挑戦者は超越者となる   作:電極

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あとがきにビヨンドの見た目などの設定置いときました

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模擬レースとトレーナー

 

編入後、数日

前の学園の話や、実家の話、好きな食べ物など質問攻めに合った

しかし、もみくちゃに遭ったかいもあるもので、自然とちょっとした友好関係を築くに至った

 

「ウェーイ!ビョンちゃん今から、クレープ食べに行かね?シチーが美味しいお店教えてくれたんだ〜パマちんと後お嬢も来るよ!」

 

「今日は、珍しくルビーも来るからってテンション高いな〜ヘリオス。でも、今日行くお店はアルダンさんもオススメしてたから、ホントに美味しいらしいんだよね」

 

 

今日の最終授業が終了して早々声をかけてくれたのは、ダイタクヘリオスとメジロパーマーの爆逃げギャルウマ娘コンビである。

クラスに所属して、いの一番に話しかけてくれたウマ娘で、この2人のおかげで学園全体への見識が広がり、遅刻しないための裏道なんかも教えてもらった。

 

 

「シチーとアルダン先輩のオススメか、美味しそうやなぁ、でもごめん、今日模擬レースやねん」

 

「残念だけど仕方ないね、私もヘリオスも応援してるからさ頑張ってよ」

 

「爆逃げウェ〜イぶちかましてきなYo!!」

 

 

ちょっとしたクレープの誘惑に後ろ髪を引かれつつ、体操服に着替えグラウンドに出る

模擬レースは、一つの距離区分で1日4レース行われる

ボクが走るレースは1800mの中距離区分の第4Rである

最終レースということで、出場ウマ娘は最終調整としてのトレーニングやリラックスのため一時的な休暇を取ったりしている

ボクは、将来戦うかもしれないライバルの敵情視察と、自身が走るイメージトレーニングとして、初っ端の第1Rの前からグラウンドに来ていた

 

 

 

 

 

 

 

 

俺、輪多龍一は、ピカピカの新人トレーナーである。

トレーナー試験ベーシックコースを合格して2年、多くのエリートウマ娘が在籍する〈チームリギル〉の東条ハナトレーナーを師匠とし、サブトレーナーとして経験を積み、遂に1トレーナーとして担当を持てるようになった

そんな俺の一人目の教え子を探すために、模擬レースに通い詰めているのだが…

 

 

「はぁ~、まーたおハナさんとこ志望って断られたー。まぁシンボリルドルフを筆頭にエリートが集まるんだからしょうがねぇか。えーと次のレースはっと」

 

「どう?貴方の初めての教え子は見つかりそうかしら?」

 

「おハナさんのチーム志望って言って、なかなか師匠は目星つけてるんです?」

 

「当たり前じゃない、私だけじゃなく多くのトレーナーたちの注目を集めている2人のウマ娘なのだけど」

 

 

そういうとおハナさんは、レーシングプログラムを見せてきた

2人のウマ娘の名前に二重丸◎がついていた

 

 

「えーと?【サクラハナミチ】と【スノーライト】ちょうど今からの中距離の1Rと2Rじゃないですか!」

 

「そうよ、だから直接スカウトするかを判断するために映像じゃなくて私の目で見ようと思って」

 

「はー、師匠が直接見に来るほどのウマ娘か、俺がスカウトしたら来てくれるかな」

 

 

そんな有望株について色々考えていると、あるウマ娘に目が止まった

140cmほどの身長で体操服に身を包む、おそらく中等部のウマ娘

彼女は、レーシングプログラムと画板とストップウォッチ持っており、競争ウマ娘と言うよりサポート科のトレーナー志望のウマ娘にも見えた

そんなウマ娘に背後から迫りよる影があった

 

 

「あっ、あれ沖野トレーナーじゃないですか?」

 

「またアイツは、この距離じゃ忠告も間に合わない…イヤよ知り合いの同僚から犯罪者が出るの」

 

「沖野さんも蹴られるのも、後でチームの娘達にボコボコにされるのも分かりきってるのに」

 

