異世界転生モノだと思ってるバカ   作:さぼさぼさん

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誰もが一度は直面する周知の醜悪、鉱石病

 俺って結構面倒事押し付けられるタイプでさ、断らない性格だからかな?すげー「お前がやれよ……」みたいなこと押し付けてくるやつ多いのさ。

 それはこの学校でもあんま変わんなくて、なんか知らんけど先生に呼び出されて超時間食ってんだ。アンジェリーナたちと待ち合わせしてんだよ、早くしてぇ〜。

 

「……その、ラップランドちゃんの事情は本人から聞いた?」

 

 口に出すのも憚られるみたいな態度でおずおずと俺に聞いてくる先生。ああ、まあ……子供には隠すだろうけどそら大人たちには知らさられるか。怖いよな、サルッツォの名前は知らないやつの方が少ないし。顰蹙買ったら一族もろとも滅ぼされるとか冗談じゃ済まないのがね、笑えないよね。

 

「まあ、ある程度は? でもフランクなやつでしたよ」

 

 フランク過ぎて殺し合いしそうになったけどね♡ 今思えばあいつ抵抗しなかったの「その攻撃をどうにでも対処できる」って言ってるようなもんだったよな。ガチでこういうの効く。プライドボロボロですよこっちは。

 

「……そ、そう! なら一つお願いなんだけど……ラップランドちゃんと仲良くというか……できれば傍にいて欲しくて」

 

 うへぇ。なっさけないったらありゃしないね!大人は自分可愛さで何も手を出したくない、子供同士の監視ならそれはサルッツォも大目に見てくれるはず……って感じの思惑がビンビンに伝わりますわ〜!

 

 俺ね、シラクーザがこういうハードモードダークファンタジーみたいな難易度になってるのは大人たちが頼りないからだと思うんですよ。金〇先生みたいにさ、サルッツォのお宅に殴り込んで説教とかかましてやったらいいのに。それは誰だって無理があるか。

 

「言われなくても仲良くしますよ。てかなんなら今日いちごクレープ一緒に食べに行くんです。 先生も行きます?」

 

 今なららっぴーの奢りだよ!あいつが「学校の先生にせびられていちごクレープを買わされた」とあいつの親父に泣きついたらこの先生って死ぬのかな?うーん、俺の知るサルッツォは意外と大丈夫そう。つーかそもそも泣きつくのを許さないと思う。

 

 すげぇ引き攣った苦笑いで遠慮しておくって言われた俺は待たせてるからさっさと帰るね〜(意訳)と先生に告げて正門へと向かった。

 俺一個予想してることあって、アンジェリーナってラップランドが来ること知らないはずなんだよね。しかもめちゃくちゃ楽しみにしてたんよ。耳と尻尾がぶんぶんしてたから。

 

 まだかな。楽しみだな。そわそわ、わくわく。そんな可愛らしい気持ちで立って待つこと数分、後ろから俺にしては少し掠れていて中性的な声が一つ。

「待たせたかな?」思い切り振り返るとそこには上品に手を振るラップランドが一人。

 アンジェリーナは声にならない悲鳴をあげて、口からぽわ〜っとアンジェリーナの魂が空へとふよふよ飛んでいく。

 

 これ、あると思うんですよ。

 

「……そのネイルの色、最近発売されたブランドのマニキュアだよね?」

 

「ええっ! ラップランドちゃん、知ってるの……? クラスの友達に自慢しても皆知らなかったのに……!」

 

「まあ……ボクもそういう化粧をするときがあるからね。一通りは知ってるよ。……いい香りだね、リモーネが出してる柑橘の香水かな?」

 

「こ、これも気付いちゃうの……!? な、ならさ! 洋服なんだけど、この服どこで手に入るか知ってる……?あたし、気になっててぇ……!」

 

「へぇ……このブランド? それなら二つ先の都市で有名な布織物の専門店から直接仕入れるほうが安く済むよ。 ちょっと遠いから、家族と旅行がてら買いに行くほうがラクかなぁ?」

 

 はい、着いてみたらそんなことは無かったです。

 ラップランドって死ぬほどツラ良いし、いちいち所作がカッコいいから二次創作でめちゃくちゃ百合カプ作られそうな感じあるよな。

 

 ん?でもこういうわざとらしい左側みたいなヤツって逆に右側ってことの方が多い気がする。つまり誘い受け。ラプ×アンならぬアン×ラプです、か……。安易にカップリング作るなって天の声が聞こえた。許してくださいなんでもしますから!

