君はどんな効果だい? いつ発動する?   作:やーなん

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アセンションで奴を拘束しろ!!

 

 

 

「キュリアさん、これっていったいどういう……」

「あら、おはようございますトキコさん」

 

 大勢の白いジャケットの生徒を引き連れ、キュリアさんは愉快そうにしていた。

 

「ああ、彼らですか? “お友達”になったのですよ」

「友達って……」

 

 私は身震いした。彼女は本気でそう思っているのだ。

 

「言いたいことはわかります。ですが私は別に、彼らの自由意志まで束縛してはおりませんわよ」

 

 キュリアさんは、最初に無礼を働いたあの男子生徒以外、自主性というものを奪ってはいなかった。

 その証拠に。

 

「そうです、キュリア様の領民になれば、いずれイケメン吸血鬼を紹介してくださるって約束してくださいました!!」

「私も新しい環境に馴染めずに、疎外感を抱いてたところをキュリア様に“お友達”にしてくださったのです!!」

「俺はキュリア様に踏んでもらうために自ら志願したのだ!!」

 

 一部アレな奴も居たが、彼らはそう主張した。

 その目はガンギマってて、まるで薬物中毒者のように高揚していた。

 まあ確かに、操られてそんな台詞は出てこないでしょうけど。

 

「興味深いね、吸血鬼の吸血行為は性的快楽を伴うと言うのが鉄板の設定らしいが、それはその後も続いているようだ」

 

 と、メグルのジャケットの内側のメグさんが様子を伺い、そう述べた。

 

「勘違いしないでくださいませ、私は誰の血も飲んではいません。与えただけです」

 

 私はそのキュリアさんの言葉に、先日のあの光景を思い出した。

 吸血鬼は吸血行為と同時に、自らの血を相手に送り出す。まるで蚊が毒液を送り出すのと同じように。

 

「“お友達”は食料ではありませんもの」

 

 それが、彼女なりの一線だった。

 

「……キュリアの言いたいことも分かるけどさ、あんまりそう言うのは良くないよ」

 

 メグルは難しそうな表情をして、絞り出すようにそう言った。

 彼女達は良いのかもしれないけれど、周囲は恐怖の視線でキュリアさんを見ていた。

 

 どんなに言い繕ったところで、キュリアのやり方は“支配”に他ならない。

 

「おほほ、肝に銘じて置きますわ。それではまた、ごきげんよう」

 

 キュリアさんはメグルの苦言を気にした様子もなく、上機嫌のまま取り巻きを連れて去って行った。

 

 

 

 昼間、私達は食堂の隅で食事を取りながら、食堂の一角を占めているキュリアさん達を見ていた。

 

「メグル、キュリアのやり方は受け入れられないかい?」

「……当たり前だろ、あんなのは普通じゃない」

 

 メグルはスープをスプーンで掬い、こっそりジャケットの内側のメグに与えながらそう答えた。

 ホムンクルスの身体の維持は錬金術で清々した薬液があれば十分らしいのだが、スープぐらいなら食べられるらしい。

 

「君の言いたいことは分かる。

 だがそれは、人間の価値観に過ぎないと思わないかい?」

「……それは」

「あの書籍には、吸血鬼は残虐で傲慢な生き物と記されていた。

 事実、キュリアはあの状態を当然だと思っている。快楽を刺激して支配している。

 だが、それは悪なのだろうか? 彼女は、そう言う生き物なのだ」

 

 私達は何も言えなかった。

 

 吸血鬼は人間を下僕として支配する生態をしている。だがそれは人間も家畜を支配して食べているのと同じだ。

 その対象が人間か、家畜かの違いに過ぎないのだ。

 

「人間が豚を美味しいと言って食べるのも、オーク族からすれば邪悪な死霊術(ネクロマンシー)に見えるかもしれない。

 そう言う観点から見れば、キュリアは今のところ我々を食料とはみなしていない。そう言う意味では、彼女は人類に対して好意的だ」

「そうだな……」

「だが、好意的だからと言って何もしないのは別問題だよ」

 

 メグさんの言葉に、私達は顔を見合わせた。

 

「メグル、キュリアは友人かな?」

「当たり前だろ!!」

「ならば、信じるからこそ備えるべきだ。

 君の友人は、間違いを犯さない神ではないのだから、必要となれば止める手段を持つべきだろう」

 

