君はどんな効果だい? いつ発動する?   作:やーなん

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余りにも高評価ばかりだったので、続きました!!



その効果で魔王を名乗るのって恥ずかしくないの?

 

 

 

「ミク、聞いてよ!!」

「なぁに、シュウ」

 

 僕は玉座で暇そうにホビーアニメを流し見しているミクに言った。

 

「この世界の連中、カードで殺し合いをしてるんだよ!!」

 

 僕は、信じられなかった。

 

 

 ミクの四天王として、彼女の仕事を僕は任せられた。

 だから僕はデッキを取り出し、この世界の人間達に立ち向かった。

 

 だけど……。

 

「俺は魔法カード『フレイムトルネード』を発動する!! 死ね、魔物ども!!」

 

 敵の人間達がカードを掲げると、魔法が実体化してこちらの魔物の軍勢を薙ぎ払った。

 

「私は『アイアンゴーレム』を百体召喚!! 下等な魔物ども、絶対に許さない!!」

 

 百体のゴーレムが召喚され、進撃を阻まれた。

 

 僕は叫んだ。

 

「止めろぉぉ、カードはそんな風に使うものじゃない!!」

 

 そして僕は、奴らをカードにした。

 

 

「カードをこんな野蛮な使い方をするなんて、酷いよ!!」

「当然だよ。私達が来る前はそれで人間同士争ってたんだから」

 

 この世界の文明は中世レベルだけど、魔法をカードに封じ込める技術が発展。

 しかしそれは生活をよくするよりも、争いの為にばかり使われた。

 

 結果的に普通に剣と魔法で戦争しているよりも、遥かに凄惨な状態になったらしい。

 

 このままではこの世界はより強力な魔法をコンパクトにして運び、文明を滅ぼし尽くすだろう、と女神メアリースは判断したらしい。

 その結果、魔王アテンムードことミクが遣わされた。

 

 人間は共通の敵が現れると団結する生き物だ。

 魔王と言う驚異の前に、人類は勝てるのか。これはそう言う試練でもあり、ゲームだ。

 

 だが、この世界の人々はまだ人間同士での争いをやめていなかった。

 最前線の国に任せ、後方の国々は元気に殺し合いをしている。他人事なのだ。

 

「そのうち飽きたらこの世界を滅ぼすよ。私に挑んでくる勇者はこの世界に居なさそうだし」

 

 ポテチを食べた指を舐めながら、ミクは気だるげそう言った。

 

 でも考えてみれば僕のいた地球もそうなる可能性はあったのだ。

 僕は何だか冷や汗が背を伝った気がした。

 

「でもミク、滅ぼすってことは全員殺すってことだよね」

「そうだよ」

「それは勿体無いよ!! 殺すってことは、死体から魂が無くなるってことでしょ?

 カードのテキストは魂を参照してるって言ってたじゃないか」

「それもそうだねぇ」

 

 すると、彼女はテレビの画面から僕に視線を向けた。

 

「じゃあ、こういうゲームをするなんてどうかな?」

 

 ミクの提案に、僕は面白くなって、笑った。

 そして彼女はおもむろに手を翳した。

 

「ドロー。城塞都市国家アニメティ」

 

 大地が揺れる。地鳴りが起きて、彼女の手元に無数のカードが集っていく。

 アニメティとは、先ほど僕が攻略していた都市国家のことだ。

 

 そんな都市国家ひとつが、一つのデッキとしてミクの手に収まった。

 彼女は無造作な仕草で、国を容易く滅ぼした。

 

「はい、シュウ。これ」

 

 ミクは僕にそのデッキを渡した。

 

「これで召喚したユニットに倒された者はカードになるから」

 

 ルールはそれだけだった。

 

「この世界の連中がカードで殺し合いがしたいなら、好きなだけすればいいさ。

 でもその代わり、こっちのリソースは無限だ。

 こっちのユニットが倒されても、カードに戻るだけだからね」

 

 その言葉に、僕は歓喜に打ち震えた。

 

「やった、ありがとうミク、大好き!!」

「うん、私もシュウが大好きだよ」

「皆がカードになれば、殺し合いなんてしなくて済むもんね!!」

 

 僕はミクに抱き着いて、ミクも僕の頬にキスしてくれた。

 

人間(カード)は、カードゲーム(アセンション)にだけ使われれば良いんだからね!!」

 

 そうして、僕は人間達をカードにしまくった。

 

 

「ねえねえミク、この国のこのカードと、こっちの国のカードにシナジーがあると思わない?」

「そうだね、百年以上殺し合ってたのに、面白いね」

「じゃあ次の国はこの二つのエースユニットを召喚してみようっかな!!」

 

 正直言うと、僕はミクの率いる魔王軍には歓迎されていなかったと思う。

 まあ分かるよ。平和な世界でカードゲームしかしてこなかった僕が、バリバリに人間を殺す力を磨いてきた魔物たちに急に上司だと言われても、困っちゃうよね。

 

 でも、この頃になると魔物の皆は僕を見ると、なんだか震えあがるんだ。

 

 僕は彼らの鋭い牙とか爪とかを見ると、びっくりしちゃうのにね!!

