君はどんな効果だい? いつ発動する?   作:やーなん

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今回も殆どメグル君たち、もといトキコ視点です。
この小説は、たぶんメグル君陣営を曇らせることで進行しているのだと思いますんで。



俺たちのアセンションはこれからだ!!

 

 

 

「ねえ、ミク。本気でこのカード、ここに封印するの?」

 

 アセンション学園の建設予定地。

 その基礎部分より下に、巨大な地下施設が急ピッチで建造されている。

 

 僕とミクはその経過を見に来た。

 

「うん、残念だけど争奪戦ごっこは取りやめかなぁ」

 

 ミクはつまらなそうにそう言った。

 

「密封は完璧でね。周囲は海水で囲んで。

 失敗したらお前たち、死にたくても死ねない目に遭うからね」

「はい、魔王様!!」

 

 建設業者たちは、緊張した面持ちで作業を行っている。

 海水が地下施設に注入され、その中心には四隅を磔にするように一枚のカードが拘束されていた。

 

 そう、これは拘束だ。

 

 たった一枚のカードに、それ程までに労力を掛けている。

 

「一応研究施設ってことだけど、専門家による監視だけを行うみたい」

「あの、ミク。この上ってアセンション学園が建つんだよね?

 生徒がいっぱい来るんだけど……」

「まあ、アニメやゲームだったらパンデミックになる前振りよね」

 

 普段のミクなら冗談じみて笑うところだが、彼女はちっとも笑っていなかった。

 

「だけどね、シュウ。私に言わせればこの世界の人間の価値なんて女子供だろうと変わらない。

 主上は可能なら連中の解明をしろと仰せよ。それはある程度の犠牲を前提としている。それに、これが解き放たれたらどこに逃げても同じよ」

「だったら、目の届くところに置いておくってこと?」

「そう。私理事長をやるし」

 

 これは、災厄だ。

 決して解き放たれてはいけないモノだ。

 

「ま、ノルマは決まってないし、最低限封印だけ徹底しておけばいいから大丈夫よ」

「うん……」

 

 ミクはそう言うが、僕の気は浮かばれなかった。

 神様さえ恐れる怪物が、ここに封じられる。

 

 カードと化して、封印されていても分かる。

 いや、数多の生命をカードにしてきた僕にはわかる。

 

 あのカードは、蠢いている。

 内側から封印を食い破ろうともがいている。

 

 化け物だ。

 

「シュウも感じているのね。分かるわ、でも破いてしまうわけにはいかないの」

 

 わかる。破いてしまえは、アレは出てくる。

 

「我が一族が赴任していない場所で、管理するわけにはいかないわ」

「そうだね……」

「本当に、忌々しいわ」

 

 ゆっくりと、怪物を封じ込めたカードの上に重機で蓋が閉じられる。

 

「……この、“外堕摸乃(ゲダモノ)”め」

 

 ミクは吐き捨てるように、そう呟いた。

 

 

 

 §§§

 

 

『私が眠っている間に、随分と世界は様変わりしたようだね』

 

 メグさんが目を覚ましたのは、私達がアセンション学園に入学する直前だった。

 

『あの魔王が、我々の故郷を滅ぼしたあの化け物が、よりにもよってこの世界の頂点に居座ってるとは……』

 

 メグさんは悔しそうに拳を握っていた。

 

「メグ……俺は、チャンスだと思う」

「どういうこと、メグル?」

 

 私が問うと、彼はこう答えた。

 

「あいつは、自分に勝てば何でも望みを言って良いって言ってる。

 それはメグの世界を返してって言えば──」

『それはどうだろうか』

 

 肩を落としたメグさんは、メグルの案には否定的だった。

 

『女神メアリースの御業は科学的であり、魔術的なんだ。

 一度完全に消滅させた世界を返せと言っても、おそらく戻ってくるのは私達の故郷()()()()の別の何かだ』

「……」

『そして何より、かの御方は死者の復活を否定している』

「そうよね……」

 

 メアリース様は死者を蘇らせられる力はあるけど、それをしない神様だ。

 死者は蘇らない。だからこそ命は尊いのだと。

 

『私は故郷を置いて独りで逃げのびてしまった。

 このままでは私は私を赦せないよ』

「でも、試す前から諦めるのは良くないぜ!!」

 

 メグルは彼女を奮起させるようにそう言った。

 

「俺の夢は、エデン・コードの世界大会で優勝することだ!!

