って分かってんならわざわざ言わなくてもいいんじゃねぇの?」

 

「アハハ、これは手痛いね!」

 

 あ゛ぁ、うぜぇ。イングリッドと似たようなタイプだわ、こいつ。俺をいじめて愉しんでるよ。しかも俺がもし口の上手さで勝ってもなーんか余裕そうにするからこっちが惨めになるんだよな。俺だけですか、これ舌戦だと思ってるの!みたいな。

 

「昔、グレイホールの連中がどんな奴らか知ってみるといいって愛するお父サマにヴェネツィアに連れてこられたことがあってね……?その時ちょうど、あの有名なヴァルポの殺人鬼にキミが虐められてるのを見たのが……キミに興味をもったきっかけかな?」

 

「てめぇ、見てたのかよ……それ黒歴史だから忘れてくんない?」

 

「あんな面白いアーツの使い方しておいて、忘れろって言われても……ねぇ?」

 

 マジでくっそうぜぇ!!!俺のアーツ技術を『面白い』って言える人間ってことはだぞ?ある程度俺のやってることを理解できるくらいの実力があるってことじゃねぇかクソが。

 

「凄いよねぇ……一目見ただけでも分かる最小限に抑えられたアーツのコスト。 シラクーザは死角が多い割に雑魚ばっかでめんどくさいからさ、ああいうのはかなり重宝しそうだよ」

 

「……買いかぶりすぎだ。ちょっとコツを理解すりゃ誰でも出来る、アーツの基本操作だよ」

 

「そのアーツの基本操作とやらで、戦闘の幅を広げてるってことが凄いんだけど……キミって謙遜が大好きなんだね?」

 

「こちとら同じ質問してくるやつが後を絶たなくて食傷気味なんだよ。で、タネが分かったら満足したか?次会う日はファミリー間での抗争かもな、さようなら〜」

 

 この数十分の間で、ひとっつも変わらない……というか、変えないその不気味な笑顔。ただ、長いその睫毛に隠れた瞳がさっきより妖しく光ったように見える。ヤンデレらっぴーに愛されて夜も眠れないOVA(4800龍門幣)ですか。買います。でもちょっとイロモノビデオにしちゃあ高ぇかな。でも買うけど。

 

「……イイね、ボクの事を怖がらないのはキミで二人目だよ」

 

「そういう時は『キミが初めて〜♡』だろうが、俺をおだてろ下手くそ!」

 

「──もっとキミを教えてくれたら、ボクの初めてになれるかもね?」

 

「──何かを求める時は何かを差し出せって偉大なお父様に習わなかったか?」

 

 のらりくらりと躱そうとしてもすんでのところで掴んで逃がさない。見た目は深窓の令嬢なのに、中身は随分と粘着質なタチのようで。

 

「アッハハ! ボクの敬愛するお父サマは奪ってばかりで何も与えちゃくれなかったからねぇ……分からないや。 そうだ! シラクーザ最古のファミリーの一つ、サルッツォファミリーって知ってるかな……?」

 

「……待った。 その先は聞きたくない。 もういいぞ言わなくて!」

 

「……アハッ。 イイね、その顔。 じゃあ……やめてあげない。何を隠そう、そのサルッツォファミリーのドン、アルベルト・サルッツォの娘がこのボク!ラップランド・サルッツォってわけ。どう? 差し出すに値する情報だったかなぁ!? アッハハ!」

 

 っかぁ〜〜〜!!!!これがただの無名のマフィアの一人娘だったら最悪道連れにしてこのうぜぇやり取り終わらせられっかなとか思ってたんだけどよぉ!?

 サ、サルッツォファミリー!?あのサルッツォって言ったかこのバカ狼は!?

 

 こいつらはヴェネツィアと同じ十二家に連なる最古のファミリーの一つだ。しかもクソな事にこいつらは目立つことはしねぇ慎重派で有名ときた。それはつまりサルッツォのやっていることが完璧に秘匿されていることを証明してんだわ。つまりどーいうことか分かるか?