 

 心なしか同い年の女の子とのガールズトークにラプ様嬉しそうじゃない?素直じゃないんだから♡

 奥ゆかしさを演出しやがって。その不埒に揺れる尻尾をモフってやろうか。

 

 

 

 さて、そんなこんなでクレープ屋に着いたわけだが。いいね!オシャレなパスタ屋みたいな内装を頑張ってリフォームした感あるぜ。だからクレープ屋のくせになんかちょっとマセてる感じあって、背伸びしたいクソガキの俺の心をくすぐってきやがる。

 

 入店してすぐにアンジェリーナはいちごクレープ一択と決めてたっぽくてもう注文してる。ショーケースにモデルとして並べられてある見た目を見ても確かに美味そうなんだけど……こういう所来たらゲテモノ系行きたくなるんすよね俺。

 

 この店で言うと『鉗獣と鱗獣の鱈子クリームクレープ』とか『山椒香る肉獣ケバブクレープ』とか。めっちゃ気になりません?ちょっと一個目の方は美味そうなのが逆にキモいっていうか、コスいよね。

 

 そーやって店のレジ前に立て掛けてあるメニュー看板と睨めっこしてると、ラップランドが肩を叩いてこっそりと囁き声で耳打ちしてきた。普通にいい声だからちょっとゾワゾワする。どれくらいって?尻尾の毛が逆立つくらい。けっこーゾワってるっしょ。

 

「ねぇ……気付いてる? このお店、トラディトーレの傘下だよ」

 

「……トラディトーレ? 有名なのか?」

 

 釈然としない俺に呆れたジト目を送るラップランド。ありがとう、界隈によってはご褒美です。俺は普通なのでご褒美じゃないですけど。

 仕方がないなあ……みたいな感じでご丁寧に説明してくれるラップランド。そうそう、ちょっと関わってて思ったけどこいつ意外と面倒見がいい。きっといいママになれるね♡

 

「ミズ・シチリアの怒りに触れるのを恐れてクルビアからのこのこと帰ってきただっさいファミリー……おっと、言いすぎちゃった。

 こう言い換えたほうがいいよね。クルビアから源石採掘権とその土地をいくらか持ち帰った、新進気鋭のトラディトーレファミリー!……ってね?」

 

 ……源石採掘権、ねぇ。まあ色々触れる機会もあったんで、ガキの頃よりは身近なものになった源石。

 俺らの生活の全てと言ってもいいかもしれない。交通機関の燃料、給湯器や部屋の電気、果てにはよく使ってるタブレットの基盤とかにも使われてる。正直アーツと同じくらい理解のし難い物質である超ハイパーウルトラチート鉱石。

 

 一応前世地球のように天然ガスとかその類が消えてるわけじゃない。やろうと思えばそれで発電とか発熱とか起こせはするが、明らかに源石のエネルギー変換効率の方が安上がりだし時短できて楽だ。

 

 ほんで、よく美味い話には裏があるって言うじゃん?こいつにもあるんだなぁ、これが。

 シラクーザだけでなく、どの国も今や源石に頼っている、いわば超源石社会なわけだが。前世だとなんだ?汚染問題とかあったよな、あれに近いことがあるっちゃある。

 まあでも車や工場によって排出された源石の微細な粒子とかはそんなに問題はないんだよ。

 

 でも直接車のガス排出口に頭を突っ込むとか、化学反応によって鋭利化した源石結晶とかが身体のどんな部位にでもぶっ刺さると話は変わってくる。一度に大量の源石が身体に流入すると、内部で源石が生成・結合されはじめるとかいうアホみたいなコンボを見せる。

 

 この悪魔的コンボからなる病気が、鉱石病。

 

 鉱石病に対する治療法はここ数百年全く確立されていない。むしろ悪い報告しか見つかってない。

 この内部で源石が生成・結合されるパターンも判明しているわけじゃなく、例えば脳の大事な部分に生成されたり、呼吸器系の通り道に生成されたりするなどランダムだったりする。このランダムってのも質が悪い。