 

 

「ミク、そう言えば最近、ここの連中って僕を見るとリアルダイレクトアタックをしてくるんだよ。マナーがなってなくないと思わない?」

「本当? シュウは怪我とかしてない?」

「大丈夫だよ、防御用の魔法カードがあるからね」

「なら良かったよ。ま、仮に君がやられてもカードに戻るだけだけどね!!」

 

 なんだ、それなら安心だ。

 

「この世界の皆も、そろそろカードを争いに使うなんて馬鹿らしいって思ってくれるかな……」

「まあ、価値観は世界によって変わるからね」

「じゃあ、最終的に全員カードにすれば一緒だね!!」

「……まあ、殺し合いをするよりは平和なんじゃない? カードなら争いたくてもできないだろうし」

 

 だよね!! 僕はミクに頷き返した。

 

 

「今思うとさ」

「うん」

 

 ミクは膝の上に僕を乗せて後ろから抱きしめてくれる。

 

「メグルだっけ? 彼は逸材だったね。私はああいうタイプが好ましいって思ってるんだろうね」

「でしょ? ミクもメグル君を好きになってくれて嬉しいよ」

 

 メグル君は僕の目標で、友達だった。

 それこそ、大事に大事にスリーブに入れて飾っておきたいくらいに。

 

「ふふ、なんだよ、嫉妬くらいしてくれてもいいのに」

「え、メグル君はトキコちゃん一筋だよ?」

「あはは、それもそうか!!」

 

 ミクに釣られて、僕も笑った。

 

「彼みたいな勇者は、この世界には居ないのかな」

「どうだろう。僕もミクとずっと一緒に居るからさ、地球がどうなってるのか気になるな」

 

 何だか、僕もメグル君に会いたくなってきちゃったよ。

 

「そうだ。いいこと考えた」

「なになに、ミク」

「あっちに別荘を作ろうかな。また遊びを思いついたらすぐに実行できるようにさ!!」

「それいいね!! 結局あっちのコレクション(みんな)は全部元に戻しちゃったし」

 

 それが少しだけ心残りだったんだ。

 せっかく頑張って集めたのに。

 

 

「ん?」

 

 その時だった、玉座の間に変化が起こったのにミクが気づいた。

 

 空間が避けて、そこから三メートルを超える巨躯がのっそりと踏み込んできた。

 

 それは、竜だった。ヒトの姿をした、竜だ。

 魔法使いみたいな高級そうなローブを纏って、ミクを見て目を細めた。

 

「やあ、アテンムード」

「大兄さま!!」

 

 そんなカードゲームのエースユニットみたいな相手を、ミクは兄と呼んだ。

 つまり、彼はミクよりも序列の上の魔王と言うことだ。

 

「聞いたよ。管轄外の世界でオイタをしたらしいね」

「ごめんなさーい」

「気にする必要はないよ。主上は怒っておられない」

「なんだ。じゃあいいや」

 

 ミクは形だけの謝罪さえ取り繕うのを止めて、頬杖をついた。

 あの、僕を挟んで会話しないでほしいな……。

 

「でもなんで大兄さま。主上怒ってないの?」

「簡単な話さ」

 

 彼は妹に微笑んで、多分微笑んだんだと思う……人間とは違いすぎる顔をしているから分かりにくいんだ。

 

「あの世界は平和になり過ぎた。

 ヒトはある程度の危機感や緊張感が無ければ、木が根元から腐るように壊死してしまう。

 君のお遊びは別に死人が出たわけでもないし、刺激としては丁度良かった。主上はそう仰せだ」

「大兄さま、それはつまり」

 

 ミクは口の端を両手で引っ張って、笑った。練習中の顔芸って奴らしい。ホビーアニメの悪役のたしなみらしい。でも正直僕から見たらただ可愛いだけだった。

 

「またあっちで遊んでいいってことだよね!!」

「その件だけど、君の振る舞いを見て実は新しいプロジェクトを主上が考案したんだ」

「主上が?」

「我々魔王一族は待機時間が長いだろう?」

「うん。そりゃ基本現場の仕事は部下に丸投げだし、RPGでも魔王が登場するのは精々二回ぐらいだもんね」

 

 僕にはよくわからないけど、魔王様たちには彼らなりの美学やこだわりがあるらしい。

 

「我々のような最高位の頭脳を、遊ばせておくのはもったいないと言うことになった。

 そこで、主上に貢献度の低い世界に赴き、統治を行い改善をしようということになったわけだよ」

「なんか主上らしい合理主義だね」

「あの御方は無駄が嫌いなだけだよ」

 

 あれ、つまり、どういうこと?