 俺はこのカードゲームが出てからずっと遊んでるけどさ、これはみんなを夢中にさせて、笑顔にさせてくれるものなんだぜ!!

 うだうだ悩むよりもアセンションしようぜ!!」

『メグル……』

 

 メグさんは顔を上げて、少しだけ微笑んだ。

 

「まったく、これだからメグルは……」

 

 私はちょっと呆れたけど、これがメグルの良さなんだ。

 底抜けに明るくて、一緒に居ると元気をくれる。

 

「あ、そうだッ、アセンションで思い出した!!

 今日は新パックの発売日じゃんか!!」

「逆になんで忘れられたの? パパに行って取り置きして貰ってるから、お金持ってきて」

「わかった!!」

 

 メグルはそう言って、駆け足で私の部屋を出て行った。

 

『トキコ、私とメグルは理論上同一人物だと話したね』

「ああ、そう言えばそんな設定あったわね」

『設定じゃないよ。私と彼との違いを考えていてね……』

「そりゃあ、違うんじゃない?

 二人は住む世界も、常識も、性別も違ったんだから。

 別に二人は双子とかでもないんだから」

 

 私がそう言うと、そうだね、と彼女は頷いた。

 

『だけど、最大の違いはもう一つある』

「もうひとつ?」

『私には君が、トキコが居なかった……』

 

 彼女は虚しそうに、羨むように私を見ていた。

 

『メグルがああも自由なのは、君と言う帰る場所があるからだよ。

 私も、メグルのような時期には覚えがある。好きなことに好きなだけ打ち込めた、そんな時間があったんだ』

「市長だったんだっけ? 大人って大変よね」

『ふふ、いずれ君もそうなるさ』

「そうかもね。ささ、私達も下に行きましょう」

 

 私はメグさんのカードを持って、下の店部分に移動した。

 

「遅いぜ、二人共!!」

「はいはい」

「それじゃあおじさん、新パックを下さい!!」

 

 棚にある新パックは、すでに売り切れていた。

 大量に入荷していた筈だけど、私達が学校に行っている間にもう売り切れていたようだ。

 

「ああ、それなんだけどね、メグル君」

 

 パパはなぜかにやりと笑って、紙に包まれたカードの束らしきモノをカウンターの下から取り出した。

 

「アセンション協会から、君宛てだよ」

「え、協会から?」

 

 アセンション協会とは、エデン・コードの普及やルール整備を始めとした広報や、大会の運営などを目的とした組織だ。

 そして、魔王の四天王、アカネさんが会長を務めている。

 

 協会の私達の知り合いなんて、彼女ぐらいしかない。

 

「よくわからないけど、試供品って書いてあった。

 君は今度入学するアセンション学園に特待生として入学するからね、期待されているってことじゃないかな」

 

 と、パパは言った。

 その包みは結構な厚さがある。デッキ二つ分と言ったところかな。

 多分剥き出しのカードが入っている。パックじゃない。

 

「ありがとうございます、おじさん」

「開封は上でやってね。お客さんいるし」

 

 そう言って、パパはこっちを見てウインクしてくる。余計なお世話じゃい!!

 とは言え、私はメグルが買う分を買えたので良かったのだけど。

 

 はてさて、私の部屋に戻った私達は、早速包みを開けた。

 中身は、想像通りのカードの束だった。

 

 メグルが一番上のカードを捲った。

 そして、私達は絶句した。

 

『ああ、やはり……』

 

 そのカードは、『魔法都市国家 アンリローズ』と書かれていた。

 中世のような石造りの都市がイラストのフレームに写されていたのだ。

 

 そう、メグさんの故郷だった。

 

「うッ」

 

 私は、胃の中がこみ上げてくるような感覚に立ち上がり、急いでトイレに向かった。

 

 思い出す、カードにされた時の感覚を。

 あの時の寒くて、何も感じれなくて、心細い感覚が蘇ってくる。

 

「大丈夫か、トキコ!!」

「う、ううッ、こんなのひどい、ひどいよ、メグル……」

 

 メグルは私の背中をさすり、慰めてくれた。

 

 何とか調子を取り戻して、私達は自室に戻った。

 