「アイツが言うには、『有望なウマ娘の脚を見たらつい』らしいわよ。でも実際アイツの見る目はあるのよね、あの子には悪いけど、アイツを蹴っ飛ばすのと、スピカの子達に迅速な通報、私たちのサポートで手を打ってもらいましょう」

 

 

沖野トレーナー〈チームスピカ〉のトレーナーで放任主義だがとても熱い漢で、俺もサブトレ時代よくご飯に連れて行ってもらったりした

トレーナーとしての腕も相当なもので数多くのG1ウマ娘を排出している

悪癖としてウマ娘のトモを触る(下心なし)事があり、その度蹴り飛ばされている

「頑張れば避けれる、でも悪癖であることはちゃんと分かっているだから!甘んじて蹴られる!」が本人の談である

俺と師匠は二人に近づいた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「かなり鍛え込んだトモだな、小学校の有名クラブとかに所属してたのか?」

 

 

パンッ!

 

 

空気が破裂した

 

 

尻餅をついた沖野トレーナーと、後ろ回し蹴りを繰り出し構えを解かないウマ娘に走って近づく

 

「ち、ちょっと待ってこのバカ謝らせるから構えを解いて!」

 

「沖野さんは、脚をさわる変態ですけどいいトレーナーなんです!」

 

 

相手のウマ娘は、すこしづつ冷静を取り戻したのか、恐ろしい顔が引いていき、逆に慌てだした

 

 

「ごっ、ごめんなさい!!つい驚いて!!つい蹴っちゃって!!お怪我はないですか?」

 

「あ、あぁ大丈夫だ、逆に俺のほうが急に触って悪かったな。いい蹴りだったぜ」

 

「へっぴり腰で言ったってかっこよくないですよ」

 

「これに凝りて、その悪癖治るといいわね」

 

「ま、まぁお詫びと言ってはなんだが、デビュー前だろ?なにか相談があれば、この番号にかけてくれ。俺はもちろんベテランのおハナさんや、新米だがおハナさんのとこで修行したリュウイチに頭下げて協力してもらうからさ」

 

「アンタの尻拭いに私を巻き込まないでよ…」

 

「そんなナンパじみたことしてたらチームの娘達に怒りますよ」

 

「いやいや、アイツらは今トレーニング中d「見損なったぞ!!トレピッピ!」ひょ?!」

 

 

ゴールドシップが放ったドロップキックが沖野トレーナーの背中に突き刺さる

横倒しになった沖野トレーナーにゴールドシップがプロレス技を仕掛けあっという間に固められてしまった

 

 

「いで!!いでで!!お前、全員プールトレーニングって言っただろ!いでで」

 

「模擬レースを見るトレーナー達に、ゴルシちゃん特製焼きうどん売ってたらオメーがまたウマ娘の脚勝手に触ってたんだよ!」

 

マダマダ!   ギャー!アガガガガ!

 

 

沖野トレーナーとゴールドシップのじゃれ合いを無視し、被害者のウマ娘のケアに意識を割く

 

「はぁ自己紹介がまだだったわね、東条ハナ〈チームリギル〉のトレーナーをしているわ。脚を触ったあのバカは沖野コウジ〈チームスピカ〉のトレーナーよ」

 

「俺は輪多龍一、元リギルのサブトレで今は新人トレーナーだ」

 

「ボクはゴゥビヨンド、高等部2年生です」

 

 

中等部じゃないの?という言葉が飲み込めた俺は、優秀だと思う

 

 

 

「君はここで何を?サポート科の生徒じゃ無さそうだけど」

 

「はい、みんながどんな風に走るのかを見たかったのと、イメージトレーニングのために」

 

『これより、模擬レース・中距離区分 1800m 第1R 出走となります』

 

「始まるわね、私たちも一緒に見てもいいかしら」

 

「はい、ボクは全然構いませんが…」

 

 

ビヨンドが沖野トレーナーに目を向けるとボロボロになった沖野トレーナーはよろよろと立ち上がった

 

 

「トレーナーは、ヘーキだヘーキゴルシちゃんが灸を据えてやったからな、ビヨンドはトレーナー探しか?」

 

「ありがとう、ゴールドシップさん「ゴルシでいいし、気楽な話し方でいいぜ」…ゴルシ、せやなトレーナー探しもあるけど、半分は自分がどれだけ走れるかをはかるるためやな」

