ワロタ。
アーツユニットに入力し終えたのか、ゾル〇ラークみてぇなビームを放ってくるトラディトーレの残党。諸説あると思うんですけど、アーツユニットって個人的には増幅器の解釈なんですよね。
威力は増すけど、アーツユニットを経由して放出する都合上、発射速度は落ちるみたいなさ。まあ諸説とはいえ理解はできなくないっしょ?
だから、アーツユニットを使って差が出るのってよほどの雑魚同士の戦いか、超上澄み同士の戦いじゃないと体感しにくいんだよ。俺らみたいな中途半端な奴らが使っても、なにこれ?ってなるだけで。
結果はご覧の通り。確かにすげー威力で店の壁に穴をあけた。でも避けられる。だって遅いから。
あとこいつにアーツユニットを持たせたやつがバカだね。明らかに狭いところかつ人数戦で連携取りにくいアーツじゃんか、こんなビーム。広範囲殲滅系のアーツは時にお荷物になるんだよ。
まあ敵のネガキャンもほどほどに。下を見るより上を向いて向上心高めて成長をしていこー!丁度実験するには都合のいい環境だしね。さて、『アーツ言語』を設定するときに物体にアーツを込めなきゃいけないわけなんだけど、このアーツって俺由来のものじゃん?
アーツ操作ってのは自分由来のアーツをあっちに移動させて〜!とかこっちに移動させて〜!とかせこせこやるのが原理。じゃあさ、物に込めた自分由来のアーツって引き寄せられんじゃないの?
簡単に言えば、俺→ナイフって投げて、俺←ナイフって戻ってこれんじゃね?ってことね。
ラーメン食い終わったあと浮いた油の玉をくっつけて一つのでけぇ玉にしてさ、その後ぐちゃぐちゃにしてまた元に戻すやつよくやるよな。え、やらないし行儀が悪い?しかも話が逸れてる?意外とイメージ的には似てるだろうが!
油が別の油の近くに行くと何も手を加えなくても合体するあの感じさぁ!!!!!
「ちょっとそのアーツユニットは欠陥なんじゃないか? アーツの装填数が1発なのはどうなのよ」
避けられてバカ焦り散らかして入力してる奴に向かってナイフを投擲する。ほら、ビームよりこっちの方が速いし避けにくいよ。はーいクリーンヒットぉ〜!デコにぶっ刺ささり申した。
んで、設定した『アーツ言語』を発動してみるっと。
『任意に発動/同質のアーツに収束』って感じにしてみたけど、どうかな?ちなみに失敗するとアーツだけ消費されて何も起こらない。イングリッドとの稽古で色々試して失敗は経験済み。いぇーい。
それで発動すると思ってイキってたら顔面にもろグーパンもらって歯ぁ欠けたことある。あれは……痛かった……!
「……おお! すげぇ、戻ってきた!」
結果はなんと大成功。でもどこに収束するかを定めてないからただクルクルと回転して戻ってくるね。しかも速度も定めてないから加速して戻ってくる。危ねぇったらありゃしない。
ただ、設定を詳細にすればするほど必要なアーツ消費量は増えてくんで、気合いでどうにかなることは省くほうがコスパが良かったりする。
ラップランドが言ってた『最小限に抑えられたアーツのコスト』の秘訣はこれ。
「ほんじゃ、あと一人……ってうおっ!?
うわぁ……あっちは盛大にやってんなぁ……」
まだ頭がクラクラしてんのか顔は青ざめてるけど動けてない最後の一人に近付こうとしたら厨房の方から人が吹っ飛んできた。片腕が無くなってるし、ていうか死んでるしでもー凄いわ。B級映画の雑な殺され方みたい。そもそも人生がB級映画みたいなところあるか。
「ちょっと調子狂ったけど……なあ、アンジェリーナがどこに連れてかれたか知ってるか?」
正直アーツで追えはするけど余計なアーツの消費が無くせるならそれに越したことはないしな。
素直に答えてくれるとも思ってないですけど、どうせ死ぬし善行でもして死ぬかって思ってくれねーかな?
んな事思うならクルビアから逃げ帰ってねぇか。バカなこと考えたわ。
「……教えるわけねェだろ、ガキが」
おお、唾吐いちゃって威勢がいいんだから。んじゃいいよ、さっさと殺…………っ!?あっっっぶねぇなぁ!?!?
なーんか静かになったと思ったら、残党の身体が膨れ上がって、トゲ状の何かが残党を貫通して広がるように突き出してきやがった。
しかもすぐにトゲは痕跡を1ミリも残さず消失した。残ったのはでけぇ穴の空いた可哀想な死体だけ。あらあら、殺意の高すぎるアーツだこと。
実はアーツ解析でこの店内にいるやつにこういう芸当ができるやつがいないってのは把握済みなんだよ。俺のアーツ解析の範囲は半径50メートルが限界。ほんでちょ〜ど向かいの建物はここから50メートルとちょっとで解析範囲外。
……絶対屋上にいるアイツじゃねぇか。そんでしかもあの術師のアーツ操作範囲は俺より上ときた。間違いなく俺より強い。いやぁ……長引くなぁ。でも長丁場は良くないなぁ……?
