私を人間界へ連れてって ~シンギュラリティ美少女がダンジョンから出てきたら、世界がゲシュタルト崩壊しました~   作:よっちゃ

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第19話 新幹線で行く新柿太郎電鉄 ②

 

 続き

 

「視聴者の皆様はどのチームを応援してくださっても構いませんが、一応皆様はレンチーム所属となっておりますので」

「さあそれではゲームスタート」

 

 ──― 空中にある巨大なサイコロが振られ( 物理的に ) 出た数によって、リアルサイズの日本列島に描かれた線路を新幹線が進む。

 

 最初の目的地は鹿児島だった。

 

『新幹線速え──』

『ゲーム仕様で時速1400kmでてるぞ』

『ひいい、怖い』

『死ぬうー』

 

 ────────────

 

 柿鉄ガチ勢、効率厨、そして名人を擁するレン視聴者チームは次々と資産とカードを増やしていく。

 攻略に全くの無駄がない。

 まさにプロ技。

 

 それに続くのは意外にも女神チーム。

 望み通りのサイコロの目が出るため、青マスや黄マスを踏みながら目的地にも到着しやすい。

 

 転生者チームも元聖女の活躍で奮闘するが、なかなか上手く目的地にたどり着けない上に相手が悪すぎる。

 

 一方、お嬢様チームは、

 

「お嬢様、次の目的地は仙台です」

 

 メイドが地図を指差す。

 

「でも、広島のお好み焼き食べに行きたい」

「反対方向ですが構いませんか? 」

「うん、お好み焼き食べにいこ」

 

 そのまま反対方向へ進路変更。

 

『お嬢様そっち反対ー』

『すみません、俺たち勝ちに行きます』

『マイペースだなー』

『でもゲームってこうやって楽しむものだよね』

『たしかに』

 

 

 ────────────

 

 ゲーム開始からすでに三時間が経過していた。

 

 そして──何か様子が変だ。

 空が暗転した。

 ドスン、ドスン、と地鳴りが響く。

 日本列島を横断するように巨大な影が近づいてくる。

 

「ここからはお邪魔キャラが登場します」

 

 ドローン先輩が静かに告げる。

 

「初めは最下位のチームに。その後は目的地到着時、一番遠い位置にいたチームにお邪魔キャラが同行します」

(なす)り付けもゲーム通りもちろん可能です」

 

 

「ウハハハハハハハハハハハハ」

「ダ────ーイングボッチー」

 

『でかっー!』

『あれ超ダイダラボッチ級!?』

『デカすぎてくさああww』

『ゲームじゃ愛嬌あるけど、リアルサイズの実物はトラウマもんだぞ』

『顔が富士山よりでかいー!! 』

『柿太郎ランドも捨ててくる仕様か? 』

 

 まさに悪魔そのものな異形。圧倒的な威圧感。

 積み上げてきた全てを一瞬で破壊する恐怖の象徴。

 

 仮にもしこの怪物にランクをつけるのなら

 

 SS級モンスター 《ダーイングボッチ》

 

 世界の絶望。

 全ての存在が畏怖するもの。

 喧嘩の原因。

 

 その視線が──哀れな最下位の少女チームへ向く。

 富士山二つ分くらいのサイズの化け物が、一歩二歩と近づき、 少女チームの目の前で止まった。

 

「フハー、フハー、フハー」

「…………」

「…………」

「……あ、すみません、ぼく、間違えました」

 

 くるり、と方向転換。

 

「え?」

 

 次の瞬間、女神チームへ突進してきた。

 

「なんでこっちへ来るのよおおお!?」

「ウハハハハハ、次のターンから絶望を教えてやる!」

 

 ────────────

 

 そして始まる悪夢の数々。

 容赦や情けと言う言葉は、破壊王ダーイングボッチの辞書には無い。

 

「サイコロを振れ、出た目の数だけ」

 

 巨大な30個のサイコロが空中に現れる。

 物件没収。カード没収。現金没収。

 そして変な惑星に強制連行。

 

 奪った金とカードと物件は── すべて少女チームの前に積まれてゆく。

 

「ウハハハ、これをどうぞお納めください」

「……?」

 

『献上してる』

『あの化け物、お嬢様の下僕になったぞ』

『転生者共に擦り付けろー』

『あああ、それは捨てちゃダメなカードー』

 

 ────────────

 

 元転生者チーム

 元聖女のバフを受け元勇者と元魔王が剣を抜く。

 

「聖なる光よ」

「これ以上やらせるか! くらえギガデ──」

「闇の力を持って」

 

「ほい」

 

 デコピンでワンパンされた。

 

 ────────────

 

 女神チーム

 

「お願い、こっちに来ないでよ」

「私たち女神なのにー」

 

 ついに女神こずえが神力を解放する。

 

「これ以上させないわ、地上では禁じられているけど、美少女のためなら何だってする。愛の女神の名において命ずる──」

 

「無駄だ、無駄だ、無駄だ、ウハハハハハハ」

 

 ダメージほぼ無し。ちょっぴり(蚊に刺された程度)

 

 ────────────

 

 レン・視聴者チーム

 

「名人、何かカードはないですか!? 」

「ダメだ、全部捨てられた 」

『理不尽すぎる』

『こっち来るなあー!』

『ああ、奪われていく』

『一撃で二兆円捨てられた!? 』

 

 ────────────

 

 少女、メイドチーム

 

「お嬢様、次は九州のきてぃさんランドですね」

「うん♪ 」

 

 少女はただ静かに新幹線の旅を楽しんでいた。

 

 ────────────

 

 終盤

 少女以外のチームは、もう気力も残っていないほど、ボロ雑巾のようにされていた。

 

「もうみんなのHPは0よお」

「独占も全部やられた」

「まだ、まだ何か方法が」

「マイナス100ちょうえんー」

 

 その時、少女はダーイングボッチから献上された山のようなカードの中から、一枚に目を止める。

 

「……はら、たいらーさんのまさかーど? 」

 

 伝説の、ハラ、タイラーさんのまさカード。

 

「お嬢様、それは全チームの全資産、物件や現金などを──完全に平等にするカードですね」

「ふうん」

「使われますか?」

「──―うん♪ 」

 

 カードが輝き発動する。

 全チームの資産が負債も含め均等に再配分される。

 

『ええええ!?』

『全員復活!?』

『お嬢様大好きー』

『日本人はみんなこのゲームで世の理不尽さと救いを学んだのよ』

 

 ────────────

 

 そしてちょうどその時。

 

「皆さん終了時間です。お集まりください」

「時間も遅いですし、手短にご報告します」

「勝負の結果ですが──全チーム同点ですので、引き分けといたします」

 

 ドローン先輩が宣言する。

 

「賞品は──全チーム獲得としましょう」

 

 大歓声。

 

 メイドはぼそりと言った。

 

「……ゲームというのは暇つぶしのためにあるのであって──―」

 

「ダーイングボッチさんありがとう」

「ウハハハ、また会える日を楽しみにしております」

 

 ────────────

 

 空が戻り駅が消える。

 気づけば全員こたつの中にいた。

 

「……あれ、戻った?」

 

 かくして、リアル新幹線で行こう

 

 ──―柿太郎電鉄──―

 

 は無事に幕を閉じた。

 

 

 

 




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