 

「悔いを残さず走れよ、ほらゴルシちゃん特製焼きうどんだレースみながら食おうぜ!」

 

「ゴルシ俺も、焼きうどん買うよ幾らだ?ビヨンドの分も出すよ」

 

「564(ゴルシ)円だ」 

 

「払いづらい値段だな。ほらよ釣りはいらないから」

 

 

ゴールドシップに1200円渡し、焼きうどんを2個受け取る

ビヨンドに1個渡しベンチに腰掛ける

ダシと醤油が香り、小腹がすいた身体に染み渡る

ゴルシ特製焼きうどんに舌鼓を打っているとレースがスタートした

 

白銀に輝く髪をなびかせて、一人のウマ娘がハナに立った

メイクデビュー前のウマ娘に逃げに対する対策を上手く取れるわけもなく、白銀のウマ娘を追走する。

追走するウマ娘は、自身のペースをなくしハナに立ったウマ娘を捉えようとかかり気味になる

コーナーを抜けゴール板まで直線となったときには後方は皆スタミナが切れていた

しかし白銀のウマ娘はそのまま逃げ切りゴール板を駆け抜けた

 

 

「すごい逃げだな、流石今年の有力バの一人【スノーライト】か」

 

「デビュー前でこれなら、クラシックなら負け無しかもね」

 

「うちのスズカでも、デビュー前でこんな上手い逃げできねーぞ」

 

 

トレーナーの性として、走りを評価せずにはいられず次々に口をついた

ゴールしたスノーライトに、多くのトレーナーが集まる出遅れてしまった俺はベンチに残り他のウマ娘を見ていた

ふとビヨンドに目を向けると、スノーライトが走ったタイムをみながらコースをなぞっていた

不思議にその行為を眺めていると、グルンとビヨンドがこちらを向いた

 

 

「輪多トレーナーさん、スタートとゴール、スノーライトさんのタイムで合図してもらっていいですか?」

 

「あ、あぁ構わないよ」

 

 

気迫に気圧されて了承し、ストップウォッチを構える

右手で指を鳴らし、左手でタイマーをスタートさせる

ビヨンドは目を瞑り、手で画板のコースをなぞっていた

スノーライトがゴールしたタイムになり再び指を鳴らすと、ビヨンドはゆっくりと目を開けた

ビヨンドの指はゴールの手前で止まっていた

 

 

「届かんかったか」

 

 

ビヨンドは小さくつぶやいた

届かなかったとはどういうことが問いかけようとしたとき

 

 

『これより、模擬レース・中距離区分 1800m 第2R 出走となります』

 

 

次のレースが出走される放送がなった

ビヨンドは新しい紙とストップウォッチを構える

俺もレープロをめくり次の出走ウマ娘を見る

おハナさんが目星をつけていたウマ娘スノーライトに続くもう一人サクラハナミチが出走していた

 

スタートすると、先ほどのスノーライトに感化されたのか先行策の子がかかって飛ばす

先程のレースで終盤垂れた事を見たからか後方に構える子もいた

中盤では前に出ていた子のスタミナが尽きたのかゆるゆると下がってくる、しかし先行した甲斐もあり息を入れるタイミングとなった

最終コーナーに入り後方に構えた子も前に出ようとスパートを掛ける

そんなバ群の中から青鹿毛のウマ娘が飛び出した

直線に入ってすぐ間の詰まっていた先行ウマ娘を追い越し先頭に立つ

伸びる末脚を振るい、後ろのウマ娘をつき放つ

ゴール板をスノーライトよりも早く駆け抜け、後方に3バ身以上の差を叩きつけた

 

 

「げっアイツこの距離で見つけてきたよ、ドラトレ、アイツが来たらゴルシちゃんと逆方向を教えてくれよ。じゃあなビヨンド、お前のレースしっかり応援してやるからなあばよ!」

 

「ドラトレって俺のことか?てかアイツって誰だよ」

 

 

ストップウォッチと画板ににらめっこしてるビヨンドの横で、スカウトのトレーナーの塊を眺めていると、こちらに1人のウマ娘が飛んできた

 

 