「……ラップランドォ! そいつら片付けたら俺のことを待たずにさっさと裏口から追え! お前に探知の『アーツ言語』は既に付けてあるッ!」
「ふぅん……いいの? そっちの敵は強そうじゃないか。 手に余るならボクがその立場を代わってあげてもいいよ……! お姫様を追うのは王子様の役目でしょ?」
馬鹿言え。このレベルの強さのやつが今現在アンジェリーナを拐った方に護衛していないのがおかしい。その理由はいくつか考えられるが、その中でも死ぬほど最悪なのは拐った側にコイツより強いやつがいた場合だ。
ムカつくが、ラップランドのアーツはもう解析して知ってる。なろう系の主人公かってくらいチートじみた最強アーツ持ちのお前がアンジェリーナの方に行った方が最悪の想定をしたとき明らか得策なんだよ。
「……めんどくせぇから言わなくても分かれ! いいからさっさとアンジェリーナ連れて帰ってこい、ラップランド!」
「……ハイハイ、冗談が通じないんだから。 ボクが友達で良かったね? ……すぐに連れ戻すから、待っててよ」
あいつの言う『友達』は大体サルッツォに楯突いたバカのことか、取り立て先の哀れな貧乏人の事を指すんだが……今の友達はなんか含みが無かったな。うーん、意外と友達少ないのかな。嬉しいんだろうね、友達ができて。
マジで不器用だよな、ちょっとこれから死ぬかもしれないのにニヤける。らっwぴwーwかwわwいwいww
「……で。高みの見物してんじゃねぇ……ぞっ!!!!」
今から距離を詰めるには遠すぎるし、屋上なんで高すぎる。でもちょっと見下ろされてる感じあってうざかったので身体フル強化で回転かけずにナイフをダーツみてぇに投擲してやった。
結構本気でコントロールしたからヘッドショットするはずなんだが……んぁ?……消えた?
「───いったいどこに……っ、カハッ……!?」
いつから背後にいた……!?つーかあの距離からここまでどうやってっ……!?振り向きざまに回収したナイフを振るが、空振った。まるでそこにそもそもいなかったみたいに手応えがねぇし、つーか存在が見えない。
並行してアーツ解析も行ってそれは上手く成功してんだけど……うーん、知りたくなかったかも。さっきのやつらが普遍的なアーツを使うからこいつもてっきりスタンダードなマフィアかと思ったじゃねぇか。全然ちげぇんだけど。
こいつのアーツは『影を操る』アーツ。わっかりやすく用心棒とか殺し屋が重宝しそうなアーツの持ち主だね。本当になんで俺の周りは主人公っぽいかっこいいアーツを持ってんの?
とりあえず突っ立ってたら影を使って一方的に攻撃されるんで、走りながら用心棒から距離を取り続けている。時たま街角の死角を使って目を掻い潜ることは成功してんだ。そんでその時は影化を解除して実体化するのも確認できてる。
ただこちらが攻撃してもどうしてかすり抜けて当たらねぇっ!ちくしょう……相手は影だから通行人に見つかったとしてもそれは『俺だけ』が見つかってるだけだ。
傍から見れば『何かに怯えて街中を走ってる頭のおかしいガキ』でしかない……!
「…………ッチィ! だりぃなァ!!!!」
でもシラクーザを知り尽くしてんのは俺の方なんだわ!てめぇはここに来て新参者だろうが敬えよ、あぁ!?わざわざ走り回ったのはこのため、この使われなくなって久しい廃ビルに誘導するためなんだよ、バカがァ!
「…………ふーっ、とりあえずは撒いたか」
「──── イイヤ? ココニ……オレハ、イル」
「っな!? ────ぐうっ!?」
……天井から出てくんじゃねぇよお化け屋敷じゃねぇんだから!あ゛ーうぜぇ、分かるぜ用心棒さんよ、ちょっとバカだなぁって思ってんだろ?廃ビルは屋内で、影が多いもんな。でもそれってよぉ、こうやったらどうなるか分からんじゃんか!設定してんだわこちとらもう……!
このフロア一帯にアーツ言語、『任意に発動/暴発するアーツを放出』を!
「…………オマエ、ナニヲ……笑ッテイル……!?」
「……ひひっ、ばぁーか。発動ォ────!」
おおっ!潜る影がいきなりなくなると実体化すんのな!これで殺りやすくなったね!?おら死ねよクソ用心棒が!さっきはよくやってくれたなァ!?
