私を人間界へ連れてって ~シンギュラリティ美少女がダンジョンから出てきたら、世界がゲシュタルト崩壊しました~   作:よっちゃ

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第24話 邪神との戦いが決着『異世界編⑤』

 続き

 

 闘技場に熱気が満ちていた。

 勇者チームと邪神──神の一柱との戦いが始まった。

 

 通常、人間の武器では神に傷ひとつ与えられない。だがトロの剣と霊刀富士山だけは別だった。神性に干渉する特攻効果を持つその刃は、確かに邪神の肉体を捉えダメージを与えていた。

 

「効いてる、効いてるぞ!

 邪神に対して勇者パーティーが攻め立てる!」

 

 リングアナ兼実況が興奮しながら戦いの様子を全世界に実況する。観客席の大歓声と視聴者欄のコメントが洪水のように流れる。

 

《そこだレンいけー!》

《魔法使いの詠唱きれい!》

《ヨイパーティデスネ》

『邪神とは言え相手は神。人間では傷つける事は叶わぬはずだが』

『ぼくのあばどんでじゃしんなんていっぱつなのに』

『デバフかけろデバフ』

『魔法使いの人好みだわ』

 

 戦士ダレンにも対邪神のバフがかけられ、巧みな剣技で邪神を切り裂く。かつて破壊神すらも圧倒した魔法使いニーシャの大魔法が炸裂する。

 僧侶サマンサは一瞬も手を止めず、バフ、デバフ、回復を完璧なタイミングで回していた。

 レンは即席パーティーにも関わらず、前に出過ぎず、連携を優先するように立ち回っていた。

 

「この戦いをどう見ますか、解説の()()さん」

「美しい連携ですね。これぞかつて破壊神を倒した伝説のパーティーです。そしてそれに付いて行くレン君も素晴らしいの一言」

 

 解説席の館長さんの言葉どおり、邪神の攻撃はすべてが即死級にもかかわらず、誰ひとり倒れない。霊刀富士山による耐久バフ、サマンサのバフが、邪神という神の攻撃を防いでいた。

 

 試合開始前に執事から「()()()()()」をするように厳命されていた両者は、まるでプロレスのように相手の攻撃の全てを受け止めた。

 

「いくぞ邪神よ、これが受けられるか!」

 

「その技は!! いいだろう、見せてみよ!」

 

 土呂野勇者(とろのゆうしゃ)が大技を放つ際、隙だらけになるという短所があるが、邪神は両手を広げて待ち構え全身で受け止める。

 

「ふははは、勇者パーティーよ、次はこちらの番だな。この一撃、受けてみよ」

 

 邪神が両手をクロスし、力を溜め始める。

 

「邪神が何かやってくるつもりだぞ、勇者パーティーは耐えられのか!?」

 

『む、いかんあの技は!?』

『見る見る邪神の攻撃力が上がっていく!』

『ねえ、()()()()()()こうげきしちゃだめなの?』

『お約束っていうのがあってね』

 

 

 勇者パーティも全身全霊を持って構え、邪神の攻撃を受けて立つ。

 

 互角の戦いが続く。

 

 

 ┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈

 

 その頃、闘技場の王族専用の特別観覧席で、少女はメイドに給仕された焼きそばを口にしながら、優雅に戦いを眺めていた。

 

 執事が丁寧に説明を添える。

 

「ご心配なくお嬢様。先程お嬢様に貸していただいた、きてぃさんのぬいぐるみを使わせていただき、この闘技場全体にバフをかけておきましたゆえ」

 

「うん、ありがとね」

 

 

 ┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈

 

 その時、ついに戦いが動いた。

 邪神の渾身の一撃が戦士ダレンの胸を貫いた。

 

「ぐはあ、みんな、すまん、先に逝くぞ……」

 

「ダレン!」

「いやあああ」

 

 叫び声が上がる──が。

 

「……ん? あれ?」

 

 ダレンは、何事もなかったかのように立っていた。

 

「おおっと、自動蘇生のバフか!? 」

 

 実況が即座に説明する。

 

「えー、執事様からの情報によりますと、この闘技場には皆さんの安全の為の各種の処置や、選手たちには自動蘇生バフ等がかけられている、との事です」

 

「ですから皆さん、安心してご家族でご覧下さい」

「それは安心ですね。しかしそうなると、勝敗はポイント制でしょうか」

 

 続いて勇者パーティーの合体技、ミナデアウトが邪神の胸を貫く。

 

「ぐはあ、ば、バカな!」

 

「やったか!? 」

 

 邪神は崩れ落ち──

 そして、同じように自動蘇生された。

 場内にどよめきが走る。

 

「勇者パーティーの決定打が入りましたが、邪神にも自動復活は適応されるうう」

 

『ラスボスまで蘇生ワロタw』

『じゃあこれいつ、どうやって終わるの?』

『配慮に感謝だよ、今子供と見てるからさ』

『解説がポイント制とか話してなかった?』

『星の命運をかけた戦いなのに、優しい仕様』

 

 

 ┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈

 

 

 勇者パーティ、邪神、互いに全てを出しあって戦いは続いた。邪神にとっても、これほどの強者(もさ)と戦うのは初めての経験であった。

 

 戦いの最中、邪神が僧侶サマンサに話しかける。

 

「そこの女僧侶よ、なぜお前はそのように楽しそうに戦っているのだ」

 

「だってこうやって、皆でもう一度一緒に戦えるのが嬉しいんです。貴方だって、どこか楽しそうに見えますよ」

 

「ふっ、そうか」

 

 邪神はレンの攻撃をギリギリのところで躱しながら、いつの間にか物思いにふけっていた。

 

 何故かあの女僧侶を見ていると、同じようによく笑っていた彼女の事を()()()()

 

 かつて、邪神がまだ下級の神だった頃。

 同じ下級の女神を愛した。

 しかし彼女は卑劣な人間と魔族の罠にかかり殺された。

 

 その悲しみと絶望から逃げるために、彼は狂った。

 彼には、狂うしか方法がなかった。

 

 ┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈

 

 戦いは遂にクライマックスを迎えた。 

 空中からの勇者の必殺の一撃を受け、邪神は闘技場に叩きつけられた。

 

 もう、力が出ない。

 先程の勇者の攻撃、あれは本当に見事だった。レンという少年の華麗な技の数々、蘇生バフがなければとうの昔に終わっていたはずだ。

 

「……もうよい。我は疲れた。

 勇者よ、トドメを刺せ。

 執事様……どうか蘇生はしないで頂きたい」

 

 邪神は数百年ぶりに、かつて愛した女性を()()()()()しまったせいで、そして彼女の顔を、鮮明に()()()()()()()()()時点でもう戦意は無くなっていた。

 

 忘れていたはずの、愛した人。

 もし彼女が、今のこの情けない自分の姿を見たらどう思うだろうか。

 

 愛した女性の死に目を背け、ただひたすらに狂った男の末路、真の(ゆう)ある(もの)に討たれるのなら、それも本望。

 

 

「勇者よ、頼む。もう、終わらせてくれ」

 

 

「……」

 

 

 邪神は目を閉じたまま、静かに終わりを待った。

 

 

 

 異世界編⑥へ続く(次で異世界編は終わりです)

 

 

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