 

 俺が知ってるケースだと、大脳辺縁系にある海馬の近くに小さな源石が生成されて断片的な記憶障害を起こしてしまった鉱石病の患者……とか、脳の言語野に出来ちゃって失語症を起こしてしまった鉱石病の患者……とか。

 

 鉱石病だけじゃなく、それからなる併発病も恐ろしいんだよな。今ならお袋があんだけ青ざめてたのも理解ができる。

 俺も子供が鉱石病になってもし源石の生成場所が悪かったら……って考えたらゾッとするもんな。

 

「……シラクーザって自国で賄えるくらいの源石消費量じゃなかったか? 多いと多いで感染者増加の一助にしかならなくないか」

 

「そんな下手な使い方しなきゃボクらは鉱石病にはならないじゃないか。

 それに、余剰できる源石があれば別の産業や……もしかしたら新しい移動都市計画も立てられるかも!

 ……つまり、少なくて困ることはあれど、多くて困ることはないんだ」

 

「とーっても資本的なご回答ありがとうございますぅ。

 ……とはいえ増えそうだなあ、感染者人口」

 

「新しい感染者が、というよりは他国の感染した労働者がシラクーザに職を求めて入国してきそうだね。

 そこが飽和してきてはじめてボクらの仲良しな……お金に困ってる『お友達』の身体に生えてくるかもね! アハハッ」

 

 アンジェリーナと仲良くなった経緯を話したとき、種族差別が酷いって言ったがもっと酷いもんがある。これが鉱石病患者への差別だ。ほんっとーに酷い!

 昨日まで仲良くしてた友達から「近づくな!この*シラクーザスラング*!」とか言われたらどう?めっちゃショックじゃん。これでもまだマシで、下手すると文字通りマジで殺しにかかってくる鉱石病大嫌いジジイとかババアとかがいる。

 

 多分歴史的に一番差別が酷い世代だったから、その思想が色濃く残ってるんだろうってのと、あと歴史の授業で学んだけど数十年前はまあまあ戦争の時代だったっぽいから感染者の悲惨な末路についてよーく知ってるんだろう。

 

 実は内側にどんどん増えていく源石は体表にも現れ始める。最初は小さなほくろのような大きさから……人の顔を覆うほどの腫瘍みたいな大きさの石になって……。

 最期は、源石そのものとなって死ぬ。まわりに超高濃度の源石粉塵を撒き散らして。

 なんかどこぞの国はこれを使って人間源石爆弾みたいなことをやってたらしいじゃん?歴史書って脚色多いから本当か知らんけど。

 

 なんか嫌な世の中だよね。優しくない世界だよほんと。ちびま〇子ちゃんだって言ってる。あたしゃヤダねって。

 

「これから食べるクレープが不味くなりそ……うぇっ」

 

「……ふぅん。キミにもそういう感情がまだあったんだね。

 ヴェネツィアの殺し屋として、感染者もそうじゃない人も関係なく殺してきたでしょ……?

 それとも何かな?ミズ・シチリアよりも完璧な統治で皆を幸せにでもできるのかな……!?」

 

「……だーかーらぁ! 試し行為すんなって言ってんだろが。

『そんなに気を病むことはないよ、とりあえず今は楽しもうよ』って言え」

 

 最初よりかはポーカーフェイス上手くなったじゃねぇの。でも目を逸らしたのでアウトとさせていただきます。誤魔化すように言葉を紡ぐラップランドちゃん。かわちぃ♡

 

「……ともかく、トラディトーレは最近シラクーザに来て日が浅いマフィアだから、気をつけておいて損は無いと思うよ」

 

「さいですか。……で、お前は頼むもん決まった?

