君はどんな効果だい? いつ発動する?   作:やーなん

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多分今作では使用されない設定でしょうが、拙作のシリーズにおいて、吸血鬼とは基本“ヤンデレ”です。



だが、キュリアは弾けた

 

 

 

「ここの連中はレベルが低いッ!!」

 

 そんな出来事があってすぐ、御曹司がメグルの寮室にやって来てそんなことを言い始めた。

 

「どいつもこいつも、ここをカードゲームで遊んでついでに勉強できる場所みたいに思っている!!

 何と言う低俗か!! この学園の理念を何も理解していない!!」

 

 要するに、愚痴である。

 

「まあまあ。まだ学園が出来て初年度だし、俺達が将来卒業して実績を作れば結果的に入学する生徒のレベルも上がるよ」

 

 メグルにしては的を射た発言だった。

 そんな将来を見据えた発言に、御曹司も溜飲を飲み込んだようだった。

 私の入れたお茶をごくごくと飲み干した。

 

「やはり俺のような選ばれた人間が、凡俗どもを導いてやらねばならないのか……」

 

 スゴイ上からは発言である。

 ただ当人からすれば、己の立場をしっかりと認識しているだけでもある。

 御曹司は将来、何千何万という家族を養うグループ会社のトップに立つ上に、魔王の四天王にもなるかもしれないのだから。

 

「そう言えばさ、ガイ。今日の食堂の騒動は知ってるか?」

「ああ、あのゴスロリ女の件だろう?」

 

 御曹司は無言で空になったコップを私につきだしてくるので、私はお茶のおかわりを入れた。私は使用人か。

 

「正直どう思う?」

「馬鹿が挑発して地雷を踏んだだけだろう。

 あの馬鹿への教育を疎かにした親の責任だ。他人に喧嘩を売ってはいけないとは教わらなかったのだからな。

 或いは、それを理解できない程度の低能だったか」

 

 御曹司の物言いはアレだが、概ね私も同意だった。

 あの大バカの品性は当人の問題だ。

 

「だけど、殺されるほどじゃないはずだよ」

 

 メグルは肩を落としてそう言った。

 

「……まあ、あれが自分の領地に日本人を連れ帰って処刑すると言うのならそれはそれで問題ではあるな」

 

 ふん、と鼻を鳴らして御曹司はそう言った。

 

「昨今、アセンションによるアンティ行為が社会問題になっている。

 お前達はよく知っているだろうがな」

 

 その言葉は、彼の言う通り私達はよく承知していた。

 

 アデプト事件。

 ある意味でその事件はその社会問題が発端とも言えた。

 

「政府はアセンションによる、民間での問題解決を推奨した。

 だがそれは誓約書の文言に制限がないのと同じように、お互いの同意の上での契約になる。

 その内容が賭博や人権などを害するなら別だが、基本的に違法スレスレぐらいなら警察も未介入だ」

 

 それは直近の問題は解決するかもしれないが、納得するかは別だ。

 新たな禍根や問題を産んでいる側面もあった。

 

「俺が上に立った時、ある程度の是正はしなければならんな」

 

 御曹司は腕を組んでそう言葉を結んだ。

 この人、言動はアレだけどかなりまともな感性を持ってるんだよなぁ。

 

 少なくとも、この人はキュリアさんが吸血鬼だからどうとか、偏見を持って判断はしなかった。

 

「よし、じゃあ俺、キュリアを説得してみる!!」

「好きにすればいいさ。吸血鬼という存在は、俺も興味がある」

 

 御曹司はそう言って、ニヤリと笑った。

 

「ここで奴に怖気づくのは、アセンションでは無いからな」

「ああ、俺達は分かり合えるはずだからな!!」

 

 メグルもそれに応えてそう言った。

 この二人、根本的には同じなのかもしれなかった……。

 

 

 

 魔王様は言った。神は人類に精神的に成長を求めている、と。

 

 今回の一件はその、人類の幼稚さが招いた事件だった。

 私達は同じ人間として恥ずべきことであり、少なくとも人間以外の知性体が学ぶ姿勢でいたのに、身勝手に揶揄した。

 この地球人類が失敗作であると言う理由の全てだった。

 

 少なくとも、キュリアさんは言葉の通じない怪物では無かったのだから。

 

 人間の恐怖の根源とは、無知と無理解。

 死が恐ろしいのはその先が誰も知らないからだ。

 

 ならば、吸血鬼が恐ろしいなら理解すればいい。

 