『いちゃついているところ悪いが、他のカードも見せてくれないかな』

 

 メグさんは茶化してるつもりなのかもしれないが、その眼も声色も笑っていなかった。

 

 メグルは一枚一枚、カードを並べていく。

 ヒト、モノ、武器、建物、メグさんが選挙で当選している光景のカードもあった。

 

『タロン、ジョアンナ、アスタルテ、チェルシー……。

 みな、そこに居るんだね……』

 

 メグさんは、涙を流していた。

 カードには役職名しか書かれていない。

 

 例えば、このカードは『魔法都市の衛兵』だとか。

 

 エデン・コードの設定では、ここに描かれるのは過去に存在した英雄であり、優れた魂の持ち主を召喚している。そう言うモノだ。

 メグさんが口にしていた彼らの名前は、英雄足り得ない、歴史に埋もれて消えていった人々の名前だった。

 

「……召喚すれば、メグみたいに呼び出せるかな?」

『いいや、彼らの意識は眠っている。意識を呼び起こし、会話するには何らかのきっかけが必要だろう』

 

 そっか、とメグルは小さく呟いた。

 せめて会話が出来れば、彼女の慰めになると思ったのだろう。

 

『そして、これらの封印は魔王にしか解けないだろう』

「でもさ、メグ」

 

 メグルは顔を上げて、確固たる意志でこう言った。

 

「メグの故郷は、ここにあるじゃないか。

 メグの仲間も、なにもかも。死んでるわけじゃない」

 

 その言葉に、メグさんもハッとなったようだった。

 

「逆に言えば、魔王なら元に戻せるってことだろ。

 俺とメグ、目標が同じになったってだけだ」

『……そうだね』

 

 それは希望でもあり、絶望でもあった。

 魔王は、神の遣わした超越者。

 

 彼女に挑むとき、今度は遊びじゃないだろう。

 魔王としての、本気のデッキを使ってくるに違いない。

 

 私がそう言うと、メグルは笑った。

 

「そうこなくっちゃ!! もし挑んで負けたとしても、また挑めばいいだけさ!!」

 

 こんな、殺人鬼が獲物のトロフィーを送りつけて来たみたいな状況なのに、メグルはどこまでもポジティブだった。

 それが私にも、きっとメグさんにも救いだった。

 

『私の知る限り、正攻法で殺し合ったところで、魔王に勝利するのは難しいだろう。この世界の全てのリソースを費やし、ようやくギリギリ勝ち目が産まれるレベルだ』

 

 メグさんの予想はいつも的確だ。

 逆に言えば、人類の大半を犠牲にすれば、魔王に勝てると言うことでもある。

 

『だが、カードゲームなら次がある、か』

 

 当然だろう。カードゲームで人が死ぬわけないんだから。

 

『これもまた、運命のめぐりあわせ、神が下した私への罰なのだろうか』

「罰って? メアリース様は罰を下す神じゃないぜ」

 

 我ら人類の神は創造神。天罰の神じゃない。神様は役割に忠実だ。

 そして恐らく、メグさんの世界を滅ぼしたのも、罰ですらないのだ。

 

『私の世界は、物体をカードにして出来る技術、魔法が産み出された。

 ある時期まではこの世界の歴史と似たようなモノだが、決定的な違いはその時だろう。

 考えても見たまえ、君達は冷蔵庫なんてものを使って、食べ物が痛まないように冷やしているだろう?

 カードにしてしまえば、その時点で腐敗することも無い』

「ああ、なるほど。しかもカードなら輸送にもかさばらないし、コストが抑えられるってわけか」

 

 その通り、とメグルの言葉に彼女は頷いた。

 それはまさに、ブレイクスルーという奴だ。

 

『食料の保存や輸送、それらのボトルネックが解消された私達の文明は、人口爆発が起こった。

 次に何が起こったか、想像が出来るだろう?』

「軍事利用……」

 

 ああ、と私の呟きにメグさんは肯定した。

 

『我々の世界には、魔物と呼ばれるモンスターが各地に存在し、君らにはゲームにしか思えないだろうダンジョンも点在していた。

 つまり、人類の生存圏は限られていた。我々の世界で巨大な国家ではなく、コンパクトな都市国家が乱立したのはそれが理由だ。

 必然的に、我々は安全な土地を取り合い、殺し合うことになった』

 

