君はどんな効果だい? いつ発動する?   作:やーなん

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人間がカードになったり、カードの精霊が出たり。
皆が好きな要素を詰め込んでみました!!


僕は世界最強のデッキを作りたいだけなんだ

 

 

 

 僕には夢がある。世界最強のデッキを作ることだ。

 

 この世界は一大TCG、エデン・コードで経済も政治も回っている。

 世界大会に出て、優勝することは大変な名誉だ。

 

 子供の頃の僕の目標はそうだった。

 それなりに初等部ではいい成績を残せたと思う。

 だが、中等部からは違った。

 

「グッドゲーム!! いいアセンションだったな!!」

 

 僕が通う学校の同じクラスで、“本物”に出会った。

 

 彼はメグル君。エデン・コードに愛されたような少年だった。

 プレイング、ここぞと言う時の引き。そして何より、彼はカードを愛していた。

 

 僕は挫折を味わった。彼と友人になったが、所詮風景の一人に過ぎなかった。

 彼には僕以外にも友人は大勢いたからだ。

 ただ、彼はトラブルメーカーだったので、それに付き合うとそれにいつも巻き込まれる羽目になる。

 

 転機が訪れたのは、最近街に現れた謎の黒づくめの連中が現れるようになったからだ。

 

「た、助けて、メグル!!」

 

 メグル君の幼馴染であるトキコちゃんは、そんな連中の目の前で──カードにされたのだ。

 

 僕は衝撃を受けた。まるで雷に打たれたような感覚だった。

 

「お前達、トキコを返せ!!」

 

 メグル君は彼女を連れ去られ、連中と戦うことを決めた。

 でも、僕は呆然としていることしかできなかった。

 

 頭の中にとある疑問が渦巻いていたからだ。

 

 

 即ち、──トキコちゃんは、どんな効果をしているのか、と。

 

 

 コストは? いつ発動できるんだ?

 僕は友人が攫われたのに、そんな場違いなことを考えていたんだ。

 

 

 

 人間がカードになる。

 その事実に僕の胸は高鳴っていた。

 

 だって、そうだろう?

 新しいカードのパックを開ける時の高揚感は、誰でも理解できるはずだ。

 まだ見ぬカードが、知らない効果が、何十億枚もあると考えただけで、僕は眠れなかった。

 

 

 だからこそ、僕は──魔に魅入られた。

 

 僕の夢の中に、彼女は現れた。

 

「君、面白い魂の形をしてるね」

「……だれ?」

 

 黒い靄のような何かが、女の子の声で話しかけて来た。

 

「誰でもいいじゃないか。

 君もエデン・コードをするんだろう、アセンションしようよ」

「……いいよ」

 

 不思議なことに、夢の中なのに僕の手にはデッキがあった。

 

「それじゃあ、始めようか」

 

 

「「アセンション!!」

 

 僕らの掛け声と共に、ゲームが始まった。

 

 

 結果は、完敗だった。

 手も足も出なかった。こんなこと、メグル君相手でもあり得なかった。

 

「へぇ、メグル君ねぇ。彼、そんなに強いの?」

 

 僕は彼の事を話した覚えはないのに、まるで僕の思考を読み取ったように彼女は言った。

 

「そうだね、彼はとても強くて、僕の憧れで……」

 

 嫉妬の対象だった。

 

 それを読み取ったのか、彼女はくつくつと笑った。

 

「ねえ、彼に勝ちたい?」

 

 僕はいつの間にか俯いていて、その言葉に顔を向けた。

 

「勝ちたいよ。僕は世界最強のデッキを作って、彼に勝ちたい。誰よりも強いプレイヤーになりたい」

 

 それが本音だった。

 彼の添え物みたいな役割は、もう嫌だった。

 

 僕は、主人公になりたかったんだ。

 

「なるほど、君なら相応しいかもしれないね」

「……ふさわしい?」

「私はね、とっても退屈なんだ」

 

 彼女は愉快そうに笑いながらこう言った。

 

「来るべき時が来るまで、こうして他人の夢にお邪魔してアセンションをするくらいしか楽しみがないんだ。

 そして、来るべき時に世界最高のプレイヤーとの決戦を待ち望んでいるんだ」

 

 彼女に、僕はジッと見られているような気がした。

 

「ねえ、シュウ。私の手足になって。

 欲しいカードでも何でもあげる。その代わり、私の退屈を紛らわして」

 