 放課後、私達は夕暮れにキュリアさんに突撃することになった。

 校門のところで待っていれば会えるはずだった。

 

 いやSNSで連絡とれよと思うかもしれないけど、昼間の光景を見てそんな勇気は私には無かった。

 というかメグルは普通に連絡を入れようとしてたが、私は止めた。警戒心が無さすぎる。

 御曹司も、相手に準備する猶予を与えてどうする、と呆れていた。

 

 すると、ヨコタさんが校門前まで歩いてやって来た。

 そこで待機し始めたので、もうすぐキュリアさんもやってくるのだろう。

 

 程なくして、キュリアさんが合流する。

 あの馬鹿男が日傘を彼女に差して、荷物まで持っている。

 

 彼女はあのアホ男にもう今日は帰っていいよみたいな指示を出した後、ふと、何かに気づいたかのようにハッとなった。

 

 そして、反り返るような奇妙なポーズを取って、こちらを指差した。

 

「メグルさん、見ていますわね!!」

 

 物陰に隠れて遠目に見ていたメグルがギョッとなった。

 ちなみにこの時、メグルの奴は霊視とやらを実践していたらしかった。

 

 ただそう言う特殊な視線に、キュリアさんは敏感だった。

 

「あ、やば」

「皆さんお揃いで、お嬢様に何か御用でしょうか?」

 

 なんと、距離があったのに、ヨコタさんはいつの間にか私達の後ろから話しかけて来たのだ。

 

「あ。えーと」

「ヨコタ」

 

 すると、キュリアさんは優雅にこちらに近づいて来た。

 

「“食事”の用意をなさい。私の友人も招待しますわ」

「かしこまりました」

 

 食事。その言葉に、私達は震えあがった。

 御曹司も顔を青くしている。

 

 そして、私達は連れて行かれた。

 

 島唯一の、ファミレスに。

 

 いやファミレスかよ、と私は思ったわけよ。

 このアセンション学園は小規模な商店街が存在しており、私達はそこに案内された。

 

「本当なら我が領地の屋敷に招待して、持て成しをしたかったのですが」

 

 と、キュリアさんは口惜しそうにそう言った。

 そう、彼女は他の生徒と同じく寮生活をしている。この島は狭いし秘密裏に連れ込む場所なんて無いのだ。

 

「どうぞ、好きなモノを頼んでください」

「ささ、遠慮せずに」

 

 同席しているヨコタさんにも促され、ファミレスに入った以上何も頼まずに居るのもあれなので、私達は注文をした。

 

「そちらの、小さな御仁もどうぞ」

「ふむ、やはり気づいていたか」

 

 メグルのジャケットの内ポケットからメグさんが現れ、ギョッとする御曹司。

 

「吸血鬼が実在するとは、思いも依らなかったよ」

「私も、こちらに魔法の文化は無かったと記憶しておりますが」

 

 キュリアさんとメグさんはそんな会話を交わした。

 小声でメグルは御曹司に説明を求められ、ぼそぼそと説明をしている。

 

「異世界人だと? いや、魔王様も厳密に言えば異世界人か……」

 

 最終的に御曹司はそのように納得したようだった。

 

「ええと、キュリア達は吸血鬼、で良いんだよな?」

「ええ。別に隠してはおりませんわ」

 

 キュリアさんは当然のように堂々としていた。

 

「我々は“スカーレットガーデン”と呼ばれる世界から、異種族留学プログラムにてこちらに参りました」

「……ああ、教団が最近始めたアレか」

 

 どうやら、御曹司は心当たりがあるようだった。

 

「異種族留学プログラム?」

「メアリース様が人類と異種族が共存できるのか試行する、実験的なプログラムのことだ。

 当然地球に人間以外の知性体は居ないから、異世界から呼ぶことになるらしい」

 

 ニュースでやっていただろう、と御曹司は呆れたように私達を見た。

 そう言えば、そんなウェブニュースの記事があったような気がした私だった。

 

「魔王様から強い希望があり、私はこのアセンション学園に入学することになりましたわ。

 こちらの体験の全てが新鮮ですわ、なにせ我が故郷は同胞しかおりませんので」

「え、吸血鬼なんですよね? 人間が居ないんじゃ、どうやって食事を……」

「それを説明するには、我が故郷の成り立ちから話さなければなりません」

 

 私の問いに、キュリアさんはそう答えた。

 

「お嬢様、普通自己紹介に神話の話まで遡りますでしょうか?」

 