 俺はこの『山椒香る肉獣ケバブクレープ』と多分油っこくてクドいからコーラもセットで頼もうと思ってんだけど」

 

 ──────気をつけておいて損は無い……ね。

 まあ……ラップランドの言う通りではある。商業区画と住宅区画のちょうど真ん中に位置するように建てられたこの店。

 人通りの少ないここに飲食店を建てるってのがそもそも違和感あんだよ。

 

 でも往来の激しい商業区画に近いから『こんな商業区画の付近で犯罪なんてできませんよ』って言い訳がすげーしやすそう。レジ奥の厨房も……クレープ作るだけなのに見える人影がやけに多いし、なんならこの店を出て左の小道。

 ずっと後ろをつけて来てたこわーいお兄さんたちもまだ隠れてるみたいだしな。

 

「……アンジェリーナは飲み物とかい、る……おい、ラップランド」

 

「……どうしたの? そんなに険しい顔をして」

 

「────アンジェリーナが拐われた。十中八九、お前の言う通りトラディトーレとかいう連中の仕業だろうな」

 

 探知系のアーツは俺ァ得意じゃないが、『アーツ言語』で似たような猿真似はできる。アーツってのはMPだとか魔力だとかに近いモンだ。どれだけアーツの使い方が下手くそだろうと微弱なアーツを人間は垂れ流してる。

 今回はその原理を使ってアンジェリーナを探す。

 

 

 適当に設定するとして、『常時発動/周囲のアーツに反応/反応したアーツを可視化』ってとこか。

 

 

 アンジェリーナのシルエットを模したアーツの残滓が可視化された。さっきまで店ん中の椅子に座っていて……俺らが見てない隙に成人男性くらいのシルエットをしたやつに気を失わされて店の裏口から運ばれていった……と。

 

「残念だがクレープを食うのは一旦おあずけだ。 てめぇもこの雑魚共潰すの手伝えバカ狼」

 

「女の子にそういう言葉遣いは嫌われちゃうよ……? ま、ボクはどうでもいいけどさ、アハッ」

 

 どこに武器を隠してたのか知らねぇがカウンターの店員がBSW製のハンドガンをこちらに構えている。いいね、高かっただろその銃。俺も嫌いじゃないぜ、アーツを使わなくても一般人くらいなら難なく殺せるからな。

 

 通信手段を一応全員持ってたみたいで、こいつが構えてから数秒もせずに外のこわーいお兄さんたちと厨房で何やってたんだか知らない連中に包囲された。

 

 ちまちまアーツユニットを持ってるやつも見えたが……あれか?源石資源が潤沢だからその加工品でもあるアーツユニットの製造も着手できんのか。やるねぇ、トラディトーレ!

 

「俺が入口にいるあいつらを殺す。 それを合図にお前が厨房のやつらを殺れ。 そんで裏口からアンジェリーナを拐ったやつ追うぞ」

 

「まだボクは『いいよ』なんて言ってないんだけど……ハァ……いいよ、キミの言う通りに使われてあげる……よっ!」

 

 ククリナイフに指をかける。指からアーツを流し込むように込めて、『アーツ言語』を設定する。

 ほら、さっさとガキ二人にビビってないで来いよ。そっちから来ないんだったらよぉ…………。

 

 そのままノールックでナイフを入り口の柱に突き刺す。こわーいお兄さんは虚仮威しだと思ったようで、「ビビらせんじゃねぇ!」とか「バカが!当たってねぇぞガキ!」とか言ってる。

 

「────バカはどっちだ? あ゛ぁ?」

 

 舐め腐ってる雑魚どもが唐突に吹っ飛んだ。そらそうだ。ナイフに『任意に発動/アーツの衝撃波を放出する』ってのを設定してんだから。駄目だろ〜?飛び道具になにか罠が仕掛けてないか確認しなきゃ。そんなんじゃイングリッドに2秒で殺されるぞ?

 

 衝撃波で武器を落とした一人に肉薄して、顎下にかるーく掌底かましてオとす。立ち上がって反撃されるのもダルいし、オとした奴の手の骨を足で潰しておく。念入りってのは大事だからね、特に俺みたいな弱者にとっては。

 

 柱にあるナイフを抜いて回収して……っと。よろめきながら立ち上がってるやつ、急いでアーツユニットを構えてなんかやろうとしてるやつ……あと向かいの建物の屋上で高みの見物してるやつ。

 

「だりぃなあ……今ので気絶でもしてくれりゃあ良かったのに」

 

 俺の不手際もあるけどアンジェリーナが危険に晒されてちょっと不機嫌なんだわ。やっぱ親心ってやつかな。え、親じゃない?そんな……!?俺は、お父さんだぞっ!!!!

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