 僕は少し考えてから、こう言った。

 

「いいよ、でも僕はカードは要らない」

 

 

 

「僕は人間をカードに出来る力が欲しい」

 

 

 一瞬の静寂。

 

 

「っぷ、あはは、なにそれ!! そんな簡単な事でいいの!?」

 

 彼女の靄のような腕が、僕を鷲掴みにした。

 

 次の瞬間、僕の意識はカードになり、封じ込められた。

 

 彼女はカードになった僕を手に、こう言った。

 

「私は、久遠シュウを召喚する」

 

 僕の意識が、再びカードの外へと排出された。

 

「これで、君は私のカード(モノ)だ」

 

 そして僕は、彼女と言うプレイヤーに言われるがままに、カードとして現実に使役されることになった。

 

 

 

「僕は従士レッドステンで攻撃。3点のダメージ、これで終わりだ」

 

 赤毛の従騎士が対戦相手を攻撃し、デッキが三枚墓地に行く。

 彼のデッキはゼロ枚。僕の勝利だ。

 

「く、くそッ、俺がこんなガキにッ!!」

「それじゃあ、敗者はカードになってね」

「な、なにを」

 

 僕の背から、靄のような手が対戦相手に伸びる。

 

「な、なんだこれ、や、やめろ、やめろ──!!」

 

 だが、対戦相手の男は抵抗虚しく、一枚のカードに変貌し、それ以外の全ての痕跡が消え去った。

 

 僕は淡々とそれを拾った。

 

「どう? 強いカードだった?」

「うーん、微妙かな」

 

 カードのテキストを確認している僕に、彼女は話しかけて来た。

 彼女の声は僕にしか聞こえないし、姿を見ることもできない。

 

 彼女は僕をそうしたように、他人をカードに変えることが出来るんだ。

 

「ねえ、ミク」

「なあに?」

 

 彼女は僕にミクと名乗った。聞いても居ないのに一応偽名だよ、とは言っていたけど。

 

「どうやってカードにしてるの? どういう風にカードの効果は決まるのさ」

 

 僕は対戦相手が描かれたカードを見て、思わず口の端を釣り上げた。

 知らないカードの効果を読むのって、ワクワクするからね。

 

「その人間の魂で決まるかな。人間の魂にはソースコードみたいなのがあってね、その一部を抽出している感じだよ。

 でもさ、流石の私もカードにした人間で対戦(アセンション)するって発想は無かったな」

 

 くすくす、とミクは嗤う。

 

「普通ホビーアニメとかじゃさ、カードにした人間の使い道って生け贄とかじゃない?

 そのカードそのものを使って楽しみたいって、私も想像の埒外っていうか」

「なんで? カードは集めて、使う為にあるんだよ?」

「まあ、君が喜んでくれるなら嬉しいよ。

 でもさぁ、君ぐらいの歳頃なら、かっこいいドラゴンとか魔法使いとか、そう言うカードを使いたがるもんだと思ったんだけど」

「……? なに言ってるの、カードはステータスとテキストが全てじゃない。重要なのは効果とレアリティで、イラストと名前は飾りじゃん」

「いやいや、名称は大事だよ。エデン・コードじゃあデザインテーマは少ないけどさ」

 

 まあ可愛い女の子のアイドルカードとか好きになる年頃じゃないか、ミクは苦笑した。

 

「ミクはさ」

「うん」

「なんで僕と一緒に居るの?」

「厳密には本体は別にいるけどね」

 

 僕の疑問に、ミクは答えた。

 

「私の目的だっけ?

 君や、他の手下たちに、人間のカードを捧げさせて、復活する為さ。

 とりあえず、一万枚くらいあれば復活しても良いかなーって」

「なんかいい加減じゃない?」

「フレーバーテキストは大事だよ」

 

 はあ、と僕は適当に相槌を打った。

 エデン・コードにも何の効果も無いフレーバーテキストだけのカードもある。低コストで能力が高めに設定されてるのが利点だ。

 

「でもそう決めた時さ、私自身が動けないってことに気づいちゃったんだよね」

「ああ、そうなんだ……」

「だから適当な相手に力を与えて、裏から操ってるの。

 でも、君は飛び切りのお気に入りだよ」

 

 くすくす、とミクは笑う。

 

