二人の食卓、二人の空   作:erupon

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こちらはペルソナ4主人公(鳴上悠)と花村陽介が、ペルソナ4の事件が終わった後普通の学生として生活してたのにどうしてペルソナでちゃって公安に隷属することになったんだという話を書く場所です。

スターシステムを採用しているため分かりづらいですが、『ペルソナアフターパラレル』とは別世界線で交差することはありません。
オリジナルしかない世界線ですがよろしくお願いいたします。

なおBLタグがついていますがイチャイチャしません。

ここから同居2年目(二人の学年がひとつ上がります)になります。


2期生


 目覚ましが鳴る少し前に、目が覚めた。

 枕元の時計を見て、予定より三分早いことを確認する。起きるには十分だった。

 

 布団を出て、音を立てないように寝室の扉を開ける。

 まだ薄い朝の空気が廊下に残っていて、床は少しだけ冷たかった。

 洗面所で顔を洗い、棚の前で一度手を止める。

 歯ブラシが二本、同じ向きでコップに立っているのを見て、そのまま蛇口を閉めた。

 

 台所の電気を点けると、昨夜のうちに拭いた流し台が白く光った。

 冷蔵庫を開けながら、今朝使うものと、今日の帰りに補充するものを順に頭の中で分ける。

 卵は四個。牛乳は半分より少し下まで減っていた。

 ベーコンは一食分、食パンは三枚。明日の朝まで考えるなら、帰りに買い足した方がいい。

 野菜室を引くと、レタスがだいぶ軽くなっていた。

 ミニトマトも残りが少ない。陽介が昨日つまんでいた分を引いても、今日でちょうど切れそうだった。

 調味料の棚に目をやり、洗剤の詰め替えも思い出す。

 食器用はまだ持つが、洗濯用の方は次を入れておかないと週末まで保たない。

 

 スマートフォンの画面で時間を見ながら、講義予定を思い返した。

 一限はない。昼前に出れば間に合うが、図書館へ寄るなら少し早めに動いた方が無駄がない。

 陽介の方は、たしか一限からだったはずだ。

 昨日のうちに聞いた時間割を頭の中で並べると、家を出る順番まで自然に決まった。

 

 フライパンを火にかけ、ベーコンを並べる。

 焼ける音が出る前に卵を割り、トースターにパンを入れ、湯を沸かして味噌汁の準備も進める。

 動きはもう考えるまでもなかった。

 片手で箸を出しながら、もう片方で二人分の皿を取る順番まで、手が先に知っている。

 

 食器棚の中では、よく使う皿の位置が少し前に寄っていた。

 最初は仮置きのつもりだった並びも、取りやすさを優先していくうちに、その形で落ち着いていた。

 

 マグカップを二つ出し、片方にコーヒー、もう片方に湯を注ぐ。

 陽介は起き抜けに熱すぎるものを急いで飲みがちなので、少し置けるよう先に作っておく。

 炊飯器は使わず、今朝はパンにした。

 昼の予定と帰宅時間を考えると、その方が残り物の組み方もきれいに収まる。

 味噌汁に豆腐を落としたところで、寝室の方から物音がした。

 扉が開く軽い音のあと、足を引きずるような気配が廊下を近づいてくる。

 

「……おはよー」

 声はまだ半分ほど寝ていた。

 

「おはよう」

 フライパンを返しながら答えると、陽介はそのまま洗面所へ曲がっていく。

 

 ほどなくして、水音と小さなくしゃみが聞こえた。

 その間に皿へベーコンエッグを盛り、トーストを出し、机の上の位置を少しだけ整える。

 戻ってきた陽介は、髪の一部だけがまだ跳ねていた。

 寝癖を気にしている余裕はないらしく、椅子を引く前にマグカップへ手を伸ばしかける。

 

「先に座れ。まだ熱い」

 言うと、陽介は手を止めて、あーはいはいと小さく返した。

 そのまま向かいに座り、皿を見て少しだけ目を細める。

 それが料理への反応なのか、まだ眠いだけなのかは、見慣れていても時々判別しづらい。

 

「今日パンなんだ」

「昼が学食なら、こっちの方がいいと思った」

「なるほど。そういう計算ね」

 頷きながらトーストをちぎる手つきは、まだ完全には起きていない。

 ただ、箸やマグの位置を探すことはもうなく、置かれたものをそのまま使っていく。

 

「一限だろ」

「うん。だいぶ現実って感じ」

「昨夜、レポートは終わってたな」

「終わってる。たぶん。終わってることにしたい」

 

 曖昧な答え方のわりに、机の端へ置いたファイルにはもう付箋が挟んであった。

 今朝のうちに慌てて探す気配がないだけで、持ち物の準備自体は済んでいるらしい。

 

 食事を進めながら、頭の中で帰宅後の段取りを組み直す。

 今日は自分の方が少し遅くなる可能性がある。なら、買い物は先に済ませておいた方がいい。

 

「帰り、スーパー寄る」

「なんか切れそう?」

「牛乳とパン。洗剤も」

「了解。俺の方で早く終わったら、先に見とく」

 

 そう言って味噌汁を飲む姿に、無理に気負った様子はない。

 手伝うと言うより、二人分の不足を見つけたら埋めるという言い方に近かった。

 

「無理ならいい」

「無理なら連絡する」

「分かった」

 

 それで話は終わった。

 細かく役割を決めなくても、どちらが拾うかはその日の流れで自然に決まっていく。

 

 食べ終えた皿を重ね、陽介が先に立つ。

 以前ならそのまま置いていくこともあったが、今は流し台まで運んで水だけは張っていく。

 完全に丁寧とは言えない置き方だったが、十分だった。

 皿同士がぶつからない向きで重ねてあるのを見て、そのまま何も言わず蛇口をひねる。

 

「先、顔どうにかしてくる」

「寝癖、右だけ残ってる」

「やっぱある?」

「ある」

「最悪だな」

 

 洗面所へ戻っていく背中を見送り、テーブルを拭く。

 パンくずをまとめて捨て、空になった牛乳パックを潰しながら、次に買う銘柄までいつも通りに決まっていた。

 

 台所から洗面所を見ると、棚の上には整髪料が二種類並んでいる。

 片方は自分のものではなく、その隣にある予備の歯ブラシも、もう来客用ではなかった。

 洗濯籠を覗けば、白いシャツが二枚、タオルが三枚入っている。

 どの時間に回せば干すまで無駄なく進むかを考える時、数える単位は最初から二人分になっていた。

 玄関脇の棚には、鍵が二組並んでいる。

 片方だけが一時的に増えたものとして扱われていた時期は、もうとっくに過ぎていた。

 

 正式に継続の話をしたわけではない。

 区切りをつけるなら、そのうち言葉にする必要はあるのだと思う。

 

 それでも、朝の手順は何も迷わない。

 食器の数も、買い物の量も、洗面所の混み方も、この部屋の使い方はもう答えを先に出していた。

 




登場人物をここでまとめておく

鳴上悠(T大に入学した大学二年生)
花村陽介(M大に入学した大学二年生)


次回もよろしくお願いします
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