「ゴールドシップさん!!ゴールドシップさんはどこッスか!!」

 

 

先程のレースの勝者、トレーナーの塊の中心、サクラハナミチであった

 

 

「そこのトレーナーさん!!ゴールドシップさんここの近くで見てないっすか!!っていうかゴールドシップさん知らないなってこと無いッスよね!!」

 

「あ、あぁゴールドシップについては知ってる…ゴールドシップは向こうのプールの方に行ったよ」

 

 

ゴールドシップが言っていた『アイツ』とはサクラハナミチのことだろうと察した俺は、言いつけ通り逆方向を教えた

「ありがとうございます!!」といってサクラハナミチは、嵐のように去っていった

そんな様子にあっけにとられていると、隣で座っていたビヨンドは画板のプリントをまとめると立ち上がった

 

 

「ボクは、模擬レース第4Rに出走するので、御暇します。イメトレの協力ありがとうございました。レース頑張るので見ててくださいね」

 

「あぁ!頑張ってくれ!!」

 

 

模擬レース本部に向かうビヨンドに俺は手を振り続けた。第3R出走のアナウンスが流れる頃、沖野トレーナーと師匠が帰ってきた

 

 

「あら?ビヨンドはもう行っちゃったの?愛想つかされた?」

 

「気にすんなよリュウイチ〜、確かにいいトモだったからデカいチャンスを逃した感じはあるだろうけどな」

 

「逃げられたとかそんなんじゃないですよ、彼女最終レースの4Rに出るんですって、ほらここ【ゴゥビヨンド】って書いてあるでしょ」

 

「ほーん、なら俺がスカウトしよっかな〜」

 

「アンタはいきなり脚触ったんだからこわがられてるってば」

 

「でもな!おハナさん!スペはファーストコンタクトで触ったけどうちのチームに………」

 

「それが特殊だって行ってんのよ……」

 

 

そんな2人の喧嘩をよそ目に模擬レース第3Rを見届け

ビヨンドが出走する第4Rを待った

 

 

 

 

 

 

『これより、模擬レース・中距離区分 1800m 第4R 出走となります』

 

 

いよいよビヨンドが走るレースの時間になった

スタート位置には6人のウマ娘が並びその中からビヨンドを探す

一番大外 6番の枠にいるビヨンドを見つけたが、不安が身体に押し寄せる。ビヨンドの顔が真っ青になってる

師匠も沖野トレーナーも気づいたのか、心配そうな表情が溢れていた

俺達の心配をよそにレースは始まった 

 

《キャー》

 

体調不良からかビヨンドが大きく出遅れしてしまった

観覧席では悲鳴も響いた

そのままビヨンドは最後方を走るが食らいつくので精一杯のようだ

俺は居ても立っても居られず、ゴールの方へ走った

 

 

「ちょっと、リュウイチどこ行くの!」

 

「師匠だって見ましたよね、ビヨンドあの子顔真っ青でしたよ!だからゴールしてから何起こるかわかりませんだから!」

 

「行け!リュウイチ、救護はこっちで呼んでおく!」

 

「沖野さんありがとうございます!」

 

 

沖野トレーナーの声に押されスタンドを駆け下りる、ビヨンドの調子を確認するため顔を上げると、ビヨンドは歯を食いしばるように笑っていた。相変わらず顔は青いし、身体の軸はブレている、しかしビヨンドの目はゴールを指して、ストライドは大きく開いていた

ビヨンドは決して諦めてはいなかった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

スタート位置に立つ、ゴールを見る、息を整える

筋トレと同じ、ランニングと同じ頭を騙そうとするがそうも上手くいかない

あの時の景色を、思い出す。足元が揺らぎ、世界がブレるように感じる。走りたくないという自分を走る覚悟を決めた自分が殴る、心拍数が早い、息が詰まる、コンディションは、絶不調に等しい

自分を突き動かしたレースを思い出す、面接のときルドルフに宣誓した覚悟を思い出す、ほんの1時間だけれどボクを応援してくれると言ってくれた青年を思い出す。

動悸を鎮めるために色々と考えていると、集中力が切れ、

 

《ガコン!》

 

出遅れてしまった

 