 このバカ狼を道連れにしようもんなら……『何も起きてなかった』かのようにファミリーごと潰される可能性がある!!!!

 

「最っ悪の気分だ……なんつーグロテスクな話を聞かせやがるてめぇ……」

 

「そう……残念、ボクはとーってもキブンがいいんだけど」

 

「そらそうだろうよ。……んで、ゴミみたいな情報差し出されたっちゃ差し出されたわけだが。ま、腐っても情報は情報だしな。代わりに一個だけ……お前が訊きたいこと教えてやるよ」

 

 さて、俺は義理堅い性格なんでね。約束はきっちり守りますよ。きっちりとな。ラップランドはどうしようかなー?なんて贅沢に悩みまくって質問内容を絞ってるみてぇだ。そんなに俺の事知りたいの?それはそれでなんかキモいね。

 

「……そういえば、ボクがこの学校の正門を通るときちょうどキミも遅れて学校に来てたのを見たんだ」

 

 なんで見てんのこいつは?いやこの場合俺が悪いか……?いつもは遅刻しねぇのに今日に限ってサボっちまったからなぁ……。アンジェリーナとイチャイチャしてる場合じゃなかったわ。後悔先に立たずってやつ?でもアンジェリーナと喋ってるとなんか頭悪くなるんだよな、あの純粋無垢な娘を甘やかしたくなって。

 

「あの時キミって一人じゃなかったよね。あのもう一人の女の子は……キミとどんな関係かな……?」

 

 回答次第ではお前を殺りますと言わんばかりの湿度高めの眼よ。表情ころころ変わって忙しないねぇ?なんかそういう敵ゲームにいたよな。え、知らん?表情ごとに弱点と攻撃タイプが変わるみたいなボス。名前忘れたけど。ちなみに作品も忘れた。え、存在しない記憶?怖いからやめてね。

 絶対ヴェネツィアと関係あると思ってんじゃぁ〜ん……。暗殺稼業を真面目にやり過ぎたせいか、やることなすことがマフィア的意味合いを持ってると思われるの鬱。

 

「ああ……アンジェリーナのことか? 別に、あいつはマフィア絡みの関係じゃねぇよ。 ただの友達ってだけで……今朝話してたのも、帰りにクレープ食いに行こうぜっていうなんてことない会話だよ」

 

「……ふぅん。 じゃあ、ボクもそれに混ざってもいいかな?」

 

 何を言うてんの?

 

「何言ってんだおまえ?」

 

 やべっ、思ったことそのまま口に出しちった。アンジェリーナと俺の愛の逃避行♡を邪魔されてちょっとおこなのもあります。嘘です。普通にこいつしつけーの!すっげーしつけーの!

 

「あの時の屋敷で見たキミが……『友達』なんてものを作るって思えなくてさ。……あの時のキミは、ずっとやり場のない憎しみを抱えてるように見えたから」

 

 ………………あ゛?

 

「キミ、ずっとふざけた態度で本心を隠してるだろ。 なんなら、キミはキミ自身さえ騙してその本心から遠ざかろうとしてる」

 

 さっきから心の外郭を指でなぞられているような不快感があったが、今は直接手でこじ開けられるような感覚。

 無意識に背中に隠しているククリナイフを納めている革の鞘に手が伸びる。

 

「キミのずば抜けたアーツの精密性に惹かれたのも嘘じゃない。……だけどもっと目を惹かれたのは、あのヴァルポの殺人鬼に一瞬見せた濃厚な憎悪の眼差しだよ……!」

 

 落ち着け。ここは教室、クラスメイトも多数居る中で揉め事はマズい。席は窓際に近く、一番後ろ。ナイフを引き抜くのに1秒から2秒かかる。ダメだ、揉め事を起こすな。殺るなら今……落ち着け、落ち着け俺ッ!!!!

 ────最速でこいつの首を掻き斬って窓から飛び降りればバレないか?