 ヨコタさんがそんなツッコミを入れた。

 まあ、私達も自己紹介をする時に外国人に日本神話なんて話したりはしない。

 

「では簡単に。

 あなた方人類が女神メアリースに創造されたように、我らの種族もまた偉大なる月の女神様と神祖たる始祖様が交わることによって産み出されました。

 その目的は、メアリースと戦うことだったそうです」

「人類と、吸血鬼の戦いか……」

「結果的に言えば、我らは敗北しました。

 我々はスカーレットガーデンと称されるようになる、日本の本州程度くらいの土地に押し込まれ、5000年もの間、流刑の憂き目に遭いました」

 

 5000年も、か。中国の4000年もビックリだ。

 いや、ちょっと待って。そのスカーレットガーデンとやらは日本の本州程度の広さがあるのに、“庭”だって言いたいの!?

 悪かったわね、日本が狭くて!!

 

「状況が変わったのは、およそ百年前でしょうか。

 ある災厄が巻き起こり、女神メアリースはその対処を我々に命じました。

 我々はそれを撃滅し、その功績により彼女は祖先の罪を赦したそうです」

「より正確に言うなら、人類相手に戦争を吹っかけた当時の者達はとっくに亡くなっているので、その子孫である我々にその責を問うつもりはなかったそうですが。

 要するに、単なるきっかけに過ぎなかったのです」

 

 キュリアさんの言葉に、ヨコタさんが補足した。

 

「まあ、祖先の罪が子孫に及ぶなど、野蛮な思想ではあるからな」

 

 御曹司は納得したように頷いて見せた。

 

「災厄、か。興味深いな」

「私は災厄の後に産まれた世代ですから、記録でしか知りませんが」

「私も同じく。ただ災厄の規模は大きく、復興はまだ終わっていない地域もありますね」

 

 メグさんは興味津々な様子だった。

 多分大勢亡くなってるんだろうから、不謹慎である。

 

「え、じゃあ二人共いくつなの?」

 

 メグルのバカはそんなド直球にデリカシーの無いことを聞いた。

 

「ヨコタが七十ちょっとで、私が54歳になりますわね」

「79歳ですよ、お嬢様」

 

 これには私達もビックリした。

 メッチャ年上だった。

 

「まあ、千年の寿命を持つ我が種族にとって、私達は幼児も同然ですが」

「……ちょっと待て、君達は千年生きれるのならば、なぜお前は26代目当主と名乗っている」

 

 御曹司の指摘に、私もハッとなった。

 確かに、代替わりが早すぎる。大きく見積もっても十代くらいじゃないのか、と。

 

「我が故郷スカーレットガーデンは、何も無いのです」

「……」

「我が種族は、生粋の略奪民族。人間の文化や文明を奪って、ずっと使いまわして生きていました。

 人間のように創造性や発展性なんてものは初めから与えられていないのです。現状を変えようなんて、誰も考えなかった。5000年もずっと」

 

 貝を媒介にしないと寄生できない生き物のように、彼女ら吸血鬼は人間に寄生しないと生きられない生き物なのだ。

 

「……そんなこと、あり得るのか?」

「我らの社会において、階級は絶対です。

 領民は全て領主の下僕。下僕の知能水準など、御触れを読めればいい。その程度で十分だったのです。余計な知恵など必要ありませんから」

 

 メグさんが吸血鬼の社会形態に絶句した。

 当然、学校なんてモノも存在しなかった。

 

 キュリアさんのような貴族こそが知識階級。

 知識を独占することで、支配を盤石にする。

 

 まさに中世の貴族だった。

 

「スカーレットガーデンの封鎖が解かれ、本格的な交流が始まって、私は地球に留学を希望しました。

 ヨコタの父は人間で、日本人でしたから。一度こちらの世界を見てみたかったのです」

「……あなたの故郷は封鎖されていたのだろう? なぜ人間が?」

「さあ? 女神メアリースの戯れでしょう」

 

 キュリアさんは曖昧に笑って肩を竦めた。

 道理で、ヨコタさんの名前の響きが日本人っぽかったわけだった。

 

「よろしければ父が出版した書籍がございます、人間の視点での我ら吸血鬼社会について詳しく書かれてますのでどうぞ」*1

「おおッ、是非読ませてもらおう!!」

 

 ヨコタさんは、懐から文庫本サイズの本を取り出してきた。

 知識の虫であるメグさんは大喜びである。

 ただ、なんというか、そのタイトルは完全にラノベか何かみたいだった。

 

