法国勇者のアウトサイドロード   作:遥野みしん

10 / 12
第一〇話 バケーションday…

「ねえ忍者ぁあぁあぁ」

 

「なんでござるかぁあぁあぁ」

 

「たまには忍者戦ってよぉおぉおぉ」

 

「それはおかしいでござるよぉおぉおぉ」

 

「いいじゃん別にぃぃぃぃ。どっちがやっても一緒でしょぉおぉおうおぅ」

 

「あっはっはぁあわあぁぅ。勇者の頭は本当に勇者でござるなぁあぁあぁ。どちらかといえば拙者は勇者の敵の味方でござるよぉぉおぉ~」

 

「え、こいつ忍者の友だちなの? 趣味わる」

 

「そういうの、本人の前で言うのよくないでござるよ」

 

「てめぇらいい加減にしやがれぇ! お前らは俺様と戦ってるんだぞぉ!」

 

 ゴリラノ介(忍者名づけ)がキレたでござる。ゴリラノ介は足を掴んでぐるぐる振り回していた拙者と勇者を勢いよく放り投げる。

 

 勇者は吹っ飛んでいってごろごろと地べたを転がった後普通に起き上がり、拙者はというと、ちょうどそこにあったサマーベッドに寝転がった姿勢で着地、ジャストミートッ! 

 

 パラソルの下の簡易丸テーブル上のグラチャンをかける! 陽射しが眩しいでござる! そしてついには優雅にグラスを手に取って果汁ジュースをストローで啜るっ! 

 

 Oh...nice vacation...!

 

「ぶっ殺すよっ⁉」

 

 勇者がキレた! まっすぐに敵、ではなく拙者に向かってくる! さぁ、対して水着姿のゴリラノ介、どう出るでござる⁉

 

「ふざけるな、俺のこれは水着じゃねえ! レスラーの正装だ! ぶっ殺すぞ⁉」

 

 お、おおっと! これはどういうことだ、各々敵を無視して解説席の無惨なる影、忍者オブ忍者であるところの拙者に向かっていくではあぁりませんか⁉

 

 いや、ゴリラノ介はともかく勇者相手にバケイションスタイルでの戦闘は厳しいでござるので、いったん移動するでござるか。

 

 と、拙者は素早い身のこなしで向かってくるゴリラノ介の背後に回り込む。そして勇者が拙者に向けて振るう横薙ぎの剣をイナバウアーで躱す。

 

 うーん、今日もいい反りでござる。これが年を取ってからやると痛める原因になったりするのであろうか。時の流れは残酷だな、後ろだけ向いて生きていきたいでござる。

 

 しみじみと未来を想う拙者の頬に血の滴が落ちる。

 

「お?」

 

 見ると、ゴリラノ介の腰から上が無くなって血が噴き上がっていた。どさりと、遅れて上半身がイナバウアーする拙者の隣に落ち、ゴリラノ介の下半身も倒れた。

 

「へへーん。馬鹿忍者、汚れてろ」

 

 拙者の視界が赤く染まる。Oh...熱き血潮......!

 

 ☆

 

「ノーマルでしたなぁ」

 

「ノーマル? なにが?」

 

「こっちの話でござる」

 

 拙者はちゅーっとストローからジュースを飲むと、隣で寝転がる勇者に目をやった。

 

 勇者は水着だったが、その色は相も変わらず法国の朝月色、ついでに国旗も腰に結んでパレオみたいにしている。目にはグラチャンをかけて拙者の用意した猛毒果実ジュースをストローで飲んでバケーション三昧の渦中真っただ中。

 

「ねえ忍者」

 

「なんでござる?」

 

「私が倒すヒョールドってどんな奴?」

 

「法国からレクチャーされてないでござるか」

 

「されてない。いや、聞いてないだけかも?」

 

「さいで」

 

 拙者はジュースを啜ると一息つき、奴の顔を思い浮かべながらも一般的な伝承を教えてやった。

 

「かの四天王は毒の海。天上にて神を幾柱も殺した毒蛇が転寝をしたおり、地上世界に毒をぽたぽたと垂らした。毒は毒蛇の見た夢に従って起き上がり、意思を持つ人となった……とまあ、そんな神話の世界の住人でござるよ。かの御仁は」

 

「へぇ」

 

 勇者が遠い相槌をうつ。その目のグラチャンは眩い光を反射するのみ、でござるな。なんかセレブ感あって嫌だぞ、勇者。

 

「強いんだ?」

 

「強いでござるよ」

 

「私よりー?」

 

「言いたくないでござる」

 

「忍者より強いの?」

 

「拙者の方が強いでござる考えるまでもなかろう」

 

「あっそ」

 

 やはりどうでも良さそうに勇者はジュースを啜った。

 

 拙者たちのグラチャンには相も変わらず毒々しい紫の光が眩いでおる。拙者はグラチャンをずらして正面にそびえる景観をチェケラ。

 

 空を突くような尖塔の立ち並ぶ魔女の作りし都市、第三魔都ユブラ=デシラ! 暗鬱と立ち並ぶ塔の光が毒々しい霧に乗ってここまで届いてくるようだ。尖塔に蔦が巻き付いてあちこちに紫の花が咲いている……・。

 

「勇者今何見てるん?」

 

「月」

 

 か細い指で勇者は空を指す。空の片面は毒の霧に覆われ、もう片面は太陽光にさんさんと照らしつける深い青、ちょうどその狭間に、点のような白い月がぽつんと浮いていた。

 

「見えるでござるか?」

 

「左様反左様にござる♪」

 

 勇者は拙者の真似をしてグラチャンをずらし、決め顔で呟く。

 

「勇者‘sアイ!」 

 

 なっ、パクられたっ⁉

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。