「今はほら、カードの精霊的なポジションも悪くないかなぁって」

「カードの精霊なんて……そんなの迷信でしょ、存在しててもカードが強くなるわけじゃないし」

 

 ホビーアニメの見過ぎなのでは、と僕は思ってると。

 

「わかってないなぁ……私はルールメイカーだよ。

 存在しないなら存在させればいい。君が人間のカードに、テキストを欲したようにね」

 

 僕は絶句した。

 

「ねえ、ミク。ならさ」

「なに? シュウ」

()()()()()はどんな効果なの? いつ発動するの?」

 

 クククッ、とミクは笑い声を上げた。

 僕も笑っていた。僕は()()()カードが欲しかった。

 

「いずれ私に挑んで、勝てばいい。

 その時は、私は君のものに成ってあげるよ。私は最高レアだよ」

「やった。嬉しいなぁ」

 

 一万枚のカードを必要とする、その頂点のカード。

 本当に見るのが楽しみだなぁ。

 

 

 

 

 

 それから、ひと月の時間が流れた。

 

 

 ミクの復活が目前となったある日、彼女の力で居城たる空に浮かぶ空中要塞が出現した。

 

 そして彼女に選ばれた四人が、幹部として彼女自ら四天王の称号を与えられた。

 

 僕も、その一人だった。

 彼女の復活に最も貢献した一人として、彼女の本体が眠るここを守ることを許された。

 

 禍々しい外見と内装の空中要塞に、侵入者たちがやって来た。

 

 メグル君と、その仲間たちだ。

 彼らはカードに宿る精霊の力を用い、地上から七色の橋を掛けてここに乗り込んできた。

 

 いや、本当にカードの精霊って居るんだ。

 まあ別にどうでも良いけどさ。

 

 それぞれの四天王がメグル君達を足止めを行っている。

 

 しかし、ミクからの命令は、通せ、だった。

 ただ、他の四天王の三人は、彼らを試す為に専用のデッキを組んで相対している。

 それを乗り越えなければ、ここに来る価値は無いからだ。

 

 

 ミクは、ホビーアニメを愛している。

 販促された全てのゲームを極め、その果てに自分がホビーアニメのラスボスになることを望んだ。

 

 彼女の動機なんて、そんなものだった。

 私達お似合いだね、なんて彼女は笑っていた。

 

 

「シュウ!!」

 

 ああ、ようやく来たよ。ミク。君の望みが叶う時が。

 

「待っていたよ、メグル君」

 

 僕は彼女の眠る玉座の前で、入口の方を振り返りそう言った。

 

「ミクは──魔王様は、この世界を滅ぼすつもりだよ」

 

 僕はフレーバーテキストを読み上げるようにそう語る。

 

「最後の四天王は僕だ。魔王様に挑むなら、僕を倒すしかない」

「本気で、本気でお前は魔王の手下として、俺と戦うつもりなのか!!」

「ミクの望みが僕の望みだよ。それに──」

 

 僕は嬉しくて、嬉しくて、笑った。

 

「教えてよメグル君。君はどんな効果を持ってるんだい? いつ発動して、どんなステータスをしてるのかな?」

 

 大切な親友を、デッキに入れられるんだから。

 

「どうして、どうして……俺とお前は友達じゃないか」

「僕の夢、知ってるでしょ? メグル君はエデンズチャンピオンシップで優勝することだったよね?

 僕もあの時教えたはずだよね……」

 

 

()()()()()、最強のデッキを作ることだって!!」

 

 僕は彼の前に立ちふさがった。

 

「お前達は、ただのカードなんだよ!!

 この世界(デッキ)を操るプレイヤーは、僕一人で良いんだ!!」

 

 僕は満面の笑みを浮かべてそう言った。

 

 メグル君は拳を握り、目元を拭ってデッキを取り出した。

 

「アセンションだ、シュウ!!」

「ああ、始めようか」

 

 僕は優雅に一礼した。

 

「序列39位の魔王様が四天王、“収集家”シュウが君が魔王様に挑むに足るのか見定めてあげるよ」

 

 魔王の玉座の前で、僕たちは死闘を繰り広げることになる。

 

 

「「アセンション!!」」

 

 

 そんな僕らを、ミクは、魔王様は愛おしそうに見下ろしていた。

 

 

 

 

 





最近スランプで、リハビリの為に書きました。
続きの予定は無いです……。
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