「ああ、エグイ濡れ場もございますので読むのならお気を付けを」

「この人、自分の父親の濡れ場とか言ったぞ……」

 

 メグルは平然としているヨコタさんに半眼で見ていた。

 

「ヨコタ、それには母上のあれやこれやが赤裸々に書かれているではありませんか」

「お嬢様、母上は承知の上ですよ。その本の添削をしたのは母上なのですから」

「それは、そうですけど……」

 

 すまし顔のヨコタさんに、もにょもにょと何か言いたげなキュリアさん。

 

「ん、待て、お二人は兄妹なのか!?」

 

 ここで御曹司が何度目か分からない驚きを示した。

 そこで私もメグルもその事実に気づいた。

 

「確かに。人間の文化を踏襲しているのなら、そちらのヨコタが当主になるべきなのではないか?」

「こればかりは我々独自の文化と言いますか」

 

 メグさんの言葉に、ヨコタさんは肩をすくめてみせた。

 

「我々の種族は、家によって始祖から受け継いだ異能を伝承しているのです。

 その異能を発現した者のみが、当主の資格を得るのです」

「異能……“血統能力(ブラッドレコード)”か……」

 

 ヨコタさんから貰った本の内容を改めている御曹司がそう呟いた。

 

「早速お前の先代らしきキュリア女史が登場したぞ、透視能力か」

「『見透視の瞳(クリアポヤンス)』という名称がちゃんとあるのですが、その通りですね……」

「ほう、では早速見せてくれ!!」

 

 メグさんのこう言う無神経なところはメグルそっくりだな、と思ってると。

 キュリアさんの瞳が淡く光る。

 

「トキコの今日のブラの色は水色ですわね」

「ちょっと、何バラしてるのよ!!」

「正解のようだな……」

 

 御曹司は興味無さげに私の反応を見てからそう言った。なんだか思い出しただけでムカつく!!

 

「ほうほう、吸血鬼は純血であればあるほど強く、血が薄まれば薄まるほど弱くなるのか」

「逆に異種族と交配した場合、他種族の特性を獲得したりしますね。

 私が日光をモノともしないのは、父が人間だからでしょう」

 

 メグさんは御曹司と一緒に本の内容を読んでいる。仲良しか。

 そう言えば、ヨコタさんは吸血鬼なのに日傘を差していない。

 

「とは言え、日焼け止めは欠かせませんが」

 

 それでも彼は彼なりに苦労があるようだ。

 

「こちらでの生活は楽しいですわ。

 これからも皆さん、仲良く致しましょう」

 

 キュリアさんは、そう言ってほほ笑んだ。

 

 

 

 ファミレスでの食事を終えて、私達は帰路についた。

 

「やっぱり、話せばわかったな!!」

 

 メグルはそう言って笑顔を見せた。

 

 あのバカ男の処遇について、キュリアさんは話してくれた。

 鉱山労働は人の出入りが激しいから、一人くらい居なくなっても分からない、と。

 彼女は最初から面子を保ち、ほとぼりが冷めてから解放するつもりのようだった。

 

「吸血鬼でも、話が通じれば分かり合えるんだ!!」

「どうだかな」

 

 ヨコタさんから貰った書籍を読みながら歩いてる御曹司は、冷めた言葉を漏らした。

 

「これの記述が正しいのなら……キュリアは間違いなく、化け物だぞ」

「なに言ってんだよ、ガイ」

「……どうせすぐに分かるだろう」

 

 もう読み終えたのか、御曹司は書籍を私に押し付けた。私は荷物持ち扱いかい!!

 私もしっかり読み込みたい、とメグさんがうるさい。

 

 とは言え、御曹司の懸念は的中することになる。

 

 

 数日後。

 

「キュリア様」

「キュリア様!!」

「キュリア様、キュリア様!!」

「キュリア様キュリア様キュリア様」

 

「ほほほ、おほほほほほほ!!」

 

 キュリアさんは、大勢の取り巻きを連れ歩いて登校していたのだ。

 

 

 

 

 

 

*1
参考文献はこちら




参考文献につきましては、後程更新再開する予定です。これを読まなくてもこれから先全く問題ありません!!
本当は本作はそれを続きを書く前のリハビリのつもりだったんですけどねww
切りの良いところまではこっちを更新しますね!!

ではまた次回!!

おい、アセンション(対戦)しろよ。

  • アセンションする(一話対戦に使う時もある
  • 半分ぐらいアセンションする(カット進行
  • アセンションはフレーバー程度で(現状維持
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