私を人間界へ連れてって ~シンギュラリティ美少女がダンジョンから出てきたら、世界がゲシュタルト崩壊しました~ 作:よっちゃ
続き
「おいキミ、起きろよ」
勇者の声ではない。
それは数百年ぶりの声。
死の直前に脳が聞かせた幻聴か。
邪神は目を開ける。
そこには、
──―はるか昔に死んだはずの、愛した女性が立っていた。
邪神ははっとする。
元勇者パーティーのメンバーも
邪神が何か声を発しようとした時、
突然、その美しい女性は──―
邪神を殴った。
「このバカヤローが!」
「ボクは、キミに……堕ちてほしくなんて……」
「なんで堕ちた、どうして……うう、キミは」
「キミが、ボクは、ボクはそんなこと……」
「なぜ、なぜ堕天した、このバカ!」
「愛した女が殺されたから?」
「ボクの死から逃げたのか! 」
「なぜ堕ちた、答えろこの大バカヤロウ」
「…………」
美しい下級女神は、赤子のように泣きじゃくりながら、目の前の、神から堕ちた男を殴り続けた。
男も涙を流し、ただ黙って殴られ続けた。
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「あの女神様、ボクっk……」
観客席のメガネが何か言いかけたが、隣にいた人に首を絞められ
勇者パーティーの誰も、観客席の誰も一言も発せず、闘技場の中央で、泣きじゃくりながら男を殴り続ける美しい女性を、ただ眺めていた。
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「お嬢様はお優しい」
執事が敬愛する主人をちらりと見る。
少女は美味しそうに抹茶チョコレートパフェを食べている。
常にお嬢様の側に仕え片時も離れないあのメイドも、そしてお父上である御館様すらも。
お嬢様の持つ本当の力には気がついていないだろう。
おそらくお嬢様には──―未来が
お嬢様、やはり貴女様は……
そこまで考えて執事は頭を振る。
私はお嬢様の下僕。
それだけで良い。
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「いやあ、素晴らしい戦いでした」
闘技場に執事が現れ、健闘した闘士達に拍手を送る。
「お嬢様は大変ご満足なされたご様子」
「この勝負は勇者パーティーの勝ちとする」
「そして敗者である邪神殿の処遇と……」
ちらりと、泣き腫らした下級女神を見る。
「そちらの可憐な女神様についてだが……」
女神は、土下座のように頭を下げる。
「
「この男がしでかしたこと、ボクも一生をかけて償います」
「お願いします、どうか、ご慈悲を」
「この男が今まで奪ってきたすべてに、ボクも
殴られすぎて顔が腫れ上がった──―
かつて下級の神であったゼラリスも、執事へ、会場の観客席へ、そして配信ドローンへ向かって頭を下げる。
「私に……償わせてください」
執事はふむ、と顎を触る
「人間界で今流行っている、お嬢様もお好きな『アニメーション』がありましてね」
「
「私はこの闘技場で、毎週末にそのような戦いを開催しようと考えております。お嬢様の為に」
「そのための闘士を今から探さなければならない」
「もちろん
執事がゆっくりと二人の神を見る。
「お二人には、ぜひ最初の闘士になってもらいたい。お嬢様もそれもお望みのご様子」
「ちなみに、拒否権は……この世の誰であっても、ございません」
顔を腫らした男と泣き腫れた顔の女は、ただ静かに頭を下げた。
執事のこの決定に不満を唱えられる者など、いるはずもない。
そして──―
大歓声が上がる。
『よっしゃああ』
『俺も参加するぞ』
『ぼくはあばどんのせんしになる!』
『ワタシノ ヴァンパイアカデ、ナリアガル!』
『ビシバシこき使ってやるぜ元邪神!』
『バカヤロー! 目にゴミが入っただけだ!』
『俺のスキルで成り上がるぜ!』
『邪神の犠牲者を生き返らせる無料復活所が出来るってよ』
『復活所ワロタwwww』
そこへ、最近すっかり姿を見せなかったこずえ──現在は女神こずえが現れる。
「あの、お話し中すみません。良かったらそちらの女神ちゃんには私の仕事も少し手伝ってもらいたいなーと。
あと、さっき気が付いたんですが、地球とこの星──―ガイアが繋がっちゃってるんです、その、
「 ふむ 」
執事は少し思案するような仕草をする
「ひ、ひぃ。い、いえ、大丈夫です。ここと地球で行き来しやすくなるし」
「女神こずえ様にはご苦労をおかけしますが、貴女様の
そう言ってから執事は、この催しの閉会の言葉を述べた。
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「勇者様、本当に帰っちゃうんですか」
「俺はもう、あちらの人間だからね」
「また、会えますよね? 絶対に来てくれますよね? 」
「うん、週末に来るよ。異世界新幹線で
「レン君、そして地球の皆さん。本当に色々とありがとう。私も地球に遊びに行きますね」
「サマンサさん、ニーシャさん、ダレンさん、また来週、会いに来ますね」
『みんなこっちに遊びにおいでよ』
『サマンサちゃん、元気でね』
『来週有給とって異世界ガイアに旅行に行くか』
『料金は片道いくら?』
『往復割引で2万円だって』
『安すぎワロタwwww』
そんな、あまりにも軽い別れの言葉とともに。
一行は別れた。
異世界編完結
日常編に戻る。
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