バラバラになって落ちていく瓦礫を足場にトラディトーレの用心棒に殴る蹴るなどの暴行を加えていく。いやぁスカっとするね!散々やられてきたことをやり返すってのはいいもんだわ!
ついでにそこらへんの細かい石礫にも『任意に発動/対象へ射出/対象:トラディトーレの用心棒』って設定して四方八方からぶっぱなしてみちゃう!かぁー!イジメが無くなんない理由ここにありかも!たのしー!
「ガッ……!オレヲ……舐メルナァァァァ!」
おっ、空中でよく立て直したな。しかも俺の見よう見まねで身体強化のアーツ+瓦礫を足場に俺に掴みかかってきやがる。さすが用心棒だけある。
こいつしぶといしセンスあんな!まあ、『物を操る』アーツを拡大解釈して『影を操る』アーツに昇華させてるしね、センスはそもそもありまくりなんだよな。なんか才能の塊を前に萎えてきた。
才能ありまくりくんがうざったいのでシラクーザの夕焼けを楽しめるように外に蹴り飛ばした。安全装置の無いタ〇ーオブ〇ラーみたいで気持ちいいねぇ!!!え、死ぬって?大丈夫だよ、どうにかなるっしょ。それにしても景色が綺麗だよぉー!?アスノヨゾラ哨〇班のMVみてぇだ。懐かしっ。
「なぁ!なんでアンタらトラディトーレはアンジェリーナを拐ったんだ!? 教えてくれよ、てめぇが死ぬ前にさァ!!!」
「グウッ……オレタチハ……! コノシラクーザ、デ……ハグレ者デシカ……ナイ……!」
うんうん、それでぇ!?とか言いながら、言ってないけども、相槌打ちつつ用心棒くんの頭を殴り飛ばす。影のアーツの応用か知らないけどシルエットがわかんねぇ。でも血?が飛び散ってるっぽい。うへぇ、痛そ〜……。
「ダカラ……ヒト、拐ウ!!! ……源石ノ……セイサン、タカメルッ!!!」
あーね?電車待ってる時に読んでた電子新聞で行方不明の子供が多数ってやつはおめーらの仕業だったわけか。
いやぁ、新聞に載ってる事件とかってどうしても他人事みたいに捉えちゃうよな。これからは反省して自分にも降りかかるかもしれないって気ぃ引き締めよっと。
軽く言ってる風だけどこれガチね。なぜならアンジェリーナが巻き込まれてるから。
「────ならよぉ、子供じゃなくて大人を拐えばいいじゃねーかこのペドフィリアどもが!!!」
やべっ、空中戦で仕留めようと思ったのにムカついて地面に叩き落としちった。落下ダメージ多分ないと思うんだよな、身体強化のアーツの出力が下がるどころかむしろどんどん磨きがかかってっから。
戦いの中でこいつ、覚醒してやがる。覚醒した術師はそのアーツの解釈をさらに次のステージに押し上げる。これ道理な。
「コドモハ……未熟ユエニ……成長……余地ガアル……!
ソシテ……子ヲ、孕ム母体トシテ……適切……」
まあシンプルに影の展開が速くなったりするから……落下直前に生まれる用心棒と地面の間の『影』に溶け込むだろうな。ほ〜ら、予想通り。
……でも、その『影』は溶け込んじまったら用心棒の実体がなくなって消えるはずだよな……?そしたら実体化せざるを得なくね?なんでそうなんねぇんだ?
まさか……一度溶け込めば近くの影に転移できんのか?これも覚醒によるアーツの進化?……いや、だとしてもチートが過ぎる。何か欠点が……もしくは何かの規則があるはずだ。
とりあえず落下しながら一番近くて高い建物の屋根に飛び乗る。まあまあ削ったし、覚醒してるとはいえ体力は残り少ねぇと踏んだ。あいつも回復を優先したいだろうし……逃げる先っつーと……アンジェリーナが拐われて運ばれる場所しかないわな。
しかもあいつキショいこと言ってたし。マジではやく片を付けないとヤバそ〜!!子供を資源としてしか考えてないタイプのやべーファミリーね?りょーかいりょーかい。
そー考えるとヴェネツィアって義父が拾ってきた孤児が多いし、マジで価値観真逆だね。子は宝だと思ってるもんあの親バカ。
拐われてからまだ40分前後、クルビアの源石採掘場はバカ遠いから子供一人輸送するにも中継地点を設けてるはず。シラクーザはシラクーザでもまあ西に近けりゃ近いほど手間が省けると考えたら……。ま、凡そのアタリはついたかな。
「……ふぃー、よし。じゃ、とりあえず追跡しますかね」
ちょっと億劫なのは多分用心棒だけじゃなくてもう何人か同じレベルのやつが待ってそうなことなんだよな。ラップランドが殺しててくれねぇかな。あーあ、行きたくね。でもアンジェリーナ助けないと俺、俺自身のこと許せねぇよ……!