自分の前を走る、ウマ娘達の背が遠い、ゴールまでの距離はまだある。

 

考える、ここからどう届かせるのか

考える、ここからどう前のウマ娘を交わすのか

考える、ここからどう走れ良いのか 

 

考える考える考える考える考える考える考える考える考える考える考える考える考える考える考える考える考える考える考える考える考える考える考える考える考える考える考える考える考える考える考える考える考える考える考える考える考える考える考える考える考える考える

 

その時見えた

 

自分の進むべき道の軌跡を

他のウマ娘のこれから動く軌跡を

 

でもそれでは自分より前にゴールするウマ娘がいて

この軌跡だけじゃ勝てなくて

また考えて考えて

考えても思いつくのは軌跡だけ

 

 

 

……ならその軌跡すら超えてゆくなら?

 

ボクはルドルフに言ったすべてを超える超越者になると

 

自分の負けすら超えられないなら

 

すべてにすら追いつけることすらできるわけ無い

 

 

 

見えた軌跡よりも大きくストライドを伸ばす

見えた軌跡よりも腕を前に出す 

身体が限界を訴える  

 

歯を食いしばれ、息を吸え、これが挑戦者の生き様だ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ビヨンドが最後方から追い上げる

無茶にすら見えるストライド

息も吸えているのか怪しいほど食いしばる口

引きちぎれるほど振り抜く双腕

レースは中盤に差し掛かったところ

こんなペースで持つわけがないのはトレーナーでなくてもわかるだろう

 

だが俺だけが分かっている、俺だけが共有した、あのイメージトレーニングを

先のスノーライト、サクラハナミチのレースタイムにそってなぞった指を

あれが彼女が走るイメージならば、今の彼女はイメージの先にいる

 

最終コーナーに差し掛かりビヨンドたちがこちらに向かってくる

ビヨンドは後方二人を躱わし現在中団

未だすこしづつ加速して前に近づく

最終コーナーを抜ける直前、また1人追い越す

あと二人…

直線に入ると先頭2人の間も詰まっている

皆はあの二人のトップ争いだと思ってる

 

俺以外は

 

 

「行けぇ!ゴゥビヨンド!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

最終コーナーを抜けて眼の前に映る背中はあと二人

でももう腕が重い…  脚がもつれそう…

届かないかもしれない… そんな考えが浮かんでは消える

あとすこし、もう少しが届かない

そんなときバ場前の柵を乗り出す青年が見えた

 

 

「行けぇ!ゴゥビヨンド!」

 

期待されてる、勝つことを信じてくれる、そんな些細な想いがボクの身体にエネルギーをくれる

 

《腕が重い》まだ繋がっている証明だ

《脚がもつれそう》まだもつれていない

《届かないかもしれない》届くに決まってる

 

だからまだ!

 

「うぁぁぁぁぁぁぁあ!」

 

 

ボクはこの速度を知っている、走れなくなった切っ掛けの時にたどり着いた速度だ

怖い…思い出す…辛い…

 

それがどうした

 

背中が近づいてくる、横を見る余裕はない、ただまっすぐに

 

届け!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

1人のウマ娘がゴール板を駆け抜け、その後すぐに他のウマ娘もなだれ込む

ゴール板が点滅する、写真の表示は出ない、結果が出る

下から数字が現れる一番上に灯った数字は『6』

ゴゥビヨンドが一着でゴール板を抜けたことの証明だった

はっ!と意識を戻しバ場に目を向ける

ヘロヘロと芝に倒れ込むビヨンドが目に写った

 

 

「ビヨンド!ビヨンド!大丈夫か!?」

 

「と、とれー、な、さん」

 

「今、救護班が来てくれるからな、ちょっと待ってろ」

 

「ボクは、ふ、たりを、こえ、まし、あか、」

 

 

ゴール板に光るタイムは、1:46.9

メイクデビューなどの新バ戦のレコードタイムにコンマ秒及ばなかったが

将来が有望視されるタイムであった

 

 

「あぁ、超えたさ!なんならクラシック戦線で注目株のタイムさ!だからしっかりしろ!」

 

「な、ら、よかっら、です、声、きこ、え、まし、た、」

 