 

 ちげぇだろうがバカがッ!!!!殺さねぇつってんだろ!!!

 

「キミの出自を調べてみたけど、おもしろいね。 ヴェネツィアに拾われているけれど、キミ自身の両親を殺害したのはそのヴェネツィアじゃないか!」

 

 ……煩せぇなぁ。俺のことを知ったふうに語んな。

 

「そんなキミが『友達』……? アハッ、『友達』なんか作ってヘラヘラして……キミ、とっくのとうに狂ってしまっていたんだね」

 

 ────ああ、ダメだ。抑えられなかった。

 革の鞘を留めてある帯を外しククリナイフをラップランドの首筋に這わせる。刃が首筋をつうっと撫でてもその挑発的な態度に変化はなく、むしろ殺れるものなら殺ってみなよと言わんばかりに獰猛な笑みを浮かべている。

 

「……フーッ……それ以上ぺちゃくちゃ喋ったら殺す」

 

「キミに……ボクが殺せるっていうのかな?」

 

「実力の話か?それとも決断力の話か?

 どっちにしろ俺はお前を殺すよ。殺すと決めたら殺す。できるできないじゃないんだ」

 

 最っ悪の一日だ。下手に感情を揺さぶられたせいで嫌なことばかりフラッシュバックする。

 思い出すのは酷い雨の日、お袋がつけたテレビから流れるオペラ歌手の甲高い歌声がやけに脳にノイズみたくガンガン響いたあの日。

 たしかにそれは喧しかったが、ただそれ以上のものは聴こえなくて、恐ろしいくらい静寂に包まれているようだったあの夜の出来事。

 

 前世とか異世界転生とかそもそもの話心に余裕ができてから考えることのできるモンだ。産まれてすぐに知らない世界、知らない言語に、知らない常識。

 それに適応しなきゃとか、それとは別に前世との記憶に折り合いをつけなきゃとかで誰も味方がいないような気がして。マジで一人だけポツンと取り残されたような孤独感に苛まれた。

 

 ……でもまあ、親ってのは偉大なもんで。少し気味の悪ぃ子供だったと思う。物分りが変にいいし、あまり泣かないし、文句も言わないし。そんな得体の知れないガキでも……ちゃんと愛してくれた。暗闇の中、右も左もわかんねぇ迷子の俺を、手を掴んで導いてくれた。

 

 やっとそこで、俺はテラっていう世界に生きる人間なんだって実感できるようになった。

 異世界転生で俺TUEEEEがどうだとか言ったけどさ、それはぶっちゃけた話建前なんだわ。親父とお袋に、やっぱ幸せになってほしいもんじゃん?ガキってのはさ。

 

 ……それが叶わなくなったときの感情ってわかるか?

 幸せにしたいと思った最愛の二人が目の前で血の池に沈んで動かなくなったのを目撃してんだ。しかもずっと近くにその下手人は居るときた。頭がおかしくなりそうな激情にずっと付き纏われるし、夢見が悪いときはいつもこの出来事が悪夢として再現される。

 

 地獄みてぇな毎日だ。

 

『シラクーザではよくある出来事』なんてよく言うが、やられた側はんなこと知ったこっちゃねぇ。

 

 イングリッドが母親になったとき、俺は自分の顔に憎しみや怒りの類が浮かばないようにするのに必死だった。血が滲むくらい拳を握りしめることでなんとか誤魔化してさ、「どうしてお前が」とか思いながら「おめでとさん、イングリッド」って言うのが精一杯だった。

 

「それでも……キミの心は中途半端に揺らいでしまっているんだね」

 

 ────ああ、認めてやるよ。恐らくは俺とラップランドは根本的な在り方の部分で近しいところがある。俺がこの5年間でイングリッドに……ひいてはヴェネツィアのみんなに情が湧いてしまったことを……お前は見抜いたんだな。

 見抜けるってことは、お前もそういう相反する憎しみと愛情を抱いたことがあるってことになる。

 