 

「そういう訳で辞令だ、アテンムード。

 管理番号408448世界に赴任し、貢献度の改善を行え」

「やった!! あの世界を好きにして良いんだ!!」

「改善、が仕事だよ」

 

 彼は念を押すようにそう言った。

 

「とは言え、だ。主上はアテンムード、君の遊びに興味を示した。

 我らが主上、女神メアリースは人類文明を司る御方。

 ゲダモノの件は知っているだろう? いざという時は、人類をカード状にコンパクトにして物理的に避難を行うプランも検討しているそうだ」

「ゲダモノって……知性体を喰らう外世界の侵略性生物だっけ?

 百だか二百だかの世界を人類丸ごと汚染されて、主上が直接処分したって言う」

「ああ、我々魔王一族は、連中に対する最後の防波堤として人類の為に産み出されたのだ。それをよく弁えなさい」

「はーい、わかってまーす」

 

 ミクの返事に、よろしい、と彼は頷いた。

 そして彼は最後に、僕の方を一瞥して、何も言わずに裂け目に入って行った。

 

 裂け目が閉じる。

 ミクはにこにこ笑っている。

 

「聞いた、シュウ。主上が君の故郷を私にくれるって!!」

「どう聞いてもそんな風に聞こえなかったけど」

「いいのいいの、どうせ実務は全部あっちの他の四天王に丸投げするし」

 

 丸投げするんだ……よかった、僕中学生で。

 

「まず最初に、アセンション学園を作るでしょ? とりあえずそこに封じられたカードを用意して争奪戦させるでしょ、異世界編ごっこもやるでしょ?

 あとは、バイク関係に投資して、バイクに乗りながらアセンションをするライドアセンションを普及させるでしょ?」

「ごめんミク、なんでバイクに乗ってアセンションするの?」

「私にもわかんない!!」

 

 あっそ……。

 

「問題は、どうやってバイクと合体させるかなんだよねぇ」

「ミクが何をしたいかよくわかんないんけど」

「あ、そうだ、大事なこと忘れてた」

 

 ミクは急に真面目な表情になって、こう言った。

 

「私の攻撃名、決めてなかった」

「それは……マズいじゃん」

 

 大型ユニットの攻撃名が決まってないとか、格好がつかない。

 

「メグル君と戦った時に露呈しなくてよかったよ」

「ホントそう。攻撃名はミクちゃんファイヤーが良いかな、いや、やっぱりミクちゃんブレードスラッシュが良いかな!!」

「だっさ」

 

 僕が正直に感想を述べると、なんだとー、とミクは僕をうりうりとスキンシップを始めた。

 

 痛い痛い。ミクは自分と僕の肉体的スペックの差を理解してほしい。

 

「……次は誰をカードにして、デッキを組もうかな」

 

 結局メグル君の効果も、いつ発動するのかもコストもステータスも分からなかった。

 僕は友達として、その全てを知りたかった。

 

「あ、もしトキコちゃんがメグル君を欲しいって言ったら、やっぱり譲ってあげた方がいいよね……」

 

 実はメグル君関係で、トキコちゃんとは時々相談に乗ってあげてたりしたんだよね。メグル君はトキコちゃん一筋だけど、それ以上にアセンションに一筋だったから。

 

「そんなシュウに、じゃじゃーん!! 私のプロモカード、作ってみました!!」

「え、ホント!? 欲しい欲しい!!」

「うん、あげるあげる。まあ、効果はプロモ用だから弱くしてるけど」

 

 えーとなになに、相手のデッキトップを一枚確認する……。

 

「なにこれ、相手のデッキの上をチラ見するだけなの!? それでよく魔王を名乗れるよね!!」

「それぐらいの方が愛嬌があってネタになるでしょ?」

 

 それとも要らない? いや貰うけど、とそんなやり取りをする僕たち。

 

 そうして、神様に僕らの世界の支配を委任されたミクと僕のゲームが、また始まろうとしていたんだ。

 

 

 

 

 

 

 




短編の方でランキングに載ってしまったので、覚悟を決めて続きを書いていたところ、今朝確認したら日刊総合の方にも今作の名前が載っててビビり散らかしました。
適当に書いた一発ネタだったのに……。需要があるなら続きを書きますけど……。
でも前回でおわかりでしょうけど、真面目なカードゲーム描写は期待しないでくださいね!!(予防線
作者はそれで以前一回挫折したので……。

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