 メグさんは実に大人の考え方をしていた。

 他人の善意に甘えるのではなく、リスクとして考えるべきだと。

 

「そうだな。ありがとう、もう一人の俺」

「気にすることは無い。分かり合うと言うのは、無条件で相手を受け入れるのと同義ではないからね。君がキュリアと対等で居たいなら、アセンションだけで立ち向かおうとは思わないことだ」

 

 メグルも彼女と同じくらいリアリストだったらよかったのに。

 

「俺も同感だな」

 

 そんなことを話していると、おもむろに御曹司がから揚げ定食を持ってメグルの隣に座った。

 

「あれはどう見ても共存ではない。配慮と受容は違うのだ。

 人間社会で生活している以上、こちらの文化や社会通念に従って貰わねばならない」

「そうだよな」

 

 悩んでいたメグルも二人の言葉に覚悟を決めたようだった。

 

「あのさ、立ち向かうのはいいけど、とりあえず普通に先生達に相談した方が良いんじゃないの?」

「これだから凡俗は」

 

 私は当然の事を言ったつもりだったが、御曹司は呆れたようにそう言った。

 

「大人など信用できるか。少なくとも、付き合いの浅い他人などはな」

「あっそ!!」

「では具体的にどう対策する?」

 

 雑な扱いにイラっとしている私を無視して、御曹司は言った。

 

「彼女の血液があれば、血清が作れるだろうね。

 当人ならベストだけど、彼女の血を受けた人間でも十分だと思うよ」

 

 メグさんは早速対抗策を提案した。

 

「なるほどな、じゃあどうやってキュリアの血を手に入れる?」

「アセンションで良いんじゃないか? 普通にアンティで」

「ではそれで行こう。では誰が行くかだが」

 

 御曹司は私を見た。

 

「え、私!?」

「俺やメグルは司令塔と技師、貴様は替えの利く凡俗。一目瞭然ではないか」

「そんな!!」

「ゴメン、トキコ!!」

「メグルまで!?」

 

 結局私がキュリアさんとアセンションすることになった。

 

 

「キュリアさん、私とアセンションしましょう!!」

「ええ、構いませんわよ」

 

 私はやけくそになって彼女に勝負を挑んだ。

 

「そ、それでその、私が勝ったら、キュリアさんの血が欲しいなって」

「ッ!? 嬉しいですわ、トキコさん。私を受け入れて下さるのですね!!」

 

 待って、何だか変な意味に取られない、それ!!

 そりゃあ、吸血鬼文学の原点とも呼べる“カーミラ”は同性愛描写で有名だけどさ!!

 

 そして、私達はアセンションし、私は敗北した。

 あの、エデン・コード歴は私の方がずっと長いんだけど……。

 

 私は彼女の才能に打ちのめされてしまった。

 

「それでは勝者の権利を行使させて貰いましょう。

 それでは後程、湯あみの後に私の寮室でやりましょう」

「ねえ、私に何をする気なの!?」

 

 キュリアさんは、ほほほ、と優雅に笑って去って行った。

 あの時、すごく怖かったんですけど。

 

 仕方なく、その日は大浴場に入った後、白寮に向かったんだけど。

 

「ああ、キュリア様から話は聞いてますよ」

 

 キュリアの寮室に向かうと、同室の子がドアを開けて入れてくれた。

 

「嬉しいわ、また私達のお友達が増えるんだから!!」

 

 彼女は吸血鬼の血を受けた特有の高揚感に満ちた様相でそう言った。

 

「えーと、キュリアさんは?」

「ちょっと待って、今キュリア様にお伝えするから」

 

 彼女は少し目を瞑ってから、またこちらを見た。

 

「すぐこちらにいらっしゃるそうです」

「え、どうやって」

「キュリア様はここにおられますから」

 

 彼女は恍惚の笑みを浮かべて、胸元に触れた。

 

 吸血鬼とその血を受けた子は、親を通じて意思疎通が出来るらしい。

 キュリアさんというサーバーを介して、ある種のネットワークが形成されるみたいなのだ。

 

「あなたもすぐにこの素晴らしさがわかりますよ!!