「────うん、やっぱりだ。

 キミとボクは似た者同士……ってワケだね」

 

 さっきまでのラップランドは飄々として、何を考えてんのか分からねぇ狂気と暴力の塊みてぇなやつ……に見えていたんだけど。今のこいつはなんだろうな。

 自分の気持ちを上手く表現できなくて、誰かにそのやり方を教えてもらいたいんだけど、助けを求めるやり方も下手くそな……ただ不器用で一人ぼっちの寂しがり屋のはぐれ狼に見える。

 

 その一生笑ってる不気味な顔も、相手を威圧するためのもんじゃなくて、「その笑顔以外の表現がわからない」からとりあえず笑顔なんだろ?はぁ……しょーもな。

 途端に殺意が削がれてどーでもよくなった俺はナイフをしまって、背もたれに大きく背中を預けて脱力する。

 あーあ、変に体力使ったぁ〜〜〜!!!!もぉ〜〜!!

 

 ちょ〜っと体力回復させてねラピきゅん。あ、待ってくれる?律儀だね〜?なら最初から俺を苛つかせるのやめれなかった?やめれないよね、だってお前の仲良くなり方がそれなんだもんね!クソ不器用なバカ狼がよ!

 

「……いいや。お前と俺は似た者同士なんかじゃないね、勝手にシンパシー感じて勝手に同類扱いしてくんな、この変態令嬢が!」

 

「……アハッ。 三流オペラに寄せられる辛口の酷評みたいなことを言うね。 それで? 話が逸れたけど、本筋はボクが混ざっていいかどうかだったよね。 ご返答は、まだかな……?」

 

「……まずさあ、いちいち人の神経逆撫でして試し行為すんな。

『ボクも仲良くなりたいです、楽しそうだから混ぜてください』って素直に言え」

 

 おっ、顔を逸らしたな?図星か?図星なのか!?

 

「で、先に言っとくがお前のこの強烈なハジメマシテで俺はマフィアのラップランド・サルッツォが超嫌いになった」

 

 おっ、ちょっと表情に影が差したように見えんぞ。嫌いって言われて少しは傷付いたか?ま、おめーもまだ10歳のガキだもんな!大人ぶってて草なんよ!!!!

 

「でも、俺はこの学校に転校してきたかわいくて深窓の令嬢であるラップランドちゃんには何もされてねぇからな。

 つーことで、今日は全部お前の奢りな? 死ぬほどトッピングしてありえんプラス料金発生させてやるから覚悟しとけ」

 

 お、断られると思って諦めてたとこに参加OKって言われて目を見開いてら。え、ボクもいいの?みたいな顔おもしろっ。実はそんな顔してないんだけどね、雰囲気っつーの?

 なんかさっきの一件で大体らっぴーの気持ちわかるようになった。らっぴーのきもち90年号。いぬのきもちみたい。

 

 あとなんかこいつおちょくるの楽しい。ここに、ラップランドを虐めて遊び隊、略してラピ虐を宣言するっ!みな、我に続けぇっ!!!え、俺一人だけか?楽しいよ?

 

「……んじゃ、学校終わったら正門前で集合な」

 

 あ、なんか手触り良さそうな質のいいメモ帳に書き留めてる。忘れるほど複雑じゃなくない?もしかして初めてのお友達との外出だから浮かれてんのか?

 え、なんか初心でかわいいね。ちょっとギャップ萌え。

 なおのこと虐めたくなるキャラしてんなこいつ。キューアグってやつですかこれが。




白ギャルラップランドに超長いデコった爪を主張させながらギャルピースをさせたい。あと死ぬほどぶっかぶかのルーズソックス。
テキサスは見た目こそ美少女ですがボーイッシュな服装が似合うと思っていて、スカートより長い丈のジーパンとか履いててもらいたい。
この二人のファッションセンスが違うのに仲良ししてる空間、これを俺は摂取したいんですよ。
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