「ビヨンド!? ビヨンド!!!!」

 

 

ガクンと目を瞑りうなだれるビヨンドを

俺はユサユサと揺する

沖野トレーナーが呼んだ救護班はまだこない

ビヨンドの顔がみるみる青くなる

ビヨンドを楽にするために俺は揺すり続ける

すると口を抑えビヨンドがふらふら立ち上がる

バ場外ラチにうずくまると

 

 

「エレレレレレレレェ」

 

 

戻した

胃袋の中をひっくり返した勢いで戻した

俺はゆっくりとビヨンドの背中を擦った

しばらく擦っていると、保健の教員と担架がきた

 

 

「貴方この子のトレーナーですか?動向お願いします」

 

「え!?いや、俺まだ担当は…」

 

「いいから早く!」

 

 

保健科教員達に引きずられるまま、寝たきりのビヨンドとともに保健室になだれ込んだ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

恥ずかしい 恥ずかしい! 恥ずかしい!!

全力を振るったレース自体は完璧とまでは行かなくても一番でゴールを駆け抜けることができた 

しかし問題がその後である

 

 

「あかん…男の人の前でゲェーしてしもた、こんなんボクお嫁にいけんやないか」

 

「いや、俺は別に気にしないって、飲み会とかで女の人戻すの見たことあるっちゃあるし」

 

「そんな問題やあらへんねん!!そんなん言うならトレーナーさんが旦那さん用意してや!!」

 

「んな無茶な…」

 

 

猫かぶって、方言を隠すことすら恥ずかしさでできなくなっていた

レースの疲れと、緊張からの解放から、胃袋の中身すら解放してしまった[模擬レース後外ラチキラキラ事件]は、ビヨンドの心に深い傷を残した 

恥ずかしさが天元突破したビヨンドは、布団に包まり横になった

 

 

「おぅ新米コンビ仲良くやってるな」

 

「沖野さん、師匠といっしょにあの後の後始末おまかせしてしまってすみません」

 

「別に構わねぇよ、あ、でもお前は後で理事長呼び出しだってさ」

 

「え!?マジですか?理事長に話行くまで大っきくなっちゃったかぁ」

 

「まぁ呼び出しの理由は、担当ウマ娘の体調不良をしっかりと確認せずにレースに出走させたってところか」

 

「え?担当?俺別にビヨンドの担当とかじゃないですど」

 

「はぁ?あんな熱烈な応援してて担当じゃねぇとか周りは信じねぇぜ。実際ここに運ばれたときも担当扱いだったんだろ?」

 

「まぁ俺は担当扱い嬉しいですけど、でもビヨンドがどう思っているかわかんないですよ、あんな好タイム残したビヨンドを他のトレーナーがスカウトしないとも限らないじゃないですか」

 

 

ビヨンドはレースを思い出す、苦しくてもうやめたいと思ったとき、最後のエンジンのスターターを回したのはトレーナーの声だった

レース後支えてくれた逞しい腕も背中を擦る大きな手のひらも覚えている

正直腹の中では決まっていた、でもあの事件のことがある

しかしこのままではこの男が身を引いてしまうのも分かりきっていた

そうこうして決断を下したビヨンドは跳ね起き正座をしてトレーナーに向き合う

 

 

「お願いします、ボクを担当してください」

 

「こ、こんな俺でいいのなら喜んで」

 

 

 

 

 

こうして

ボクの、初めての担当トレーナー

俺の、初めての担当ウマ娘

が決まった

 

 





髪色 オレンジとピンクが混ざったようなブラウン
髪型 左をかき上げているショートカット
ヒトミミがある位置を隠すように左サイドを編み込みにした髪型
メンコはつけていないが左耳に錨のチャームが付いている
目の色 髪色を濃くした色

ショートヘアーとかき上げてが好きなんです
イメージは割とブルアカの美甘ネル


ウマソウルのお話
馬としてのゴゥビヨンドは、コントレイル×アーモンドアイの牝馬です
サンデーサイレンスの3×3でちょっとアレですけどまぁ架空なので


今回でてきたオリキャラの【サクラハナミチ】と【スノーライト】もなんちゃって配合はあります予想してくれたら嬉しいかも
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