 私達はもう孤独では無いのですから!!」

「……そう」

「そんな怯えなくても大丈夫、キュリア様はお優しいですよ。

 恐れ多くも、化け物と罵倒した以前の私を赦して下さったのですから!!」

「……」

「またお友達が増える、楽しみです!!」

 

 私は……キュリアさんを邪悪だとは思えなかった。

 あとでキュリアさんが話してくれたのだけど、あの食堂での出来事の後、彼女は同室のこの子にこっぴどく拒絶されたらしい。

 

 キュリアさんは困惑して、恐ろしくなって、血を……。

 

 果たして吸血鬼と私達、どちらがより邪悪なのだろうか。

 

「トキコさん、お待たせしました」

「うぐ」

「ささ、こちらのベッドにお座りになって」

 

 キュリアさんが登場し、私は促されるままにベッドの淵に座らせられた。

 

「や、やるなら早くして!!」

「そんなに焦らないでくださいまし」

 

 キュリアさんはなぜかモジモジしながら私の隣に座った。

 

「トキコさん、私達はお友達ですわよね?」

「え、うん、まあそうだけど」

「ではもっと深い仲になっても、大丈夫だと思いませんか?」

「いや、あの、それってどういう意味……」

 

 キュリアさんの息が荒い。その視線は、私の首筋に釘付けだった。

 

「トキコさんが悪いんですわよ。だって、そんなに美味しそうなんですから!!」

「い、いや、やめ──」

 

 その後、しばらく意識は無かったらしい。

 ただ、すごく気持ちよかったのは覚えている。

 

 途方もない高揚感、全能感。私は下級吸血鬼になって、欲望のままに大立ち回りしてしまったらしいのだ。

 

 誰もそのことについて言及しなかったので、私もすっかり忘れてたんだけど……。

 

 

 

 

 

 アニメの三話が完成した。

 

 タイトルは『吸血鬼トキコ、爆誕!?』だった。

 

『マズい、奴をアセンションで拘束しろ!!』

『お願いですトキコさん、正気に戻って下さいまし!!』

 

 迫真の表情の御曹司、キュリアさんが涙ながらに訴える。

 

『あはははは!! メグル、私の初めてはあんたじゃない、キュリア様なのよ!!』

『軟弱軟弱ぅ!! 私は最高に高まった吸血鬼パワーで、最強の力を手に入れたわ!!』

 

 画面では、最高にイカレた演技をする私が映っていた……。

 

『く、手札を全部知られている、こんなんでどうやって戦えばいいんだ!!』

『諦めてはいけないよ、メグル』

『もう一人の俺!?』

『もうすぐ血清が出来上がる、猫屋敷先生を信じるんだ!!』

 

『あははは!! もっと痛めつけてあげるわ!!』

『ああ、いくらでも受け止めてやるよ!!』

 

 なぜか実体化したユニットの攻撃で打ちのめされるメグル。

 彼はただ只管にそれに耐えている。

 

「なあ、これってただの夫婦の公開SMプレイなんじゃないかな」

 

 出来上がった第三話を生徒会室で鑑賞しているメグさんがそう言った。

 室内の面々は居た堪れなさそうな表情をしていた。

 

 私は赤面した顔を覆ってうなだれる他なかった。

 

 まさか、まさかこんなことになってるなんて知らなかったのだ!!

 

「なに言ってるの、ホビーアニメで公開SMプレイなんて普通でしょ」

 

 せんべいをバリボリと食べながら満足そうに鑑賞している魔王様がそう言った。

 

「あのー、ミク。これってその、公表するの?」

「あたりまえでしょ。既にテレビの放送枠は買ってるし、アセンション学園の公式ホームページで順次公開予定よ」

 

 シュウ君の気遣うような言葉を、魔王様は一蹴した。

 

 こうして、キュリアさんと、ついでに私の黒歴史が全世界に放送され、そして後世にまで残ることが確定したのだった……。

 

 

 

 

 

 

 

 





ちなみに吸血鬼と化したトキコちゃんは、普段よりずっと強かったそうです。
子は親の異能を一部受け継ぐので、それもありますが。

そんなわけで、次のアンケートを実施します。
トキコ視点でのメイン五人の中で、誰が好感度高いか、参考までに教えて欲しいです。
次に誰の視点で書くかの参考になりますので。お願いいたします。

この中でどのキャラが好き?

  • 我らが正統派主人公、メグル
  • 相棒兼精霊ポジ異世界人、メグ
  • 常識人枠ライバル御曹司、ガイ
  • 狂言回しの正統派幼馴染、トキコ
  • 正統派吸血鬼伯爵家当主、キュリア26世
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