 凄惨な歴史だ。誰もが悪意ではなく、生きるためにそうやって戦いをしていたんだと思う。

 

『カードに出来る魔力量や質量には制約があった。

 しかし、私はその限界を大幅に引き上げることに成功したんだ。

 以前までは鉄のゴーレム一体が精々だったのに、百体ぐらいまでなら収容可能にしてしまった』

 

 してしまった。その言葉が、彼女の罪の意識を現していた。

 

 百倍の収容量。保管の場所を百分の一に出来たのは、まさしく二度目のブレイクスルーだったのだろう。

 メグさんはまさしく、歴史に刻まれる英雄的発明を行ったんだ。

 

『争いはより苛烈に、凄惨になって行った。

 軽蔑してくれても構わないよ。我が国家は死の商人として振舞うことで、戦火から免れていたからね』

 

 自嘲するように彼女はそう言った。

 しかしそれは、彼女の選択した国の生存戦略なのだろう。

 少なくとも、当事者ではない私に、それをどうこう言う資格はないと思った。

 

『そして、ある日。──魔王がやってきた』

 

 それが、終わりの始まりだったのだろう。

 

『私は都市国家の盟主として、団結を呼びかけた。

 だけど、どの都市国家の長も、聞く耳を持たなかった。我々の歴史は、殺し合いと憎しみしか積み上げてなかったからだ』

 

 そして、その結果がこのカードだった。

 送られてきたカードの束の、一番下のカード。

 

 まさに都市が、国が、カードにされる瞬間を写し取っていた。

 滅びの瞬間だ。

 

『エデン・コードがあれば……』

 

 メグさんは、当初お遊びと言っていたカードゲームに想いを馳せていた。

 

『皆がアセンションで揉め事を解決していれば、こんな結末にはならなかったのだろうか……』

「なあメグ」

 

 メグルは彼女に言った。

 

「まだカードにされただけだろ。なんで終わったみたいに話してんだ。

 ──俺たちのアセンションはこれからだろ!!」

『メグル……』

「お前は俺なんだぜ? きっとアセンションの楽しさが分かるって!!

 メグが皆を取り戻した後、アセンションを普及すればいいんだよ!!

 そうやってプレイヤー人口を増やして、沼に引き込まないとな!!」

 

 そう言って、彼はイタズラっぽく笑った。

 こいつは生粋の、カードゲーマーなのだ。

 

『……そうだね。メグル。私も、君達と共にアセンションするよ』

 

 だから、と彼女は自分のカードを示した。

 

『これからは共に戦おう』

「え、でも」

『ここに私の国がある。民がある。全てがある。

 君が私に気を使って、私のカードを使おうとしなかったのはよくわかるよ。

 でも、それじゃあ、君の仲間とは胸を張った言えないよ』

 

 メグ、とメグルは彼女を見上げた。

 

『私は君のデッキの中から、共にアセンションするよ』

「ああ!! ありがとう!!」

 

 メグさんは、無垢に笑うメグルを見て微笑んだ。

 

『我が魔法都市国家の暴威と栄光を、この世界で示そうじゃないか』

 

 そして、メグさんはこっちにふよふよと近づいてきて、こっそり私に耳打ちしてきた。

 

『私は二番目で構わないからね』

 

 私は半眼になって、彼女を見やった。

 

 二人はほぼ同一人物らしい。つまり、それってただのナルシズムなんじゃないの?

 

 そんなこんながあって私達は次の舞台、アセンション学園へと駒を進める日を待ちわびていたのだ。

 

 

 

 

 




評価数50人突破、お気に入り600人突破、大感謝です!!

せっかくまた日間に載れたので、アンケートを取ります。
他のカードゲーム小説みたいに、対戦描写を入れるべきでしょうか。
それともこれまで通りの日常描写を重視するべきか。皆さんにお聞きしたいです。

とりあえず、書きたいシーンを書くまでは頑張って更新しますので、作者のモチベーションの為に、感想や高評価を下さると作者はもっと喜びます。

ではまた、次回!!

おい、アセンション(対戦)しろよ。

  • アセンションする(一話対戦に使う時もある
  • 半分ぐらいアセンションする(カット進行
  • アセンションはフレーバー程度で(現状維持
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